13日にご紹介の、かみぽこちゃんさまの論文によると、
国会議員の世襲をもたらす最大の原因は、「当選回数主義」とあります。
「当選回数主義」は、文字どおり、当選した回数に応じて、
大臣や党の役員などのポストが割り振られる「年功序列」の一種です。
自民党が内部のルールとして導入しているものです。
衆参合わせて300人ほどいる国会議員全員に、
納得のいく人事を行なうのはむずかしいので、
だれでもよくわかる基準として、当選回数を持ってきたのでしょう。
(そうしないと全員が納得しない、というのは、
それだけ組織集団として未熟、ということでもあるのですが。)
こういう人事システムを採っていると、当選回数の多い議員ほど、
発言力や影響力が増すことに、とうぜんながらなっていきます。
当選回数の少ない新人議員は、たいしてものを言えなくなるので、
党内の意志決定は「上意下達」となり、会議も不活発なものとなっていきます。
マスコミ報道を見ると、自民党議員を紹介するとき、
当選した回数を合わせて書くことが、ときどきあります。
これは国会議員のキャリアの長さを、単に言っているだけでなく、
自民党内での影響力の強さも、しめしているということです。
じつは、自民党政権のもとでは、民法改正が実現しないのは、
当選回数主義のせいもあるのでは?と、わたしは思ったりもしています。
当選が10数回という多選議員は、たいてい長老男性議員です。
そういうおじいちゃんが、「オレの眼の黒いうちは、
夫婦別姓は認めない」なんて言ったら、ほかの議員たちは、
みんなだまりこんでしまいそうだからです。
ちなみに、民主党は当選回数主義は、はじめから採っていないです。
当選回数が1-2回の議員が大半をしめることもありますが、
もともと「自民党的なもの」の反省の上に成り立っているからです。
「発言力」に関しては、もうずいぶんむかしですが、
当選したばかりの1回生議員を、首相相手の代表質問にぶつけて、
マスコミの度胆を抜いたことも、あったりします。
当選回数主義のもとでは、議員になる前のキャリアは、
なんであろうと、ほとんどまったく顧みられません。
たとえば、野中広務が、総理大臣になれなかったのは、
初当選が57歳だからというのもあります。
若いときに初当選した議員は、すでにいくつもの幹部ポストや閣僚を
経験している歳なので、彼らにはとても追いつけないということです。
したがって、30歳前後のうちに初当選するのが、
自民党で出世するには有利になるのですが、それには親の支持基盤を
引き継ぐことができる「世襲議員」が多い、ということです。
政略結婚の繰り返しでできた、閨閥の坊ちゃん嬢ちゃんが、
最近になって増えてきたので、拍車がかかっているようです。
当選回数主義は、自民党の万年与党が続くことが
前提になっているからできるシステムであり、
政権交代がときどき起きる状態が定着すれば、
おのずと解消するというのが、かみぽこちゃんさまの主張です。
選挙で負けが込むと、有権者にアピールしようとして、
人事の刷新を行なうので、それにともなって「世代交代」が起きることを、
(日本でも、民主党が郵政選挙で大敗したあと、前原体制ができましたが)
イギリスの2大政党が、両方ともそうしてきた例でしめされています。
かみぽこちゃんさまは、じつは、法律で世襲制限をすることには
反対していて、これには異論のあるかたも、いるかもしれないです。
それでも、世襲議員が増えるもうひとつの原因である、
「政治家城下町」も、いっしょに解消に向かいそうですし、
政権交代がときどき起きる状態が定着することで、
世襲率の高さが解消する傾向にむかうのは、納得できそうです。
>かみぽこちゃんさまは、じつは、法律で世襲制限をすることには反対していて、これには異論のあるかたも、いるかもしれないです。
はい、ここにいます。笑
法律で世襲制限をしなくてもいいのがもちろん理想です。しかし、日本の事情を考えるとどうでしょう。引き続き考えてみます。
これからも、私が興味を持ちそうだと思ったものはどんどん紹介してください。
コメント、ありがとうございます。
>興味深い論文の紹介ありがとうございました。いろいろと考えさせられる記事です。
興味を持ってくださって、こちらこそありがとうございます。
(じつは、わたし以外に興味を持つかたがいなくて、
完全に自己満足路線になるだろうと、開き直るつもりでした。)
「政治家城下町」「閨閥」「当選回数主義」が原因で、
中でも「当選回数主義」が大きく効いている、というところで、
現代日本で世襲政治家が増えている理由を、
的確に突いているのではないかと思います。
>はい、ここにいます。笑
「政権交代が恒常化すれば、ひとりでに世襲は減るのだから、
法律なんていらないだろう」というのが、かみぽこちゃんさまの考えなんですよね。
たぶん、そうなるんでしょうけれど、中長期的なことなので、
不満が残るかたもいるだろうと思います。
>これからも、私が興味を持ちそうだと思ったものはどんどん紹介してください。
また、なにかありましたら、紹介したいと思います。
よろしくお願いしますね。
実現性があるとは思えませんが。
選挙に行ってもらおうと、必死になっている状況ですからね。
彼らを選挙から遠ざけることは、受け入れられないでしょう。
そもそも、若年層の被選挙権の制限というのが、
法のもとの平等に反しているように思います。