2010年08月22日

toujyouka016.jpg 混ぜて冷たくなる粉

わたしが、中学生のときですが、理科の時間で
「吸熱反応」の時間に、混ぜるとどんどん冷たくなる
2種類の粉の実験をやったことがありました。

単にガラス棒でかき混ぜているだけで、
氷点下10度近くまで下げることができます。
簡単に低温が生じるので、このところのように夏の暑い日に、
この実験をやってみたいと思うことがあります。

この混ぜただけで冷たくなる魔法の粉は、
いったいなんだっけ?と思って、調べてみたら、
水酸化バリウムと、硝酸アンモニウムでした。
「演示実験12 『水を凍らせる〜吸熱反応』」

(1) Ba(OH)2 + 2 NH4NO3 → Ba(NO3)2 + 2 H2O + 2 NH3

 
ところで、この反応(1)は、吸熱反応なのに、
なんでガラス棒でかき混ぜたくらいで、どんどん進むのだ?
という疑問が、わたしはわいてきました。
反応にともなうエントロピーの増加が、
大きいからではないかと、わたしは考えています。

「エントロピー」とは、ごく簡単に言うと「乱雑さ」です。
大きな分子でいるよりも、いくつかの小さな分子に
分解したほうが、一般にエントロピーは大きくなります。

また、分子が規則的に並んだ固体よりは、
分子がぐちゃぐちゃになった液体のほうが、
「乱雑」ですから、エントロピーが大きいです。
さらには気体になると、広い空間を分子が飛び回りますから、
もっとエントロピーが大きくなります。

反応物は、Ba(OH)2、NH4NO3と固体の結晶ですが、
生成物は水、アンモニアと小さな分子が
2種類出て来て、それぞれ液体と気体ですから、
反応のエントロピー変化はかなり大きそうです。


一般に化学反応は、エネルギー変化ΔEとエントロピー変化ΔSの
兼ね合いである、「ギブスの自由エネルギー」変化ΔGが
小さくなる(変化量がマイナス、ΔG<0)方向に進みます。

もっと正確に書くとつぎのようになります。
エントロピーは、温度(T)との積Δ(TS)で効いてきます。
エネルギーは圧力(p)と体積(V)の変化を加味した、
エンタルピーΔH=ΔE+Δ(pV)で効いてきます。

(2) ΔG = ΔH - Δ(TS)

反応(1)は吸熱反応なので、エネルギー変化はプラス(ΔH>0)ですが、
エントロピー変化がとても大きいので、
Δ(TS)は大きなプラスと考えられます。
したがって、ΔHからΔ(TS)を引いたΔGは、
マイナスとなるのではないかと、思ったのでした。



それはそうじゃなくてこうだよ、とか、
なにかご意見がありましたら、教えてくださいね。

posted by たんぽぽ at 22:56 | Comment(3) | TrackBack(0) | 科学一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
こういう世界から遠ざかってからとっっっても久しくてびっくりしています。
Posted by ガラック at 2010年08月22日 23:15
いらっしゃいませ。

毎日とっても暑いので、混ぜて冷たくなるお話をしたんだけど、
涼しくならないで、びっくりしちゃったのですね。
Posted by たんぽぽ at 2010年08月22日 23:57
あーん、まちがえてた。
エネルギー(E)じゃないよ、エンタルピー(H)だよ。

ギブスじゃなくて、ヘルムホルツの自由エネルギーに
しようかとも思ったけど、この反応はアンモニアが出てくるので、
体積の変化が無視できないから、ごまかすのはやめて、
記述が複雑になるけど、ギブスの自由エネルギーにしました。

...というわけで、エントリ本文を直した。
Posted by たんぽぽ at 2010年08月24日 12:37
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