2008年12月21日

toujyouka016.jpg 佐藤優現象批判

11月3日エントリで、「佐藤優現象」をご紹介しましたが、
その「佐藤優現象批判」のおおもととでも言うべき論文があります。
「金光翔「<佐藤優現象>批判」」
http://gskim.blog102.fc2.com/blog-entry-1.html

長い文章で、いささか難解なので、読むのに一苦労するのですが、
これをご覧になれば、「佐藤優現象」なるものが、
どんなものか、わかってくるのではないかと思います。
発表されたのは、2007年11月号の、『インパクション』という雑誌です。
いまから1年くらい前ですが、ぜんぜん話題にならないで来ていますね。

 
これはなんなのかというと、排外・国粋主義者で、
アメリカ下院の従軍慰安婦決議も反対する、佐藤優氏が、
自分の本性をうまく取り繕いながら、一部の護憲左翼に、
ウケのいいことを言って、積極的に支持されるというものです。
「現象」ということで、佐藤氏本人よりも、
持ち上げるまわりの人たちに、焦点が当てられています。

かかる排外主義者と、反戦・護憲派の「左右共闘」の軸、
つまり共有できる立ち位置は、ナショナリズムにあります。
護憲左派の中には、グローバル化というと、新自由主義的な市場解放だとか、
対米従属だと言って、やみくもに反対する人がいますから、
排外・国粋主義者が、近付きやすいと言えるでしょう。

反米イデオロギーも、ナショナリズムの一種と言えますが、
ここではそれよりも、外国人の排斥や、反中国イデオロギー、
在日の韓国・朝鮮系のかたの排除が、中心になっています。
「5.なぜ護憲派ジャーナリズムは佐藤を重用するのか?」の
「3.格差社会論」も、外国人労働者を排斥した上で、
「自国民」のあいだだけで、格差をなくしていく、という姿勢なので、
やはりナショナリズムの、ひとつの形態と言えます。


わたしは、これを見て、護憲勢力・左派勢力は、
「なしくずし」にされはじめていると思いました。
当人たちは、「左右の二項対立を乗り越えた」とか、
「左右共闘国民戦線」と寛大になって、勢力が広がったつもりですが、
わたしに言わせれば、「終わりのはじまり」ですよ。

陰謀論に傾倒する人が多かったり、独善的なのが多かったりで、
未来がなさそうとは思っていたけれど、「ついにここまで来たか」です。
論壇で言えば、「岩波」と『週刊金曜日』くらいなので、
「なしくずし」は、まだはじまったところだと思いますが。

つぎのエントリを見ると、批判された対象の人たちは、無視黙殺みたいです。
(それゆえ、あまり知られない状況が、1年も続いたのでしょう。)
しかも、論文を書いたかたは、出版者でいじめられるというお話です。
もはや、自浄作用が働かないところまで、来ているようです。
http://d.hatena.ne.jp/toled/20081210/p1


このような、政治勢力に対して、警戒することは、
外国人の移民や労働者の受け入れに反対することや、
在日のかたへの排斥なのは、言うまでもないでしょう。
また、アメリカ合衆国下院の、従軍慰安婦決議に
反対するといった「歴史の捏造」も、注意が必要になるでしょう。

はじめにご紹介の論文を書いたのは、金光翔氏というかたです。
在日のかたなので、排外主義に敏感で、こうしたことに気がつくのでしょう。
前に山口二郎氏が、「佐藤優現象」に陥っていると、
わたしはお話しましたが、そのとき参照したブログの作者でした。
岩波書店にお勤めで、「論壇」にも登場する、プロのもの書きのかたです。

そのほかの関連エントリ:
「脱「植民地主義」という鍵(その2)〜「〈佐藤優現象〉批判」を読んで」
http://ukiuki.way-nifty.com/hr/2008/01/post_c7ee.html

posted by たんぽぽ at 20:11 | Comment(4) | TrackBack(2) | 政治活動・市民運動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
佐藤優については、メディアによって態度を変えているようなので、どうもつかみ所がありませんでした。18日だったか、毎日新聞の夕刊に佐藤のインタビュー記事が出ていて、そのなかで佐藤は「アメリカのオバマ大統領による変革がファシズムにつながるおそれがある」と言っています。国が変革を求めるときは国民が同じ方向を向きやすいので、ファシズムがつけこみやすいという文脈でした。それ自体は間違っていないと思うのですが、佐藤自身が排外的な人間だとすれば、毎日新聞でもうまいこと化けていることになりますね。
こういう人間こそ、今の状況ではいちばん警戒しなければならないですね。
Posted by タツ at 2008年12月22日 00:07
タツさま、いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。

佐藤優氏が、「ファシズム」を持ち出すのは、
「左右共闘」を呼びかけるときの、決まり文句みたいですね。
(きたるべきファシズムと対峙するべく、
ともに闘いましょう、なんて具合に。)

「これはファシズムにつながるのではないか?」という
言い回しが好きなかたは、護憲派や左派には多いので
それでつり込まれちゃうのも、あるのかもしれないです。

毎日新聞では、なんと言っていたのか、まだ確かめてないけど、
(きょうは月曜日で図書館がお休み...)
たぶん、「ファシズムにつながる」で止まっていて、
そこからさきの共闘うんぬんは、出てこないんじゃないかと思います。


>それ自体は間違っていないと思うのですが、

いや、それも結構、まゆつばだったりしますよ。

たとえば、高度経済成長期の日本は、「所得倍増計画」なんて、
国が変革を求めていて、国民はもろに同じ方向を向いていたけれど、
ファシズムが付け込む気配は、ちっともなかったですし...
Posted by たんぽぽ at 2008年12月22日 22:14
> 佐藤優氏が、「ファシズム」を持ち出すのは、
「左右共闘」を呼びかけるときの、決まり文句みたいですね。

佐藤優がそんなこと言っているのを聞くたび、「おまえが言うな」って思っちゃいます。
Posted by kojitaken at 2008年12月23日 09:35
佐藤優氏も、相手に受けそうなことを、心得ている感じですね。


それと、貴ブログでのご紹介、ありがとうございます。
(ひさしぶりに、アクセスがすごかった。)

「佐藤優現象批判」に対して、表立った批判がないのは、
わかっていてやっている、ということなんでしょう。
「なしくずし」と書いたけれど、自分からくずれに行っていると、
言ったほうが正確かもしれないです。

リンク先のエントリにある、つぎのくだりは、「水からの伝言」騒動で、
わたしを叩いた人たちも、言われていましたね。
http://d.hatena.ne.jp/toled/20081210/p1
|僕はこれまでにリベラルを自称する人や組織が
|極めて非リベラルに振る舞うことを目撃することに慣れてきました
Posted by たんぽぽ at 2008年12月23日 11:56

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「新自由主義」への批判と対照的な「佐藤優現象」への無批判
Excerpt: このところちょっと話題になっているのが、これまで新自由主義を信奉していた人たちの「転向」である。 小渕恵三内閣(1998〜2000年)の「経...
Weblog: きまぐれな日々
Tracked: 2008-12-22 08:25

気配り犯罪と言うのもあるんだなぁ→「逮捕されれば食事に」 36歳無職、伊勢市公用車に傷→自公の無能無策でここまで来ました。
Excerpt:  このニュースを聞いて、チャップリンのモダンタイムスだったかな、一場面を思い出しました。  失業して職の見つからないチャップリンが街を行くと、浮浪児がパンを盗み店主に捕まっているところに出くわします。..
Weblog: 雑談日記(徒然なるままに、。)
Tracked: 2008-12-23 10:01