2009年10月19日

toujyouka016.jpg 子の苗字を統一?

民法改正法案ですが、夫婦別姓を選択したとき、
残念なことに、子どもの苗字は統一する案が浮上しています。
民主党案ではなく、法制審議会案が提出されそうだ、ということです。
TBでご連絡くださったさくらさま、いつもありがとうございます。)

「夫婦別姓でも子の姓は統一=千葉法相」

「子の姓は統一・・・反対です」
「子どもの氏について再び」
「子連れ再婚の場合の子の氏」

 
なぜ子どもの苗字の統一が決められると具合が悪いのかは、
つぎのエントリに4つの理由を挙げてあります。

「子の姓は統一・・・反対です」
--------
1. 夫婦別姓を選んでも、子どもの名字は夫の名字を選ぶよう
圧力がかかる可能性がある。
2. 多様性の確保のために、子どもの名字は選べるほうがいい。
3. すでにきょうだいで名字がおなじでない事実婚夫婦の場合、
婚姻届けを出すと、改姓を迫られる子どもが出てくる。
4. 反対派の妥協のためなら無意味。
--------

このほか、10月3日エントリで触れましたが、
一人っ子どうしの結婚で、「家名の存続」をしたいとき、
子どもの苗字の統一が決められると、両方の家の苗字が残せなくて、
解決にならないという問題があるでしょう。

「「夫婦別姓導入」へ」


夫婦の双方に連れ子がいるとき、子どもも改姓しない方法ですが、
子どもの苗字を統一させる法制審議会の案であっても、
「ペーパー離再婚」でどうにか解決できそうです。

以下のエントリにあるように、A太郎さんとB花子さんが結婚、
A太郎にはA次郎、B花子にはB裕太という子どもがいたとします。

「子連れ再婚の場合の子の氏」

子連れ再婚の場合の子の氏


婚姻届け離婚届けで、戸籍を移動するのは、じつは配偶者だけです。
配偶者の子どもはいっしょに移動せず、もとの戸籍にとどまります。
つまり、A太郎さんとB花子さんが結婚して、夫婦別姓を選び、
夫婦の苗字を「A」としても、裕太の苗字はBのまま「親子別姓」になります。
(これは現行法でもそうで、B花子が改姓してA花子になっても、
裕太はもとの戸籍に残って、苗字はBのままです。)

これで子どもはどちらも改姓せず、B裕太とA次郎は、
「苗字の異なるきょうだい」に、いちおうなることができます。
しかしこのままでは、B裕太はA太郎の「妻の子」というだけで、
A太郎とB裕太のあいだに、法的な親子関係はありません。
(同様に、A次郎もB花子の「夫の子」で、法的な親子ではない。)

これは不便なことが多いので、A太郎とB裕太も
法的な親子になるために、「養子縁組み」をするのが一般的です。
ところが、養子縁組みの手続きでは、養親が別姓のとき、
養子の苗字は、「夫婦の苗字」として選んだものになります。
B裕太はA太郎の養子になると、改姓してA裕太になってしまいます。


B裕太が改姓しないためには、どうしたらよいか?ですが、
はじめに、A太郎とB花子が、婚姻届けを出したあと、
B花子とA次郎が養子縁組みをして、法的な親子関係になります。
夫婦の苗字は「A」を選んでいるので、A次郎は改姓をせず、
B花子と「親子別姓」の状態で、養子縁組みができます。

このあとA太郎とB花子は、「ペーパー離婚」をします。
養子縁組みの関係は、「養子離縁」の手続きをしないかぎり、
なにがあっても(養親、養子のどちらかが死んでも)解消されません。
よって、B花子とA次郎の法的な親子関係は、離婚後もそのままみたいです。
そしてふたたび婚姻届けを出し、今度は夫婦の苗字を「B」にします。
A太郎とB裕太が養子縁組をすれば、すべての手続きが完了です。

このときおなじ戸籍にいるのは、A太郎、B花子、B裕太で、
A次郎だけべつの戸籍(A太郎のもといた戸籍)に入っています。
それでも、A次郎とB花子の養子縁組みは解消されないですから、
A太郎とB花子は、それぞれの配偶者の連れ子と、
法的な親子関係を持つことになります。

ペーパー離再婚を使えば、法制審議会の案でも、
このように、子どもの苗字をわけることもできそうです。
ところが、実質1回の結婚なのに、婚姻届け2回に離婚届け1回と、
手続きが複雑になっていまい、好ましいとは言えないでしょう。


参考資料:
「誰も教えてくれない戸籍の話」
■婚 姻
■離 婚
■養子縁組
■養子離縁

posted by たんぽぽ at 23:32 | Comment(2) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
ご紹介ありがとうございます。

ペーパー離再婚すれば、子の別姓も可能
というのは
ペーパー離再婚すれば、夫婦別姓も可能
というのと
似たようなものだと感じます。
(前者は手続きさえ済めば常時戸籍上も別姓ですが)

こういう便宜的手段をとらなければならないのは
制度の欠陥だと言えますが
せっかく一つの欠陥を直そうとしているのに
すでに判明している別の欠陥は放置するというのは
(むしろ、あえて欠陥の残る方法を選択していると言える)
非効率というか、馬鹿げているというか・・・。
Posted by さくら at 2009年10月20日 08:27
ていねいにコメント、ありがとうございます。
こちらこそ、いつも情報を教えてくださって、ありがとうです。

>こういう便宜的手段をとらなければならないのは

具体的にどうなるのかなと思って、書いてみたのが
このエントリだけど、手続きが3回になるんですよね...
婚姻届けと離婚届けは同じ日には出せないから、
全部の手続きが完了するまでに、3日かかることになります。
お役所に「通う」感覚でやらないとだめですね。

選択別姓を望んでいるかたの中には、自分ではなく子どもを
改姓させたくないというかたも、いらっしゃると思います。
まったく不可能ではないにしても、かなり手の込んだことをしないと、
子どもの苗字が選べないですから、法制審議会案では、
あまり解決にはならないでしょうね。


>すでに判明している別の欠陥は放置するというのは

よくわからないけれど、養子の扱いに関する条文も
改正する必要があるので、いっぺんにそんなにやるのは
勘弁してくれ、ということなのかもしれないです。

来年の国会で提出するまでに、法務省と調整しているけど、
このあいだに、子どもの苗字も選べる案を、作ってほしいと思います。
あるいは、国会で審議する過程で、そうしてほしいところだけど。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月20日 23:37
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