6月30日の東京新聞の「こちら特報部」というコーナーで、
性犯罪が裁判員制度の対象となることについて、特集がありました。
コメント欄で教えてくださった、さくらさま、まことにありがとうございます。
「ここがおかしい!裁判員制度
性犯罪に『市民感覚』必要か 衆目さらされ二次被害」
残念ながら、上のリンクは、リードの部分しか読めないです。
全文をご覧になりたいかたは、つぎの紙面版をご覧ください。
2ページにまたがった、かなり大きな特集記事です。
「ここがおかしい!裁判員制度
性犯罪に『市民感覚』必要か 衆目さらされ二次被害」
========
先月から始まった裁判員制度で、「性犯罪は対象事件から外して」という
被害者らの要望が日に日に強まっている。
とりわけ「被害を知られたくない」と感じるのが性犯罪。
裁判員裁判になることを恐れ、被害の訴え自体が減るのではとの懸念も強い。
この種の事件に「市民感覚」は本当に必要なの?
そんな疑問の方が「市民感覚」に近い気がするのだが…。
========(リード)
見出し:
「性犯罪に「市民感覚」必要か」
「衆目さらされ二次被害 つらいから訴えやめる!?」
中見出し:
「対象から外して 強まる要望」
「加害者処罰望むが 事件知られたくない」
「法廷で"素朴"な質問 さらに傷つく被害者」
小見出し:
「冷静に証言聞けなかった」
「なぜ死んで貞操守らぬ」
「なぜ声を上げられぬ」
内容は、裁判員制度の対象になる性犯罪が、全体の2割を占めること、
裁判員にならなかった候補者に、事件の守秘義務がなく、
被害者のプライバシーがもれる恐れがあること、
裁判員による二次加害がありえること、性犯罪の被害者により、
対象事件からはずす要望が強まっていることなどが出ています。
いままでこの問題について、取り上げられてきたことが、
ひととおり書かれていて、よくまとまっていると思います。
ご存知のかたもご覧になれば、知識の整理になるでしょう。
二次加害については、「なぜ死んで貞操を守らなかったのか」と
警察で言われたことや、事件と関係ない援助交際を、
被害者がしていたことを理由に、刑を軽くした裁判官が示されています。
警察や司法関係者でさえ、信じがたい理不尽なことをするので、
性犯罪についての知識がない裁判員の「市民感覚」による、
二次加害の恐れは、さらに高いことが述べられています。
さらに実名を出して、被害者支援をなさっている、
『性犯罪被害にあうということ』の著者、小林美佳氏のコメントがあります。
そして、京都教育大学の集団準強姦で、被害者が告訴を取り止めた背景に、
ネットでの誹謗中傷があったと思われることが出ています。
おしまいに、裁判員制度が適用される、最初の事件と思われた、
福島県の強姦致傷事件で、被害にあわれた女性が示談して、
加害者が起訴猶予処分となって、不起訴になったことがあります。
これも、被害にあわれたかたが、裁判員にプライバシーがもれることや、
二次加害を恐れたことが考えられます。
裁判員制度のために、いままででさえ多かった、
被害者が訴えを取り止めるケースが、さらに増えるかもしれないです。
「暗数」がさらに増えることで、見かけの性犯罪の件数が減るので、
「裁判員制度の導入で、よりよい社会が実現した」などと、
思いこまれる可能性もあって、これは懸念することだと思います。
2009年07月10日
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被害者が訴えを取り止めるケースが、さらに増えるかもしれないです。
「暗数」がさらに増えることで、見かけの性犯罪の件数が減る<
腹立だしい限りです。こんなにまでして、裁判員制度で、被害者をおいつめて・・・何を考えているんでしょう…。私は訴えるべき、とは、残念ながら言えません。あまりに警察、検察、裁判という過程は辛いです。でも訴えたら、その意思を最大限尊重して被害者を守ってあげて欲しいです。それを裁判員制度が邪魔しています。どんなに勇気を振り絞って訴えているのか、必死の思いを考えてほしいです。被害者の方のお気持ちを考えると、辛いです。
示談の意味も、世間は全くわかっていないのを感じます。そうせざるをえない状況に追い込まれるのです。京都教育大の事件は被害者情報を詮索するようなキーワードで私のところに毎日アクセスがあり辛いです。そんなに被害者をよってたかっていじめてどうするのでしょう?
集団準強姦罪を訴えることの大変さを「DVは犯罪です」のエントリの最後に書いてあるので、「被害者の方と周囲の方へ― 被害からまもない時期に読んでほしい本」のエントリと両方TBしますね。
検察も結局は法務省の一部ですし、裁判所とは人事交流があるので「被害者が裁判員制度を嫌がったので」とは責任の重さから言わないでしょうね。正直に言ってほしいです。世間も司法制度も、これ以上被害者を追いつめないでほしいです。
性犯罪に限らず犯罪被害を他人に知られたくない場合・気持ちはあると思うんですよ。
裁判員制度は被害者よりも被告のためにあるのは確かでしょう。
それでも私は市民の良識に期待しようとしか言いようないです。
いまでさえ、暗数が多いことを知られていなくて、
日本は治安がいいと、なんとなく思っている人が多いですからね...
裁判員制度が嫌がられていることが、司法関係者から
言われないとなると、性犯罪の訴えが減ったのを勘違いする人も、
本当に出てくるのではと、わたしも不安を感じています。
>示談の意味も、
わたしなんかが見ると、裁判を続ける心理的負担に耐えかねて、
折れてしまったんだなと、すぐに察しがつくんだけど...
福島の事件は、「被害者の意思を最大限尊重する必要があり、
けがも比較的軽微なので不起訴とした」なんて説明していましたね。
(ずいぶんと掛け値のある、「被害者の意思の尊重」なんでしょうけど。)
>京都教育大の事件は
「どんな誹謗中傷があったんだ?」なんて、
メタな興味本位で調べにくる人も、いまくらいになると、
だいぶ出て来ているのではないかと思います。
わたしのところも、もうすこししたら、検索で来る人が出てくるのかな?
(このエントリを読んで、考えていただけたらと思うんだけど...)
>性犯罪に限らず犯罪被害を他人に知られたくない場合・
>気持ちはあると思うんですよ。
おっしゃりたいことが、よくわからないんだけど、
「だから、性犯罪の被害者も、他人に被害を知られても、
多少はガマンしろ」ということかな...?
>それでも私は市民の良識に期待しようとしか言いようないです。
「市民の良識」がここまで不信感を持たれ、
ネットの誹謗中傷のような被害が、実際にある以上、
「期待しようとしか言いようがない」は、
あまりにも無責任すぎるというものです。
>「だから、性犯罪の被害者も、他人に被害を知られても、
>多少はガマンしろ」ということかな...?
逆ですよ。性犯罪だけ特殊と訴えるのではなく、他の犯罪もまた同じだと一般論で主張した方がより広く理解は得やすいかと。
無様に殺されたなんてことを人に知られたくない被害者遺族だっているでしょう。
「自分でも思い出すのが辛いことを他人に知られたくない」ということと、
「他人の偏見に晒されるのが怖くて知られたくない」ということとを
(意図的にではないのでしょうが)混同してしまっているように見えますが…
>性犯罪に限らず犯罪被害を他人に知られたくない場合・気持ちはある<
性犯罪に限らず、報道被害にあい好奇偏見の目で見られることは多いので、確かにそうだとは思います。
ただ、性犯罪の場合、どうしても特殊なのです。まず被害者が純粋に「被害者」と見られません。自転車にカギをかけていず盗まれたら、盗んだほうが悪いです。カギをかけ忘れた自宅に泥棒に入っても、最悪殺人が起きても被害者は責められません。が、性犯罪はなぜか被害者の「落ち度」を探し出されて責めたてられるのが現状です。偏見に満ちています。
氏名住所等が伏せられていなかったとき、傍聴人から情報が流れて私は大変な目に遭いました。思い出したくもありませんが知人男性に「なら俺にもいいだろう」と何人にも言われたのです。他にもたくさん迫害に近い差別を受けました。よろしければこちらをご覧ください。http://www.h6.dion.ne.jp/~half-2/saito/message.html
プライバシー保護が進みましたが、その前からずっと、カウンセラーや精神科医、弁護士による更なる性的搾取などもおきています。立証しにくいですし表にはなかなか出ませんが。弱っている被害者につけこむ輩がたくさんいるという、悲しい事実です。
>わたしなんかが見ると、裁判を続ける心理的負担に耐えかねて、
折れてしまったんだなと、すぐに察しがつくんだけど...<
たんぽぽ様にこう仰っていただくとほっとします。
誹謗中傷する人は、加害者が野放しになったのを被害者の責任のように言ったり、やっぱり大したことなかったとか嘘だったのでは等、思っているようです。また実際の加害者は野放しなのにゲームはダメなのか等言ってくる人もいます。
不起訴の件は、被害者の方の意思を尊重してくれたのは良いのですが、そういう形でしか尊重できない現状に疑問を感じます。
性犯罪には、「被害者落ち度論」や、被害にあったことを、
偏見の眼で見るといった特有の事情があり、これらが裁判に対する
心理的負担を強くし、訴えることをむずかしくしています。
「性犯罪は特殊」であり、ほかの犯罪とおなじでないということです。
(いままでにも、何度も言わなかったかな...?)
性犯罪は、被害にあったことが、偏見で見られるといった特殊事情が、
pulinさまは、どうしても理解できないのかもしれないですね。
pulinさまには、リンクさきのページをご覧になるなどして、
じっくりと考えていただきたいと、わたしも思うんだけど...
http://www.h6.dion.ne.jp/~half-2/saito/message.html
>たんぽぽ様にこう仰っていただくとほっとします。
ああ、いえいえ。
かしこまっていただくと、こちらこそ恐縮してしまいます。
>誹謗中傷する人は、
このあたり、性犯罪に対するやましさゆえに、
なんとかして揉み消したい意図を、感じることがありますよ。
(男性だと、「女性を襲うのは生物学的本性」なんて、
信じている人もいるでしょうけど、自分の意思でどうにもならない
(と思いこんでいる)ことで犯罪者にされたくない、なんて思うのかも。)
>不起訴の件は、
「被害者の意思」が、そうした方向にむかわざるを得ない現状にも、
大いなる疑問を感じるところです。
裁判裁判で、犯行がいかにひどかったかは隠すどころか詳細に述べることでアピール材料になる場合もあるでしょうが、性犯罪のような犯罪だとそうも行かないかもしれません。
どうすればいいのか分かりません。裁判員という「素人」を信じられるかられないかでしょうか。
ご理解いただいて、とても嬉しいです。ありがとうございます。
偏見がなければ、性的な目で見られなければ、問題は特にないのですが、そうではないのが現実です。守秘義務の問題もありますし。
pulin様のように良識ある方が裁判員になることを願ってやみません。
よくまとまっているサイトだと思います。
http://www.h6.dion.ne.jp/~half-2/saito/index.html
pulinさまも、これをひととおりご覧になって、
じっくりとお考えになってみると、いいと思いますよ。
そういう意味では、それを導く元となったpulinさんには感謝です(?)
(なんて、わたしが言うのも変だけど。)
それにしても、すごいびっくりですよね。
これが現代の日本で起きていることなのかって。
(かくいうわたしも、最近まで知らなかったですよ。)
ちなみに、さきのリンクは、こちらのブログのかたが作ったものです。
ご参考までにどうぞです。
http://blogs.dion.ne.jp/akiras_room/archives/8439091.html
ところで,その記事にも書きましたが,この裁判員制度の忌避の主張が,性暴力犯罪のみに限られているように感じますが,そうでしょうか?
もしそうとすれば,一般凶悪犯罪は裁判員制度が適しているということなのですか?
とすればその理由が知りたいですが,ご教示いただけたら幸いです。
わたしのスタンスは、「性犯罪に関しては裁判員制度は危険」です。
裁判員制度一般については、とくになにも語っていないです。
理由はいたって簡単で、性犯罪以外のことはわからないからです。
一般的な裁判員制度の問題も、つぎの記事に書いてあるくらいの、
通り一遍くらいしか知らないので、なにか議論できるほどの知識はないです。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/21929301bf51872669470a5abd17bbeb
したがって、「わからないことは言わない」という原則を、
守ることにしているしだいです。
(あまりご期待に添えないお答えだと思うので、恐縮だけど...)
一般凶悪犯罪は裁判員制度が適している,というわけではないのですね。了解しました。
>あまりご期待に添えないお答え
もし適しているというお考えならば,どんな理由があるのか楽しみだったので。
でもそうでないということですので,やはり期待は実現しないことになるのね(^o^)
ということは、やっぱり期待していたのね。(苦笑)
被害者にしか分かり得ない思いが沢山あり、通り魔事件と同じで私が被害者?なんで私?事件を忘れられないのに現実を受け入れ認めたくない・・・
その思いのせいなのか、脳が命を守ろうとするのか?
大切な部分、状況、着ていた服、環境の一部が記憶から削除される。
そして時間の経過を経ても事件を忘れらず、心の傷が癒えることが無い!!
それなのに周囲はもういい頃?今なら大丈夫?って軽率な発言・質問をする。
身内や親友にも理解されないのに、選ばれた一般市民が公平に審議できるの?
被害者の素質ではなく、どのケースでも悪いのは加害者であることを忘れてはならないし、事件を他人事と思わず、母・妻・娘・身内の災いと考えることが大切では・・・性犯罪者は常にチャンスを狙っていて被害者は誰でもいいのだ
おそらく、性暴力の被害について関心があって、
わたしのウェブログにお越しになられたと思われます。
記憶の一部が薄らいだり、なくなったりするのは、
からだを守るために、つらいことは覚えておきたくないという、
脳の防衛反応だろうと、わたしも思います。
警察や司法関係者でさえ、性犯罪について無理解なことが、
すくなからずあるのですから、一般からランダムに選ばれた人が、
性暴力を公平に判断できるとは、わたしも思えないですよ...
(どうしてもやるというなら、事前に研修が何日も必要だと思います。)
もしよろしければ、つぎのページもご覧いただけたらと思います。
わたしのブログよりずっと、性暴力のことをくわしく扱っています。
http://blogs.dion.ne.jp/akiras_room/
http://manysided.blog85.fc2.com/