10月6日にご紹介の、『政権交代』の80-81ページに、こんなことがあります。
外に冷戦構造、内に高度経済成長があった、
55年体制時代の政治のようすですが、説明が短いですし、
自民党と社会党が「手をつないでいた」と言われても、
なんだかよくわからないかたも、いるかもしれないです。
========
世は高度経済成長が始まった頃である。
年々増えていく富をどう再分配するかが、政治の主な役割となっていく。
それをつづがなく果たすために、与党第一党を維持し、政権を支える官が、
「配慮」をもとにうまく再分配をはかることが肝要だ。
そこで表向きは批判を繰り返して野党の存在意義を守りつつ、
裏では再分配の恩恵に与(あずか)る野党第一党の存在が鍵を握った。
社会党である。
つまり、自民党を社会党は国会でこそイデオロギーによって対立しながら、
じつは会議場の外では、高度経済成長の旨(うま)みを取るという
同じ目的のために、手をつないでいた。
表に現れる花の色は違っても、根っこは同じだったということだ。
========
戦後の日本の経済は、企業の利益が中心の、「会社本位主義」でした。
中核となる施策は、個人や家族の大資本家を極力なくして、
大株主はすべて法人(企業)とする「法人資本主義」です。
個人的な都合や感情もなく、寿命にともなう相続の影響も受けない、
「法人」という、「安定株主」に出資させることで、
長期的なプランに立った経営がやりやすくなり、戦後の復興を支えました。
事業主たちは、自分の会社が、乗っ取られないために、
系列会社や、取り引き関係の緊密な会社に、自社株を持たせる、
「安定株主工作」を行ない、政府もこれを支援してきました。
これは、日本型重商主義的な、過剰な規制の一種とも言えて、
とくに外資系からの買収が防止されて、国内産業の育成に役立ちました。
経営者も従業員も、「ご飯の種」である会社の利益を、
大きくすることで、自分たちの取るものを増やし、
ひいては経済の発展につなげることになります。
さらには経営者や従業員にとって、会社がひとつの「共同体」となり、
会社のために滅私奉公することが、「美徳」となっていきます。
これによって、「中小企業よりも、大企業に勤めたほうがエラい」など、
さまざまなカチカンが、「会社本位」的になっていきます。
「会社本位主義」を推進したのは、政府自民党でしたが、
労働組合とそれに支援された社会党も、これには肯定的でした。
「企業の利潤」という「パイ」を大きくして、そこから自分たちの
取りぶんをを増やす考えを、定着させていったからです。
だから社会党は、大企業の労働組合しか相手にしなかったし、
その労働組合も、企業別という、日本独特のものになりました。
(自社両党から相手にされなかった、中小企業の労働者の支持を集めて
台頭したのが、創価学会、公明党ですが、これはいまは置いておきます。)
9月19日エントリでご紹介の家族政策も、企業の利益のために、
従業員にしっかり働いてもらうという主旨ですが、
この産児制限は、じつは労資合意のもとに、推し進められたものです。
1973年の石油危機以降も、労働組合は、賃上げ要求を控えたり、
希望退職や配転に理解を示すなど、企業の防衛に協力的になります。
これによって、世界各国のスタグフレーションを後目に、
日本だけは不況を乗り切ることになったのでした。
資本家と労働組合、与党第一党と野党第一党、表面的には、
利害が対立するようでいて、どちらも「会社本位主義」であったことは、
自民党も社会党も、「同じ穴のむじな」だったと言えます。
岡田克也氏が書いている、「高度経済成長の旨(うま)みを取るという
同じ目的のために、手をつないでいた」は、こういうことだと思います。
このあたりに興味のあるかたは、『会社本位主義は崩れるか』
(奥村宏著、岩波新書)という本をご覧ください。
55年体制時代の、日本の社会や経済が、どういうものだったか、
とてもよくわかりますよ。
2008年10月18日
この記事へのコメント
この記事へのトラックバック
ナンミョーの創価まみれの自民より、創価にもの言える、ただそれだけでも民主党を支持する価値があると雑談日記は思います。
Excerpt: 今日のお勧めエントリーは、ぬぬぬ?いろいろあるけど...明日晴れるといいねさんの「カルト宗教擁護」も 「サラ金擁護」も 「朝鮮パチンコ擁護」も 「ハゲタカ外資擁護」も この際「一掃」やりませんか?マ..
Weblog: 雑談日記(徒然なるままに、。)
Tracked: 2008-10-19 21:13