2010年12月15日

toujyouka016.jpg 同棲が多い理由

12月13日のエントリでご紹介した、
「日本政策研究センター」の選択別姓の議論に関連した
スウェーデンたたきの記事ですが、
こんなことが書いてあったりします。

「夫婦別姓論議・なぜ「スウェーデン」は語られないのか」
事実婚を含めた同棲カップルが非常に多いことも特徴的で、
二十歳から二十四歳のカップルに限れば、同棲が六一%を占め、
既に結婚は多数派ではなくなっている

 
こういう文脈で書くのですから、同棲を「ふしだらなもの」と、
なにか悪いことだと捕えているのでしょう。
ここには同棲への偏見という、根本的な問題があると言えます。

同棲には賛否両論あると思いますが、
するのもしないも、どちらが優れていることはなく、
したいならすればよい、というだけのことだと思いますよ。

「同棲してから結婚しましたが何か?」


スウェーデンなどとくに北欧はそうですが、
同棲は結婚に入る前に、おたがいをよく知るための、
「お試し期間」という考えかたがあります。
同棲経験なしにいきなり結婚するのを、
かえってリスクがあると考えるくらいです。

さらにスウェーデンには「サムボ制度」という
事実婚・同棲に対する公的な制度があります。
日本より同棲生活が保証されているのであり、
これによって同棲の比率が高くなってもいるのでしょう。

「事実婚・同棲制度から法律婚に到達するのは9割。」
「スウェーデン「サムボ制度」とは」
「婚外子とサムボ制度」

同棲に対する意識や社会保障が、日本と異なるわけです。
ここでも自分たちの狭い見識で、外国の習慣や制度を
独りよがりに裁断していると言えます。


ところで、初婚年齢の平均はどのくらいかと気になります。
最初の反対派の記事は、「結婚は多数派ではなくなっている」
などと書いて同棲が多いことを印象づけています。
しかし、そもそも結婚している人自体が、
すくないかもしれないからです。

スウェーデンは晩婚の国で、つぎのページは
2003年と思いますが、男性が34歳、女性が31.3歳です。
晩婚化は進む傾向にあるので、現在はもっと
平均初婚年齢があがっているでしょう。

「ご存知ですか?ミニ情報 (2004年)」

20歳から24歳なんて、結婚していないのがふつうで、
同棲の比率が高くて当たり前ではないかと思います。
「二十歳から二十四歳のカップルに限れば、
同棲が六一%を占め」は、正しい統計を使って
偏った印象を与えるトリックを予想させます。

それから日本の平均初婚年齢ですが、
2003年は男性29.4歳、女性27.6歳です。
日本もご多分にもれず晩婚化が進んで、
2008年は男性が30.2歳、女性が28.5歳です。
20歳から24歳のカップルにかぎると、
やはり同棲のほうが多そうですが、いかがでしょう?

「5 平均初婚年齢の推移」


参考:スウェーデンと日本の平均初婚年齢の推移
「スウェーデン家庭生活調査」より。

図表1-8 初婚年齢(法律婚)の推移: スウェーデンと日本

posted by たんぽぽ at 23:28 | Comment(4) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
欧州で「法律婚以外のケッコン」(事実婚や同棲、男女に限らないカップル)を認める方向で動いている理由は、カトリック側が「男女の」「教会が認める」結婚以外を結婚として認めさせないように頑張ってしまっているからというのも…あります。

例えばフランスはカトリックの国ですが、あちらさんでは「(カトリック教会の主張する『正しい』『保守的な』)結婚」と「(教会は関わらないが相続などの準備のある)連帯市民協約/PACS」がかなり意識的に分けられてはいますが、これら二つの「婚姻」が法的に成立しています。成立までにはカトリック教会やカトリック保守派による激しい反発があったようです…

これに対し、スウェーデンは16世紀辺りからカトリック→福音ルーテル教会(ルター派)に国教会を変更したため、フランスほどカトリック教会の影響がない、つまり教会に従わなくてはならない、といった類の強迫観念は薄いと思われますです。
Posted by mmm at 2010年12月17日 17:32
mmmさま、
いつもコメントをたくさんありがとうございます。

なるほどねえ...
フランスでPACSができたのも、カトリックの影響を避けるという
社会の事情に基づく要請があったのですね。

>成立までにはカトリック教会やカトリック保守派による
>激しい反発があったようです…

とうぜんながら、順調に法律が作られたのではなく、
反発はあったわけね。

婚姻制度が一本化されないのは、
既得権益層を抑えきれないという限界でもあるのかな?
それでも、政治が宗教を克服できたと
言えるのですから、よいことだと思います。

(日本はいまだ克服できていない。
神社本庁系の宗教団体が、自民党の支持基盤として
深く浸透していて、選択別姓が実現していないから。)
Posted by たんぽぽ at 2010年12月18日 12:04
政教分離がなっていない、とは公明党に対してよく批判的に言われることですが、逆にマジョリティの自民党なり、民主党なり、どちらも同じ穴のムジナであって(過去分離しただけですしね)、政教分離は実は誰もできていないのが現実だと思います。

PACSは例えば、一般的な認識で「結婚できない」カップルが行うことができるものであり、保守的な価値観では到底成し得ないフォローをする役割を持っているようで。教会が認めない性的マイノリティ、歳の離れすぎた二人などが「家族」として支えあうことができるように(結果的にはそれぞれが一人でいる時より政府の負担を減らすことができるように)という感じでしょうか…。

>婚姻制度が一本化されないのは、
>既得権益層を抑えきれないという限界でもあるのかな?
それは間違っていない認識だと思います。ただ、それならそれで「そのままにしておく」というのもひとつの方法だと思います。逆に、その外側にいる私たちはそこから色々学ぶことができるからです。
Posted by mmm at 2010年12月20日 21:24
いつもいっぱいコメントをくださって、
ありがとうございます。


民主党は、90年代の政治改革の時代、
自民党内での自浄作用に限界ありと見て、
党を割って出た勢力と、かつての社民連のグループ、
旧社会党の一部などが合わさって構成されています。

民主党の大きな支持基盤は、旧社会党の連合(労組)くらいで、
あとはこれといったものはなかったりします。

神道政治連盟のような神道系の政治団体は、
自民党に残っていますし、日蓮系の各種政治団体も、
ぜんぜん民主党にはつかないみたいです。
なので民主党は、宗教の影響がかなり薄いところだと思いますよ。


>PACSは例えば、

そういえば、カトリックは結婚というのは、
ローマ教皇庁がオーソライズするものでしたね。
それで、教会とはべつの、行政によるオーソライズを設ける、
という考えかたが出てくるのでしょう。

となれば、婚姻制度の一本化は困難だし、
またかならずしも必要ではないことかもしれないですね。
Posted by たんぽぽ at 2010年12月21日 22:29
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