いいがかりじみた理由と言えば、わたしが問題と思うのは、
「TBSの意図的な工作」と信じる人たちの中に、
「サブリミナル効果」などと言う人がいることでしょう。
http://www.zakzak.co.jp/gei/2006_07/g2006072605.html
|この映像を見た放送評論家の志賀信夫氏は、安倍氏の顔写真が映った瞬間、
|「サブリミナルっぽい。この場面では全く関係ないからね」と話した。
関係あれば当然ですが、関係なくてもサブリミナルとされて、
いずれの場合も、「意図的」ということになりそうですね。
(いまの日本の放送基準では、NHKも、民放も、
サブリミナル効果を使うことは、禁止になってはいます。
とはいえ、731部隊の映像は、安倍氏の映っている時間が長くて、
サブリミナル効果とは、言えないでしょう。)
わたしが、「いいがかりじみた」と考えるのは、
強引にサブリミナル効果と、決めつけているのもありますが、
それ以上に、サブリミナル効果は根拠がなく、
いわゆる「疑似科学」である、ということがあります。
たとえば、早まわしにするなどして、存在することも、
内容も知覚できないかたちで、映像や音声を入れると、
観た(聴いた)人の、意識下の知覚が刺激を受けて、
なにか効果があらわれるというのが、「サブリミナル効果」です。
意識下の知覚、潜在意識というものは、たしかにありますが、
問題なのは、サブリミナル効果という方法で、
それに作用をおよぼすことができるか、です。
ことの発端は、1957年、ニュージャージーの映画館です。
「コーラを飲もう」というメッセージの入ったこまを、
映画のフィルムの中に、5分おきに入れたら、映画を観た人が、
コーラを買うようになって、売り上げが伸びたというものです。
メッセージは、映画を観ている人には、見えないのですが、
潜在意識に働きかけるので、コーラが飲みたくなるのだそうです。
ところが、これを行なった、マーケティング業者は、
アメリカ広告調査機構の、要求があったにもかかわらず、
くわしい状況を明かさず、論文などの報告もしませんでした。
これとはべつに、心理学者が、「コーラを飲もう」という、
2.7ミリ秒間のメッセージを、15分で40回与える条件で、
実験を行なったのですが、被験者がのどがかわく傾向は、
とくに見られなかったのでした。
もうひとつ有名な事件で、1982年に、ロック音楽には、
悪魔のメッセージが逆まわしに、潜在意識レベルで吹き込まれていて、
これを聴いた若者たちは堕落するという、抗議がありました。
ロックのレコードには、警告ラベルを必ず貼る法案が、
アーカンソー州の議会で、可決する事態にまで発展しました。
なんでも、ロックのレコードを、逆まわしにすると、
くだんのメッセージが、はっきり聞こえるというのですが、
実際にためしてみて、聞き取れた人はいなかったそうです。
また潜在意識と言わず、はっきり聞こえる会話を
逆まわしにして、どんな内容のことをしゃべっているのか、
当ててもらうという、実験も行なわれましたが、
やはり偶然以上の確率では、当たらなかったのでした。
ほかにも、サブリミナル効果を利用した、聴くだけで、
記憶力が高くなるという、テープが売られたりしていますが、
これも、有意な効果がないことが、実験でわかっています。
また、アメリカ軍が兵士の強化に、サブリミナル効果を、
利用したことがありましたが、これも失敗に終わりました。
広告のデザインには、性的な絵柄が隠されているとか、
建物のデザインには、洗脳的メッセージがこめられている、
なんて、妄想じみたものもありますが、
これらも「雲を眺めて人の顔を見つける」程度のことにすぎないです。
サブリミナル効果は、これまでにも、たくさんの実験が
なされてきましたが、はっきりと検出できないことがわかっています。
そうした映像(音声)が、実際に埋め込まれていたところで、
人間には見えない(聴こえない)ので、
意識的であろうと、潜在意識であろうと、感じ取れなくて、
脳は処理のしようがない、ということのようです。
サブリミナルの悪用で、購買意欲や、政治思想に、
影響を与えうるのではと、危惧する人たちは、後を絶たないようです。
こうした潜在意識の「技術」は、じつは役に立たないですので、
これをご覧のあなたは、ご安心なさってだいじょうぶですよ。
参考資料:
『ハインズ博士「超科学」をきる』(387-400ページ)
テレンス・ハインズ著、井山弘幸訳、東京化学同人
「サブリミナル効果」 はてなダイアリー・キーワード
2006年08月07日
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Weblog: カナダde日本語
Tracked: 2006-08-09 17:59
TBSが安倍晋三ポスターを意味無く出して印象操作
Excerpt: 小ネタで申し訳ないけど、2ちゃんねるで「安倍晋三」と検索したら、以下のスレッドが出てきたから紹介。
Weblog: 風に吹かれて
Tracked: 2006-08-09 22:41
サブリミナルの効果は確認できていない、とはよく聞く話ですが、具体例を挙げておられるので参考になります。
ところで、TBSの免許取り消し運動に絡んでいるかもしれないさるハンニチのお方が、美爾依さんに続いて私も正式なターゲットにしたらしくて(ぶいっちゃんのところのコメント欄で、チキンとか卑劣なやつとか書いたので逆上したのかもしれない)、やつを監視するスレに、おそらくやつ自身が書いたと思われる宣戦布告状が出ています。
こっちもヒマじゃないんで、あいつやなんとか新町のことは、やむを得ない場合を除いて、もう公開の場では書かないことにしましたのでご連絡します(このコメントが最後になります)。
ここのコメント欄にも、FC2みたいに「管理者にだけ表示」のオプションがあれば良いのに。
ハインズの本は、絶版なので、手に入りにくいけど、
「はてなダイアリー」のリンクはすぐ参照できて、
いっぱい書いてあるので、ご覧になるといいと思いますよ。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D6%A5%EA%A5%DF%A5%CA%A5%EB%B8%FA%B2%CC
有名な「コーラを飲もう」の、マーケティング業者、
機械を作って特許を取ろうとしたら、マスコミに見つかって騒がれて、
そのとき、じつは、じゅうぶんなデータは
なかったことを白状した、という顛末があった、なんて、
わたしもはじめて知って、「なるほどねえ...」と思ったけど。
ほかにも、サブリミナル効果は、光の速度で伝わる、なんて、
疑似科学的説明が使われたり(人間の神経伝達は、
光よりはるかに遅いことがわかっている)、
潜在意識が、精神分析の無意識とむすびつくことも、あったりしますが。
それ以前に、731部隊のビデオは、
サブリミナル効果ですら、ないんだけれどね。
(やっぱり、こっちのほうが、問題かな...?)
安倍の写真が出ている時間が、じゅうぶん長いですからね。
どうやっても、人間には見えないくらい、
映像の出ている時間が短いのが、「サブリミナル効果」なのですし。
>やつ自身が書いたと思われる宣戦布告状
よそのサイトの人の批判をしちゃうと、
本人に見つかったとき、トラブルのもとになったりして、
やっかいなんですよね...
(わたしのところも、見つかったら、なんか言われるのかな...?)
(あ、書かないと言いながら書いてしまった。別にあいつを呼び込もうとしているわけではないけど、被害に巻き込んでしまったらゴメンナサイ。これでほんとにやめときます)
> サブリミナル効果は、光の速度で伝わる
(笑)
> 潜在意識が、精神分析の無意識とむすびつくことも、あったりしますが。
精神分析の理論というのも、検証しようがありませんし、フロイトには「トンデモ」的側面が濃厚にあると思うんですが、いかがでしょうか?
「精神分析入門」は昔読みましたが、あの続編のほうだっけ、フロイトって超常現象を信じてたんですね。ちょっとびっくりした記憶があります。
興味なきにしもあらず、だったりもするんだけどね...
(でも、あのかたのブログを、あまり読まないで、
言っちゃったことも、いくらかあるのが、しばし気になるかな...)
>精神分析の理論
「精神分析」も、じつは、ハインズの本にあるんだけど、
ご賢察の通り、疑似科学とされてますよ。
(これは、part 2のほうに出ていて、まだ売っていると思う。
BK1は、「お取り扱いできません」になっているが...)
http://www.bk1.co.jp/product/1226843
専門の人のあいだでも、科学とは見なされず、
カウンセリングの手法のひとつと、されているような感じです。
http://psychodoc.eek.jp/abare/analysis.html
つい、あそこのことを書きそうになったんですが、さすがに自制しました。
精神分析については、やはりそうでしたか。
情報ありがとうございます。
あと、はてなの方に「kojitakenの日記」というのを先月末に開設し、FC2の私のブログからリンクを張ってますので、よろしかったらお越しください。
>本人に見つかったとき、トラブルのもとになったりして、
>やっかいなんですよね...
ふたつ前の、わたしのコメントの最後、他サイトの批判自体、
いっさいケシカランと言っているみたいだな。(苦笑)
(そうじゃなくて、なんて言うのかな?
無節操というか、悪い意味でオチ板みたいというか、
いない人の悪口言っている、みたいな雰囲気になると、
やばいかもしれないということね...)
kojitakenさま
>つい、あそこのことを書きそうになったんですが、
お気をつかわせて、すみませんです。
もしなにかありましたら、メールをくださればと、思います。
>精神分析
サブリミナル効果のビリーバーの無意識観は、
精神分析で言う無意識と、よく似ている、なんてことも、
ハインズの本に書いてありましたね。
>はてなの方に「kojitakenの日記」というのを先月末に開設し
ご紹介、どうもありがとうございます。
さっそく拝見させていただきます。
(のちほど、足跡をつけさせていただきますね。)
恥ずかしいはてなの日記にご来訪くださってありがとうございました。昔のプロ野球の有名選手だった張本勲氏が、被爆体験について「徹子の部屋」で語るなど、ちょっとずつとはいえ、マスメディアの方でも反戦・平和の言論が高まってきました。
私も、忘れていた平和主義を、ブログを書き始めることで思い出したような気がします。その意味で、危険な戦争屋・安倍に感謝しないといけないのかなと思う今日この頃です(笑)。
今後ともどうぞよろしく。
今日の「きっこの日記」から美爾依さんの「カナダde日本語」にリンクが張られているのを見て、万歳を三唱したんですが、その日の「カナダde日本語」の記事からこの記事にリンクが張られています。
これは快挙かもしれません。
もっとも、コメント欄の上のほうを見る人も増えそうですけど(笑)。
ああ、いえいえ、はてなの日記も、内容があると思いますよ。
(というか、わたしなんて、ブログをふたつ書いている、
というだけで、すごいと思ってしまいます。)
>その意味で、危険な戦争屋・安倍に感謝しないといけないのかな
危険な戦争屋がいなくて、平和主義も忘れていいのが、
いちばんいいんだけどね...
(ところで、いまの政権があんな調子でなければ、
原爆記念の行事も、もっと盛大だったのでは?という気がする...)
>この記事にリンクが張られています。
きゅうにアクセスが増えたんで、なにごとかと思っちゃった。
美爾依さまのところから、リンクがあるのは、
アクセス解析でわかったんだけど、そこはさらに、
きっこさんのところから、リンクされていたのね。
(それにしても、みょうにいっぱい増えているので、「?」と思ったけど。)
私のFC2ブログへのアクセスも、未明に更新して記事をAbEndにTBした昨日より、何も更新していない今日の方が多くなっています。面白いなあと思うのは、「きっこの日記」及び同内容の「きっこのブログ」を見た人のうちどの程度の割合で美爾依さんの「カナダde日本語」にアクセスし、さらにどの程度の割合の人が「カナダde日本語」からリンクを張られているたんぽぽさんや私の記事にアクセスしているかがわかることですね。
また、2ちゃんねるは、全体のアクセス数はものすごくても、個々のスレのアクセス数は知れていることもよくわかりました。
わたしのところのアクセスが、とたん減っちゃいました。(笑)
「おこぼれ」は、たまたまいちばん上だったから、
なんとなく見てみたというのが、多かったみたいです。
(この手の「おこぼれ」は、クリックしてみたというだけで、
ちゃんと読んでないかたも、案外多いのかも、という気もしています...)
美爾依さんのところでお見かけし、やってまいりました。
この件、米国ではかなり徹底して調べられているのですね。その上での否定的見解ですから、信用するに足りるな、と今回感じました。
認知に関する科学は、どうしても、思いこみなどのバイアスが入りがちです。
リテラシーを高める意味で、専門の方にどんどん啓蒙していただきたいな……と感じております。
> サブリミナル効果は、光の速度で伝わる
神経系を伝わる刺激の伝達速度を、「ロバが引く馬車の速さ」と喩えたのは、故C.セーガン博士でしたっけ(爆)
わたしのウェブログに、起こしくださいまして、
まことにありがとうございます。
>米国ではかなり徹底して調べられているのですね。
うーん、どうなのかなあ...
わたしが参照した本は、アメリカ人なので、アメリカの事例が多い
というのも、あるのではないかと思いますよ。
(発祥の国ゆえに、関心を持つ人が多いのは、考えられるけれど...)
TBSの放送で騒いでいる人たちは、プライミング効果や、
光誘発性発作(ポケモン事件で話題になった)まで、
持ち出しているけれど、どうも脳科学や、心理学、精神医学の、
いろんな知識が、ごっちゃになっている感じですね。(しかも、誤解も多い。)
こうした人たちが、どの程度の認識で、
「放送権剥奪」なんていきまいているのか、わかったけれど。
あと、わたしは、専門の人じゃないですよ。
(って、わたしのことを、言っているんじゃないのかな...?)
>「ロバが引く馬車の速さ」
す、すみません、これは、ぜんぜん知らないです。
(おもしろそうなんで、調べてみたけど、やはりわからなかった...)
業務連絡ですが(笑)、本家も分家も夏休みでしばらく更新を停止します。ご想像のつくであろう何人かのおともだちにもお知らせしてありますので、たぶんブログのアクセス数が激減するでしょう。おこぼれ一転、どれくらい減るか、帰ってきてから確認するのが楽しみです(笑)。
しょうもないコメントでごめんなさい。
いえいえ、ご連絡、ありがとうです。
ゆっくり休んで、よい記事をいっぱい書いてくださいね。