最近はいくぶんよくなっているのかもしれないけれど、
すこし前までは、民主党のこととなると、とにかくあら探しが先行して、
肯定的ないし中立的に見るという論調に、とぼしいような気が、
わたしはしている(いた)のでした。
批判が商売のマスコミや、言いたい放題の一般の人たちはいざしらず、
もっと客観的になってよいはずの、プロの政治評論家や政治学者でさえ、
民主党を評価するときは、「とりあえず批判しておく」
「好意的な話題でも、どこかで難くせをつけておく」というのが、
あたかも「トレンド」になっているような気さえします。
政治信条や、支持政策がすっかり合わないけれど、
しかたなしに推しているのだ、というのなら、わからないでもないです。
そういう人ばかりでもないはずなのに、どういうわけか、
どこかしらに難くせをつけた評論ばっかりのような気がして、
わたしとしては、解せなかったりします。
いまだ政権を取れるかどうか、わからない現段階で、
民主党を、客観公正に評価するなど、とんでもない、
政権交代という難事業を実現したいなら、ひたすら批判を加えて、
問題点をつねづね洗い出すべきだ、というのでしょうか?
あるいは、もっと単純に、一般の人たちに受けたくて、
批判的な論調になっているのでしょうか?
自分の意見を世間に広めて、社会に影響を与えようとする、
政治評論家でしたら、そういうスタンスもわからないでもないです。
ところが、社会的な影響とは無関係に、自分の興味のおもむくまま、
自由に考察していいはずの政治学者でも、
民主党に批判的な論調に寄っているのは、不満が残ります。
2007年になって、『民主党の研究』(平凡社新書、塩田 潮著)
という本が出たのを見つけて、ついに民主党を中心に据えた研究が、
出るようになったかと、一瞬期待したのでした。
ところが、中をちょっと見て、やたら批判的な論調だったので、
がっかりして、本を棚にもどしてしまいましたよ。
今年に入ってようやく、『政権交代』や、『民主党10年史』が
出てきたのですが、これらは、中立的ないし好意的ですし、
よくまとまっていてよい本だと思うので、わたしからもおすすめしたいです。
とはいえ、『政権交代』の著者は岡田克也氏ですから、
民主党の議員ですし、『民主党10年史』も、議員秘書が著者で、
やはり内輪の人間が書いたものです。
民主党といかなる意味でも関係ない、まったくの外部のかたが、
好意的ないし中立的に書いた本は、いまのところ見当たらないようです。
(しいて言えば、Yahooの「みんなの政治」の漫画、
「民主党代表選-前原誠司の決意」くらいでしょうか?
これは中立ないし好意的で、部外者が書いたもので、
時期も2006年6月であり、なかなかさきんじたものがあります。)
さきにあげた、『民主党10年史』の168-169ページを見たら、
どうもこういうことではないか、ということが書いてありましたよ。
それは、社会党が「万年野党」だった名残りで、
「野党に政策は作れない」というコンセンサスが、
暗黙のうちに、日本の政治学の中にあるからだそうです。
実際、野党の研究をしても、あまり評価が得られないことが多いそうです。
それで、政策決定プロセスについては、もっぱら与党に関心が集まり、
「政財官の三位一体構造」とか、「事前審査・承認制度」など、
かなりの蓄積もあるわりに、野党、民主党の研究はすすまないようです。
こういう学会の雰囲気が、その成果を利用する、
評論家やマスコミに伝わって、さらに一般の人たちの論調にもなる、
ということも、一因としてあるのかもしれないです。
民主党は、初期のころから、政策好きな市民派議員がたくさんいて、
それまで開店休業状態だった、国会の法制局の会議をさかんに開き、
議員会館の会議室を、賑やかにしていたのでした。
「事前審査ケシカラン」と批判するのも大事ですが、
「やっぱり自民党じゃきゃだめだ」という学会の意識も、
あらためる必要があるのかもしれないです。
2008年10月04日
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Tracked: 2008-10-11 07:48
それを読んで、90年代の込み入った政党の離合集散の歴史を思い出しました。菅直人は、加藤紘一と気が合ったんですね。2000年末に、加藤が焦って「加藤の乱」なんかを起こさなかったら、コイズミ内閣の成立もなく森の後は加藤で、日本の政治もこんなに悪くはならなかったんじゃないかと思います。アメリカの大統領選におけるブッシュの辛勝ともども、日米を悪くした政権が21世紀最初の年に出現してしまいました。
おおお、すごいすごい。
でも、菅直人氏は、言うまでもなく内輪の人間だからね...
外部の人が書いたもので、中立的、公正的なものが、なかなかないんですよね...
菅直人氏と、加藤紘一氏は、自社さ政権のとき、
それぞれ、さきがけと自民党の政調会長で、政策協議をやっていたのでしたね。
そのとき以来、関係が密になっていたようですね。
「加藤の乱」を起こした動機は、よくわからないんだけど、
やはり、「最大派閥による裏支配」に対する、反発だったのかな...?
そうだとしたら、とても残念なことに、コイズミのほうが、
数段上手だったと言わざるをえないけれど...