2009年10月04日

toujyouka016.jpg 戸籍から個籍へ

すこし前のニュースで、しかもかなり小さい記事ですが、
戸籍を廃止して、個人単位の身分登録を導入する動きがあります。
民主党が、戸籍見直しの議連を、立ち上げることになりました。
10月からなので、もう立ち上がったのかもしれないです。
(記事を教えてくださったかた、まことにありがとうございます。)

「戸籍制度見直しへ議連 民主有志」

「戸籍制度廃止への動き」

日経の記事は短いので、全文を書き写しておきます。
戸籍制度の廃止をめざす議員連盟が、
民主党の有志議員約30人により10月に発足することがわかった。
名称は「戸籍法を考える議員連盟(仮称)」で、
呼びかけ人は川上義博氏、松本龍氏ら。
個人を単位とした登録制度をつくるため、
戸籍法の廃止も含む見直しを提案している。(20日 10:17)

 
「戸籍」は家族ごとにまとめて身分登録しています。
このような家族単位の登録制度を採用しているのは、
世界広しと言えども、日本くらいですよ。
諸外国ではどこも、個人単位の身分登録制度を採っています。
よって今度の動きは、日本も諸外国並みになろうというものです。

台湾では、日本統治時代の名残りで、戸籍が使われていると
ものの本に書かれていますが、じつはこれは戦前世代だけで、
戦後からは個人単位の身分登録を使っています。
日本でも、住基ネットのような、わりあい最近作られたものは、
やはり個人単位の身分登録です。

家族単位で身分登録を行なうことが便利なのは、
家族のかたちが国民全体で、ほとんどおなじときです。
実際には、さまざまなライフスタイルの人たちがいて、
複雑にして多様ですから、特定の型の家族に合わせて作ると
不便をきたすことになり、個人単位の身分登録になるのでしょう。


かなり奇異的な身分登録制度だというのに、
戸籍がいっこうに廃止されず、個人単位の登録に改まらないのは、
どういうわけか日本には、この戸籍制度を「美風」とか、
わけのわからない美意識で、礼讃する人たちがいるからのようです。

戸籍の書式が、現在の2世帯になったのは、太平洋戦争後ですが、
高度経済成長期に普及した「標準家族」向けになっています。
この標準家族を「理想の家族」と捕らえる人たちがいるようで、
そうした彼らは、自分の「理想」を幻視できるので、
現行の戸籍を「美しい」と感じるのかもしれないです。


ところで、このような戸籍の存在を理由に
民法改正、選択別姓の導入に反対する人たちがいるのでした。
現行の戸籍では、同じ苗字の人しか入らないので、
夫婦別姓の家族は登録できないのが理由だそうです。
実際には、戸籍の書式が変わることで、
自分たちの幻視している「美風」が、壊れるからだろうと思います。

家族単位の身分登録でも、ふたつの苗字を記載できるようにして、
夫婦別姓に対応させることはできるし、その書式も考えられています。
孫引きで恐縮ですが、「全国連合戸籍事務協議会」が、
戸籍の電算化をすすめながら、別姓の家族に対応するよう、
書式をすこしづつ変えてきた過程を、つぎにまとめてあります。

http://d.hatena.ne.jp/oritako/20090929/1254239996
『戸籍』(全国連合戸籍事務協議会) Vol.770 (平成17年3月号)

「戸籍事務のIT化」(金井智洋) p23-
* 平成元年 そのまま移す
* 平成2年 項目化
* 平成4〜5年 「母の氏」を省略しない。将来夫婦別姓が実現したことを見越して
* 平成8年頃 夫婦別姓の実現機運が盛り上がった


家族単位の戸籍でも、夫婦別姓が導入できることは、
いちおう納得できると思います。
それでも反対論者たちが、「戸籍の破壊だから別姓反対!」と
執拗に繰り返せば、「そんな言いかたをするなら、
いっそのこと戸籍からなくせばいい」と考えたくなるのも、
ごもっともなお話だと思います。

単なる事務レベルのみならず、戸籍は家族に関する、
さまざまな固定観念の元凶にもなっているので、
その意味でも、個人単位の身分登録に改めたほうがよいでしょう。
個人籍の書式も、とうぜん試案が考えられていて、
『夫婦別姓への招待』の220ページには、こんな例が載せられています。
「個人別登録私案」

個人別登録私案


わたしのサイトの関連コンテンツ:
「戸籍を守る反対派」

参考資料:
「夫婦の氏」

posted by たんぽぽ at 23:42 | Comment(12) | TrackBack(1) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
選択的別姓より法改正につながる議論に持ち込むのは難易度高いような気がしますね。個人的に思うのですが、思い入れもないようなとこが記載されてるような”本籍”っていうのもなんのメリットあるのか意味わかんないです。
Posted by SIVA at 2009年10月05日 01:45
こんにちは。
戸籍について 私も以前は大切な日本のものと思ってました。
しかし、日常の不公平をたどっていくと 戸籍に突き当たり
戸籍について調べました。

 佐藤文明氏の戸籍の本を読んで
男女差別、家制度のこと、ここに自分の疑問の解決が集約されてました。
本籍の事もここに書いてありますが 必要ないですね。

 戸籍がある限り自由になれない。
日本人は まだ 頭を明治のやり方を美徳として洗脳されていると思う。

 それにしても 反対派は 戸籍をわかってないと思います。

 政権交代して 今まで良しとしてきたものを
本当に正しいのかと 頭を真っ白にして 転換すべきだと思います。

 日本人は 戸籍に寄りかかり 自立していない。
早く 解放されることを望みます。
Posted by ゆうゆう at 2009年10月05日 08:36
SIVAさま、こんにちは。
コメント、どうもありがとうございます。

>難易度高いような気がしますね。

あら、そうなの...?
でも、この手の議論は、よく見かけるんだけどね...
反対派が「戸籍があるから別姓反対!」って言って、
賛成派が「じゃあ戸籍いらない!」って切り返すんだけど。

ウェブで検索して、こういう議論を偶然見つける人もいそうなので、
家族単位の身分登録でも、夫婦別姓は導入できることを押さえつつ、
個人単位の身分登録に切り替えたほうがのぞましいという、
わたしの見解を書いてみたのでした。


>”本籍”

聞いたところによると、同姓同名を区別するためらしいです。

日本国内で住所があれば、どこにでも本籍にできるので、
東京ディスニ−ランドとか、出身大学の住所にする人がいるんだけど、
そういう人にとっては、「思い入れ」があるかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月06日 00:08
ゆうゆうさま、いらっしゃいませ。
コメント、どうもありがとうございます。
(お越しくださるの、はじめてだったかな...?)

佐藤文明氏の本はこれですね。
(「ぐらいは読みましょう」って書いてあるけど、
わたし、じつは、読んでない。(苦笑))
http://hayao.at.webry.info/200909/article_10.html

いろいろ調べてみたけれど、佐藤文明氏は、
婚外子差別に対する関心から、戸籍に疑問を持ったみたいですね。


>戸籍がある限り自由になれない。

戸籍に関する硬直思考で、民法改正に関係あることと言えば、
「戸籍に書かれた名前が絶対正しい」というのがありますね。
それで、旧姓を通称として使うのに、諸方面から反対にあったり、
国家資格のように、そもそも通称が認めれられず、
やむをえず事実婚、なんてかたもいらしたりします。

身分登録制度を家族単位にすると、作った人の家族観が
どうしても反映されるのかもしれないです。
家族のありかたに対する偏見を入れないためにも、
個人単位の身分登録にしたほうがいいのでしょう。


>政権交代して 今まで良しとしてきたものを

さいわいにして、家族やジェンダーについては、
新政権はかなりいろいろとやってくれそうなので、
こうした固定観念解消に、健闘してくれることを期待します。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月06日 00:11
 別姓を待つ身のため息からリンクして参りました^^
よろしくお願いします^^
佐藤文明氏のことですが
「戸籍がつくる差別」という本で 図書館で2度借りました。
佐藤氏は 役所の戸籍係をしてて 戸籍に疑問を持ち
戸籍について 調べきったというこの本です。
 日本の根本は戸籍なんですよね。
部落差別も男尊女卑も、戦争も。

 夫婦別姓反対派、戸籍反対派の方は
固定観念に頭を洗脳されていると思うんですよ。
 ぜひ この本を一読してほしい。

 それでも戸籍反対なら 差別がお好きな方だと思います。
また、別姓のことは 家族についての児童書にも書いてあって
日本の伝統文化でもないし 女性が虐げられてきたという歴史も正直に書いてあります。
 正しい歴史認識をした上で 反対派の反論をお願いしたいです。

 家族の形は 時代と共に変わるので
これからは 戸籍も姓も超えて 皆が家族になって
助け合っていく社会だと思うのですけどね。。
 
Posted by ゆうゆう at 2009年10月06日 14:07
>>”本籍”
>聞いたところによると、同姓同名を区別するためらしいです。

うーん、それホントかなあ?余り役に立つと思えないが・・・。ン十年前まで俺の本籍があった親父の郷里の部落(二、三度しか行ったことがなく当然思い入れなんかない)なんざ、大字丸ごと殆ど同じ苗字だぜ。当然、同姓同名も発生しやすい。それで、どうして個人の区別をつけているかというと、商売をしているわけでもないのに家毎に『屋号』というのがあって『中津屋の留吉さん』とか『下田屋の権作さん』と呼んでいる訳だ。ま、俺のことは『高麗屋の染五郎さん』とでもしておいてもらおう
Posted by NORTON3rd at 2009年10月06日 15:13
追加。
<本籍。。
本籍についてですが、、
 佐藤文明氏「戸籍が作る差別」には
;現実とは何の縁もなくなった家族、親族の根拠地としての本籍。
 現実の人間関係を無視して 限りなく結ばれ、たぐりだされる一族郎党。
 一人の人生は 彼個人のものではない。
 一族に影響する。
 この見えざる強制によって 人々は差別をなくすよりも被差別者となることを恐れ、差別する側に立とうとする。
 そして 被差別者は この制度が続く限り さらし者にされ続ける。

 二宮周平氏の「戸籍と人権」では、
;本籍はいつでも 自由に変更することができる。
 この転籍は 戸籍事項欄に記載され 転籍する前の戸籍をたどることが
 できる。
  →つまり たどれば 自分の身分がわかるようになっていて
    差別される側の人間かどうかわかる、、ということかと解釈しまし    た。

  日本人の排他的、少数や異質を排除する性質は
  ここからきているなと思いました。
   (自分の中にもこの嫌な自分があるんですけどね)
  戸籍が本当に必要か??
  日本人一人一人が 歴史を学ぶ時期ですね。

  
Posted by ゆうゆう at 2009年10月06日 23:14
ゆうゆうさま
たくさんコメントをくださって、ありがとうございます。

>別姓を待つ身のため息からリンクして参りました^^

さきほど見てまいりました。
わたしが送ったトラックバックが、たくさんありましたからね。
(どこかでお目にかかったかただと思ったのですが、
わたしのところではなかったですね。)

あちらで、千葉景子さんの記者会見が、エントリになったとき、
リンクをたどって、わたしのところへお越しのかたも、
結構いらっしゃりましたよ。

>よろしくお願いします^^

こちらこそ、よろしくお願いいたします。


>「戸籍がつくる差別」という本で

こちらの本かな?
前のコメントはたいへん失礼しました。
(この機会に、戸籍の本を、わたしもなにか読んでみるかな?)
http://www.bk1.jp/product/01193629

お役所のかたで、ふだん身分登録を扱っていると、
「戸籍は合理的なシステム」と思いがちという印象が、
わたしにはあるんだけど、そうではなく、
疑問を感じるかたも、結構いらっしゃるみたいですね。

縁もゆかりもない場所へ本籍を移しても、
戸籍はどんどん過去へたどれるようになっているので、
結局出自がわかってしまうんですよね...
いまは、法曹関係者が裁判のときにかぎりとか、
特別な場合しか、他人が戸籍を閲覧することはできないけれど、
これは同和地区出身のかたが、運動を起こしたからですし。
(なんて、こんなのは、わたしよりよくご存知かな。)


>差別がお好きな方だと思います。

「戸籍は美風だ」、なんて言っている人は、
残念ながら、差別がお好きなかたのような気がします。
だからこそ、戸籍の書式を変えたり、廃止することに
ひたすら反対をつづけるのだろうと思います。
(戸籍がもたらす「理想の家族」を幻視できる人は、
それだけ既得権益者なのでしょうし...)
Posted by たんぽぽ at 2009年10月07日 01:38
NORTON3rdさま、おひさしぶりです。
コメントありがとうございます。

>うーん、それホントかなあ?余り役に立つと思えないが・・・。

わたしも、役に立っているのかどうか、疑問ですよ。

東京ディズニーランドとか、皇居とか
「人気のある場所」がありますし、そういうところに本籍が殺到したら、
同姓同名の人もたくさん出てくるように思います。


>大字丸ごと殆ど同じ苗字だぜ。

地方へ行くと、そういうところも結構ありますね。

それはともかく、本籍の住所は番地も入るから、
家1件1件は、それなりに区別できるような気もします。
それとも、番地もないような田舎なのかな...



ああ、それから、「はてなスター」をいっぱいくださって、
どうもありがとうです。>高麗屋の染五郎さま
Posted by たんぽぽ at 2009年10月07日 01:42
たんぽぽさま
 コメント有難うございます。
↑にリンクして頂いたこの本です。
佐藤文明氏の本は
 ぜひ この機会に 国民に読んでほしい。
反対派の意見は 感情論で観念論で、
議論になりません。
 学びもしないのに 固定観念で反論されても
意味がないんですよね。
 今までの学校教育は役に立たないのです。
 戸籍は 国民の為に作られたのではなく、
国家権力が 国民を管理し支配しつくられたもの。
国民は国家の奴隷で その国民は奴隷であることに気付かず
それを容認していること、
差別の上に自分が存在すると、
その汚さに気付いてほしい。
 では またお邪魔します^^
Posted by ゆうゆう at 2009年10月07日 08:12
ゆうゆうさま、またまたコメントありがとうです。

とくにジェンダー関係はそうなのですが、反対派というのは、
事実や根拠、ロジックには、ほとんど重きをおかないみたいです。
それよりも彼らは、いかにして大勢のあたまの中に入って行きやすい
「でまかせ」を流すかに腐心するのが多いです。

このような反対派たちに対処するには、やはり事実や根拠、
ロジックを大切にして、ていねいに反証していくことだと思います。
ささやかながら、わたしのサイトやウェブログは、
そうしたものでありたいと思っています。

>では またお邪魔します^^

よろしければ、またお越しくださいね。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月08日 00:01
こちらのエントリのコメント欄で、
「とても良いコメントが集まっていますね。陰ながら賛同しています」と
評価をいただいるので、お伝えしておきます。
http://papillon99.exblog.jp/12030969

コメントをくださった、SIVAさま、ゆうゆうさま、
NORTON3rdさま(高麗屋の染五郎さま?)、ありがとうございます。
わたしからも、お礼をもうしあげるしだいです。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月08日 00:07
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