2010年12月19日

toujyouka016.jpg 配偶者控除

最近ちょっと話題になっている配偶者控除について、
お話したいと思います。
(以前にもすこし触れたことがありましたが。)

「自民党の子ども政策--選択と集中」
「配偶者控除のゆくえ」

「なんで、配偶者控除廃止しようとするの?」
「配偶者控除の廃止に向けての声明」

 
「配偶者控除」とは、よくご存知のように、
配偶者が扶養されているとき、わかりやすく言えば、
妻が外で働いていなくて専業主婦のとき、
夫の所得税と住民税が控除され、税金が安くなるというものです。

専業主婦というのは、より具体的には無収入か、
働いているけれど年収が103万円以下のとき該当します。
また「妻が専業主婦」と書いていますが、
これはそのパターンが圧倒的に多いからで、
制度は性別に対称なので、夫が専業主夫でも適用されます。

所得税の配偶者控除は一律に38万円なので、
これによる減税効果が38万円×所得税率になりますから、
所得があがるほど、税率が高くなり控除額も大きくなります。
住民税の配偶者控除は一律に33万円なので、
これによる減税効果が33万円×住民税率で計算されます。
住民税率は所得に関係なく一律10%です。


つぎのグラフに、所得別の配偶者控除の額を示しています。
子どもがひとりいるとした場合の、
扶養控除も合わせてしめしています。
扶養控除は配偶者控除と同じように計算されるので、
専業主婦世帯は、共稼ぎ世帯の2倍になっています。

自民党の子ども・家庭政策 タイトル
自民党の子ども・家庭政策 子ども(中学生)

図のいちばん右側(年収3000万円、所得税率40%)を見ると、
妻が専業主婦の世帯は配偶者控除と扶養控除が適用され、
15.2+3.3+15.2+3.3=37.0(万円)、
共稼ぎの世帯に対しては扶養控除だけ適用され
15.2+3.3=18.5(万円)になります。

--------
所得税の配偶者控除による減税効果: 38万円×0.4 = 15.2万円
住民税の配偶者控除による減税効果: 33万円×0.1 = 3.3万円
所得税の扶養控除による減税効果: 38万円×0.4 = 15.2万円
住民税の扶養控除による減税効果: 33万円×0.1 = 3.3万円
--------

住民税率は一律なので、ピンクでしめした控除額は
所得に関係なく一定になっています。
所得税率は所得に依存するので、所得が多いほど、
水色でしめした控除額は大きくなっています。


付記:
上述のグラフは、「自民党の子ども政策--選択と集中」
というエントリから採ったものです。

小学生以前の年齢についても、
児童手当てなど自民党政権時代の給付や控除を
合わせたデータをグラフ化しています。
全部のグラフは、こちらにあります

関連エントリ:
「自民党の子ども政策」
「共産党の家族政策」

謝辞:
(2012年05月29日 13:13)のコメントにもとづいて、
エントリ本文をすこし書き直しました。
蓼食う虫さま、ありがとうございました。

posted by たんぽぽ at 22:59 | Comment(10) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
私の記事の紹介とリンク、ありがとうございます。
もう一つのリンク先(女性と貧困ネットワーク)の声明にも賛同します。

配偶者控除の問題は、とかく専業主婦の優遇の是非と捉えられがちですが、真の問題点は女性の就労抑制を誘導するものであることです。
今回、配偶者控除見直しは見送りになってしまいましたが、今後この点がもっと検討されることを望んでいます。
Posted by kiriko at 2010年12月20日 02:38
コメントありがとうございます。

kirikoさまのエントリはよくできているんで、
何度も参照させていただいています。

「女性と貧困ネットワーク」のエントリも、
女性の労働が抑制される問題を中心に書いていますね。
さらに女性が低賃金になることから、
女性の貧困をもたらす可能性まで触れていますし。
資料もいっぱい引いていて、よいエントリだと思います。

>配偶者控除見直しは見送りになってしまいましたが

なんだまたか、という感じですよね。
(子ども手当の財源確保のため、高所得者だけ控除を
廃止するなんて、受け入れられるかと思ったのに。)
Posted by たんぽぽ at 2010年12月20日 21:12
こんにちは。
初めてコメントします。
現在、ダブルネームで仕事と家庭を掛け持ちしていて、民法改正を待ち望んでいるひとりです。こちらには、ときどき覗きに来ては「民法改正の今」の情報を拝見させていただいています。

さて。
今さら、過去の記事にコメントなんて…、とっても心苦しいのですが、一言だけ、お願いします。
こちらの記事で「控除」について書かれていますが、表現が今ひとつ的を得ていない気がしていまして、以下のことについてご一考いただければと思います。

そもそもここで扱っている『控除』とは、「税額計算前の所得」を減額する効果を持つものです。
ここでは、この税金の減額効果そのものを「控除」と表現されている箇所が散見されますが、それは読者の皆さんにちょっと誤解を与えてしまうかも知れません。

例えば、次の文。

>所得税の配偶者控除は、38万円×所得税率で、
所得があがるほど、税率が高くなり控除額も大きくなります。

これを誤解を減らす表現にするとすれば、
→所得税の配偶者控除は一律38万円、これによる減税効果は、38万円(控除された所得)×所得税率になりますから、所得があがるほど税率が高くなる分、減税効果も大きくなります。

でしょうか。
文章が長くなってしまうということもあり、なかなか難しいとは思いますが…。

この記事の本旨とズレたコメントですみません(汗)。
Posted by 蓼食う虫 at 2012年05月29日 13:13
蓼食う虫さま、いらっしゃいませ。
わたしのブログにお越し下さり、まことにありがとうございます。
わたしのお返事が、遅くなってもうしわけないです。

>ときどき覗きに来ては「民法改正の今」の情報を拝見させていただいています

わたしのつたないブログをご覧くださり、ありがとうございます。


>今さら、過去の記事にコメントなんて…、とっても心苦しいのですが

ああ、いえいえ。
ぜんぜんかまわないですよ。
むしろ、むかしのエントリを読んでくださって、
うれしいくらいです。

>これを誤解を減らす表現にするとすれば

エントリ本文を書き直しました。
ご指摘まことにありがとうございました。
あらためてご覧いただけたらと思います。

>この記事の本旨とズレたコメントですみません

ああいえいえ。
本旨とずれてはいないですよ。
これからもなにかありましたら、コメントをいただけたらと思います。
Posted by たんぽぽ at 2012年05月31日 19:09
はじめまして。
税金のことなど、いろいろ勉強させて頂きました。

http://taraxacum.seesaa.net/article/174756951.html
こちらの記事で、基礎控除というものについて触れられていて、納税申告者全員に一律に適用されるとありました。

上のグラフですと、

>専業主婦世帯は、共稼ぎ世帯の2倍

になっています。専業主婦世帯は子どもと専業主婦の2人分控除されて、共稼ぎ世帯は子どもだけだから、2倍ということですよね。

ちょっと疑問に思ったのですが、専業主婦世帯では夫が納税申告者だから夫に基礎控除が適用されて、共稼ぎ世帯では夫と妻が納税申告者だから二人とも基礎控除が適用されるってことですよね?

ということは、専業主婦世帯でも共稼ぎ世帯でもどちらでも、夫と妻と子どもの3人分控除されるということではないでしょうか?

専業主婦世帯が優遇されてるわけではないのでは……と思ったのですが……どこかで計算を間違っていますでしょうか。
Posted by のぞみ at 2013年03月30日 09:19
のぞみさん

私は上のグラフの作者です。(元の記事は↓こちら)
http://ryuseisya.cocolog-nifty.com/hakata/2010/06/post-b551.html

このグラフは、「世帯(夫婦)合計」でなく、「子どもを扶養する人」に適用される控除額です。また、控除には基礎控除を含めていません。
「世帯に対する支援額」と書いたのが、わかりにくくなってしまったようです。

のぞみさんがおっしゃる通り、基礎控除を入れれば、「夫婦合計での基礎控除+扶養控除+配偶者控除」は同じです。
だったら専業主婦世帯が優遇されているわけではないのでは、と思うところですが、専業主婦(夫)とされる人には、就労して収入を得ている人も少なくありません(いわゆるパート主婦ですね)。

パート・バイトでも基礎控除が適用されますので、このようになります。
http://ryuseisya.cocolog-nifty.com/hakata/2010/08/post-a89d.html

パート等で年収103万円以下だと所得税は非課税ですが、これは基礎控除38万円+給与所得控除65万円が収入から差し引かれ、課税所得が0になるからです。

専業主婦世帯:基礎控除(夫)+配偶者控除(夫)
パート主婦世帯:基礎控除(夫)+配偶者控除(夫)+基礎控除(妻)
共働き世帯:基礎控除(夫)+基礎控除(妻)
単身者世帯:基礎控除(本人)

つまり、パート主婦世帯が税金で優遇されているわけです。

配偶者控除の問題点は「無収入専業主婦の世帯優遇」ではなく、就労する主婦の収入を抑制させ、パート賃金を低いレベルに留める効果も持ってしまっていることだと思います。
Posted by kiriko at 2013年03月30日 14:22
ご説明ありがとうございます。
ブログも読ませていただきました。
とても分かりやすかったです。

「配偶者控除を基礎控除に一本化すべき」というのにはなるほどと思いました。
その場合、扶養控除も廃止するということでしょうか?
「無収入の人にも一人分の基礎控除を適用」ということは、たとえば無収入の専業主婦の分の基礎控除は、夫に適用することになると思います。
子どもがいる場合や年老いた親と同居している場合、無収入だったり収入が少ないから、たいてい夫の扶養控除に入りますよね。
こちらも基礎控除に一本化すべきだとお考えでしょうか。
Posted by のぞみ at 2013年03月30日 17:38
そうですね。配偶者控除以外の扶養控除も基礎控除に統合するのがよいと思います。

・扶養者(扶養力のある人)よりも本人支援を
・控除から手当へ
(子育て・教育・障害や病気・老齢・就労に対しての手当や支援の充実)
・所得控除から税額控除へ(給付付き税額控除へ)

という方向を望んでいます。
Posted by kiriko at 2013年03月31日 01:21
のぞみさま、いらっしゃいませ。
わたしのブログに、ようこそお越しくださりました。
むかしのエントリをご覧くださり、まことにありがとうございます。

>税金のことなど、いろいろ勉強させて頂きました

わたしのブログがお役に立ててうれしく思います。

わたしが載せた図は、kirikoさまがお作りになったもので、
このエントリの内容も、kirikoさまのお書きになった
エントリがもとになっているのですよね。
わたしのオリジナルではないのが恐縮です。

ご質問の件は、わたしから付け加えることはとくにないです。
専業主婦とされるかたのうち、パートで収入を得ている人がいる、
というところがポイントですね。
そうしたかたは、配偶者控除と基礎控除の両方を
受けることになる、ということですね。
Posted by たんぽぽ at 2013年04月02日 21:44
kirikoさま、
わたしの代わりに(?)お答えくださり、まことにありがとうございます。

「代わり」というか、わたしがつたない説明をするよりも、
図を作ったご本人がお答えになるのが、いちばんいいですね。
Posted by たんぽぽ at 2013年04月02日 21:48
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