6月12日の産経新聞なので、だいぶ前ですが、
「金曜討論」というコーナーで、こんな記事がありました。
「0歳児からの保育園通い 西舘好子氏、大日向雅美氏」
こちらでも、話題になっています。
(西舘氏と大日向氏へのインタビュー記事を並べているだけで、
ちっとも「討論」になってない、この記事は手抜きだ、
と言われていて、たしかにそうだと思います。)
「産経新聞「金曜討論」には、討論してもらいたかった 」
0歳のうちから、お子さんを保育園にあずけるかたも、多いと思いますが、
「子どもが小さいうちは保育園にやらず、母親が手元で育てるべし」
という主張を、西舘好子氏が展開していらっしゃるのです。
(これに大日向雅美氏が反対している。)
西舘好子氏のような、「母親育児」を信仰するかたは、
母親と赤ちゃんが直接接することで、
「なにか」が伝わると、考えるのではないかと思います。
この「なにか」が、赤ちゃんが育つ上で、とても大事だと考えていて、
いわゆる「3歳児神話」のコアでもあると思われます。
「なにか」は、生物学的なものであると、信じられています。
それで「自然界の本質」とか「生命の輝きを実感」なのでしょう。
実際には、母親が直接赤ちゃんを育てなかった時代が、
たくさんあるのにもかかわらず、「母親の役目は昔と変わることなく、
とても大きい」などと言うのも、「生物学的」なのだから、
有史以来ずっとそうだったと、思い込んでいるのでしょう。
「なにか」は物質ではないし、光や電磁気のたぐいとも違うようです。
化学や物理の範疇を超えた、超自然的な伝播をするようですが、
とにかく母親と子どもが、近くにいる必要があるみたいです。
また「なにか」は、母親からしか伝わらないとも信じられています。
それゆえ「子供は誰が育ててもいいというわけではない」のでしょう。
「誰だってできるような会社勤め」なんて、
会社勤めを見くびったことを言うのも、「なにか」が母親以外から、
伝えられないことにくらべれば、会社勤めには代わりの人材が
いくらでもいると、言いたいのでしょう。
(西舘好子氏は、どうなのかわからないですが)、
「母乳育児」の信者も、「なにか」を信じていることがあります。
お母さんが、母乳を赤ちゃんに与えることで、
「なにか」が伝わると思っているからです。
粉ミルクに反対したり、ひどいのになると牛乳まで否定するのも、
これらでは、「なにか」が伝わらないと、考えるからでしょう。
母乳とは、赤ちゃんが育つ上で必要な栄養素が、
ひじょうにバランスよく配分された液、というだけで、
「なにか」なんてないですよ。
粉ミルクが、母乳におよばないのも、母乳並にバランスのよい栄養を
人工的にはなかなか作れないという、技術的なものであり、
「なにか」が入っていないからではありませんよ。
そのほかにも、「なにか」が不足して育った子どもは、
いろいろと問題を抱えるとも、言われることもあります。
将来非行に走るのも、「なにか」が不足した子どもだからとされたりします。
近年少年犯罪が増えたのは、女性が働くようになって、
「なにか」を与えないからだと、言われることもあります。
いったいどんな調査をしたのか、いつもデータがしめされないのですが、
根拠がないのに信じられるから、いやになってしまいます。
「なにか」は、「生物学的」だから、調べるまでもなく自明だ、
とでも言いたいのでしょうか?
察しのいいこれをご覧のあなたは、もうお気付きでしょう。
「なにか」とは、「母性本能」とか「母性愛」と言われることがあると、
おことわりして、おしまいにしたいと思います。
(カテゴリーは「疑似科学(にせ科学)」でも、よかったんだけど...)
2009年07月05日
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相変わらずTBが飛ばないのは、困ったもんですね。。。(どうにかしてくれ livedoor)
「なにか」がそんなに「生物学的」に当たり前のことだったら、こんなに力説しなくたって、母親は皆もっと自然に子育てできているでしょうにね。
>カテゴリーは「疑似科学(にせ科学)」でも、よかったんだけど...
同意!!
今回はキャプションのご指摘、たいへんありがとうございました!
あのままだったら、本当にいい笑い者になっていただろうと、ぞっとします。
(もう遅いかも・・・笑)
また、ご丁寧なコメントでご面倒をかけてしまい、申し訳ありませんでした。
これを機会に、訪問させていただきますので、
今後ともよろしくおつき合いくださいますよう。 m(_ _)m
>産経新聞自体の主張は西館氏の意見の方なんでしょうね。
きっとそうだろうと、わたしも思います。
すこし調べてみたけれど、「金曜討論」のコーナーは、
いつもふたりのインタビュー記事を並べるだけで、
ふたりのあいだでの「討論」はないみたいです。
今回だけが特別というのではないようです。
本当にふたりで討論したら、ぐちゃぐちゃになってしまい、
とても記事にできない、ということかもしれないです。
ていねいにお礼をくださって、ありがとうございます。
取り上げたのがいまさらという感じで、わたしこそ恐縮です。
>相変わらずTBが飛ばないのは、困ったもんですね。。。
七重さまのところも送れなくて、コメント欄で直接あいさつでした。(苦笑)
>「なにか」がそんなに「生物学的」に当たり前のことだったら、
まったくそうですよね〜。
お腹が空いたり、眠くなるのとおんなじように、
「あたりまえ」ですから、だれもなにも言わないはずですよね。
わざわざ力説するところが、それがもろくて崩れやすい証拠なんだと思います。
(しかし力説の当人は、その矛盾に決して気付かないのであった...)
>>カテゴリーは「疑似科学(にせ科学)」でも、よかったんだけど...
>同意!!
カテゴリー、どっちにしようかって考えました。(笑)
ジェンダー関係の「とんでも」って、どっちにもできるからね...
わたしのブログにお越しくださって、まことにありがとうございます。
ああ、いえいえ、たいしたことを指摘したんじゃないですし、
こちらこそ、最初から貴ブログにコメントせず、
アルバイシンの丘さまのところだけ、なんてやっていて、
むしろ失礼だったと思います。
>これを機会に、訪問させていただきますので、
>今後ともよろしくおつき合いくださいますよう。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
(わたしのブログ、くだらない雑文ばっかりだし、
興味が合うかどうかわからないですが、
ぜひとも、ごひいきにしていただけたらと思います。)
こんな人に四六時中、べったり子育てされるのも気持ち悪いんじゃなかろうか。しかも、不倫して再婚して好き勝手に生きてきたくせに、偉そうによく言いますわ。
お父さんや保育士さんや、いろんな人に見てもらって育つのもよいでしょう。母乳にこだわるなら、冷凍母乳という方法で仕事もできるしねえ。
>しかも、不倫して再婚して好き勝手に生きてきたくせに、
西舘好子氏のプライベートは、わたしはほとんど知らないんだけど、
じつは、そうだったんだ...(なるほどねえ...)
家族のことについて、「きれいごと」を言う人って、
おうおうにして、自分個人のことは、その「きれいごと」基準で、
ひずんでいたりしないかな...?
(自分にないものを欲する、ということかもしれないけど。)
>お父さんや保育士さんや、いろんな人に見てもらって育つのもよいでしょう。
そうそう、保育士さんとか、いろんな人になつくのも、
おおいに結構ですよね。
それと、母乳を凍らせるのは、
日高逸子氏という競艇選手のかたが、やってましたね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/112759345.html
「母乳信仰」に近いような「信念」にはほとほと困ったものだとこのごろ思っています。
母乳の(栄養面・免疫面での)良さ、というところからは、かけはなれた何かにつきうごかされているように見えます。
>お母さんが、母乳を赤ちゃんに与えることで、
「なにか」が伝わると思っている<
「母性愛」だけにとどまらない「何か」であるような気もするのですが、そう言い始めると「母性愛」とは何なのか、ということにもなってしまう。「母なる自然」的な発想につながるなら、やはり大きなキイワードは「母」ということになるのでしょうか。
もう少し考えてみたいことではあります。
こちらにも、コメントとTBをくださって、ありがとうございます。
>「母性愛」だけにとどまらない「何か」であるような気もするのですが、
「母乳信仰」の場合の「なにか」は、「母性」だけではなさそうですね。
このあたり、「人工のものはよくない、自然のものがいい」という、
素朴な自然信仰だったりするのかな、なんて思ったりもしているんだけど。
(というか、こっちのほうが、ウエイトは大きいかもしれないです。)
母乳育児がはやるのは、(「母乳は優れている」という知識が、
普及してきたのもあるのでしょうけれど)、
「紙おむつより布おむつ」とおなじように、「自然」のものがいいと、
思われているのもあるのかもしれないです。