2009年04月11日

toujyouka016.jpg 男性のDV被害が増えた?

前にトラックバックをいただいたのですが、
みょうに偏った印象を与える、産経新聞の記事です。
「「もっと働けクズ!」殴る蹴る 妻から夫へのDV多発」

「東京ウィメンズプラザ」の配偶者暴力相談支援センターに
寄せられた男性からの電話相談内容を分析したものです。
「相談件数は56件で、このうち22件(39・3%)が
女性から「暴力を受けた」と回答」とあります。

産経の記事だけ見ていると、いかにも女性からのDVが最近になって
増えたみたいな印象を受けるし、相対的に女性の割合が減って、
男女比が小さくなった印象さえ受けるかもしれないです。
じつはどういうことなのか、くわしいことはこちらにあります。
もとの資料を探し出して、ていねいな分析をされていますよ。
「『産経の感覚は独創的』 パート5;DVへの感覚 」
http://azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-645.html

 
オリジナルの統計は「東京ウィメンズプラザ」のサイトにあります。
「配偶者等暴力対策」のページにリンクされた、PDFファイルの資料です。
「「配偶者暴力被害の実態と関係機関の現状に関する調査報告書」について」

「2 男性相談の実態調査【新規】」がもとのデータです。
39.3%(22件)が「女性から暴力を受けた」で、60.7%(34件)は、
「女性に暴力をふるった」で、加害者になるという相談です。
========
3か月実施 調査数 56件
・相談者の60.7%が配偶者に暴力をふるったとしたとして、
39.3%が配偶者から暴力を受けたとしている。
========

DV対策の窓口は、加害者になる人のための相談も受けていますから、
こうした相談があるのは当然なことです。
産経の記事は、男性が加害者のケースについては触れず、
被害にあったケースだけ取り上げているものです。


女性が被害者となるケースは、どれだけあるのかですが、
「1 配偶者暴力相談支援センターの相談内容からみた被害者の実態」に
数値が出ていて、電話と面接と両方の数値がしめされています。
========
(1) 電話相談
2か月間実施 調査数666 件

(2) 面接相談
3か月間実施 調査数165 件
========

単純に1か月あたりの被害件数にすると、男性の被害は7.3件で、
女性の被害は、電話と面接を合わせて277件になります。
全体の被害者のうち、女性の割合が97.4%ですから、
これをご覧のかたの感覚とも、よく合うのではないかと思います。


産経がなぜに「妻から夫へのDV多発」なんて、
「最近は女もなぐるようになったんだな」と、
いかにも思ってしまいそうな記事を書いたかです。
(じつは、産経新聞は3月に、女性のDV被害が全体の98.4%という、
警視庁の報告も記事にしている。)
「DV認知件数が過去最高 殺人も77件」

これは想像するしかないですが、「東京ウィメンズプラザ」の資料に、
「男性相談の実態調査」が「新規」になされたとあります。
おそらくは、ここに注目したのではないかと思います。

産経は「多発」と書いているので、これまでと比較したみたいですが、
そもそも以前の調査がないので、今回1回の調査を分析しただけで、
過去の調査との比較はしていないと思います。
男性の相談は加害者ばっかりと思いきや、加害者が6割で、
被害者が4割もあったので、産経の記者にとって、
意外にも多く感じられて、くだんの記事になったのかもしれないです。


そのほかの参考記事:
「で夫から妻へのDVは「多発」してないの?」
http://d.hatena.ne.jp/kei999/20090404

posted by たんぽぽ at 22:56 | Comment(0) | TrackBack(1) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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