民法改正に関係するところを、見ていきたいと思います。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cedaw/docs/co/CEDAW.C.JPN.CO.6.pdf
17.と18.の、「差別的法規(Discriminatory legislation)」の項目で、
対象になるのは、もちろん、民法改正の4つの内容、
選択別姓、結婚可能な年齢、再婚禁止期間、婚外子差別です。
前回審査(2003年)のときより前も後も、法改正の要求を
握りつぶしてばかりで、6年間なーんにも進展がないのですから、
おなじお説教を受けるだけなのは、想像にがたくないでしょう。
あまりになにもしていないからでしょうが、「ただちに(immediate)」
「催促する(urges)」と、2回つつかれていますよ。
もとの英文は、オリジナルのPDFの文書を見ていただくとして、
わたしのつたない訳だけ、ここに書いておきます。
差別的法規(Discriminatory legislation)
17. 前回の総括所見で勧告したにもかかわらず、
民法の差別規定が改まらないことを、委員会は懸念します。
改まらない規定とは、結婚できる最低年齢に男女差があること、
女子のみに再婚禁止期間があること、
そして、選択的夫婦別姓制度が導入されないことです。
さらに、民法と戸籍法に、婚外子が相続差別される規定が、
依然としてあることを懸念します。
また、貴締結国が、世論調査で支持が少ないことを理由に、
これらの差別規定を改めないことに対して、
委員会は懸念をしめすことを、特筆しておきます。
18. 貴締結国が、民法改正の実現のために、
ただちに行動することを、委員会は催促します。
つまり、結婚できる最低年齢を、男女とも18歳にすること、
女子のみにある再婚禁止期間を廃止すること、
そして、選択的夫婦別姓制度を導入することです。
さらに、婚外子とその母親に対する、民法と戸籍法で定められた、
差別的規定を廃止するよう、委員会は催促します。
また、世論調査の結果ばかりを理由にしてはならず、
法体系の一部として、条約の条項と整合が取れるよう、
国内法を整備しなければならないこと、したがって民法改正は、
条約に批准した国が義務としてなすべきである、ということを、
委員会は指摘しておきます。
特筆することは、「世論調査」が触れられていることだと思います。
日本政府は、世論調査を言い訳に、民法改正の先送りを続けてきたのでした。
(2001年の世論調査で、賛成が反対を上回ったときも、
世論調査を持ち出さなくなっただけで、相変わらず民法改正に
反対していたので、本当に「言い訳」にすぎないのですが。)
世論調査ばっかり口実にする(solely dependent)のではなく、
批准した国際条約と整合が取れるよう、国内法を改めるのが
締結国の義務だと、今回はっきりと言われてしまいました。
「法体系の一部(national legal system)」だなんて、
なんだか法学の教科書の入門みたいなお話ですね。
批准した国際条約は国内法より上位ですから、とうぜんでしょう。
なんのために条約があるのか、わかっていないと思われも無理ないです。
世論がじゃまをして民法改正ができないのなら、
世論の理解を得るよう努力するのが、日本政府のなすべきことです。
ところが実際には、世論で賛成を増やす努力など、
なにもしていないことは、ご存知の通りです。
ついでですが、世論調査については、国際条約との整合のほかに、
「反対が多いからかえって民法改正が必要」という考えかたもあります。
民法改正に反対するのは、差別を支持していることになります。
世論の多数が差別しているという、深刻な状況ですから、
積極的に差別を禁止するために、法律を整備するということです。
政府とダシにされている国民:世論もそうですが、
司法の問題意識も気になりますね。
こんどの国民審査で対象とされる最高裁判所判事たちは
国際条約と民法の関係を、どう思っているのでしょうね。
ご同意くださって、ありがとうございます。
>http://d.hatena.ne.jp/rengejibu/20090825
ご紹介ありがとうございます。
「総括所見」のつぎの項目、19と20で、
裁判手続きで条約が使われないのも、勧告されていましたね。