民法改正は、選択的夫婦別姓をふくめて、大きく4つの内容があり、
そのひとつに、女性だけに課された再婚禁止期間の短縮があります。
現行は6ヶ月ですが、これを100日にしようとするものです。
「女性の「再婚禁止」短縮を検討=相続差別撤廃も−民法改正で法相」
(付記:現行法の再婚禁止期間を、まちがえていたので直しました。
コメント欄で教えてくださった、おさしみさま、ありがとうございました。
わたしのエントリを信用して、コメントしたかたがた、もうしわけないです。)
「再婚禁止期間」は、子どもの父親がだれかをはっきりさせる、
「父性の推定」のために設けられたものです。
母親は出産の事実で、確実に親がだれかわかりますが、
父親は、前の夫と現在の夫と、どちらの子かわからなくなるので、
女性にだけ、一定期間結婚させないことにするものです。
再婚禁止期間は、まったく現実に合わず、無駄なだけだと思います。
離婚の直前は、結婚生活は破綻しているでしょうから、
性交渉の可能性はほとんどなく、父性の推定が困難ではないでしょう。
それにもかかわらず、男性は離婚したつぎの日から、
べつの女性と法律婚できますが、女性は再婚禁止期間のうちは、
べつの男性と法律婚できないですから、
じゅうぶん差別的な規定であることになります。
再婚禁止期間は、適用されない場合がいくつかあります。
同一人物と再婚するとき、および、高齢で出産の可能性がないときです。
これらは「父性の推定」をする必要が起きないので、
離婚したあとでも、すぐに結婚することができます。
ところが、出産できない年齢かどうかは、個人差によります。
規定の適用からはずすかどうか、はっきり決めようとすると、
かなり立ち入ったプライバシーに関わることもありえます。
「100日に短縮する」のは、婚姻後200日以降に産まれた子を、
現在の夫の子と推定することが、民法772条で決められているからで、
6か月(180日)は長過ぎで、差し引き100日でよいということです。
200日と100日を合わせた300日は、妊娠の期間のつもりです。
民法772条に、「離婚後300日以内に産まれた子は前夫の子」と、
推定する規定があり、同じ考えだと思いますが、
これは医学が未発達な明治時代に決められたものを、
戦後の民法もそのまま引き継いでいるものです。
再婚禁止期間を短くするのは、一定の評価ができるのですが、
「300日」という発想からは、抜け出していないことになります。
現代は医学の発達で、もっと早産もありえますから、
医学的にも現実に合わないと言えるでしょう。
さらに、再婚禁止期間の規定は、結婚している男女しか、
性交渉をしないことが、前提になっています。
婚前交渉なんて、きょうびはめずらしくないでしょう。
この意味でも、非現実的な規定であると言えます。
婚姻外の妊娠の場合、父性の推定はもっぱらDNA鑑定によります。
となれば、婚姻の内外を問わず、推定が必要であれば、
DNA鑑定で一本化して、再婚禁止期間は廃止したほうが望ましい、
というのが、わたしの考えるところです。
2009年10月13日
この記事へのトラックバック
再婚禁止期間はセックス禁止。もちろん男性も。
Excerpt: 再婚禁止期間の短縮に自民党のオジサン達は反対らしい。 自分たちの党が立ち上げたプロジェクトチームが提言し決まりかけていた「現行の6ヶ月を100日に短縮する。」という特例新法案もオジサン達の反対でどう..
Weblog: デザイン夜話
Tracked: 2009-10-16 18:58
DNA鑑定も100%正確ではないという人がいますが、
現状が父親を「推定」するなので、
段違いに正確なものとなるでしょう。
それが不可能なら、男性にも再婚禁止期間を作って欲しいです。
コメントどうもありがとうございます。
>DNA鑑定も100%正確ではないという人がいますが、
>現状が父親を「推定」するなので、
>段違いに正確なものとなるでしょう。
そうそう、「推定」の確率が上がればいいのだし、
なんで100%でなければならないのかと、わたしも思いますよ。
というか、100%でないのがイカンのなら、
現行法の推定方法なんて、問題なくだめになりますからね。
ちなみに、現代の鑑定技術については、つぎのページを見ると、
どのくらい確実かがわかると思いますよ。
http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/DNA/dnatopics.html
>男性にも再婚禁止期間を作って欲しいです。
これについては、このエントリがおもしろいかも...
http://sivaprod.exblog.jp/6780084/
この300日規定というのは
>「再婚禁止期間」は、子どもの父親がだれかをはっきりさせる、
「父性の推定」のために設けられたもの
なんですよね?
だとしたら、
>男性は離婚したつぎの日から、
べつの女性と法律婚でき
てしまったら、無意味じゃないんでしょうか?
だって、それで言うのなら、再婚した相手が、別の男性の子どもを妊娠している可能性なんて、いくらでもあるんじゃないかと思うんですが(^^ゞ
作用・反作用の法則だ!
再婚カップルも同様です。
300日は、長すぎますよね。
ホント、アホな法律です。
婚姻禁止期間は第733条で6ヶ月になってるので300日は間違いだと思います。(300日は多分、民法第772条の父子推定期間かと思います。)
いつもお世話になっています。仰ること全てに同意します。
紹介していただいたSIVA様のエントリ、おもしろかったです。くすくす笑いながら読みました。
再婚禁止期間って、本当に無意味な期間だと思います。裁判離婚が成立するまで頑なに離婚を拒むDV男の多さを考えると、なんでそこまで縛られなくてはならないのだと思います。
アルバイシンの丘 様
>作用・反作用の法則<
爆笑してしまいました。
コメントありがとうございます。
それはですね、「婚外交渉とか婚前交渉とかはありえず、
結婚しているあいだしか、えっちしない」という前提のもと、
「よって女だけ結婚とセックスから遠ざけておけば、
子どもがまぎれることはない」という考えにもとづいています。
ようするに、いまではとてもありそうにない前提で、
女性にだけ性の自己決定を制限しているのでして、
「作用・反作用」にしていないのでした。
これによって、男が結婚するときは、いつでも相手の女は
べつの男性の子を妊娠していない状況が確保されると、
信じている(決めつけている)ことになります。
「婚前交渉しない」なんて、わたしなどからしたら失笑ものですし、
思いもよらなくても、ごもっともだと思うけどね。
しまあじさま、おひさしぶりです。
コメントありがとうございます。
追記をしておいたけど、再婚禁止は300日じゃなくて180日です。
わたしがまちがえていて、まことにもうしわけないです。
それでも半年ですから、相当に長いことになります。
結婚生活がとっくに破綻しているのに、
男性が離婚届けを出すことになかなか応じないので、
やむをえず事実上の夫と新しい生活をはじめた、ということが多く、
父性の推定にひっかかることしばしばなんですよね...
おさしみさま、いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。
(たぶん、はじめまして、ですね...)
ご指摘、まことにありがとうございます、おっしゃるとおりですね。
(300日は民法772条ですね、かんちがいしていました。(大恥...))
エントリは書き直して、追記を入れておきました。
>紹介していただいたSIVA様のエントリ、
>http://sivaprod.exblog.jp/6780084/
ご覧いただきありがとうございます。
(なんて、わたしが言うのも、いささか変だけど。)
自民党のおやじ議員こそ、貞操観念のなさすぎるのが、
多いんじゃないのかと思いますよ、本当に。
こういう女性関係がふしだらなおやじ議員が、
党内とか、支持者の中の「純潔」派から批判された、というお話は、
どういうわけかないんですよね。
再婚禁止期間だって、婚外の性交渉はありえないなんて、
ある意味失笑ものの前提を入れているのですから、
男性にもセックスを禁止しないと、意味がないと思いますし。
>裁判離婚が成立するまで頑なに離婚を拒む
しまあじさまのレスにも書いたけれど、
それでやむをえず、事実上の夫と新しい生活をはじめて、
父性の推定が壁になることが、よくあるんですよね...
「父性の推定」は、自分の子どもをはっきりさせたい男たちが
やっきとなって、「女性の管理」をしているように、わたしには見えます。
(「子宮の管理」なんて言うんだっけ...?)
ひゃあ,前提が違ってたんですか,それはどうも(^o^)
連中はトンネル効果というものがあることを知らないんですね。
とは言っても,パピヨンはトンネル効果のない世界に生きてきましたのですけどね。
でも他人には押し付けたりはしませんよ(^o^)
多面体さま,今回もと思ってがんばってみましたが,これが限界・・・
”爆”は無理のようです・・・・
>自民党のおやじ議員こそ、貞操観念のなさすぎるのが、
多いんじゃないのかと思いますよ、本当に。<
私もそう思います。
口角泡飛ばして女性のテイソウとやらを語ってますけど、男性のテイソウはどうなってるんだ、って話ですよね。
>こういう女性関係がふしだらなおやじ議員が、
党内とか、支持者の中の「純潔」派から批判された、というお話は、
どういうわけかないんですよね。<
ばしばし批判してほしいです。「純潔主義」が何をしたいのか、意味不明です。
アルバイシンの丘さま
トンネル効果、ぐぐってみて、予想もしないボールが壁をくぐってあらわれる、というイメージに、くすくす笑いました。
あれこれ想像してしまいます。外していたらごめんなさい。
わたしもオヤジですが同じオヤジとして劣情を正当化するオヤジの姿は見ていられません。他者には規範を守ることを強いるくせに自分には規範が適用外なのは問題外ですが、逆に自分が規範を守ることをもって他者も同じ規範を守れ、という主張も危ないものを含んでると思います。
クスクスまで行けたんですか?感激ーー! (^o^)~~~~~~
そうです,意図したとおりのイメージを受取ってもらえたんですね,なんと嬉しい(^o^)~~~~~~
それはそうと,トンネル効果のない世界で生きてきたのは心ならずもそうなったのです。これからがんばってみます・・(決意!)・・(でももう遅いかなぁ・・・)
エントリ本当に面白かったです。
>劣情を正当化するオヤジ
ぴったりの表現ですね(笑)。
なんだかあちこちにいます。
権力者が自分の思想を他人に押し付けるのって最悪だと思います。
多様性を認める社会になってほしいものです。
アルバイシンの丘さま
おお、イメージあたりましたか。外してるかなとも思ったのですが。
なんだかいろんなことを想像してしまいます。
たいへん和ませていただきました(違)。
>トンネル効果
最初は「婚前交渉」のことで、アルバイシンの丘さまのまわりは、
そういうことをしない人たちだった、くらいに思ったんだけど、
もっとアヤシイことを連想していいのかな...?(笑)
多面体さま、またコメントありがとうです。
「純潔主義」というのは、おおよそ性にかかわることを
すべてみだらでケシカランとする思想のことです。
つぎのように、学校で適切な性教育を行なうことも、
「過激だ」と言って、つぶそうとする人たちです。
http://taraxacum.seesaa.net/article/116116558.html
http://taraxacum.seesaa.net/article/116464128.html
前のコメントに書いた、「どういうわけか批判しない」
というのは、半分は皮肉のつもりでした。
自分たち男性は、やりたい放題にやりたいので、
女性にばかりテイソウを押し付ける、ということなんでしょう。
お返事がいささか遅くなりまして、すみませんです。
>わたしの拙いエントリを取り上げていただきありがとうございました。
ああ、いえいえ。
なかなかおもしろいと思ったので、紹介したんだけど、
みなさんにもたいへん好評で、わたしとしてもよかったですよ。
>わたしもオヤジですが同じオヤジとして劣情を正当化する
>オヤジの姿は見ていられません。
ご指摘の通り、「劣情を正当化するおやじ」ばかりではないのでして、
それゆえ「理解が得られる」と、希望を持つこともできるんだと思います。
むしろ、「同じ立場」だから見えてくる問題点や、
感じてくる嫌悪感というのも、あるのだろうと思います。
>逆に自分が規範を守ることをもって他者も同じ規範を守れ、
>という主張も危ないものを含んでると思います。
禁欲主義は、自分で自発的にやるぶんには結構だし、
それなりに効果を発揮するけれど、他人に強制するものではないし、
強制しても悪影響なことが多いですね。