2009年10月12日

toujyouka016.jpg 現実的な提案?

産経の社説を見ると、高市早苗の作った通称併記の案が、
「現実的」であるとして、選択制より「現実的」な対案だと言っています。

「夫婦別姓 家族の絆を壊しかねない」(2/2ページ)
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以前、自民党の高市早苗氏らは、婚姻前の姓を通称として
旅券などの行政文書にも使用できるようにする戸籍法の一部改正案を示した。
別姓を目指す法務省案より、はるかに現実的な提案だった。
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この高市早苗の案というのは、戸籍に婚氏と婚前の旧姓を併記して、
両方が使えるようにするのですが、具体的にどこまで
旧姓が「本名」として使えるかがはっきりしないです。

国家資格や金融取り引きなどで、旧姓の使用が制限されるとか、
しばしば婚氏の併記が求められるなら、あまり解決にならないです。
結婚しても改姓したくないのは、婚姻前の苗字だけを、
あらゆる公的な場所で、つねに使う必要があるからです。

婚姻前の苗字が、併記された婚氏と完全に同等で、
婚氏をいっさい使わないでもよいなら、そんな形骸化したものを、
戸籍にわざわざ書く理由がなくなります。
ふつうに夫婦別姓で記載すればよいでしょう。


さらに、戸籍に旧姓を併記すると、それにともなって400程度の法律を、
同時に改正する必要があると言われています。
こうした状況に、法体系的に整合が取れるよう対応するのは、
かなりむずかしいと言えるでしょう。

すなおに選択制にして、戸籍に記載する「本名」を
ひとつだけにすれば、こうした問題は起きないことです。
技術的な観点でも、高市らの通称使用の案より、
選択的夫婦別姓制度のほうが、ずっと「現実的」だと言えます。


そしてなにより、高市案がぜんぜん「現実的」でないのは、
肝心の法案が本当にあるのかわからない、ということです。
高市早苗による「構想」が示されたことはありますが、
審議できるかたちの「法案」ではないようです。
産経の社説も「提案」と書いている。)

2004年の自民党の法務部会で、「対案はぼくの心の中」などと、
不埒なことを言った、選択別姓の反対派がいたそうです。
このとき、高市早苗は落選して浪人中でしたが、
高市の通称案があるなら、それを引き継いで、
「対案」として出す人がいそうに思います。
きっと対案など、どこにもないということなのでしょう。


通称使用案の限界も、例によってさんざん議論されていることです。
選択別姓を導入しなくても、「方策はいくつも考えられる」と言うなら、
「鳩山内閣は知恵をしぼるべき」なんて、他人にやらせないで、
産経新聞みずから対案をしめしてほしいです。

あちこちの反対論者たちの主張を見ていても、
通称制法案の詳細について、検討や考察をしている人を、
寡聞にして、わたしは、見かけたことはないです。
その前に、企業や省庁で、通称使用がどのくらいできるのかとか、
反対論者がその実態を調査したこともぜんぜんないようです。

反対論者たちは、実証的な考察も、現状の調査による裏付けも、
なんにもないのに、「通称使用でじゅうぶんだ」と、
取ってつけたように、言っているだけだろうと思います。
そして、ひとりよがりに、じゅうぶんな対案を出したのだと、
納得しているにすぎないのだと思います。


参考資料:
「毎日新聞カモミール 『通称使用法定案の問題点』」
http://www.geocities.jp/bkyogikai/CamoArchive.html##20030922

わたしのサイトの関連コンテンツ:
「まぼろしの通称法案」
http://taraxacum.hp.infoseek.co.jp/teardrops/against/phantom.html

posted by たんぽぽ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(1) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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Tracked: 2009-10-12 12:19