2009年08月15日

toujyouka016.jpg 当選回数主義

13日にご紹介の、かみぽこちゃんさま論文によると
国会議員の世襲をもたらす最大の原因は、「当選回数主義」とあります。
「当選回数主義」は、文字どおり、当選した回数に応じて、
大臣や党の役員などのポストが割り振られる「年功序列」の一種です。
自民党が内部のルールとして導入しているものです。

衆参合わせて300人ほどいる国会議員全員に、
納得のいく人事を行なうのはむずかしいので、
だれでもよくわかる基準として、当選回数を持ってきたのでしょう。
(そうしないと全員が納得しない、というのは、
それだけ組織集団として未熟、ということでもあるのですが。)

 
こういう人事システムを採っていると、当選回数の多い議員ほど、
発言力や影響力が増すことに、とうぜんながらなっていきます。
当選回数の少ない新人議員は、たいしてものを言えなくなるので、
党内の意志決定は「上意下達」となり、会議も不活発なものとなっていきます。

マスコミ報道を見ると、自民党議員を紹介するとき、
当選した回数を合わせて書くことが、ときどきあります。
これは国会議員のキャリアの長さを、単に言っているだけでなく、
自民党内での影響力の強さも、しめしているということです。

じつは、自民党政権のもとでは、民法改正が実現しないのは、
当選回数主義のせいもあるのでは?と、わたしは思ったりもしています。
当選が10数回という多選議員は、たいてい長老男性議員です。
そういうおじいちゃんが、「オレの眼の黒いうちは、
夫婦別姓は認めない」なんて言ったら、ほかの議員たちは、
みんなだまりこんでしまいそうだからです。

ちなみに、民主党は当選回数主義は、はじめから採っていないです。
当選回数が1-2回の議員が大半をしめることもありますが、
もともと「自民党的なもの」の反省の上に成り立っているからです。
「発言力」に関しては、もうずいぶんむかしですが、
当選したばかりの1回生議員を、首相相手の代表質問にぶつけて、
マスコミの度胆を抜いたことも、あったりします。


当選回数主義のもとでは、議員になる前のキャリアは、
なんであろうと、ほとんどまったく顧みられません。
たとえば、野中広務が、総理大臣になれなかったのは、
初当選が57歳だからというのもあります。
若いときに初当選した議員は、すでにいくつもの幹部ポストや閣僚を
経験している歳なので、彼らにはとても追いつけないということです。

したがって、30歳前後のうちに初当選するのが、
自民党で出世するには有利になるのですが、それには親の支持基盤を
引き継ぐことができる「世襲議員」が多い、ということです。
政略結婚の繰り返しでできた、閨閥の坊ちゃん嬢ちゃんが、
最近になって増えてきたので、拍車がかかっているようです。


当選回数主義は、自民党の万年与党が続くことが
前提になっているからできるシステムであり、
政権交代がときどき起きる状態が定着すれば、
おのずと解消するというのが、かみぽこちゃんさまの主張です。

選挙で負けが込むと、有権者にアピールしようとして、
人事の刷新を行なうので、それにともなって「世代交代」が起きることを、
(日本でも、民主党が郵政選挙で大敗したあと、前原体制ができましたが)
イギリスの2大政党が、両方ともそうしてきた例でしめされています。

かみぽこちゃんさまは、じつは、法律で世襲制限をすることには
反対していて、これには異論のあるかたも、いるかもしれないです。
それでも、世襲議員が増えるもうひとつの原因である、
「政治家城下町」も、いっしょに解消に向かいそうですし、
政権交代がときどき起きる状態が定着することで、
世襲率の高さが解消する傾向にむかうのは、納得できそうです。

posted by たんぽぽ at 17:54 | Comment(4) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
興味深い論文の紹介ありがとうございました。いろいろと考えさせられる記事です。

>かみぽこちゃんさまは、じつは、法律で世襲制限をすることには反対していて、これには異論のあるかたも、いるかもしれないです。

はい、ここにいます。笑

法律で世襲制限をしなくてもいいのがもちろん理想です。しかし、日本の事情を考えるとどうでしょう。引き続き考えてみます。

これからも、私が興味を持ちそうだと思ったものはどんどん紹介してください。
Posted by 村野瀬玲奈 at 2009年08月15日 23:29
村野瀬玲奈さま、こんにちは。
コメント、ありがとうございます。

>興味深い論文の紹介ありがとうございました。いろいろと考えさせられる記事です。

興味を持ってくださって、こちらこそありがとうございます。
(じつは、わたし以外に興味を持つかたがいなくて、
完全に自己満足路線になるだろうと、開き直るつもりでした。)

「政治家城下町」「閨閥」「当選回数主義」が原因で、
中でも「当選回数主義」が大きく効いている、というところで、
現代日本で世襲政治家が増えている理由を、
的確に突いているのではないかと思います。

>はい、ここにいます。笑

「政権交代が恒常化すれば、ひとりでに世襲は減るのだから、
法律なんていらないだろう」というのが、かみぽこちゃんさまの考えなんですよね。
たぶん、そうなるんでしょうけれど、中長期的なことなので、
不満が残るかたもいるだろうと思います。


>これからも、私が興味を持ちそうだと思ったものはどんどん紹介してください。

また、なにかありましたら、紹介したいと思います。
よろしくお願いしますね。
Posted by たんぽぽ at 2009年08月16日 22:26
世襲撲滅のためには、被選挙権の年齢を大幅に引き上げ、40〜45歳くらいにまで、すれば若いうちから議員でいるという期間がなくなるので少しは効果があるかもしれません。
実現性があるとは思えませんが。
Posted by pulin at 2009年08月18日 12:25
若い人たちに、政治に関心を持ってもらおう、
選挙に行ってもらおうと、必死になっている状況ですからね。
彼らを選挙から遠ざけることは、受け入れられないでしょう。

そもそも、若年層の被選挙権の制限というのが、
法のもとの平等に反しているように思います。
Posted by たんぽぽ at 2009年08月18日 23:17
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