2010年08月17日

toujyouka016.jpg 別姓導入のコスト?

またまた7月29日にご紹介の、みつどんさまの
夫婦別姓のエントリですが、コメント欄に
反対論者たちが入り込んで、議論になっていました。
今回は、この議論を取り上げたいと思います。

http://d.hatena.ne.jp/T-3don/20100726/1280141773#c

ご本人は「夫婦別姓に賛成している」などと言っていますが、
以下でご紹介の主張をするのは、通常反対派です。
(むかし、夫婦別姓の掲示板に書き込んでいた、
反対派がよくやっていたもので、当時をよく知っていて、
議論歴が長い人なのかもしれないです。)

よって、このエントリでは、「反対論者」と
呼ぶことにしますので、ねんのためおことわりです。

 
反対論者が出してきた論点のひとつに、
選択別姓を導入したときの「費用対効果」があります。
反対論者に言わせると、「別姓を望む人はすくない」のに、
新しいシステムの導入や、制度導入の周知のために、
「甚大なコストがかかる」というのです。

夫婦別姓なんて、マスコミが取り上げれば、
いたるところで話題になりますし、本当に民法改正されれば、
これが大ニュースにならないはずないでしょう。
制度導入の周知がむずかしいとは思えません。

住民票を電算化するなど、選択別姓の導入を見越した、
新しいシステムの準備もなされています。
反対論者が言うように、何十億もかからないでしょう。
選択別姓は、ヨーロッパの民主主義国の多くで
実現していますが、制度の導入によって
甚大なコストがかかったというお話はありません。

「国民の税金を使う」と言う反対論者もいました。
子ども手当てを引き合いにして、財源を問題にしています。
ところが、民法改正は予算をともなわない法案です。
選択別姓に反対する理由として、財源を根拠にするのも、
あたらないことになります。


反対論者は、「新しい制度を導入する側が、
コストのかかるところを示す責任がある」などと言います。
ところが、選択別姓の議論は、蓄積が多いのですから、
そんなコストがあるなら、とっくに検討されているでしょう。

それにもかかわらず、「コストがかかる」と言うから、
その反対論者にそれはどんなことか?と訊くわけです。
存在を主張する側に立証責任がある、ということです。

結局、コメント欄に登場の反対論者たちは、
「甚大なコストがかかる」というだけで、
具体的にどういうことかは、ついに言わずじまいでした。
なにに何十億円もコストかかるのか、わからないままです。


それから、選択別姓の導入で、軽減されるコストもあります。
結婚改姓すれば、それにともなって、
さまざまな手続きが必要になります。
その手続きを受け付ける、役所などの仕事もあります。

結婚改姓にともなう手続きの金銭的なコストは、
つぎのエントリに挙げられています。
(コメント欄で紹介されていた。)
ここにある手数料は、申請者が負担するものですが、
かなりの額になることがわかります。

「結婚改姓(氏)のコスト」

結婚改姓しないですむようになれば、
これらのコストはあきらかに削減されます。
「費用対効果」がだいじだというのなら、
反対論者は、選択別姓の導入によるコスト軽減も
顧慮する必要があるのに、なぜか問題にしないようです。


みつどんさまのエントリに言及するのは、これで4回目ですね。
何度も紹介させていただいております。
これまでのわたしのエントリを並べておきます。

「選択制が嫌われるわけ」

「選択制が嫌われるわけ(2)」
「ガジェットに載った」
「一木一草の同姓強制」

posted by たんぽぽ at 17:23 | Comment(11) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
>反対論者が言うように、何十億もかからないでしょう。

システムの変更は、意外に金がかかるものです。
これは、「あ、ちょっと間違えた。ごめんね、今直すから」という事が許されず、完璧を求められることが一因ですが、それはさておき。

都道府県、市区町村、そして民間。
様々なシステムが存在し、それぞれに手を入れる必要があります。
10億円程度は、すぐかかると思います。

例えば、今や一家に一本きっとある年賀状ソフト。夫婦別姓に対応していないソフトが殆どでしょう。
これをバージョンアップしなくてはなりません。
一本2千円として、50万本バージョンアップすれば10億円です。

この通り、何十億円くらいの費用効果はあるものと考えます。
Posted by tema at 2010年08月17日 22:45
夫婦別姓などは、多少のコストがかかるから反対、とかいう問題ではないですね。

障害者のためのバリアフリー対策もコストがかかるから反対なんでしょうかねえ。いや、実際に反対してるのかもしれません。

コスト論だの費用対効果だの、何についても経営論的な俎上に載せれば気の利いたことを言ったつもりの人たちって、ある意味頭が悪いと思います。
俺の存在はコストがかかるから俺の存在は不要、と自己否定できるまで徹底できるほどなら筋は通るかもしれませんが、本人は自分はかかったコスト以上のものを生み出しているからいい、なんて甘く考えているのでしょう。
Posted by pulin at 2010年08月18日 00:40
経費を節減したいなら、
・戸籍をやめて住民基本台帳に一本化
がよろしいかと。
移行期には手間も経費もかかりますが、将来的には費用軽減になります。
(戸籍と住民基本台帳は、二重に名簿があるようなものですから)

共通番号制のような電子化はどのみち進むでしょうが、その際に大事なのは個人の特定・識別です。夫婦や親子で姓が同じかどうかはさしたる問題ではないでしょう。

もっとも、経費とは別問題で戸籍制度はなかなかなくならんだろうとは思います。
Posted by kiriko at 2010年08月18日 00:46
うちは内縁ですが、年賀状は連名でたくさん届きますぜ。
みんなわざわざソフト買いかえたのかな?
いや、たいがいのソフトはいかようにでも対応できます。

コストかかんなくても、反対するひとは反対し続けます(大事なところですね)

Posted by うがんざき at 2010年08月18日 08:55
temaさま、ご意見まことにありがとうございます。

わたしも、はっきり知らないので、
以下はほとんど推測ばっかりで、不正確かもしれないです。
そのつもりで聞いてくださいね。


戸籍のデータベースだけど、どこの自治体に行っても、
コンピュータにアクセスして、データを取り寄せられるので
(わたしは、引っ越しが多いのでわかる)
全国共通のソフトを使っていると思われます。

したがって、中央のしかるべきところが
ソフトを作って、それを各自治体が、
ダウンロードするようになっていると考えられます。
よって、ソフトを作る手間は1回だけで、
配付は無料と思われます。

読み取るソフトを、各自治体で作っている場合でも、
選択別姓の導入は、いつなされてもいいよう、
戸籍の電算化までしてきたのですから、
わずかな改変で対応できると思います。

バグを取るためのパッチ当てくらいと思われるので、
市販のソフトなら、無料で配付される程度であり、
ソフトを丸ごと新しく買うほどの負担では、
おそらくないだろうと思いますよ。
Posted by たんぽぽ at 2010年08月18日 22:53
pulinさま、コメントありがとうです。

>障害者のためのバリアフリー対策

たとえば、利用者が一定数以上の鉄道の駅は、
エレベータの設置が義務付けられていますね。
あっちこっちの路線で、設置工事をやっているのを見るけど、
建設費は相当にかかっているはずですよね。
でも、コストを理由に反対した意見は、顕在化しないですね。


>何についても経営論的な俎上に載せれば
>気の利いたことを言ったつもりの人たち

具体的にいくらかかるのか、数値は出して来ないですし、
そういうことなのかもしれないですね。
コスト論を持ち出せば、なんとなく、
あたまよさげに聞こえるとでも、思っているのでしょう。

>俺の存在はコストがかかるから俺の存在は不要、
>と自己否定できるまで徹底できるほどなら

おおおお、これは、笑いましたよ。
(こんど、コスト論を持ち出す反対派がいたら、
ためしに言ってみるといいかも。(笑))
Posted by たんぽぽ at 2010年08月18日 22:57
kirikoさま、コメントありがとうです。

>戸籍をやめて住民基本台帳に一本化

コスト論を持ち出して、選択別姓に反対する人は、
住民基本台帳への一本化は主張しないですね。
(というか、別姓導入以外のところで、
コスト論を持ち出すことがないんだけど...)

身分登録が二重にあるなんて、まっさきに無駄が
批判されてしかるべきところなんだけどね。


>経費とは別問題で戸籍制度はなかなかなくならんだろうとは思います

ある種の人たち(すくなくとも、
選択別姓に反対するような人たち)にとって、
戸籍は「正しい家族」幻想を、書類のかたちで
体現させるものなんだと思います。
http://taraxacum.hp.infoseek.co.jp/teardrops/against/koseki.html

なので、いくらコストがかかっても、
戸籍の廃止は猛反対することが予想されます。
Posted by たんぽぽ at 2010年08月18日 23:00
うがんざきさま、コメントありがとうです。

>年賀状は連名でたくさん届きますぜ

おお、周知はちゃんと徹底しているのですね。

わたしは年賀状のソフトは使わないんだけど、
(というか、年賀状を出さないんだけど...)
苗字を連名にするくらい、だいじょうぶだろうと思いました。
むかし、連名の年賀状をもらったことが、
何度かあるんだけど、問題なく作れていましたしね。

>コストかかんなくても、反対するひとは反対し続けます(大事なところですね)

コストがどうたらも、ていのよい口実なんでしょうね。
(実際にコメント欄でやっていたように、
「コストがどのくらいかかるか、
推進派にしめす責任がある」なんて言えば、
いくらでも時間稼ぎができますし。)
Posted by たんぽぽ at 2010年08月18日 23:04
うがんざきさん、お久しぶりです。

>うちは内縁ですが、年賀状は連名でたくさん届きますぜ。

既に機能があるとはなんたることでしょう。
将来のビジネスチャンスを自ら潰すような機能実装は、いけてません。
開発者には猛省を促したいところです。

たんぽぽさんへの返答は、また後日。
Posted by tema at 2010年08月19日 07:45
たんぽぽさんへ

>わずかな改変で対応できると思います。

temaの経験上の話です。
実際には、「わずかな改変で対応できる」ことは少ないです。
大規模システムは、修正に変更を重ね、プログラムの流れがスパゲッティのように絡まってることが良くあります。
ちょっとした変更でも、あちこちに影響してしまうのです。

また、家族の氏名を扱うシステムは、戸籍だけではありません。
保険、年金、顧客管理、人事管理、等々、様々なシステムが氾濫しています。
そして、多くのシステムがスパゲッティになっているのです。

とはいえ、いずれにしても多くのシステムは毎年変更を行っています。
夫婦別姓を実現してもしなくとも、毎年システム変更にかける予算は変わりないと想像します。
Posted by tema at 2010年08月19日 22:36
temaさま

ご意見まことにありがとうございます。
お返事が遅くなって、ごめんなさいです。

>いずれにしても多くのシステムは毎年変更を行っています

わたしも、それを考えました。

夫婦別姓を導入するために必要なシステム変更と
同程度のものは、結構あっちこっちでありそうなので、
いたるところで、コストがかかっているのではないか、って。

すくなくとも、選択別姓の導入だけ、
とくにコストを持ち出すのは、おかしいとは言えそうだけど。


ところで、こんなのを見つけたので、
興味ありましたら、ご覧になってみてはと思います。
電算化の前の紙による管理が、
かならずしも安全ではない、ということだけど。
http://d.hatena.ne.jp/totuka/20100819#1282226646
Posted by たんぽぽ at 2010年08月21日 18:26
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