民法改正法案ですが、夫婦別姓を選択したとき、
残念なことに、子どもの苗字は統一する案が浮上しています。
民主党案ではなく、法制審議会案が提出されそうだ、ということです。
(TBでご連絡くださったさくらさま、いつもありがとうございます。)
「夫婦別姓でも子の姓は統一=千葉法相」
「子の姓は統一・・・反対です」
「子どもの氏について再び」
「子連れ再婚の場合の子の氏」
なぜ子どもの苗字の統一が決められると具合が悪いのかは、
つぎのエントリに4つの理由を挙げてあります。
「子の姓は統一・・・反対です」
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1. 夫婦別姓を選んでも、子どもの名字は夫の名字を選ぶよう
圧力がかかる可能性がある。
2. 多様性の確保のために、子どもの名字は選べるほうがいい。
3. すでにきょうだいで名字がおなじでない事実婚夫婦の場合、
婚姻届けを出すと、改姓を迫られる子どもが出てくる。
4. 反対派の妥協のためなら無意味。
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このほか、10月3日エントリで触れましたが、
一人っ子どうしの結婚で、「家名の存続」をしたいとき、
子どもの苗字の統一が決められると、両方の家の苗字が残せなくて、
解決にならないという問題があるでしょう。
「「夫婦別姓導入」へ」
夫婦の双方に連れ子がいるとき、子どもも改姓しない方法ですが、
子どもの苗字を統一させる法制審議会の案であっても、
「ペーパー離再婚」でどうにか解決できそうです。
以下のエントリにあるように、A太郎さんとB花子さんが結婚、
A太郎にはA次郎、B花子にはB裕太という子どもがいたとします。
「子連れ再婚の場合の子の氏」
婚姻届けや離婚届けで、戸籍を移動するのは、じつは配偶者だけです。
配偶者の子どもはいっしょに移動せず、もとの戸籍にとどまります。
つまり、A太郎さんとB花子さんが結婚して、夫婦別姓を選び、
夫婦の苗字を「A」としても、裕太の苗字はBのまま「親子別姓」になります。
(これは現行法でもそうで、B花子が改姓してA花子になっても、
裕太はもとの戸籍に残って、苗字はBのままです。)
これで子どもはどちらも改姓せず、B裕太とA次郎は、
「苗字の異なるきょうだい」に、いちおうなることができます。
しかしこのままでは、B裕太はA太郎の「妻の子」というだけで、
A太郎とB裕太のあいだに、法的な親子関係はありません。
(同様に、A次郎もB花子の「夫の子」で、法的な親子ではない。)
これは不便なことが多いので、A太郎とB裕太も
法的な親子になるために、「養子縁組み」をするのが一般的です。
ところが、養子縁組みの手続きでは、養親が別姓のとき、
養子の苗字は、「夫婦の苗字」として選んだものになります。
B裕太はA太郎の養子になると、改姓してA裕太になってしまいます。
B裕太が改姓しないためには、どうしたらよいか?ですが、
はじめに、A太郎とB花子が、婚姻届けを出したあと、
B花子とA次郎が養子縁組みをして、法的な親子関係になります。
夫婦の苗字は「A」を選んでいるので、A次郎は改姓をせず、
B花子と「親子別姓」の状態で、養子縁組みができます。
このあとA太郎とB花子は、「ペーパー離婚」をします。
養子縁組みの関係は、「養子離縁」の手続きをしないかぎり、
なにがあっても(養親、養子のどちらかが死んでも)解消されません。
よって、B花子とA次郎の法的な親子関係は、離婚後もそのままみたいです。
そしてふたたび婚姻届けを出し、今度は夫婦の苗字を「B」にします。
A太郎とB裕太が養子縁組をすれば、すべての手続きが完了です。
このときおなじ戸籍にいるのは、A太郎、B花子、B裕太で、
A次郎だけべつの戸籍(A太郎のもといた戸籍)に入っています。
それでも、A次郎とB花子の養子縁組みは解消されないですから、
A太郎とB花子は、それぞれの配偶者の連れ子と、
法的な親子関係を持つことになります。
ペーパー離再婚を使えば、法制審議会の案でも、
このように、子どもの苗字をわけることもできそうです。
ところが、実質1回の結婚なのに、婚姻届け2回に離婚届け1回と、
手続きが複雑になっていまい、好ましいとは言えないでしょう。
参考資料:
「誰も教えてくれない戸籍の話」
■婚 姻
■離 婚
■養子縁組
■養子離縁
ペーパー離再婚すれば、子の別姓も可能
というのは
ペーパー離再婚すれば、夫婦別姓も可能
というのと
似たようなものだと感じます。
(前者は手続きさえ済めば常時戸籍上も別姓ですが)
こういう便宜的手段をとらなければならないのは
制度の欠陥だと言えますが
せっかく一つの欠陥を直そうとしているのに
すでに判明している別の欠陥は放置するというのは
(むしろ、あえて欠陥の残る方法を選択していると言える)
非効率というか、馬鹿げているというか・・・。
こちらこそ、いつも情報を教えてくださって、ありがとうです。
>こういう便宜的手段をとらなければならないのは
具体的にどうなるのかなと思って、書いてみたのが
このエントリだけど、手続きが3回になるんですよね...
婚姻届けと離婚届けは同じ日には出せないから、
全部の手続きが完了するまでに、3日かかることになります。
お役所に「通う」感覚でやらないとだめですね。
選択別姓を望んでいるかたの中には、自分ではなく子どもを
改姓させたくないというかたも、いらっしゃると思います。
まったく不可能ではないにしても、かなり手の込んだことをしないと、
子どもの苗字が選べないですから、法制審議会案では、
あまり解決にはならないでしょうね。
>すでに判明している別の欠陥は放置するというのは
よくわからないけれど、養子の扱いに関する条文も
改正する必要があるので、いっぺんにそんなにやるのは
勘弁してくれ、ということなのかもしれないです。
来年の国会で提出するまでに、法務省と調整しているけど、
このあいだに、子どもの苗字も選べる案を、作ってほしいと思います。
あるいは、国会で審議する過程で、そうしてほしいところだけど。