2011年05月26日

toujyouka016.jpg 民主党のエネルギー政策(2)

つぎのエントリに、民主党の原子力政策の一覧を、
年表のかたちで載せたものがあります。
(原典は『AERA』2011年4月25日号とある。わたしは未確認。)
ここに出ている資料を調べれば、民主党の原発政策の
変化の軌跡をたどることができそうです。

「東電コネクション(原子力関連事業)、菅首相の背後の「原発推進議員」」

 
2006年7月26日の項目を見ると、「それまで原子力を
「過渡的エネルギー」と位置づけてきた
民主党の路線が大きく転換」と書いてあります。

これは4月5日の東京新聞の記事が、よりくわしく述べていると思います。
この記事では、民主党の政権公約を過去から順に並べていて、
その記述の変化のしかたから、しだいに原子力政策に
積極的になっていると、考察をしています。

「民主の原子力政策 「慎重」から前向き」

PK2011040502100033_size0.jpg

ところが、わたしが前に2009年の政権公約
読んだところでは、原発の推進でも反対でもない、
中庸な立場であろうと思われます。
このスタンスは、初期のころから基本的に変わっておらず、
公約の記述に変化がありますが、はっきりと政策転換をしては
いないのでは?と、わたしは思います。


2010年6月4日の項目を見ると、「菅直人が首相に
就任すると、「原発推進が加速した」」とあります。
これはより具体的には、「エネルギー基本計画」の
第二次改定のことを指していると思います。

「エネルギー基本計画を閣議決定 原発14基以上増設」
「新たなエネルギー基本計画の策定について」
「エネルギー基本計画(PDF形式:309KB)」
========
2.原子力発電の推進
まず、2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、
設備利用率約85%を目指す(現状:54 基稼働、
設備利用率:(2008 年度)約60%、(1998 年度)約84%)。
さらに、2030 年までに、少なくとも14基以上の原子力発電所の
新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく
========

ここでは、原子力発電所の推進が書かれていて、
2020年までに9基、2030年までに14基以上の新設と、
数値目標まではっきりしめされています。
2009年までの政策INDEXと比べて、
ずっと原子力発電に重心を置いていると言えますし、
「政策に転換があった」と見てよいだろうと思います。

エネルギー基本計画は、2010年6月18日に、
閣議決定ですから、菅政権になってからのものです。
よって、「菅直人氏が原発推進派だ」となら、
言えるのではないかと、わたしは思いますよ。
(なにがあったのかは、わからないですが、
例によって官僚や財界に叩かれて、ひよったのでしょうか?)


3.11大震災の福島原発事故で、エネルギー基本計画の
原発推進のことは、すっかりうやむやになった感じです。
菅政権の震災対応も、わりあい納得できるものなので、
むしろ政権を評価する論調が強いくらいです。

しかし本来なら、「エネルギー基本計画」で
菅直人氏が、原発推進に舵を切っていたことは、
もうすこし批判してもよいことではないかと思いますよ。


付記:
5月22日のフランスの主要国サミットで、
菅直人首相は、原子力発電を推進するエネルギー基本計画も、
白紙で見直す考えをしめしていました。
さきの原発推進政策は、撤回するべきであることを認め、
すっかりほおっかむりはしていないようです。

「太陽光コスト6分の1に=仏サミットで表明へ-菅首相」

posted by たんぽぽ at 23:48 | Comment(10) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽ様

菅政権誕生以降、いわゆる『原子力村(官僚、政治家、電力会社・・・)』のやりたい放題状態になっていたことは間違い無いようですね。
御紹介頂いたサイトには出てませんが、こんなむっちゃくちゃなのまでありました↓。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20110509k0000m040142000c.html

これ以上自分達のところで抱えきれない核のゴミを、モンゴルに埋めちまえって、こんなの許されていいんかよ・・・


菅総理が元々原発大好きだったのか。
さほどでもなかったが原子力村の連中に丸め込まれたのか。
実は原発嫌いだけど、さりとて原子力村を制御するような力量は持ち合わせていなかったのか。
実態は分かりませんが、いずれにせよ「無責任」と言う責めは負うべきでしょうね。

イシハラ発言じゃないけど、政治のコントロールが効かなくなって好き勝手に振舞う原子力村の連中と、それを放置してきた菅政権に、海の神様が水をぶっ掛けたのかもしれません。

菅総理も冷や水掛けられて少しは目が覚めたのか、「エネルギー基本計画を白紙で見直す」とか言ってますが、原発推進派内ですら一部では「ヤバい」と言われていた浜岡を数年止めさせた位で、「歴史が評価する」とか浮かれているようでは、まだまだ反省が足りないってことだと思います。

追伸:しっかしそんな浜岡の停止ですら、党内から噛み付くヤツがいるんですから、エネルギー基本計画の見直しも一筋縄では行かないでしょうね。
http://m-fujiwara.com/seiji/post-248.html
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年05月27日 20:47
コメント、ありがとうございます。

>http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20110509k0000m040142000c.html

ご紹介ありがとうです。
外国への原子力技術の援助がさかんになったのも、
菅直人政権になってからですね。

モンゴルの場合は、経済停滞から抜け出すために、
国内のウラン資源に注目していて、積極的に原子力技術を
導入したいようで、核廃棄物処理場の建設も、
積極的に買って出ているようではありますが。
http://mainichi.jp/photo/archive/news/2011/05/09/20110509k0000m040143000c.html

内陸国ゆえに輸出が不利という特殊事情があって、
地下資源があっても、中国とロシアに安く買いたたかれるので、
この両国以外に接近したいみたいです。


>菅総理が元々原発大好きだったのか。
>実態は分かりませんが、

官僚や財界から叩かれて萎縮したので、
政権基盤を安定化させようとして、
原子力関係の既得権擁護をしようとしたんじゃないかと、
わたしは、「邪推」しているけれどね。
(もともと原子力が好きだったかどうかは、わからないです。)

「エネルギー基本計画を白紙にする」って
G8サミットで言ったのは、まだましなのかもしれないです。
(これくらいでは、まだじゅうぶん向き合っているとは
言えないのかもしれないけど、すっかりほおっかむり
するんじゃないかと、わたしは思っていたので。)
Posted by たんぽぽ at 2011年05月28日 23:33
共産党にしても、共産党政権がしっかり管理して原子力の平和利用を行っていくという立場なので、利権以前に、大半の政治家の認識はそうなのでしょう。
原発を停めても原発自体が日本列島から消えるわけではないので、どのみち、政権についたものはそれを責任持って管理しなければならないのです。
Posted by pulin at 2011年05月29日 13:36
pulinさま、コメントどうもです。

>共産党にしても

そういえば、そうでしたね。
最初に原子力発電を実用化させたのが、
ソビエト連邦だったのと、関係があったと思いました。

>原発を停めても原発自体が日本列島から消えるわけではないので

そうなんですよね。
将来原発の全廃を考えていても、いまある原発を、
いかにして安全に運転するか、ということは、
考えていかざるをえないんですよね。
Posted by たんぽぽ at 2011年05月29日 23:13
たんぽぽ様

>モンゴルの場合は、経済停滞から抜け出すために、国内のウラン資源に注目していて

現在の主権国家間での交渉事ですから、当然、モンゴル側にもしかるべき理由でこれに期待する人達はいるでしょうね。

ただ、私には
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20110509k0000m040142000c.html
の結びにある
『ただ、技術支援の見返りに核のゴミを他国に引き受けてもらう手法は、電源3法交付金による地域振興策をセットに福島などで原発の建設を進めたのと同じ発想と言える。』
としか思えません。

>官僚や財界から叩かれて萎縮したので、政権基盤を安定化させようとして、原子力関係の既得権擁護をしようとしたんじゃないかと、わたしは、「邪推」しているけれどね。(もともと原子力が好きだったかどうかは、わからないです。)

『クリーンエネルギーで環境に配慮』しつつ『日本の成長戦略として極めて有効』なので、政権与党となった民主党にとって、原発ほどありがたい物はなかった、と言うことだと思いますよ。
まして菅政権は、法人税減税やら消費増税やらを言ってみたりと、経済政策に力を入れたいと言うのが明らかですから、当然、政策自体も原発依存にますます傾いたってことだと思っております。

>将来原発の全廃を考えていても、いまある原発を、いかにして安全に運転するか、ということは、
考えていかざるをえないんですよね。

それも勿論大事ですが、今、大量に溜まっている核のゴミを、モンゴルに捨てるのが難しくなってきた今、本当にどうやって処分するのかを、そろそろ真剣に考えて欲しいですね。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年05月30日 12:49
またまたコメントどうもです。

わたしが見た感じでは、モンゴルは原発の危険性より
経済の閉塞のほうが危機感が強いみたいです。
原発に反対する人は、たぶん日本よりは
ずっとすくないのではないかと思います。

モンゴルのことで、わたしが気にしているのは、
外国から技術支援を求められたとき、
日本はそれを断わっていいのか、ということだったりします。
開発途上国としては、自国の経済発展は計りたいし、
それで温暖化対策に協力しろというなら、
原子力発電の技術支援をしろと当然なるでしょうし。


問題の核廃棄物の処分のしかただけど、
ご紹介の記事を見ると、地下数百メートルの深さに、
核廃棄物の処理場を作るとありますね。
なので、かなりの量の「核のごみ」を、
収容できるのだろうとは思います。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20110509k0000m040142000c.html

現在、スウェーデンやフィンランドでは、
地下400-500メートル程度の深さの核廃棄物の処理場を
作っているんだけど、これらに習ったものと思います。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2608455/4221119
http://bit.ly/laoM1V
Posted by たんぽぽ at 2011年05月31日 23:04
たんぽぽ様

>モンゴルは原発の危険性より、経済の閉塞のほうが危機感が強いみたいです。
原発に反対する人は、たぶん日本よりはずっとすくないのではないかと思います。

そうであるならば、それは単に、モンゴルの人達が原発に対し無知である、と言うことかもしれません。福島の事故の一部始終を、特に途上国に対して包み隠さず情報発信することこそが、今、日本に求められているんだと思います。

>外国から技術支援を求められたとき、日本はそれを断わっていいのか、ということだったりします。開発途上国としては、自国の経済発展は計りたいし、それで温暖化対策に協力しろというなら、原子力発電の技術支援をしろと当然なるでしょうし。

日本が途上国に支援できる技術は、原発だけではありません。
ましてや今回の福島の一件で、日本は、原発システムに関する技術では、アメリカやフランスよりも劣ることがはっきりしてしまいました。
−原子炉圧力容器等の製造技術では、鳩山由紀夫氏の地元の室蘭の日本製鋼所室蘭製作所が世界一だそうですが。
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/life/gooeditor-20090316-02.html

何でそんな「二流」の技術の提供の見返りに、自分達で処理出来ない核のゴミを引き受けさせようとするのか。恥さらしもいいところでしょう。
モンゴルで温暖化対策したいなら、それこそ太陽光発電と風力発電だと思います。

>現在、スウェーデンやフィンランドでは、地下400-500メートル程度の深さの核廃棄物の処理場を作っているんだけど、これらに習ったものと思います。

これに関しては、現在、下記の映画が流行っているそうです。
機会があったら私も見てみようと思っております。

http://www.uplink.co.jp/100000/
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年06月01日 12:41
>それは単に、モンゴルの人達が原発に対し無知である

そんなことはないと思いますよ。
地震もすくないし、人口密度もすくないですから、
日本とまったく条件がおなじではないです。

>日本が途上国に支援できる技術は、原発だけではありません

途上国があくまで原発の導入を、要求してくる場合ですよ。
他の技術をいっしょに支援を取り付けたとしても、
ありえることだと思います。

「すでにじゅうぶん経済発展をとげた国が、
危険だと言って自分たちの都合で原発をやめてしまう、
われわれはどうやって経済発展させればよいのか」
という批判は、出てくるだろうと思います。

>http://www.uplink.co.jp/100000/

なかなか好奇心をくすぐるSFのご紹介、ありがとうございます。
ウラン鉱石とおなじ放射線レベルになるまで
10万年かかるというところから、出て来たものですね。
(でも、1%の放射線レベルなら、数十年で達するみたいだけど。)
Posted by たんぽぽ at 2011年06月02日 21:27
たんぽぽ様

>>日本が途上国に支援できる技術は、原発だけではありません
>途上国があくまで原発の導入を、要求してくる場合ですよ。

「それで温暖化対策に協力しろというなら」と書いてあるから、「モンゴルで温暖化対策したいなら、それこそ太陽光発電と風力発電だと思います。」って答えたんですけどね・・・。

>「すでにじゅうぶん経済発展をとげた国が、危険だと言って自分たちの都合で原発をやめてしまう、われわれはどうやって経済発展させればよいのか」という批判は、出てくるだろうと思います。

もはや言い掛りのような批判にも聞こえますが。
何の目的で原子力技術を欲しているのか、相手方の真の目的を調査・分析した方が良さそうです。
ま、相手の目的が何であれ、自国で大トラブルを起こしている原発技術の提供や、その見返りに自国の核のゴミを引き受けさせるのは、恥ずべき行為だと思いますけどね。
地球の裏側の国に戦争仕掛けて、劣化ウラン弾で自国の核のゴミを何100tfも投棄している国よりは、全然ましだけど。
でもその国と共同で契約しようとしてた(る?)んだから、なんともなぁ・・・

>>http://www.uplink.co.jp/100000/
>なかなか好奇心をくすぐるSFのご紹介、ありがとうございます。

SF??たんぽぽさんは既に御覧になったのかな?
私は見てないので断言出来ませんが、ドキュメンタリー映画のようですよ。

我が日本も、自国で核のゴミを最終処分しなければならないのですから、先行して取り組んでいる国のノウハウやその問題点について、一般の国民が知っておく事は非常に大切な事でしょう。
そのきっかけになり得る映画だと思いますけどね。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年06月03日 12:12
またまたコメントどうもです。
いつもお返事がちょっと遅くてごめんなさいね。

>って答えたんですけどね・・・

問題はそれで、モンゴル(技術導入国)が納得するか、ですよ。
日本とは事情もカチカンも違うので、
日本で日本人相手に議論するのと、おなじようにやったのでは、
説得はむずかしいだろうと思います。
(太陽光と風力では、国内のウラン資源を活用したい、
というニーズには応えられないでしょう。)

>もはや言い掛りのような批判にも聞こえますが

化石燃料でも同様の議論はありましたよ。
「先進国は化石燃焼を燃やして経済を発展させてきたのに、
われわれはそれが許されない」というような。
不公平なのは事実ですから、それを埋め合わせる義務は、
絶対にあると思います。


>SF??たんぽぽさんは既に御覧になったのかな?

ああ、いや、わたしも観ていないです。
リンクさきを見た印象なので、SFではないのかもしれないです。
(ちがったら、ごめんなさい。)

つぎのページに「SFのような」という文章がありますね。
「ような」だから、やはりちがうのかな?
http://www.uplink.co.jp/100000/introduction.php
Posted by たんぽぽ at 2011年06月04日 17:59
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