「条約の法制化」で、「選択議定書」への批准も勧告されています。
もとの英文は、オリジナルのPDFの文書を見ていただくとして、
わたしのつたない訳だけ、ここに書いておきます。
条約の法制化(Legal status and visibility of the Convention)
19. 貴締結国では、あらゆる形態の女子差別を撤廃する
基礎である本条約が、拘束力のある法的手段として、
中心的かつ重要な役割を演じていないことを、委員会は懸念します。
これについては、締結した条約はかならず尊守するという、
貴締結国の憲法98条2項の規定があるにもかかわらず、
本条約の条項を実行せず、また裁判手続きでも
直接適用されないことを、委員会は懸念します。
20. 女子差別撤廃の分野において、本条約がもっとも効力があり、
広範かつ法的に拘束力のある、国際的な手段であることを、
貴締結国は認識するよう、委員会は催促します。
本条約が、国内の法体系の中で、完全に適用されうること、
必要なところでは、制裁措置の導入を含めて、
条約の規定が国内の立法体系に、完全に組み込まれることを
保証する措置をただちに取るよう、委員会は貴締結国に催促します。
さらに、本条約と当委員会のすべての勧告について、
その精神、目的、および各条項の内容について、
裁判官、検察官、弁護士のあいだで、じゅうぶん理解され、
実際の裁判過程でも用いられるべく、よりいっそう意識を高める
努力をするよう、委員会は貴締結国に催促します。
また、本条約の内容、およびジェンダー平等についての、
公務員の意識を高め、必要な適性を備えるための
綱領を作ることを、委員会は推奨します。
それからまた、貴締結国は、選択議定書への批准を検討することを、
委員会はくりかえし推奨します。
選択議定書が存在することで、司法の場において、
女子差別に対する理解の助けとなり、また本条約を直接適用させる働きが、
より補強されると確信するからです。
条約と整合が取れるよう、国内法を整備するのが締結国の義務であり、
そうでなければ、なんのために条約に批准したのかわからないという、
前にもお話したことが、ここでくわしく言われています。
(国内法が追い付かないなら、条約に批准しないことです。
それなりの国と、国際社会から見られることになりますが。)
日本国憲法の98条第2項は、以下の内容ですよ。
これが引き合いに出されるのは、ぜんぜん条約を守っていない日本は、
自国の憲法も守っていないではないか、というわけです。
http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM#s10
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、
これを誠実に遵守することを必要とする。
女子差別撤廃条約は、締結国の国内法に改正を求めることで、
効力を発揮するのですが、裁判の判決に使われることで、
直接効果を示すこともあります。
ようするに、国内の法律や判例とおなじように、
条約の条項が、裁判の根拠となりうるのですが、
日本では、このように使われることが、めったにないのでした。
それで、あらゆる司法関係者に対して、意識改革を行ない、
理解を浸透させろと、お説教をくらうことにもなっています。
問題の「選択議定書(Optional Protocol)」ですが、
早く批准することが、もちろん勧告されています。
しかも、くりかえし(reiterates)推奨するとまで、言われていますよ。
女子差別撤廃委員会が、ちょっといらだった感じさえします。
いわゆる「先進国」とされる、OECD加盟国の中で、
選択議定書に批准していないのは、女子差別撤廃条約自体に批准していない
アメリカ合衆国のほかには、日本だけですから、
「遅れている」というそしりは免れないでしょう。
前にもお話しましたが、「選択議定書」は、国内の司法手続きが
すべて使われてなお、権利を侵害された女性が、
じゅうぶん補償されないとき、個人で国際機関を利用できるものです。
「選択議定書」があれば、国際機関に「通報」されないよう、
国内の司法手続きに留まるよう、女性の権利に配慮した判断をくだそうとして、
おのずと条約が守られることが期待される、ということだと思います。