菅政権に不満のある人たち(小沢氏、鳩山氏とその周辺の議員など)が、
なにを考えていたのかを、見ていきたいと思います。
つぎのエントリは、民主党の議員(京野きみこ氏)のブログですが、
不信任案に賛成の準備をしてから、否決に転じて
いっぱい食わされるまでの、前のエントリで
お話したような経緯が、くわしく書かれています。
「内閣不信任案否決」
菅政権のどこに批判的なのかですが、
やはり、本来の民主党の理念から逸脱していくこととあります。
これは、官僚や既得権益層に叩かれて、公約をつぎつぎと
ほごにすることや、「小沢切り」のような「身内」の関係に
亀裂入れることなどを指していると思います。
そして彼らは、菅政権が本来の民主党の路線に
立ち戻ることを望んでいる、というわけです。
菅政権がみずから、本来の路線に「軌道修正」するのを、
期待していたのでしょうが、その気配がまったくないので、
不信任案賛成という極端な手段まで、検討したのでしょう。
あくまで「軌道修正」を要求しているのであって、
民主党を壊すことは、彼らにとって本意ではないのでしょう。
それで(党執行部から除籍をくらうなどすれば
べつでしょうが)みずから離党したり、新党を作ることが、
ほとんどないのもあるのでしょう。
菅首相が辞任を口にしたとき、「武士の情け」で
不信任案賛成を撤回したのは、本来は「身内」なのだから、
まともに攻撃してはならないという判断も、
あったのではないかと、わたしは思います。
エントリの最後に、菅政権を批判する理由が、
より具体的に述べられいます。
要約するとつぎのようになるでしょう。
1.から3.は公約違反に関することで、
3.から5.は震災対策に関係することです。
1. 国民の生活が第一という民主党の理念からの逸脱
2. TPPの推進
3. 復興と増税の一体化
4. 責任や実施体制のともなわない復興構想会議の性格
5. 放射線被曝の防止や被害縮小の手段の不徹底
6. リーダーとしての資質
菅政権の震災対策は、もうしぶんないとは言えないにしても、
結構妥当ではあるように思えて、問題ありと言われても、
ぴんと来ないかたも多いかもしれないです。
4.で触れられている、復興会議については、
「被災した人たちを置き去り、忘却する」と
言われたりして、ほかでも批判はあるようです。
自・公としては、解散総選挙で与党に返り咲くことが本来の目的なのですから、今回の不信任案提出には、躊躇する面もあったのではないかと思います。
今回の不信任案提出に最も積極的だったのは、民主党内の反菅勢力であったことは、疑う余地も無いでしょう。
総理は最終兵器である「解散総選挙」は使えない。
となれば「可決」⇒「内閣総辞職」しかない。
たとえ新人議員であっても、自分達の身分は安泰。
あとは内輪の争いに勝てば、再び自分達が主流派だ、と。
1.〜6.の理由なんぞ、どーでも良い。
やり方があまりにも汚い。ただそれだけ。
古代から徳川時代まで、その時々の首相に相当する人物がことあるごとに変わるし、戦前でも、関東大震災、二・二六事件、日米開戦直前、終戦直後、決って首相が替わっています。
昔と制度が違うとはいえ、今までやって来た責任者がさらに気を引き締めて難局に当たり・当たらせるようなメンタリティが日本人には希薄なのでしょう。
>1.~6.の理由なんぞ、どーでも良い
よくはないでしょう。
公約をほごにしてきたことは、3.11以前から批判されたことです。
民主党が信頼をなくし、支持率が下がっている
いちばん大きな原因だろうと思いますよ。
震災対策だって、ていたらくであってはならないでしょう。
(というか、震災復興がなによりも大事だという
趣旨のことを、おっしゃっていたのではなかったですか?)
>日本は国家的危機になると政治指導者を
>取り替えて当たる伝統があるようですね
小泉以降に関しては、みんな1年以下の短期政権なので、
なおさらその印象が強くなっていますね。
失策の責任を取るのは、おなじ人がやってはだめ、
という発想があるんだろうとは思いますが、
責任の矛先をあいまいにする目的で、
指導者を入れ替えることも、ままあったりしますね。
民主党は、この点を反省して、政権を取ったら、
首相を短期で入れ替えずに責任の所在をはっきりさせようと
してはいたんだけど、結局だめみたいですね。
(既得権益層に叩かれて、政権が長続きしない。)
Pulinさんはいつも意外な観点からの解釈をなさるので大変参考になります。
ところで
>日本は国家的危機になると政治指導者を
>取り替えて当たる伝統があるようですね
ですが,これは誰が取り替えるのかという点があいまいですね。問題はなんで首相(内閣),または有力政治家がこけたりするか,ですよ。これは闇に隠れて見えない部分の影響がありそうです。(陰謀論者と思われるので大きな声では言えませんが,例えばアメリカ,検察を含めた霞が関など・・・悪意ある不作為とかリークとか捏造とかね)もちろん,大失政があれば国民の声だって大きくなります。
いずれもマスコミを使って瑕疵を大々的に糾弾し始めます。そのあと「次は俺たちの番だぁ!!」といって椅子取り争いをおっぱじめる,という構図だと思います。
しかし,トホホ系の場合も多そうです。もう忘れたけど安倍さんとか麻生さんとかこのカテゴリーに入らないのかな?
そして菅さんの場合もまさにトホホ系なんです。今回の不信任劇は決して原発推進派の陰謀ではないですよ(無論反原発派でもない)。むしろ原発推進側としては菅さんが都合がよい。
今回のはあらゆる立場の反菅派(原発推進派も含みます)が呉越連合軍を構成して城を包囲した合戦劇だったのです。もちろん,寄せ手の中には民主党回帰派(真の民主党へ還れ!派)も数多く存在したわけでして。彼らは和睦の条件を提示して切腹回避の情けを掛けた。切腹の代わりに近いうちに開城することです。城主は一旦はそれを呑んだのです。
その後のことは健康に悪いので書かない方がいいですよね,みなさん。
おひさしぶりです。コメントありがとうです。
わたしは、あまり元気じゃなかったですよ。
>意外な認識の方々も多いのですね
それはたぶん、わたし以外のかたを指して、
おっしゃっているのだと思うけど、
「意外な認識」とされているのは、わたしのほうですよ。
(だれもなにも言わないけど、きっとみんな思っている。)
>今回の不信任劇は決して原発推進派の陰謀ではないですよ(無論反原発派でもない)
ご存知と思うけれど、ネットの一部では、
「原発推進派の陰謀」という見かたが支配的になってます。
たとえば以下のエントリやブックマークとか。
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/kamayan/20110604/1307198407
>今回のはあらゆる立場の反菅派(原発推進派も含みます)が
>呉越連合軍を構成して城を包囲した合戦劇だったのです
わたしも、そのように見ています。
自民・公明と、小沢・鳩山の関係は、つぎのエントリで言う
「信頼できる敵」なんだろうと思います。
http://kinpy.livedoor.biz/archives/51249891.html
>むしろ原発推進側としては菅さんが都合がよい
こんなこともありますしね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/204762296.html
>寄せ手の中には民主党回帰派(真の民主党へ還れ!派)も数多く存在したわけでして。
民主党内部に関していえば、公約逸脱の官邸・党執行部と、
公約の原点回帰を求める勢力との争いだと思います。
もっと言えば、「官僚主導対政治主導」の第3回戦ですね。
ついでに言うと、今度の不信任案に関しては、
政局の中心は民主党内にあると、わたしは見ています。
自民など野党各党は、不信任案を提出してはいますが、
しょせん脇役だと思います。
その意味では、10年前の「加藤の乱」とおなじと思います。
「加藤の乱」のときの森政権よりは、いまの菅政権は、
あしもとが揺らいでいると思うけれど、これも自公ではなく、
小鳩の攻撃が痛烈だった、ということだと思います。
>その後のことは健康に悪いので書かない方がいいですよね,
ははは。
わたしが、すでに書いちゃってますよ。(苦笑)
>「意外な認識」とされているのは、わたしのほうですよ。
これはまた意外ですよねえ(^o^)/
>「原発推進派の陰謀」
リンク先,拝見しました。リベラルの方がこのような見方に陥っているようですね。不信任を仕掛けた自民党こそ推進派の本丸なのに。
思うに,菅さんは未だに市民活動家のリベラルだと思われているんでしょう。労組幹部が労組を卒業するともう労働者意識がなくなることが多い。それと同じ構図で,すでに変質しているのは明らかなんですけどね。
菅さんはその場その場でどんなことでも口にできるタチですね。原発推進の役目を自覚しながら自然エネルギー推進も口にできる。理工系出身とは思えない論理性欠乏症です。
>10年前の「加藤の乱」とおなじ
なるほど,この時もトホホ系でしたね!加藤さん,この時はかっこよかったんだけど・・・うん,大変よく似た状況ですね。
>不信任を仕掛けた自民党こそ推進派の本丸なのに。
これは全く逆理ですね。すみません。以下のようなものでなくてはいけませんでした。これに訂正します。
「小沢系は脱原発を目指しているのに」
>これはまた意外ですよねえ
いや、意外でもないですよ。
ツイッターでも認識の合いそうなかた、数人しかいないですし。
やっぱり、わかりにくいことのようです。
>リベラルの方がこのような見方に陥っているようですね
最近、東京新聞がおなじ趣旨の記事を書いています。
これで我が意を得た、みたいになってますよ。
http://nemoji.blog.ocn.ne.jp/ashita/2011/06/63_c101.html
>思うに,菅さんは未だに市民活動家のリベラルだと思われているんでしょう
そういうところもありそうですね。
小鳩と菅を並べたら、菅を取りそうな人たちですね。
「あまりに保身的な」って、前に4つ続きのエントリを
書いたけれど、これも認識を共有できるかた、
ほとんどいらっしゃらないみたいです。
(これでお話が合うかただけが、内閣不信任案の、
わたしの認識も共有してくださる、という感じだったり。)
http://twitter.com/pissenlit_10/status/25923896993652738
実際に、運動に関わるとかして、このタイプの人に、
かなり嫌な思いをさせられないと、
なかなかぴんと来ないのかもしれないです。
>「小沢系は脱原発を目指しているのに」
「小沢一郎氏は原発推進派」という認識が定着していますね。
わたしも、自分で調べているんだけど、そう断定する
じゅうぶんな根拠は見つかってないです。
WSJに小沢氏のインタビューが出ているけど、
これを見ているかぎりでは、民主党の公約と同じ、
中庸的なスタンスだと思います。
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_242207
菅首相が集めている識者についても、
「原発で食っている連中をいくら集めてもだめだ」と
言っていて、「利権」は関係なさそうですし。
いやあ,ご紹介の根本二郎さんのブログ,そしてそこで紹介されていた東京新聞の記事をみました。
これはひどいですねぇ!全く逆に行ってる!
これまで反原発を一言でも口にしなかった人々が怒りの矛先を違う方向に向けている!この構図は怖いです。
菅さんが脱原発だ,ってどうして思えるのかな?不思議でたまらん。
確かに浜岡は一旦は停めたし送発分離も口にした。自然エネルギーも。
だけどその後何もないですよね。一発ブチ上げただけで。
この状況はとても不思議なので,いくつか推測してみます。
ただし,この続きは私のブログで。TBするのでお待ちください。
小沢系ですが,少なくとも,不信任案に賛成して除名された松木議員は脱原発を明言,断言しておりますよ。菅さんサイドで脱原発は誰がいますか?もし菅さんが脱原発派であれば,脱原発派の議員を内閣に取り込むように画策するはずですね。そういうのに抵抗して不信任提出なら,不信任劇は原発推進派のたくらみと言えるかもしれんけど,全くそうじゃないでしょう?
わたしのつたないブログへの言及と、トラックバック、
ありがとうございます。
ああ、いえいえ。
わたしのほうも、ひとりでやっていると、不安になってくるので、
認識の合うかたがいらっしゃると、それだけで励みになります。
>小沢系ですが,少なくとも,
「小沢一郎は原発推進派だ」というのは、
たとえばつぎのエントリが、発端のひとつみたいです。
「2007年の参議院議員通常選挙から立場を変えたということは、
民主党は代表が小沢一郎氏になってから原子力政策で、
より積極的になった、ということになる」と書いています。
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51568656.html
わたしがおなじ資料を読んだかぎりでは、
2009年の政策INDEXまで、民主党の原子力政策に
目立った変化はないように思いましたが。
http://taraxacum.seesaa.net/article/200355421.html