2010年07月10日

toujyouka016.jpg 脱官僚的な子ども手当

子ども手当てを官僚批判という観点から見るという、
記事があるので、ご紹介したいと思います。

「「子ども手当」は脱官僚の試金石」

こちらのコメント欄で、教えてくださったさくらさま
まことにありがとうございます。
(非常によい記事だと思います。とても感心しました。)

 
記事では、はじめに子ども手当ての「思想」として、
つぎの4つを挙げています。
http://diamond.jp/articles/-/8669
========
(1) 子供の人数と年齢以外に条件を付けずに人を平等に扱う(単純で平等)
(2) 負担と合わせて考えると低所得者に相対的に厚い富の再配分(貧者に優しい)
(3) 官僚が権限や裁量を発揮したり、官製の事業に予算を使い
OBを喰わせたりする余地がない(脱官僚)、
(4) 使途は自由で政府は国民生活に介入しない(生活への不介入)、
========

(1)、(2)、(4)は、これまでにも何度かお話しているので、
ここでは、(3)の「脱官僚」に注目したいと思います。
これは、おはずかしながら、わたしもいままで
気が付かなかった視点でしたよ。


ようするに、子ども手当ては、現金を給付するだけなので、
官僚が権力をふるう場所がなく、それで彼らにとって、
まったくおもしろくないというわけです。
http://diamond.jp/articles/-/8669?page=2

しかも、保育所を建てるといった、業者や官僚OBが
もうかる事業支出もないし、理事ポストを作って、
官僚OBを養える基金も作れないときたものです。
まさに単純明解にして公平ゆえに、
「脱官僚」政策としても、すぐれているというわけです。
(民主党の政策は、結局ここへ還元されるようだ。)

いままで見て来たように、世論的には、
子ども手当てはとても不評です。
たとえば、「現金をやめてクーポンにしろ」とか、
「子ども手当てより保育所を」とか言われます。
これらの批判も、官僚たちが首を突っ込める
事業のある政策に振り替えたいための、
必死の抵抗でもあるのでしょう。


記事では、よく批判のもとになる、
財源の確保のしかたについても述べられています。
結論はごく単純で、ギリシャと違うので、
ふつうに国債を発行すればよいだけのようです。
(わたしは経済にくわしくないので、このまま信用します。)

http://diamond.jp/articles/-/8669?page=3
========
財源がないのに支出を増やすと新規国債の発行が増額される。
国債発行の増額に問題がなければ、
当面、その他の財政支出をそのままに、
子ども手当も一緒に支出してしまえばいい。
デフレ対策としても、その方が、好都合だろう。

前回総選挙における民主党の第一番目の公約は
「財政支出のムダの削減」だったのだから、その実現を期すればいい。
幸い、ギリシャと違って日本の長期金利は
安定して低いし、インフレではない。
========


記事の最後はこう結んでいます。
(フェアでシンプルというのが、いかにも民主党的だと思います。)
そして、「そうであるがゆえに方々で不人気」なのは、
社会の不公平を利用して、自分だけ得をしたがる
既得権益者がそれだけ多い、ということでしょうね。

http://diamond.jp/articles/-/8669?page=4
========
「子ども手当」は、概ねフェアで、制度としてシンプルで、
資源配分上の効率性を歪めない、「優しくて、自由な」制度だ。
しかし、そうであるがゆえに方々で不人気なのだ。
「子ども手当」のどこを嫌っているかを見ていると、
政党や候補者、さらには各種の論者の立ち位置がよく分かる。
========

posted by たんぽぽ at 22:07 | Comment(14) | TrackBack(1) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
その記事、自分も読みました。
ダイヤモンド社のサイトは、論者の立場はいろいろありますが
意見が表面的でなく、洞察が深いような感じがします。

それはともかく、

民主党の行政改革とかシンプルな制度とかは、
役人が面倒な仕事をしなくても済むようにするのが狙いである、
支持母体の役人の組合におもねっている、
といったアジテーションが、今後どこかの方面から出てくるかも。
Posted by pulin at 2010年07月11日 09:31
現金配って後は「市場」で各自調達せよ、
という考えは結局ネオリベと同じだと思います。
お金だけ配っても必要なサービスが安価に供給されるという保証はないですから。



Posted by Executor at 2010年07月11日 22:32
pulinさま

>ダイヤモンド社のサイトは、論者の立場はいろいろありますが
>意見が表面的でなく、洞察が深いような感じがします

なるほどねえ...
(ダイヤモンドの記事、よくご覧になってるのかな?)


>役人が面倒な仕事をしなくても済むようにするのが狙いである

さすがに、それはどうかな?と思いますよ。
お役人というのは、お仕事が増えたほうが、
エラそうにできるのだからね。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月12日 00:16
Executorさま、
はじめまして、かな?

>現金配って後は「市場」で各自調達せよ

後半の「「市場」で各自調達せよ」がわからないです。

「子ども手当て」をお金で配るのは、
使い道を自由にすることで、国民生活に、
国家が不必要に介入しない、という、
ライフスタイルの保証という観点です。

ヨーロッパのほとんどの国で、子ども手当てはありますが、
どこも現金を配っていますよ。
日本がモデルにしたのはノルウェーですが、
北欧諸国がネオリベの国とは、たぶん考えないのでは?
Posted by たんぽぽ at 2010年07月12日 00:18
教育クーポン等という構想は、物凄く煩雑な制度になってしまうのではないでしょうか。
どういう、サービス・商品ならクーポンの対象にするのかという選定の問題とか。
塾や家庭教師にしてもどんな塾ならその対象になるのかとか、
本が対象になるとしてもしても、教育クーポンと謳うなら、どんな本でもその対象にするというわけにはいかないでしょう、
教育クーポン対象サービス・商品認定制度、機関、審査といったことまで必要になりそうなことを考えると
単に制度の煩雑さ以上に空恐ろしい問題を孕んでいるような気がします。
Posted by pulin at 2010年07月12日 09:15
子ども手当の使い道を限定するなら、議員報酬、公務員報酬、年金等々もみんなクーポンか現物支給したら?って言いたくなりますね。
クーポンは期間限定・国産品購入・地元商店限定にすると、内需拡大にもなるとか?

地域振興券のとき、券の印刷を地元印刷会社が請けようとしたのに、結局東京に本社がある大印刷会社に持っていかれた、と聞きました。
どうしても利権がついてくるでしょうね。
Posted by kiriko at 2010年07月12日 17:30
pulinさま

お返事が遅くなってごめんなさいね。
(ゆうべコメントしようと思ったら、PCが壊れちゃったの。)

>単に制度の煩雑さ以上に空恐ろしい問題を孕んでいるような気がします

おそろしいというか、面倒な事態にはなりそうですね。
たとえば、お役所の認可のたぐいがきびしくなると、
法律違反が出る、なんてことも、あるかもしれないですし。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月13日 12:58
kirikoさま、コメントありがとうです。

>子ども手当の使い道を限定するなら、議員報酬、公務員報酬、
>年金等々もみんなクーポンか現物支給したら?

子ども手当ての使い道をとやかく言うかたは、
自分たちのもらうものも、クーポンや現物支給でよいかどうか、
考えるといいかもしれないですね。

>地域振興券のとき、券の印刷を地元印刷会社が請けようとしたのに、
>結局東京に本社がある大印刷会社に持っていかれた、と聞きました

いろいろとよくご存知ですね。
そんなところにまで、利権の取り合いがあるのね。(悲)
Posted by たんぽぽ at 2010年07月13日 13:00
教育クーポン、子供クーポンの対象サービス・商品を選定・認定ということになれば、
そのサービス・商品の内容統制が行えます。
クーポンが適用されるサービスにふさわしい質と水準を確保するためという名目はつきます。

でも、前に挙げた例だと、この塾はよくてこの塾はダメ、この本ならよくてこの本ならダメなど誰がどう決めるのか?
サービスなどを売る方は適用認定を受けたいでしょうし・・・

このあたりが気にかかる自分は、心配しすぎでしょうか。
Posted by pulin at 2010年07月13日 17:22
こちらにもコメントどうもです。

>このあたりが気にかかる自分は、心配しすぎでしょうか

いや、ありえると思いますよ。
というか、そういうところに認可を作って、
介入するのが、お役人たちのねらいでしょうし。

でもって、認可がどうしても取れないところが、
法律違反に走ったりして、いよいよやっかいになる、
という可能性もあるんだけど。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月13日 23:21
自分が何となく危惧しているのは、教育クーポンという制度があったとして
その対象認定は事実上の「検閲」として作用するのではないかということなのです。
先に挙げたような、ある民間の教育サービスとか書物を教育クーポン対象品として認定するしないはつまりそういうことなのです。
ある教育サービスなり書物なりが文科省の検定に適合しないとされれば・・・
Posted by pulin at 2010年07月14日 18:43
pulinさま、こちらにもコメントどうもです。
お返事が遅くなってごめんなさいね。
(PCは壊れてなかったんだけど。)

>事実上の「検閲」

ああ、そういう心配ですか。

たしかに、ご存知のように、学習指導要領とか、
教科書検定とかありますからね。
質を保つためと称して、おなじようなことに
なるともしれないわけだ。

具体的には、たとえば、歴史教材における、
日中・太平洋戦争の記述などで、バイアスのかかった
内容になるおそれ、なきにしもあらずだけど。
Posted by たんぽぽ at 2010年07月15日 19:02
久しぶりにコメントさせていただきます。昼間ですが,出張中で用事が済んだので昼間から見ることができてます。^o^/

子供手当は大賛成で記事にもかいたことがありますが,このような観点はなるほどと思います。
ただし,お上の出番を嫌うあまり施設充実は不要という論調になるとネオリベの小さな政府論に与してしまいます。
上にあるExecutorさんのコメントですが,施設か現金配給かの二者択一で考えておられるのでしょう。
Posted by アルバイシンの丘 at 2010年07月23日 17:18
アルバイシンの丘さま、ようこそいらっしゃいませ。
おひさしぶりですー♪

>このような観点はなるほどと思います

わたしも、なるほどと感心しましたよ。
子ども手当てが、なぜこうもしつこく抵抗を受けるのか、
その大元がだれなのか、わかったように思います。


>お上の出番を嫌うあまり施設充実は不要という論調になると

それはいまのところ、だいじょうぶだろうと思います。
「子ども手当てより施設充実を」という
論調のほうが、ずっと強いですからね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/150331468.html

子ども手当てに賛成する人も、
「施設は必要だが、手当ても必要」と主張していて、
施設充実は不要という論調にはしていないようですし。


>上にあるExecutorさんのコメントですが,

解説ありがとうです。
でもやはり、わからなかったです。(苦笑)
Posted by たんぽぽ at 2010年07月24日 13:28
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