わたしが、中学生のときですが、理科の時間で
「吸熱反応」の時間に、混ぜるとどんどん冷たくなる
2種類の粉の実験をやったことがありました。
単にガラス棒でかき混ぜているだけで、
氷点下10度近くまで下げることができます。
簡単に低温が生じるので、このところのように夏の暑い日に、
この実験をやってみたいと思うことがあります。
この混ぜただけで冷たくなる魔法の粉は、
いったいなんだっけ?と思って、調べてみたら、
水酸化バリウムと、硝酸アンモニウムでした。
「演示実験12 『水を凍らせる〜吸熱反応』」
(1) Ba(OH)2 + 2 NH4NO3 → Ba(NO3)2 + 2 H2O + 2 NH3
ところで、この反応(1)は、吸熱反応なのに、
なんでガラス棒でかき混ぜたくらいで、どんどん進むのだ?
という疑問が、わたしはわいてきました。
反応にともなうエントロピーの増加が、
大きいからではないかと、わたしは考えています。
「エントロピー」とは、ごく簡単に言うと「乱雑さ」です。
大きな分子でいるよりも、いくつかの小さな分子に
分解したほうが、一般にエントロピーは大きくなります。
また、分子が規則的に並んだ固体よりは、
分子がぐちゃぐちゃになった液体のほうが、
「乱雑」ですから、エントロピーが大きいです。
さらには気体になると、広い空間を分子が飛び回りますから、
もっとエントロピーが大きくなります。
反応物は、Ba(OH)2、NH4NO3と固体の結晶ですが、
生成物は水、アンモニアと小さな分子が
2種類出て来て、それぞれ液体と気体ですから、
反応のエントロピー変化はかなり大きそうです。
一般に化学反応は、エネルギー変化ΔEとエントロピー変化ΔSの
兼ね合いである、「ギブスの自由エネルギー」変化ΔGが
小さくなる(変化量がマイナス、ΔG<0)方向に進みます。
もっと正確に書くとつぎのようになります。
エントロピーは、温度(T)との積Δ(TS)で効いてきます。
エネルギーは圧力(p)と体積(V)の変化を加味した、
エンタルピーΔH=ΔE+Δ(pV)で効いてきます。
(2) ΔG = ΔH - Δ(TS)
反応(1)は吸熱反応なので、エネルギー変化はプラス(ΔH>0)ですが、
エントロピー変化がとても大きいので、
Δ(TS)は大きなプラスと考えられます。
したがって、ΔHからΔ(TS)を引いたΔGは、
マイナスとなるのではないかと、思ったのでした。
それはそうじゃなくてこうだよ、とか、
なにかご意見がありましたら、教えてくださいね。
毎日とっても暑いので、混ぜて冷たくなるお話をしたんだけど、
涼しくならないで、びっくりしちゃったのですね。
エネルギー(E)じゃないよ、エンタルピー(H)だよ。
ギブスじゃなくて、ヘルムホルツの自由エネルギーに
しようかとも思ったけど、この反応はアンモニアが出てくるので、
体積の変化が無視できないから、ごまかすのはやめて、
記述が複雑になるけど、ギブスの自由エネルギーにしました。
...というわけで、エントリ本文を直した。