2010年07月07日

toujyouka016.jpg 子ども手当てと貧困?

よくわからないのですが、子ども手当てが、
貧困を拡大するとか、貧困を解決しないとか、
そんなことをおっしゃりたいエントリです。

「子ども手当と子どもの貧困」

「子ども手当を新たに創設するより、
現段階では児童手当拡充のほうが合理的では?」


こういう主張は、やはりウケがいいようで、
ブックマークがちょっと賑やかになっていますよ。

 
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-273.html
========
その政策は、格差が激しく所得の再分配機能が
うまくいっていない今の日本社会では、
富裕層ほど得をし、財源ばかり喰ってしまう
悪制度になってしまうのではのないかと私は危惧してます。

貧困層では子ども手当は生活費に回ってしまう
可能性が大きいのに引き替え、裕福な世帯では、
もう一つよぶん塾に通ったり大学進学の貯蓄をふやせたり、と、
かえって富裕層の子どもほど潤う
結果にしかならない危険があると思うのです
========

格差が解消されないのに、子ども手当てを導入すると、
裕福層が得をして、格差が広がると言いたいらしいのですが、
その理屈がよくわからないのです。

前にもお話したように、子ども手当ては
親の年収にかかわらず一律ですから、
それだけでかえって低所得者に有利と言えます。
これは、消費税が一律ゆえに、高所得者に有利なことを
裏返せばわかるだろうと思います。


児童手当を充実しろとも言っていますが、
子ども手当てより、なぜ児童手当のほうが、
すぐれていると考えるのかが、よくわからないです。
児童手当より子ども手当てのほうが
望ましいことは、すでに何度かお話しています

どのくらい充実させるのかわからないですが、
現状では、控除と組み合わせですから、
所得制限があっても、子どもが3歳以上になると、
高所得者のほうが、受ける支援が多くなります。(参考)(グラフ)

子ども手当てに所得制限がないので、
税金が高所得層にも使われるのがいかんのでしょうか?
現行の児童手当は対象者が約9割ですから、
満額の26000円から1割引いて23400円にすれば、
所得制限なしでも、おなじ税負担になるので、
問題なさそうですが、これではだめなのでしょうか?


またエントリ作者は、配偶者控除の廃止には懐疑的です。
「経済的弱者の中で負担を右から左に移動させただけ」と
書いているのですが、年額30万円以上の
控除を受ける、年収1500万円以上の人たちが、
「経済的弱者」なのでしょうか?(参考)(グラフ)
配偶者控除は、高所得者ほど額が大きくなるので、
それこそ裕福層が得をしそうに思います。

それから、これも前にお話しましたが、
配偶者控除には、専業主婦の「囲い込み」があります。
控除を受けるために、収入を抑えようとして、
働けるのに、わざと働かないことがあるわけです。
それよりは控除をやめて、彼女たちにも、
自分で稼いでもらって、税収を増やしたほうが、
二重に福祉対策だと思いますが。

さらに、収入を低くおさえる主婦がいることで、
パートや非正規雇用の待遇改善が進まなくなる、
ということにもなっています。
賃金格差の原因の大半が、非正規雇用で働く
女性にあることを考えると、配偶者控除の温存が、
格差を固定化させているとも言えます。


参考エントリ:

「子ども手当と扶養控除の比較--扶養控除は高所得者優遇」
「子ども手当と扶養控除(追記・訂正あり)」
「自民党の子ども政策--選択と集中」
「子ども手当--所得制限をする意味はあるか?」

posted by たんぽぽ at 23:53 | Comment(14) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
「扶養控除・配偶者控除の廃止は弱者の中での負担移動」
と考える人は、もしかしたら扶養控除・配偶者控除は低所得者だけに適用されると思っているのでしょうか?あるいは所得の高低にかかわらず一定額の減税と思っているのか(それは税額控除ですね。扶養控除・配偶者控除には当てはまらない)。

扶養&配偶者控除が高所得者により多く減税するものだと知っていながら、↓こんな主張をする政党もありますが。

所得控除方式は金持ち優遇?(「しんぶん赤旗」)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-11-17/20051117faq12_01_0.html

確かに控除廃止は低所得者にも増税になりますが、それを補って余りある給付(手当)や制度を提案すればいいのに。給付つき税額控除とか基礎控除の全員適用とか、案はあるのです。
そうした案の考慮もせずに「所得控除は低所得者に優しい」みたいなことを言うのは、結局自民党政権時代の政策維持になってしまうじゃあないかと。
Posted by kiriko at 2010年07月08日 09:12
コメントどうもです。

>「扶養控除・配偶者控除の廃止は弱者の中での負担移動」
>と考える人は

そうですねえ...

前にも書いたけれど、控除は低所得者のあいだでも
わりあい公平と思われているフシはありそうですね。
(かくいうわたしも、配偶者控除が、
専業主婦にかなり有利、というのは知っていたけれど、
所得依存はほとんど知らなかったですし。)

あるいは、このかた、「赤旗」を結構、
読んでいるみたいなので、共産党の言うことを、
そのまま信用していることもありえるけれど。


>↓こんな主張をする政党もありますが。

おお、これはご紹介ありがとうございます。
(なんだ、政党のほうは、控除の所得依存なんて
先刻承知だったんじゃん。(苦笑))

>http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-11-17/20051117faq12_01_0.html

ああ、これはまさに、都合のいい事実だけ取り出して、
都合のいい結論を導くという、共産党ライクな議論ですねー。

>結局自民党政権時代の政策維持になってしまうじゃあないかと。

共産党は自民党長期政権の、アンチテーゼでしたからね。
自分たちの役割(政権批判)を確保するために、
「自民党的なもの」が、ある程度残される必要が
あるのかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月08日 23:23
はじめてお邪魔します。
新しい記事がどんどんUPされているのに、こちらにすみません。

> 配偶者控除は、高所得者ほど額が大きくなるので、

配偶者控除は上限38万円ではなかったかと…?
所得が高いほどどんどん増えるものではありません。
Posted by Norah at 2010年07月16日 09:38
Norahさま、いらっしゃいませ。

おなじ話題のエントリがいくつもありますので、
どちらにコメントされても結構ですよ。


ご指摘のことですが、見てみましたが、
グラフのいちばん右、所得3000万円以上の配偶者控除は、
38万円になっているようですよ。
これが控除額が最高、ということだと思います。
http://ryuseisya.cocolog-nifty.com/hakata/2010/06/post-b551.html
http://lacrima09.web.fc2.com/figs/kodomo_ldp.html

所得がゼロから3000万円までのあいだでしたら、
所得が増えるとともに、配偶者控除も増えるのは
グラフから一目瞭然だと思います。

配偶者控除に上限があるからといって、
高所得者ほど控除額が高くなっているとは言えない、
ということはないと思いますよ。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月16日 23:15
Norahさん

>配偶者控除は上限38万円ではなかったかと…?
所得が高いほどどんどん増えるものではありません。<

意味を誤解されていらっしゃるようです。
「所得が高いと配偶者控除そのものがどんどん高くなる」と言っているのではありません。

配偶者控除(最高38万円)に所得税率を掛けた額が減税されるため、
所得税率が40%だったら、38万×0.4=15.2万
所得税率が5%だったら、38万×0.05=1.9万

所得が多いと所得税率が高いので、高所得者のほうが「減税額」が多いという意味です。
Posted by kiriko at 2010年07月17日 04:14
こういう誤解が出てくるのは、源泉徴収の悪弊でしょうね。

大学は
バイト代から引かれた所得税の還付申告をするのを
手伝う窓口とか作ればいいのに。



Posted by さくら at 2010年07月17日 07:59

大学は・・・ってのは
学生の還付申告を手伝いつつ納税教育をすれば
ってアイデアです。
私も大学時代は1万円くらい源泉されていましたから。
学生にとって1万円は貴重です。
Posted by さくら at 2010年07月17日 08:01
さくらさん

>こういう誤解が出てくるのは、源泉徴収の悪弊<

本当にそうですね。
会社が納税の計算・手続きを全部してくれてると、控除がどういう計算になっているかわからない人が少なくないんじゃないかと思います。

会社員・公務員も含めて全員税金申告する…というのも実際は大変ですけど。
「学生の還付申告&納税教育」は良いアイディアですね。
中学や高校でも「税金申告シミュレーション授業」をやってもらいたいです。
Posted by kiriko at 2010年07月17日 18:33
kirikoさま、コメントまことにありがとうございます!

わたしも、まちがえていましたね。
グラフのいちばん右は、所得税率40%だから、
配偶者控除は38万円×0.4=15.2万円ですね。(苦笑)
http://lacrima09.web.fc2.com/figs/kodomo_ldp.html

所得が高い→所得税率が高い→配偶者控除額が高い、
なんだけど、わたしもじゅうぶん理解できていなかった
ところがあったと思います。


>本当にそうですね。
>会社が納税の計算・手続きを全部してくれてると、

そういえば、「社畜」なんてことばを、聞いたことがあります。
これではいけないと思いつつ、わたしも自戒したいと思います。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月17日 23:10
さくらさま、コメントありがとうございます!

>学生の還付申告を手伝いつつ納税教育をすれば
>ってアイデアです。

あってもよさそうですよね。

とくに学生さんは、税金がちょっとでも
返ってくれば身に染みるでしょうし、
そういうのを体験しながらでしたら、
納税のしくみも身に付くんじゃないかと思います。


ところで、ちょっと調べたら、源泉徴収は、
ナチス・ドイツの発明だそうです。
http://blog.livedoor.jp/kensuu/archives/50343657.html

税金を集めるのに効率がいいけれど、
納税のしくみが、ブラックボックス的になるのは、
ちょっとファシズム・チックかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月17日 23:14
このグラフの作成者として、補足します。
http://ryuseisya.cocolog-nifty.com/hakata/2010/06/post-b551.html
「自民党の子ども・家庭政策」
一番右、高所得者の「専業主婦世帯」の控除が30万円を超えているのは
「扶養控除15.2万+配偶者控除15.2万」+「住民税の控除」の合計だからです。

配偶者控除そのものは同額なんですが、所得税率の違いで低所得者の減税額<高所得者の減税額になるわけです。

※なお、住民税の扶養控除・配偶者控除は33万円で、住民税率は一律10%なので所得の高低による差はありません(所得のない人には減税がないですけど)。
Posted by kiriko at 2010年07月18日 15:43
またまた解説してくださって、ありがとうございます。

所得税の扶養控除: 38万円×0.4 = 15.2万円
所得税の配偶者控除: 38万円×0.4 = 15.2万円
住民税の扶養控除: 33万円×0.1 = 3.3万円
住民税の配偶者控除: 33万円×0.1 = 3.3万円

これを全部加えて、
15.2万円 + 15.2万円 + 3.3万円 + 3.3万円 = 37.0万円
が、グラフの右端だったのですね。

わたしも、もっともっと精進したいと思います。
ふつつかものですが、またなにかありましたら、
教えていただけたらと思います。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月18日 22:50
たんぽぽさま、皆さま
いろいろお教えくださり、ありがとうございました!
(留守しており、お礼が遅くなり失礼いたしました。)
Posted by Norah at 2010年07月21日 13:53
Norahさま、こんにちは。

ああ、いえいえ。
教えてくださったのは、kirikoさまとさくらさまで、
わたしは、たいしたことないですから...

わたしも、精進したいと思います。
Norahさまも、がんばってくださいね。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月21日 19:28
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