またまたkirikoさんの孫引き。
こんどは、共産党の家族政策です。
彼らは、配偶者控除の廃止に反対している、というお話です。
「子ども手当と扶養控除(追記・訂正あり)」
2009年と2010年の、共産党の政策集を見ると、
扶養控除、配偶者控除の廃止に反対と書かれています。
ということは、前のエントリでご紹介の
自民党の案をそのままと、見てよいでしょうね。
「2009年 総選挙政策 《分野別政策》 3. 子ども・子育て」
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フランスやドイツなどヨーロッパ諸国では、
子育て世帯に非常に手厚い手当が給付されており、
経済的な心配なしに子育てすることができます。
将来的にそうした水準をめざしつつ、当面、第1子・第2子の
児童手当を小学6年生まで月額1万円に増額するとともに、
18歳までの支給年齢の引上げをめざします。
その際、扶養控除、配偶者控除の廃止などの
いわゆるサラリーマン増税との「抱き合わせ」での
手当増額はおこないません。
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「2010年参議院選挙 《各分野政策》 5.税制」
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民主党政権は、子ども手当の財源確保を口実にして、
所得税の扶養控除や配偶者控除の廃止をねらっています。
国民の強い反対を前にして、今年度は廃止するのは
16歳未満の年少扶養控除だけにとどめましたが、
総選挙のマニフェストでは言っていなかった住民税の控除まで廃止し、
「存続する」と明言していた特定扶養控除まで、
高校生分について縮減してしまいました。
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ところで、共産党やその支持者たちは、つね日ごろから
「金持ちから税金を取れ」としつこく言っています。
ところが、前のエントリでお話したように、
配偶者控除は、高所得者ほど控除額が大きくなります。
高所得者ほどたくさん税金を負けてもらえる
配偶者控除を温存したら、それこそお金持ちを
優遇するのではないか?という疑問がわいてきます。
これはわたしの想像ですが、もしかすると、
配偶者控除は、比較的低所得者まで
わりあい公平と、思われているのかもしれないです。
(「低所得者のほうが有利」なんて、
倒錯した理解をしているかたも、いらっしゃりました。)
09年の政策集は「サラリーマン増税」とあって、
配偶者控除の維持を「庶民的」と捕らえているようですし、
10年の政策集には、貧困率のお話があったり、
「格差を是正しない税制」なんて書いているので、
共産党はそう考えているのかもしれないです。
実際には配偶者控除は、高所得者に有利という、
きわめて「自民党的なもの」ですし、これを維持したら、
かえって格差を広げることにもなりそうです。
>配偶者控除廃止の主旨
配偶者控除を廃止する本来の主旨ですが、
これは子ども手当て同様、「公平性の保証」で、
「特定のライフスタイルを国家が優遇しない」
という考えにもとづきます。
配偶者控除は専業主婦世帯が多く支援を受けるからです。
(増税は副次的な目的にすぎないです。)
より具体的には、専業主婦の「囲い込み」があります。
控除を受けられるボーダー付近の収入の場合、
ボーダー以上の収入になると、控除がなくなるので、
総収入がかえってすくなくなります。
そのため、ボーダー以下の収入しか得られないよう、
お仕事を選ぶ人が出てくることになります。
かくして、女性が専業主婦から抜け出して、
収入の多い停職につきにくくなることになります。
つまり、国家が女性のライフスタイルを
専業主婦へと追い込んでいる、というわけです。
参考資料:
「配偶者控除についての一考察」
パートで働く主婦が年末に休んでしまったり、非常勤教員のように時給が比較的高い場合は働く時間・日数を少なくしたり。
配偶者控除に加えて「年金第3号被保険者」(夫の扶養に入っていると保険料を払わなくてすむ)があるため、多くの主婦が「年収103万未満、社会保険なし」を自ら望んでしまうのです。
これでは、パート・非正規労働の待遇改善には向かいません。
「私の収入、上がらないほうが良いです」って人が大勢いるんですからね。
いつもいつも貴ブログを利用させていただいてます。
今後は、配偶者控除が争点になると思いますが、
そのときもお勉強させていただくことになると思うので、
よろしくお願いしますね。
>多くの主婦が「年収103万未満、社会保険なし」を自ら望んでしまうのです
「結婚した女性は専業主婦になるべし」という
国家によるライフスタイルの誘導が、
かなりうまくいっていると言えますよね。
>パート・非正規労働の待遇改善には向かいません
かくして格差が温存されていく、ということですね。
(わりを食うのは、非正規雇用から抜け出して、
正規雇用で働こうという女性なんだけど。)
日本の男女別の賃金格差の大きな原因は、
非正規で働く女性なんだけど、そうなるゆえんが
なんなのかが、見えてきますね。
でも、共産党だけ攻めるのはちょっとFairじゃないです。民主党だって結局は引っ込めたんだし。専業主婦あるいは正社員+配偶者副業で家計補助ていう世帯は有権者の中で大きな勢力ですから、かれらを敵に回すのはかなり難しいと思います。
>多くの主婦が「年収103万未満、社会保険な
>し」を自ら望んでしまうのです
保険料0で基礎年金保障されるんですから圧倒的に有利です。
>Executorさん
>専業主婦あるいは正社員+配偶者副業で家計補助ていう世帯は有権者の中で大きな勢力ですから、かれらを敵に回すのはかなり難しいと思います。<
そうですね。勝間和代さんが「民主党が配偶者控除を廃止できたらすごいことだ」と言っていましたが、私もそう思います。
自民党や保守派の中にも、配偶者控除など人的控除の整理縮小に賛成の人もいます(財務省はもちろんやりたいでしょう)。
その際、一番イヤなシナリオは、所得控除のしくみを温存して基礎控除額を大幅に下げることです。
基礎控除に統合して充実させる(給付つき税額控除化)のが良いと私は思うのですけど。
なかなかそういう話にならないのが残念です。
こちらにもコメントどうもです。
えーとですね、ここで問題になっているのは、
共産党は公約の中で、配偶者控除はあきらかに
高所得者に有利なのに、そのことを無視して、
ただ「控除廃止は増税」と言っていることにあります。
つまり、一面的な事実だけ取り上げて、
偏った理解を与える結論を主張するのが問題だと
このエントリでは書いているしだいです。
(もちろん、これは、「お金持ちから税金を取れ」という
共産党のふだんの主張と矛盾するのではないか?
というのもありますよ。)
>「民主党が配偶者控除を廃止できたらすごいことだ」
既得権益層の厚み、すさまじいものがありそうですね。
これは一筋縄で行かなくても、無理もないかもしれないです。
ところで、共産党の公約は、「守れないことは、
はじめから書かない」という判断もあるのかな?
そのために、偏った理解を与えることを書くのだとしたら、
そのほうが不誠実だと、わたしは思うけれど。