2011年07月10日

toujyouka016.jpg マーチンゲール

前のエントリの最後で、「マーチンゲール」を出しましたが、
ご存知ないかたもいらっしゃるのかな?
ギャンブルで、これを使うとかならず勝てる、
すなわち「必勝法」であると、触れ込んであったりします。

オンライン・カジノでもマーチンゲールが紹介されることが
あるらしいのですが、結構やばいのではないかと思います。
(マーチンゲールを使って、大損したと書いているブログを、
見たことがある。)

 
「マーチンゲール」とは「賭け金倍増法」とでも
言えばいいのかもしれないです。
どうやるのかというと、はじめに100円(比較的小額)を賭けます。
勝てばつぎも100円を賭けますが、負けたときは2倍の200を賭けます。
ここで勝てば、つぎの賭け金は100円にもどしますが、
負けたときは、さらに2倍の400円を賭けます。

こうして勝てばつぎは100円、負けたらいまの2倍の額を賭ける、
という賭けかたを繰り返します。
これを使って、たとえば、5連敗すると
100+200+400+800+1600=3100(円)の負けになりますが、
6回目は3200円を賭けるので、勝てばそれまでの負けを
全部取り戻した上、100円だけもうけることになります。

たくさんもうけることこそできないですが、
何連敗してもつぎに1回だけ勝てば、黒字にすることができます。
そしていくら「つき」がなくても、いつか勝てるときが来るでしょう。
これがマーチンゲールは「必勝法」と言われるゆえんです。


もちろん、「必勝法」なんてうまいお話はありませんよ。
どこで破綻するのかというと、マーチンゲールを
続けていると、いつかどこかで取り返しのつかない
大損をするかもしれない可能性がある、ということです。

ダレル・ハフ著『確率の世界』41-45ページに、
コイン投げのゲームで、マーチンゲールを使ったときの
シミュレーションがあるので、こちらにご紹介しておきます。

martingale050.jpg

martingale051.jpg

martingale052.jpg

出資金をたくさん用意して、プレイ回数の上限を増やせば
たしかに負ける確率は小さくなるし、
プレイ回数が無限回の極限で、負けの確率はゼロに収束します。
ところが、上限を増やすほど、不幸にして負けたとき
取られる額が多くなり、無限回で無限大に発散することになります。

つまり、負ける確率を下げようとして、
出資金をいくらたくさん用意しても、万が一負けたとき、
それを全部取られる可能性がかならず残っている、ということです。

それゆえ、マーチンゲールは、莫大な損害を受けるリスクを
わずかながら、つねにはらむことになります。
(しかも出資金を多く準備するほど、損害が大きくなる!)
まともな(?)ギャンブラーなら、マーチンゲールだけは
やめておけと言うのでないかと思います。


コイン投げのように勝つ確率が1/2だとすると、
n連敗する確率は、(1/2)nになり、取られる額は、2n-1になるので、
期待値はE(lose)=(1/2)n・(2n-1) = 1-(1/2)nになります。
またn-1連敗後n回目に勝つ確率は1-(1/2)nで、
得られる額は1なので、期待値はE(win)=1-(1/2)nです。

両方合わせると
E(win) - E(lose) = 1 - (1/2)n - {1 - (1/2)n} = 0
なので、マーチンゲールによらず、でたらめに賭けたときと
儲けの期待値は同じということになります。

賭けかたをいかに工夫しても、期待値を変えられない、
という、数学の本に書いてあることは正しく、
マーチンゲールは「必勝法」でないことがわかります。


付記:
賭けのプレイヤー全員がマーチンゲールを
使ったらどうなる?という、疑問があると思います。
このときは、特定のプレイヤーの莫大な損失という犠牲の上に、
他のプレイヤーたちがみんな少しずつもうける、
ということになるだろうと思います。

多数のプレイヤーの少しずつの犠牲のもとに、
少数のプレイヤーがしこたまもうけるという、
「宝くじ」の裏返しだと言えるでしょう。

posted by たんぽぽ at 18:18 | Comment(4) | TrackBack(0) | 科学一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
阿刀田高式の、パチンコ必勝法。

(1)
前日に店内を見回って、よく出ている台をチェックしておく。

(2)
翌日、その台を順繰りに回る。一晩で全ての台の釘を打ち直すのは無理なので、どれかは出るはず。

でも、昔の機械式の台ならこれで勝てたかもしれませんが、コンピュータ制御されてたら無理でしょうねえ。そもそも僕はパチンコをよく知らない(笑い。
Posted by キンシャチ at 2011年07月11日 08:37
当たるまで予言を続ける。そして当たったら「予言の通りだろう」みたいなネタを思い出しました。
Posted by pulin at 2011年07月11日 10:27
キンシャチさま、コメントどうもです。

>阿刀田高式の、パチンコ必勝法

そんなのがあるのですね。
(でも、どこかで聞いたことがあるような...)

この場合は、必勝法が数学的に存在することがありますよ。
単純に確率に運を任せるのではなく、人間が釘のあまさを
操作するので、「戦略」が入ってくるからだけど。
(「ゲーム理論」の対象になる。)

カジノのルーレットでも、ディーラーが操作しているときは、
裏をかいてもうけることができるみたいですね。
Posted by たんぽぽ at 2011年07月12日 22:27
pulinさま、コメントどうもです。

>当たるまで予言を続ける。
>そして当たったら「予言の通りだろう」みたいなネタを思い出しました。

ははは。そういえばそうですね。
それゆえマーチンゲールは「必勝法」と誤解されるのだな。

問題は、当たるまで予言が続けられないことがあること。
Posted by たんぽぽ at 2011年07月12日 22:28
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