2009年10月25日

toujyouka016.jpg 母性本能を熟成?

こないだから気になっていたこと。
いつもわたしのところに、コメントやTBをくださる
『アルバイシンの丘』の、つぎのエントリのコメント欄に、
「母性本能」を信じているかたが、投稿していらっしゃります。
http://papillon99.exblog.jp/11977424
========
母性本能というと、子を産んでから身に付くものと思いがちですが、
そうではなくて、結構、幼い頃から熟成されていかねばならないもので、
それが十分でないと、「子を欲しい」と思わなかったり、
産んだ子を育てなかったりといった状態になるのではないかと思います。
========(2009-09-25 01:01)

 
察しのよいかたでしたら、この短い文章だけで、
すでに矛盾していることに気がつくと思います。
「本能」なら「熟成」させなくても、生まれつき備わっているでしょう。
産まれてから、後天的に「熟成」させるのなら、
それは「学習」で得た獲得形質で、「本能」ではないと思います。

こうした考えは、「女は子どもを産みたいとか育てたいとか、
思ってほしい(思うべき)」という、願望ないしイデオロギーだと思います。
「本能だから」と言いながら、「熟成が必要」と主張するのは、
イデオロギーを唱える人の誤謬として、よくありがちです。

コメントをしたかたは、むかしは多産があたりまえだったのに、
いまの女性は、子ども手当てとか、育児環境の改善とかを要求するので、
「母性本能」が損われたと、お考えのようです。
「犬のように産む」「主観的に不幸」にも合い通じそうですね。


さきのコメントは、動物の育児放棄を引き合いに出しています。
========
動物園の動物は子を産んでも育てようとしないケースが多い
ということとも関係があるように思います。
========

動物園でなくても、野生動物でもめずらしくないですよ。
「野生」というより、「野良鳥」(笑)という感じですが、
鳩の育児放棄なんて、よく聞かないでしょうか?
「ベランダで産まれた鳩が育児放棄されてます。」
「育児放棄!!・・・鳩のはなしです。 」

動物の育児放棄の原因は、強いストレスと考えられています。
動物園の動物に、育児放棄が多いのだとしたら、
それだけストレスがたまりやすいからだと思います。


参考資料:
「母性本能という伝説 〜 子どもを愛せない女性たち」
http://www.geocities.jp/misakidsjp/teian_18.html

posted by たんぽぽ at 23:01 | Comment(12) | TrackBack(2) | 疑似科学(にせ科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
 そもそも母性本能の熟成なんていったって、んなもん、どうやって熟成するんだと思いますが。

 子供が好きで欲しくて仕方がなかった女性が、いざ子供を持つと、子供に愛情が持てなかったり、虐待まではしないにせよ、子育てに不満やストレスを溜めて「子供なんか産むんじゃなかった」と言って、子供の心を傷つけることもあるし。
 子供好きじゃない、むしろ嫌い、産んでも産まなくてもどっちでもいい、という女性が、いざ母親になると、すごく子供に深い愛情を感じて、良い親子関係を築くこともあるし。
 まあ、私の周囲では、圧倒的に後者のケースは多いのですが、多分、私が子供好きじゃないので、似たような人が集まっただけかもしれません。

 
 
Posted by イカフライ at 2009年10月26日 01:31
『これは私の推測ですが、兄弟が減って子が子の子守りをすることがなくなったり、年の離れた子と遊ぶ習慣が壊れたり、住宅事情から犬や猫などを飼えなくなったりといった環境の変化が、母性本能の成熟を妨げているのではないかと思う』と書かれていますね。

育児ノイローゼになる人は大抵、「こんなに大変だと思わなかった」と言っているんですよね。専業主婦が多いです。兼業で保育園に預ける人は育児ノイローゼにはなりにくい。で、周囲は「母性神話」を信じているから、余計に追いつめられる。

赤ちゃんとふれあう機会がなく育つと、逆に大変さがわからないし、
昔は近所の方や親戚などが助けるのが当たり前だったのだけれど、時代が違うのですから。要は助けてくれる人がいない、大変だよね当たり前だよ、という認識を持てない人が多いから大変なんです。

私はいわゆる「お守り」をさせられることが多かったのですが、赤ちゃんってとってもかわいいけど、なんて大変なんだろう・・・と、一時間とか二時間でへとへとでした。そんなかんじで、将来自分は育てられるだろうかと悩んだ中高生時代を送ったのでした。

なので、大変さをわかっていないから産んで大変になる、そして責められる、大変さをわかっている人は産まない、ということになると思います。
男の人はわかってない人が多いですし、サポートも簡単には得られない。
それに、親世代は「あととり」だの「内孫」だのいう意識が強いけど今の世代は違う。
産んだら余計に口出しされるから産まない、産めない、気が狂う、って人も多いです。

小さい頃から男の人が赤ちゃんの面倒を見れば、男の人が大変さをわかり、女の人もサポートを期待できて産む気になると思いますよ。母性だけでなく父性も考えてほしいですね。ふふ。

そういえば外国では男の子もベビーシッターするんですよね。
Posted by 多面体 at 2009年10月26日 06:36
こんばんわ。

ありゃー,私のところがまな板に乗ってますね。

あれは私にも責任があります。鈍い感度で申し訳ありません。どうもパピヨンのお里が知れてしまった感じですねぇ・・・

>「本能」なら「熟成」させなくても、生まれつき備わっているでしょう

一度どこかで拝見したことがあるような気がします。「母性本能」という幻想が充満していますからね。それへの皮肉として。

実はあまり咀嚼できないまま,応答を重ねまして。無難な受け答えをしようと思って鈍い感度のコメントになってしまいました。どうもお恥ずかしい。

だから,というのも変ですが,たんぽぽさんの所は感度を磨く勉強にもってこいと思って,しょっちゅうお邪魔しています。

今度のことも大変よい勉強になりました。
皆様,ありがとうございました。
Posted by アルバイシンの丘 at 2009年10月26日 20:24
イカフライさま、コメントありがとうございます。

>んなもん、どうやって熟成するんだと思いますが

くだんのコメントを見ると、きょうだいで子守りしなくなったとか、
歳の離れた子と遊ばなくなったのが原因と、書いていますね。
これから察するに、「近所の幼稚園とか保育園に行って、
小さな子どもと触れあう1日シッターさん」なんてのを
週に1-2回くらい授業の中に入れる、というのかもしれないです。

あるいは、「女の人の幸せは、結婚して子どもを産むことだ」なんて、
家庭科だか道徳だかの時間で、吹き込もうというのかな?
それこそ、太平洋戦争中の人口政策と、同じになるけれど。


>いざ子供を持つと、子供に愛情が持てなかったり、
>虐待まではしないにせよ、子育てに不満やストレスを溜めて
>「子供なんか産むんじゃなかった」と言って、子供の心を傷つけることもあるし。

子どもへの感情なんて、後天的に学習で身につくものですから、
赤ちゃんができたあと、どうなるかなんて、
それこそ「人それぞれ」のはずなんですけどね...
ところが、「母性本能」を信じている人たちは、
子どもに愛情が持てない女性を、「生物学的におかしい」として、
スポイルすることになるんだけど...


>多分、私が子供好きじゃないので、似たような人が集まっただけかもしれません。

わたしも、子どもは作らないと、きっぱり決めちゃっているので、
似たものどうしで集まった一員になるのかな?
Posted by たんぽぽ at 2009年10月26日 23:34
多面体さま、コメントありがとうです。
あと、トラックバックもありがとうございます。

>育児ノイローゼになる人は大抵、
>「こんなに大変だと思わなかった」と言っているんですよね。

産んでから大変と思うかたも、「産まれたらかならず
赤ちゃんがかわいくなる」と、素朴に信じていたのかもしれないです。
「赤ちゃんがかわいいと思わない自分はおかしいのか?」と、
「母性本能」信仰は、自分で自分も責めちゃうんですよね...


>赤ちゃんとふれあう機会がなく育つと、逆に大変さがわからないし、

>私はいわゆる「お守り」をさせられることが多かったのですが、
>赤ちゃんってとってもかわいいけど、なんて大変なんだろう

コメントした人は、素朴に「赤ちゃんと触れ合えば、
母性本能が「熟成」される」と、思っているみたいですね。(苦笑)
実際にはその逆で、赤ちゃんのお守りは大変とわかって
かえって敬遠することも、あるわけですからね...

産んでから後悔しないために、赤ちゃんのお守りは
どのくらい大変か理解しておく、という目的でしたら、
子どものうちから、赤ちゃんと触れあうのは、
意義があるとわたしも思います。


>母性だけでなく父性も考えてほしいですね。

コメントの人は、あきらかに女性しか念頭にないようですね。
赤ちゃんと触れあうのも、女性にだけさせるつもりなのでしょう。

父親は、子どもを虐待してもやむなしみたいな、
すさまじい(?)ことも、書いていましたからね...
おそらく、男の人は、赤ちゃんと触れあっても、
「母性本能」が「熟成」されないから無意味、ということなんでしょうけど。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月26日 23:37
アルバイシンの丘さま、コメントありがとうございます。

...というわけで、コメント欄の会話に、反応してしまいました。

>一度どこかで拝見したことがあるような気がします。

これかな?
http://taraxacum.hp.infoseek.co.jp/teardrops/against/eugenics.html

ようは「かくあるべき」を正当化するのに、
「生物学的に決まっている」と言えば、説得力がある気がする、
ということだと思います。

ところが、その「決まっている」はずのことを、
教育で「熟成」しならないと、主張してはばからないのは、
よくある矛盾だったりします。
(主張している本人は、なぜか気がつかない...)


>感度を磨く勉強にもってこいと思って,しょっちゅうお邪魔しています。

おおおお。
わたしのつたないブログが、そのようにお役に立っているなんて、
とっても恐縮で、身に余る思いです。
いえいえ、本当にたいしたブログではないんだけど、
これからも、ぜひともお越しいただけたらと思います。

あと、わたしからトラックバックをお送りしました。
すでに3つ送っているので、うっとうしいかなと思ったけれど、
「まな板」にしちゃったしね...
Posted by たんぽぽ at 2009年10月26日 23:38
たんぽぽ様、お返事、また拙ブログへのコメントとトラックバックもありがとうございました。仰ることどれも同意いたします。

わたし、この方の、「男性は暴力ふるってあたりまえ」
「産むのも育てるのも女性だから男性に責任なし」という感じがして、
むむむっと反応してしまったのでした。

たんぽぽ様仰るとおり、大変でしたが赤ちゃんのお守りをしたから、子育ての大変さや共働きの大変さを早くに知ることができました。
子どもは好きですが、かわいいのと大変なのは別というのを知ってしまったので、よほどのサポートを確保するのと、またパートナーに何かあっても一人で育てられる、というくらいの経済力が身に付かないうちは、産めないなあと思います。

本当に、母性神話は三歳児神話ほどではないにしても、本人もいつの間にかすりこまれていたりしますから、自分を責めてしまいかわいそうです。
ホルモンバランスの変化で産後鬱になっても、理解があまりないですしね。


アルバイシンの丘さま、拙ブログにもおこしいただきありがとうございます。
お返事させていただきますね。
Posted by 多面体 at 2009年10月27日 00:22
>父親は、子どもを虐待してもやむなしみたいな、
>すさまじい(?)ことも、書いていましたからね...
>おそらく、男の人は、赤ちゃんと触れあっても、
>「母性本能」が「熟成」されないから無意味、ということなんでしょうけど。

さすがに今はほとんど聞かれなくなりましたが、
一昔前は家族と過ごす時間を大切にする男性が「マイホームパパ」なんて揶揄されていたのも、
この方に限らず、そういう意識が社会に蔓延していたことのあらわれかもしれません。
(会社至上主義みたいな要素もあるのでしょうが)
Posted by 御姉寧 at 2009年10月27日 23:35
多面体さま、またコメントありがとうです。

こちらこそ、わたしのエントリの話題に
興味を持ってくださって、とてもうれしいです。
(例によって、だれも興味を持たないかと思ってた。)


「母性本能」の巧妙なところは、
女性にしか適用されない、ということだと思います。
男性は原則対象外なので、いくら振り回しても、
自分たちはなにも規制されないから、とても都合がよいわけです。

>本人もいつの間にかすりこまれていたりしますから、

子どものころ「女性は産まれたわが子を一目見ると、
出産の苦しみを忘れて、また子どもを欲しくなる」という俗説を聞いて、
わたしは無邪気に、それを信じていたことがありました。

これは明らかに周囲から教えられたことですし、
こんなふうにして、「母性神話」がすりこまれていくのかもと、
ちょっと思ったりもしています。


それから、こんなのを見つけました。
http://d.hatena.ne.jp/orochon56/20091024#p1
Posted by たんぽぽ at 2009年10月28日 23:13
御姉寧さま
コメント、ありがとうございます。

そういえば、男の人の中には、
「子育てでは、女性にはしょせんかなわない」と思って、
ちょっと敬遠してしまう人も、見かけますね。
こんなのも、「母性本能は女性だけであって、男性にはない」という
思い込みが背景にあるんだろうと思います。

>「マイホームパパ」

「母性本能」を信じていると、「男が無理なことをやってる」
というふうに、思ってしまうこともありそうですね。
Posted by たんぽぽ at 2009年10月28日 23:14
古い記事にコメントさせていただきます。
まず、たんぽぽさんの仰ること自体は理屈が通っていて正しいのですが、このコメントをされた方の言葉に矛盾やすり替えがあるという見方はちょっとズレていると感じました。
というのは、この方はそもそも
>母性本能というと、子を産んでから身に付くものと思いがちですが
という文からわかる通りそれを「本能」と思っていない、そしてその感覚が一般的だと思っているのです。
なので矛盾はありません。ただ無知なだけ、ですむ話です。
さらに、それが本能だと信じている人の意見ならその「熟成」というのは本能そのものでなく表現力について言いたいのだということは母性や子育てについて深く考えたことのある人なら容易に推察できます。
異性を求める本能に変えて考えるとわかりやすいですが、異性に惹かれる事自体は本能でも、実際に異性とうまくやっていく方法は学習です。
つまり、どちらにせよ言葉の使い方が間違っている、というのが指摘するべき点なのです。
なのでたんぽぽさんの論自体は正しいものの、キーワードに反応して自分の言いたいことを言っているだけで相手のコメントの本質をつかんでいないという違和感を感じます。
なぜこのような事をあえて言ったかというと、よそのブログのコメントを「そのまま」持ってきて意見の合いそうな仲間内であげつらう(むしろあげつらい方では「あなたは悪くない」の人の方がひどいですが)やり方がどうなんだと感じましたので、さらに内容もズレている点が非常に気になりました。
でもこういうやり方をする人は何が「あげつらう」と言われているか理解できないのでしょうね。
Posted by ゆうき at 2010年08月25日 10:19
ゆうきさま、いらっしゃいませ。

>>母性本能というと、子を産んでから身に付くものと思いがちですが
>という文からわかる通りそれを「本能」と思っていない

当該コメントを、読み返してみましたが、
おっしゃるようには読めませんでした。
本能と思っていないのなら、はっきりそう書くはずです。

わたしがエントリで引用したところより前の部分で、
「母性本能の成熟を妨げている」とコメントしています。
これは妨げるものがなければ、「本能」が「熟成される」と
考えている、ということでしょう。
========
兄弟が減って子が子の子守りをすることがなくなったり、
年の離れた子と遊ぶ習慣が壊れたり、
住宅事情から犬や猫などを飼えなくなったりといった環境の変化が、
母性本能の成熟を妨げているのではないかと思うのですよ。
========


それから、当該コメントは、女性の自己決定を否定し、
さらに、子ども手当てなど、正当な福祉も否定的です。
よって、「言葉の使い方が間違っている」のでなく、
本質的にまちがっていると言わざるを得ないです。

また、当該コメントのような、子育てしない女性を
異常とする考えかたは、へきえきするどころか、
重圧になったり、傷つけられたりすることがあるのは、
「母性や子育てについて深く考えたことのある人」なら、
だれでも感じていることです。

したがって、コメント欄の内容と言えども、
見過ごすことはできないと思ったので、批判したしだいです。
Posted by たんぽぽ at 2010年08月25日 23:30
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