2011年05月22日

toujyouka016.jpg 鳩山イニシアチブ(3)

5月13日のふたつのエントリで、鳩山由紀夫氏は、
原発推進派と言えるのかについて、すこし書いたのですが、
そのあと新しい情報が入ったので、そのお話したいと思います。

 
まだ鳩山政権だったときの2010年3月12日に、
「地球温暖化対策基本法」なるものが、閣議決定されています。
これは、2009年の政策INDEXと、「鳩山イニシアチブ」の内容を、
具体的に実行するための法案ということだと思います。

「地球温暖化対策基本法案の閣議決定について(お知らせ)」
「第一六九回 参第二五号 地球温暖化対策基本法案」
========
第十七条 
国は、太陽光、風力等の新エネルギー等に関連する技術、
燃料電池に関連する技術、安全を基本とした原子力発電に関連する技術
その他の温室効果ガスの排出の抑制に資する
革新的な技術の開発を促進し、環境保護、経済発展及び
エネルギーの分野における安全保障に資する
社会基盤を確立するため、財政上又は税制上の措置
その他の必要な施策を講ずるものとする
========

この法案には、原子力発電のことが出てきます。
「安全を基本とした原子力発電」となっているので、
政権INDEXの3項めの具体化、ということでしょう。

そして「温室効果ガスの排出の抑制」の技術として、
風力や太陽光などの、再生可能エネルギーとともに、
原子力発電が並べられているので、
ほかの発電手段とほぼ同列の扱いと考えられます。
原発新設の可能性も念頭にあったのかもしれないです。


それから、これは先日ですが、5月3日-4日に、カザフスタンの
首都アスタナで「第4回経済フォーラム」が開かれました。

鳩山由紀夫前首相が、ここに招かれて講演したのですが、
このとき「鳩山イニシアチブ」のことに触れ、
炭酸ガス排出の25%削減は、原子力発電の推進を
前提としていたと、言っていたことがわかりました。
「ーアスタナ経済フォーラム挨拶ー」
========
一昨年の九月に私が国連で、日本は2020年までに
地球温暖化ガスの排出を1990年比で25%削減すると演説したとき、
原子力政策の推進を前提としていたことは事実であります。
========

2009年9月の気候変動サミットで演説していた、
「鳩山イニシアチブ」では、原子力発電のことは
出てこなかったのですが、暗黙の了解事項だったのでしょうか。
それとも、風力、太陽光などの原発以外の発電や、
他の排出削減手段は、上限に達してなくて、
まだ増やせると見ているのでしょうか。

わたしの想像ですが、できるかぎり原発新設以外によって、
炭酸ガス排出を削減し、たりなければ原発の新設でおぎなうという、
考えだったのではないかと思われます。
したがって、炭酸ガス排出削減量の目標値に応じて、
新設する原発の数が変動する、ということかもしれないです。


アスタナ会議の演説の趣旨は、原子力発電の新設は困難になったが、
25%削減は維持する必要があり、再生可能エネルギーの推進で、
実現するべきだ、というものです。

福島原発事故以来、鳩山イニシアチブに批判的だった
財界人や政治家から、25%削減は後退させろ、
という意見が出ている
とあります。
ブックマークも、原子力発電所の新設を取りやめて、
どうやって25%削減を実現するのか、という意見が見られます。

わたしも、実現可能なのかどうか、わからないです。
(景気後退が原因とはいえ、温暖化ガス排出量が
2009年にはじめて、対基準年比でマイナスになったので、
排出削減を強引に強化すれば、実現しそうだというのでしょうか。)

付記:
このあと鳩山氏は、安全性が従来のものより高いと考えられる、
地下に原子力発電所を作る議連に参加しています。
原発の新設をまったくなしに、25%削減を実現するのは、
かなりむずかしいと考えてはいるようです。


謝辞:
以下の記事をコメント欄で紹介してくださった、
ニャオ樹・ワタナベさま、ありがとうございます。
「温室効果ガス削減中期目標は見直すべきだ=山口光恒」
「原発新設せず温室ガス25%削減を…鳩山前首相」
「東電コネクション(原子力関連事業)、菅首相の背後の「原発推進議員」」

つぎの記事をコメント欄で紹介してくださった、
pulinさま、ありがとうございます。
「原発の地下建設推進、議連発足へ 与野党党首ら超党派」

posted by たんぽぽ at 16:17 | Comment(9) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
pulin様、たんぽぽ様

御紹介有難うございます。
しっかし、地下原子力発電所建設推進議連って・・・(絶句)
あんまりな話なんで憶測オンリーで書かせて頂きますが。

会長の平沼(以降全て敬称略)と安倍は、「日本は準核兵器保有国である。」と言うメッセージを、今後も海外向けに強力に打ち出し得る方策を保持しようとしているのでしょう。
現在、地上にある原子炉が全て廃止になっても、既に長崎型原爆数10発分のプルトニウムは、日本国内に確保されているはずだと思うのですが、それだと海外に対する恫喝手段としては弱すぎる、って考えなんだと思います。

鳩山はやはり『地場産業保護』の姿勢を打ち出しておく必要があるんでしょうね。次回衆院選を意識しての行動以外の何物でも無いと思います。

谷垣は不明。
リベラル面してますが案外右なのか、安倍を中心とする党内右系の支援を得ておかないと立場的に辛いってのもあるのかもしれません。

あとのジジイ共は全く不明。何かオイシイことでもあるのか、何やら老害脳で雰囲気的に盛り上がってしまったんでしょうかねぇ。

http://www.asahi.com/politics/update/0521/TKY201105200673.html
によると、『地下式原発は地下に建設される原発。事故の際に容易に地下に封じ込められる利点があるという。』とのことですが、当然のことながら場合によっては、残っている発電所職員共々、封じ込める事になる訳です。
今の日本の政治システムで、誰がそんな決断をするのでしょうか?ベントや海水注入ですら、責任の押し付け合いで判断が遅れていると言うのに。
それとも、70年ぶりの有無を言わせぬトップダウン政治システムの復活を望んでいるのかな?

地下とは言え、少なくとも冷却系や、作業員用の空気循環(ウランは酸素不要ですが作用員は必要ですね)は外界と繋がっていますよね。そう簡単に全て計算通りに遮断出来るんでしょうか?

外界との接続を断ったつもりでも、地盤の割れ目を通じて、地下水脈に汚染水が染み出す可能性も充分にあります。
例えばアメリカのハンフォード核施設で既に起きているように。
http://blog.livedoor.jp/y_s_p/archives/1425021.html

あと、何と言っても建設費。
地上に作るのですら、一基4000億円とか言われていますが、それを地下に作るとなったら「どんだけぇ〜」って話ですよ。
それとも「地下だったら電源3法交付金の適用外だ。」って理屈が成り立つのかな?地上の自治体の同意無しに、建設出来ると?
だとすれば交付金の分だけ、コストパフォーマンスが向上するけど、そんな話、あり得ないと思いますよ。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年05月23日 13:10
まだまだ、温室効果ガス25%削減を諦めるわけにはいかないでしょう。

風力や太陽光、燃料電池に頼ったビジョンを示すべきなんでしょうかね。
Posted by SPIRIT(スピリット) at 2011年05月23日 13:20
原発が、潜在的な核兵器としての機能を果たしている面はありますね。
日本にしろヨーロッパにしろアジアにしろアメリカにしろ原発がボコボコ建っている所でそれを破壊に巻き込むような戦争など起こせるわけがないので、原発は核ミサイルで脅しあう形ではない平和的核兵器として恐怖の均衡の戦争抑止力になっています。
Posted by pulin at 2011年05月24日 01:30
pulin様

>原発がボコボコ建っている所でそれを破壊に巻き込むような戦争など起こせるわけがない

いやいや、いざ国vs国の全面戦争となれば、そんな風に相手方に温情をかけることはしませんよ。
人口密集地の近くに原発が乱立していたりすれば、相手の電力&戦力喪失の一石二鳥を狙って、迷わずそこを攻撃するでしょうね。

原発が準核兵器的な意味合いを持つのは、「核兵器材料の殆ど全て原子炉で製造されるから。」です。
今やプルトニウムくらいは、もしかすると裏の世界で大枚を叩けば入手できるのかもしれませんが、製造方法としては3%程度の低濃縮ウランを原子炉で核分裂させるしか方法はありません。
「平和利用の原子力発電所」を稼動させることが、他国に文句を言われずに堂々とプルトニウムを製造することが出来る、唯一の方法なのです。

あとは爆縮技術を会得すれば、長崎型原爆は作れます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%88%86%E7%B8%AE%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BA
「日本の技術力があれば、その気になればいつでも爆縮技術は会得可能」と、世界は見ているでしょうね。

水爆の開発に当たっても、材料の取得からメカニズムの解明まで、原子炉と言う設備が無ければ、恐らくは何も出来ないと思いますよ。シークレット過ぎてはっきりした事は言えないんですが。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E7%88%86%E5%BC%BE

逆に言えば、国内に原子炉やその他原子力施設を持って稼動させている国は、水爆を手にする可能性がある、と他国に認識される可能性はあると思います。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年05月24日 13:01
ニャオ樹・ワタナベさま

地下原子力発電所は、山本拓がくわしいですね。
著作まで書いています。
地上に建設するより、立地場所に融通が効くことや、
安全性が高まることから、20年前から議論はされていたみたいです。
http://yamamototaku.jp/content/geo_NPF

地下に穴を掘って原子力発電所を作ることの安定性は、
研究もなされているようです。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003983371

原発事故が起きるたびに、地下原発は取りざたされるんだけど、
電力会社などが腰が重くて、いつもお話が進まないみたいです。
(たぶん建設費が高くつくことが理由と思いますが。)
今度の福島原発事故で、また取りざたされ始めた、
ということなんでしょうけれど。

細かい技術的なことで、ご心配なことは、
これらの本や論文をご覧になれば、書いてあるかもしれないですよ。
Posted by たんぽぽ at 2011年05月24日 23:14
SPIRIT(スピリット)さま

>まだまだ、温室効果ガス25%削減を諦めるわけにはいかないでしょう

おお、やはり、そういう意見もあるのですね。
(「はてなブックマーク」は、もっと冷ややかだけど。)
ハードな数値目標だけど、できるだけ約束は守りたいものです。

景気後退が原因とはいえ、温室ガス排出量が
2年連続で減っているので、08~12年平均で6%削減という
中間目標は、じつは達成できそうな気配なんですよね。
(今年11年は、震災にともなう節電で、さらに減らせそうですし。)
http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011042601000471.html

ビジョンとしては、発電手段ももちろん大事だけれど、
排出規制とかほかのことも含めて、総合的に考えるのがよいでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2011年05月24日 23:15
pulinさま

調べてみたけれど、現在の戦時国際法や国際人道法は、
民用のものを、軍が攻撃することは禁止していますね。
http://bit.ly/cBcwVx
http://www.venus.dti.ne.jp/~orthias/lifestyle_park/principles.htm

したがって、発電所のような民用のライフラインの攻撃も
だめなのでして、原子力はもちろん、それ以外でも
発電所を攻撃することは、もともと禁止されているのでした。

それに加えて、原子力発電所を破壊したら、
放射性物質が散乱して、占領国の軍隊でさえ入り込めない場所を
占領することになると思います。
Posted by たんぽぽ at 2011年05月24日 23:17
民用発電所の攻撃が戦時国際法で禁止されているのははじめて知りました。

核兵器自体人類滅亡を覚悟した最終兵器なので、それが使われた後のこと、はもうどうでもいいのかもしれませんが。
Posted by pulin at 2011年05月25日 05:36
>民用発電所の攻撃が戦時国際法で禁止されているのは

わたしもはじめて知りましたよ。

2006年にイスラエル軍が、ガザ地区を攻撃したとき、
発電所も破壊したのですが、国際法違反にあたるとされています。
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2077529/686388
http://sharejapan.org/sinews/200/212/post_54.html
Posted by たんぽぽ at 2011年05月25日 23:05
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