2009年08月18日

toujyouka016.jpg 政治家城下町

8月13日にご紹介の、かみぽこちゃんさま論文によると
国会議員の世襲を増やす原因は、おもに「政治家城下町」
「閨閥」「当選回数主義」となっています。

このうち「政治家城下町」というのは、選挙区選出の代議士を中心に、
その支持基盤である、企業や個人後援会などをふくむ、
その町のコミュニティのことです。
(「政治家城下町」というのは、用語として定着していなくて、
便宜的にこう呼んでいるものだろうと思います。)

この支持基盤の「政治家城下町」を引き継がせるのは、
自分の息子や娘がいちばんやりやすい、ということです。
政策秘書などに引き継がせることもあるので、
「城下町」だけでは、世襲を増やす原因としてふじゅうぶんですが。

「政治家城下町」は、自民党の(というより日本の)選挙事情に
きわめて特徴的なので、これについてお話したいと思います。

 
自民党議員が当選回数を増やして、党内で影響力を持ってくると、
地元固有の課題のための、予算や補助金を取れるようになります。
こうしたお金が来ると、地元の産業界はそれを求めて、
その代議士のところに集まってきます。
さらにお金を得るために、くりかえし当選してほしいですから、
支持基盤となって献金や選挙活動で、その議員を支えるようにもなります。

こうして地元の産業がうるおってくると、その町のほかの企業も、
議員の支持基盤となった企業を、お得意さまにするようになります。
お金がもらえて繁盛しているので、そちらにたくさん仕事があるからです。
小さな町だと、ほとんど全部の企業や、工場、商店が、
支持基盤の企業に、経営を依存しているかもしれないです。

彼らは、選挙になれば、こぞって地元の自民党候補者に
投票することは、想像にがたくないと思います。
自民党候補者が当選して、お金を地元へ持ってくることで、
町の経済がうるおって、自分たちのお仕事も増えるからです。


各議員は個人の支持者を増やして、支持基盤を広げることもします。
ようは選挙区を歩き回って、有権者に挨拶してまわる「票堅め」です。
(これは自民党は、党から出せるお金があまりなく、
議員が個人で自前の後援会を作って、献金を集める必要があるから、
ということもあります。)

彼ら有権者たちは、政策のお話には興味がなく、
「代議士と知り合いになることで箔をつける」とか、
「代議士と直接知り合いになれば、なにかいいことがあるかも」という
漠然とした期待感で支持する人たちだったりします。

彼らが政治に期待することは、くだんの自民党議員さまが、
おらが町にお金を持ってくることで、それは当選すれば保証されますから、
ほかにどんな政策に熱心かなんて、どうでもいいというわけです。


かくして「政治家城下町」ができあがると、その自民党議員は、
かなりの固定票を確保していることは、想像にがたくないでしょう。
すこしばかり逆風が吹いたくらいでは、自民党はなかなか議席を
減らさないゆえんは、ここにあるということです。
(落選すると、つぎの選挙で、議席を取り返そうとするときの執念は、
すさまじいものとなります。)

「政治家城下町」の存在は、自民党が「万年与党」であることが、
前提となっていることも、察しがつくと思います。
政権交代によって下野すると、その時点で予算や補助金が
取れなくなりますから、その議員の支持基盤となっても、
恒常的にお金が入らなくなるからです。

かみぽこちゃんさまの論文を見ると、政権交代がときどき起きるので、
「城下町」が存在しない、イギリスの例がしめされています。
実際、イギリスでは、地元への利益誘導は関心が持たれず、
党が作った公約を中心に、政策論争が全面に出されることになります。

候補者は公募で多く選ばれ、地元にくわしい必要がないので、
日本で言う「落下傘候補」も多くなっています。
そしてなにより、「城下町」を継承させる必要がないので、
世襲政治家も出て来ないことになります。


8月15日エントリの「当選回数主義」もそうですが、
こうやって見てくると、政権交代がときどき起きる状態が
定着するだけで、さまざまな政治腐敗が、
ひとりでに解消ないし緩和にむかうことが、おわかりいただけると思います。
欧米の民主主義国の多くで、政権交代の起きうる
議会制度を採っているゆえんは、まさにここにあります。

「政権交代で未来がバラ色になる」というのは、
まんざら大げさではないのであり、政権交代の実現のために
全身全霊を注ぐのは、それだけでじゅうぶん意義があることになります。

posted by たんぽぽ at 22:19 | Comment(0) | TrackBack(1) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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Tracked: 2009-08-18 23:29