2010年03月24日

toujyouka016.jpg わからないオトコ

男性の性欲は、本質的に理性などで抑え切れないと
信じているかたも、すくなからずいると思います。
そして「オトコはみなそういうものだ」と、
一般的なことだと思ってもいるのが相場です。

はなはだ悲しいことですが、こういう人たちに、
性被害の深刻さを伝えようとしても、非常に苦労することになります。

「「男をわかってない」と言われまくる件」

 
こういう「オトコは黒豹」と信じている人たちは、
「男性の性欲は本能で、生物学的なものだ」とでも
思っているのではないかと、わたしは思います。
これは、女性の「母性」を本能と思っているように、ですよ。

男性の性欲を、そのようなものと考えれば、
「本能だからすべての男性に備わっている」
「本能だから理性で抑え切れない」と、
一般化して正当化することになってきます。

「オトコをわかってない」と力説する人は、
「本能だというのに、どうしてわからないの?」と
訴えているつもりなのかもしれないです。
(そうだとしたら、「母性本能を熟成」
力説するのと、おなじことになりそうです。)

こうした人たちに、「男性にもいろんな人がいる」のような、
個人差や多様性を主張しても無理でしょう。
「生物学的基盤がある」と信じているのですから、
そこに「個人差」とか「多様性」などという
「例外」などあるはずないと、考えるわけです。
(あれば「生物学的に壊れている」と考えるのでしょう。)


「すべての男性にあって抑え切れない」となれば、
避ける側が自分で対処するしかないものになります。
それで「女が気を付けなければならない」とか、
「襲われた女のほうが悪い」という
二次加害のどこが悪いかも、わからなくなるというのは、
もう言うまでもないと思います。

かかる「認識のずれ」を理解するにあたって、
「性欲本能」も「母性本能」とおなじ意味で、
問題視する必要もありそうに思います。


posted by たんぽぽ at 23:47 | Comment(13) | TrackBack(1) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
同感です。
Posted by ガラック at 2010年03月25日 05:57
近ごろのマスコミなどがよくいう「草食系男子」とやらの、
そういうマッチョ志向じゃない若い男が増えているとすれば
そういう意識もだんだん変わるのじゃないでしょうか。
Posted by pulin at 2010年03月25日 10:07
ガラックさま

賛同どうもです。

「自然主義的誤謬」というものなんだけどね。
これにはまると、誤解を解くのがむずかしくなりがちです。



pulinさま

「本能が壊れた」と言って、その壊れた原因はなにか?
というギロンに走ると思います。

(「きょうびのこれがしの環境の変化で、
男性が男性らしくなくなった」とか、
そういうことを言うんでしょうけど...)
Posted by たんぽぽ at 2010年03月25日 18:29
「本能」あるいは「遺伝」。
このへんを根拠にして人間社会について何ごとかを言う人はインチキであるという、個人的な経験則があります。
本能も遺伝もそれ自体は存在するので、インチキじゃない人がいてもよさそうなものですが、不思議なことに、今のところほとんど100%当たっています。

人間社会のあり方についてなにか言うなら、まずは人間社会について調べればいいのに、なんでいきなり本能を持ち出すのかサッパリわかりません。
いや、まあ、正確に言えばわかるんですけどね。要するにありとあらゆる手段で自分を正当化したいだけのことだと。

民法改正でもそうだと思うんですが、選択別姓に反対する合理的な理由はいっさいないわけで、つまり反対したらそれだけでみんなインチキ決定のはずで。
そういう人の言動を見てると、ほんと、アホらしくなります。そんなに自分の思い込みが可愛いのかなぁと。

まあ、アホらしいですむような問題じゃないことはわかっております。
でもやっぱりアホらしいです。はやく「アホか(笑)」で済むような世の中になってくれないかなぁ…(←他人任せみたいな感じですみません
Posted by サキ at 2010年03月26日 09:55
サキさま、コメントありがとうです。

>「本能」あるいは「遺伝」。
>このへんを根拠にして人間社会について何ごとかを
>言う人はインチキであるという、

どうもそのようですね。
エントリで引き合いに出した、「母性本能」は典型的ですし、
このほか「男女脳」とか「右脳、左脳」なんて、
脳科学もよく使われると思います。

「本能」のような生物学的基盤を根拠にして、
人間社会のありかたを議論することが、
そもそも無理なのかもしれないですね。

>なんでいきなり本能を持ち出すのかサッパリわかりません。

「本能」の都合がいいところは、個人差や多様性といった、
例外を排除しやすいことでしょう。
それゆえ、特定のイデオロギーやカチカンを押し付けたい人は、
持ち出したがるのではないかと思いますよ。


>選択別姓に反対する合理的な理由はいっさいないわけで、
>つまり反対したらそれだけでみんなインチキ決定のはずで。

まったくおっしゃるとおりですよ。
反対派(というか、バックラッシュ一般に言えるだけど)は、
建設的な議論をしたいのではなく、自分たちのいんちきを
いかに信じ込ませるかが、大事なんだろうと思います。

ちょうどここのコメント欄で、そんなお話をしているけど。
http://ericprost.at.webry.info/201003/article_3.html
Posted by たんぽぽ at 2010年03月26日 18:35
こんばんは。言及ありがとうございました。
別館の方でそれからまた別の論争で疲れてしまい、ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ないです。

ほんとうに、本能って言いさえすればいいと思ってるのでしょうね。恥ずかしくないのか。
オトコはケモノなのだというのなら、そう主張している人から真っ先に、「ケモノです」と札下げて歩いてほしいですよ。

性に関することは、まだまだこれからなのに。
今まで男性の目線でしか語られてこなかったことを真剣に考えてほしいです。

いちばん嫌だなあと思うのが、男性よりも女性に言われることですね。

Posted by 多面体 at 2010年03月31日 23:55
多面体さま

コメント、どうもありがとうございます。
(それとお星さまも、ありがとうです。
デザインが変わったのか、きらきらしていますね。)

>別館の方でそれからまた別の論争で疲れてしまい、

なんかいろいろあったみたいですね。
腕力で男性にかなわないって、おっしゃっていたかたに
関係したことですか? それとも、中絶批判のかたですか?
いずれにしても、お疲れさまでした。


>そう主張している人から真っ先に、
>「ケモノです」と札下げて歩いてほしいですよ。

そう言うと今度は、「オトコをみんなケモノ扱いするのか?」って、
またむかつくんじゃないかってね。(悲)

>男性よりも女性に言われることですね。

わたしも、女性に言われるほうが嫌です。
(でも、オトコの性欲は理性で抑え切れない本能って、
誤解することに、男女差はないからね...(悲))


それから、こちらでも話題になってますので、
ご覧になられたらと思います。
http://ericprost.at.webry.info/201003/article_4.html
Posted by たんぽぽ at 2010年04月01日 19:57
たんぽぽ様、お返事ありがとうございます。

ご紹介のブログの方、とてもご配慮ある方ですね。別館にトラバいただきました。

なるほどなあと思って読んでいました。


オトコの性欲は理性で抑え切れない本能って、
誤解することに、男女差はないからね


男女差、ないですね。
まあむこうはむこうで、こっちを苦々しく思っているのでしょうけど(苦笑)

Posted by 多面体 at 2010年04月01日 22:55
>まあむこうはむこうで、こっちを苦々しく思っているのでしょうけど(苦笑)

相手は「科学的根拠」だと思っているでしょうからね。
わたしのことなんて、「あたま悪い」とまで思うかも。(苦笑)

そういえば、むかし「性欲は本能か?」という
議論がなされたことがありました。
これにはいろいろ異論もありそうだけど、
興味がありましたら、ご覧いただけたらと思います。
http://ameblo.jp/jijitsukon/entry-10006719757.html
Posted by たんぽぽ at 2010年04月02日 07:37
リンク先を拝見しましたが、ちょっとヤバいかもですね。古い本なのでいたしかたない部分もありますが…。
「アマラとカマラ」はどうやらフカシのようだという話が、鈴木光太郎 『オオカミ少女はいなかった』 新曜社2008に書かれていました。

とはいえ、言語がヒトの行動をわりと根底的に規定しているというのは間違いないでしょうし、それこそが文化なわけで、ヒトがヒトたるゆえんなわけで。
ここに「本能」みたいな概念を持ってきて自分のインチキを強弁するのは端的に下品である。このことは動きませんけどね。
Posted by サキ at 2010年04月02日 09:03
サキさま、またまたコメントどうもです。

>「アマラとカマラ」

このふたりは、じつは狼に育てられたのではない、
というのは、わたしも聞いたことがありますよ。
...なんて、わたし、No. 17のコメント
(2005-12-15 22:57:23)で、しゃべっていますね。
http://ameblo.jp/jijitsukon/entry-10006719757.html

アマラ、カマラだけでなく、野生児は全部で
30人くらい出てくるので、サンプルとしては、
じゅうぶんではないかと思いますよ。


それよりもやばそうなのは、
半陰陽(インターセックス)の議論じゃないかな?
悪名高い(?)ジョン・マネーも出て来ますし。
ここで言えることは、「性的アイデンティティの臨界期と
言語習得の臨界期は関係ない」だと思うけれど。

興味がありましたら、これもご覧になってみてください。
(性欲は出て来ないけれど)、性自認は先天的な要素が
あるのではないか、という研究です。
http://www.geocities.jp/carutuusin/colum150.html


>言語がヒトの行動をわりと根底的に規定している

そうですねえ...
性欲については、マスターベーションを知らずに成人して、
もちろん一度もやらずに来たという、
男の人もときどきいるみたいです。

それから、結婚したけれど、子どもの作りかたが
わからなくて、恥を忍んで産科に訊きにいった、
というお話も、実際にあるそうです。
(いまのように情報過多になってないころ)

これらを見ていると、人間の場合、後天的に学習しないと、
性行動が取れないことも、本当にあるようです。
性欲も学習に頼っているところが、
かなりあるのはたしかだろうと、わたしも思います。
Posted by たんぽぽ at 2010年04月02日 22:45
コメント、またリンク先、ありがとうございます。勉強になりました。

まあ、個人的には、セクシャリティというのは、先天的・後天的にかかわらず、本人の志向(嗜好とはちょっとズレる)が尊重されるべきだと思っております。もちろん他者の人権を侵害しない範囲での話ですが。
だから本能とか遺伝とかを持ち出されると反射的に眉に唾をつけてしまうのかな…。

完全に余談ですが、小学3年生になる娘がそろそろ学校で性教育を受けているようで、親としてはいろいろと悩ましいというか何というか…、ま、子育ての楽しみなんですけどね(笑
Posted by サキ at 2010年04月05日 12:19
わたしが紹介したリンクさき、ご覧くださってありがとうです。
(性同一性障害の性自認であって、
マネーが研究した半陰陽ではないんだけどね。)

>だから本能とか遺伝とかを持ち出されると

本能や遺伝を持ち出すのは、他人の人権の侵害を正当化するため、
というのは、実際によくあることですからね...
人間の行動を、本能や遺伝で語ることに警戒するのは、
ごもっともなことだと思います。


>完全に余談ですが、小学3年生になる娘が
>そろそろ学校で性教育を受けているようで

ほほ〜。
(どんなことを習っているのかしら。)

お父さまに、するどい質問とかしてくるんですか?
(またひとつ、オトナになるための階段を昇った感じですねー。)
Posted by たんぽぽ at 2010年04月05日 23:11
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「誰に 誰を 誰が」理解しているのかという問題
Excerpt: (「誰に 誰を 誰が」というのははたあきからの引用,敢えて曲名出さない。ここでは「誰にとって」、「誰のことを」、「誰が」理解しているのかという問題について書くということです)
Weblog: Eric Prog
Tracked: 2010-03-28 22:22