2011年09月21日

toujyouka016.jpg ゼロ歳児保育がなくなる(2)

9月4日エントリで、自民党が中長期政策体系で、
ゼロ歳児保育を削減しようとしていることを、紹介しました。
ここで自民党は、保育を母親にやらせようとしているのだろう、
というお話を、わたしはしたのでした。

このほかに、ゼロ歳児保育への税金投入を削減しよう、
という目的があるようです。
こちらのエントリで、引用もとのリンクつきで、紹介されています。

「自民党政権になると0歳児保育はなくなるのか?」

 
========
山谷えり子が「今、ゼロ歳時の保育に月に50〜60万円かかっているんですよ。
(中略)それなら、企業に月に10万円あげるから、
母親にもっと育児休業を取らせてあげる政策があってもいい」とか
「ゼロ歳児保育にかけるお金は、家の中でしっかりと
赤ちゃんを育てていらっしゃるお母さんに、
児童手当てとして何倍も支給すればいい」と言っていたり、
下村博文が「極端な例では、0歳児保育の場合、
赤ちゃん1人につき税金投入額は月 66万円、
つまり1人の0歳児に年間700万円もの税金をかけているのです。
むしろ直接母親に20万円をお渡しして、家庭で教育をし、
必要があれば公的機関がフォローする」と言っているように、
現在0歳児保育にかかってる費用を家庭保育(あるいは企業)への
補助に移行しようというのであって、
========


ここで、自民党の山谷と下村は、ゼロ歳児保育が
ひとりあたり月に50-60万円、という数字を出しています。
ところが、この数字に恣意性があることが、
つぎのエントリでしめされています。

「鈴木亘「保育所の規制緩和」--なんでわざわざややこしいことを」

「やっぱり出た!保育料2万円、税金50万円(うんざり)」

「50万円」というのは、こちらのエントリによると、
「鈴木亘氏の計算によるもので、根拠不明」となっています。
出典も怪しいですが、さらに「50万円」というのは、
東京の区部や一部の市の公立の保育所に
かぎったお話だったりします。

東京都の自治体は、保育にお金をかけられるところが多く、
税金を投入と言っても、「50万円」の9割以上が
自治体の負担で、国庫によるものではないです。
(山谷や下村の言い分は、国税が使われているように見える。)
そして他県の自治体からは、「東京は別格」と言われるくらいで、
東京以外はこれほど税金が投入されていません。


保育所に在籍するゼロ歳児は、日本全国で48000人くらいです。
このうち東京都の公立の保育所に在籍しているのは
1500から2000人くらいと推定されます。
「50万円」というのは全体の3~4%の、とくに財政的に恵まれた
ゼロ歳児だけを取り上げている、ということです。

山谷や下村の言い分は、じつに偏ったもので、
実態を現わしているとは、とても言えないと思います。
こうした恣意的な切り取りを利用して、自説を主張するのは、
いかにも自民党らしいと言ったら、言い過ぎでしょうか。


ところで、自民党の片山さつきが、こんなツイートをしたそうです。
http://twitter.com/katayama_s/status/17196307554762752
========
子ども手当、3歳以下の増額財源に、保育所や保育予算を削るって、
最悪の政策!今日どこで話ても、これはおかしいと皆さんおっしゃいます
========

増額財源のために保育所を削るのは、まさに上述の
山谷えり子や、下村博文のことではないのかね。
「これはおかしい」というのは、自民党に言うことだと思いますよ。

謝辞:
9月4日エントリのコメント欄で、片山さつきのツイート
紹介してくださった、kirikoさま、ありがとうございます。

posted by たんぽぽ at 23:33 | Comment(8) | TrackBack(1) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
「自民党の山谷と下村」のような人達は育児は家庭の母親がなすべきこととして、昔の「標準家庭」モデルを念頭に置いているのでしょうが、昔それが可能だったのは、親族や地域の有形無形のサポートがあったからで、昔だって家庭の母親だけで育児がうまくいっていたわけではないですね。
母親にお金だけ渡してこれで育児しとけというのは、親が子供に金だけ渡して好きにしとけというのと同じ無責任なほったらかしではありませんか。
Posted by pulin at 2011年09月22日 05:43
いや、本当にpulinさんの仰るとおりだと思います。
それこそ戦前なんかは、殆どの子供は母親だけでなく家族、親族、ムラと言った社会が、育てていたんだと思います。

ちと話がずれるのかもしれませんが・・・
子供手当てについても、単に銀行振り込みや、ましてや税金控除として渡すのではなく、親子同伴で乳幼児健診や学校の面談に来た時に、次のそうした機会までの間の振込み継続手続きをする、と言うような方法は取れないのでしょうか?
で、その際、行政側に必ずプロのカウンセラーを配して、行政が親子の精神面のケアをするとか。
勿論、経費はかかるでしょうし、全ての親子を引っ張り出すには、手当ての額面もそれなりに増やさないとならないでしょう。
が、自宅で孤立して子育てだけをしている母親に対して、行政が心を向けることが、今、とても求められているような気がします。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2011年09月22日 12:40
子どもを連れて行っていい職場ってどれくらいあるんでしょうね?子どもの世話をし合っててくれる職場がどれくらいあるんでしょうね?日本のホワイトカラーやシステム化されたアルバイト環境にはもうありませんね。

こういった動きは女子供を世の中から隔離している風にも見えますが、私からは逆に男が家庭から隔離されて収入のための奴隷扱いになっているように見えます。だからきっと、「結婚すると男が不利益を被る」と考える男たちが増え、結果的に未婚率が上がっているのだと思います。そうですよね、このような保守的な考えでは男にも女にも不利益があると思われてもしかたありません。だって、このままでは「結婚したのにお互いが隔離されている」といった夫婦が増えるだけでしょう。

そういえば。実は「子どもを○歳まで独りにさせてはいけない」という法律のない「先進国」は珍しいです。3時になると親がちょっと職場を抜けて学校に子どもを迎えに行って塾や学童保育に送る、なんて姿はもう不可能に近いんでしょうか。これは、日本から見ると「アジアのちょっと遅れた国」と見られる国の日常なんですが…

こういった場面からも、「育児は家族以外が触れてはいけない」といった誤解が垣間見えます。関わろうが関わるまいが、どちらにしろ人間はその地域に少なからずとも責任があるものと思います(そうでなければ、どうして事件が起きた時に警察に通報する義務が一般市民に課せられているのでしょう)。あまりにも多くの人が「自分の子どもじゃないから」または「俺は男だから」と一生懸命逃げ回っているように見えます。実は、ここから「保育はその家庭のみに責任を負わせよう」「保育の責任は女の役割だ(卑近な例で言うと、誘拐事件が起きた時、妻が夫に罵倒されるといったシーンは現実にもあるものです)」といった考えが浮かび上がってきていますよ。これは、伝統の保守ではなく身勝手と言うのではないでしょうか…
Posted by mmm at 2011年09月23日 09:20
pulinさま、
このエントリにコメント、ありがとうございます。

>昔それが可能だったのは、親族や地域の有形無形のサポートがあったからで、

そういえば、高度経済成長期に育児ノイローゼは、
どのくらいあったんでしょうね?

いまと同じくらいあったけど問題にならなかったのか、
それとも本当にすくなくて、そのゆえんは、ご指摘のように、
親族や地域のサポートがあったからなのか。
(このあたりを調べている人はいないかなと、ちょっと思いました。)
Posted by たんぽぽ at 2011年09月23日 22:53
ニャオ樹・ワタナベさま
このエントリにコメント、ありがとうございます。

なるほど、なかなか興味深いですね。

でも、おっしゃるような方法だと、手当てを受け取るのが
やはりうっとうしくなるように思います。
2-3ヶ月に一度は、手続きが必要そうですからね。
結局、面倒だから1年分の手続きを一括して行なう、
なんてかたが、たくさん出て来るように思います。
Posted by たんぽぽ at 2011年09月23日 22:54
mmmさま、
コメントをたくさん、ありがとうです。
わたしのお返事が遅れてもうしわけないです。

>女子供を世の中から隔離している風にも見えますが、
>私からは逆に男が家庭から隔離されて収入のための
>奴隷扱いになっているように見えます

まあ、両方でしょうね。
女は家庭、男はお仕事ときっちりわけるシステム、
ということなのでしょう。
子どもを育てることができても、男たちは特権とは考えなかったので、
それを不利益とは、長いこと考えなかったのでしょう。

あと、男性の未婚志向が増えているのは、
非正規雇用が増えたからだったと思いますよ。
安定した職につくまで、結婚してはならない、
という社会通念がまだまだあるのでしょう。


>実は「子どもを○歳まで独りにさせてはいけない」
>という法律のない「先進国」は珍しいです

なるほど。

>あまりにも多くの人が「自分の子どもじゃないから」

子ども手当てに反対する人を見ても、
「自分の子どもじゃないから」と言って、逃げている感じですね。

>これは、伝統の保守ではなく身勝手と言うのではないでしょうか…

上のpulinさま宛てのレスにもあるけれど、伝統を言えば、
子育ては親族や地域がサポートする、というものでしょうね。
高度経済成長期のかぎられた時期に定着していたものを
「伝統」だと思い込むのは、こうした場合の「お約束」です。
Posted by たんぽぽ at 2011年09月24日 10:57
山谷氏が企業に月10万手当てをあげるからって、とおっしゃってるようですが、その労働者が稼ぎ出す収益をどう考えてるんだろうね。
仮に休んだ分100万円の収益を失うことになれば企業は10万円なんていらないと思います。
それはそのひとが営業職じゃなくても会社全体として割り振れば一人一人がセールスを稼ぎだしていることになりますからね。

もちろん働き蜂はよくありませんので、あまり働かされても生産性が落ちるから!ってクレームしないといけないですが。。
バランスが難しいところでありますが、あんまり稼ぎ出すものを見くびられても、と思うし、公的な保育支援の拡充が先と思うのよね。
Posted by うがんざき at 2011年09月26日 13:50
うがんざきさま、こちらにもコメントありがとうです。

>その労働者が稼ぎ出す収益をどう考えてるんだろうね。

たぶん、考えてなさそうですね。
労働者が稼ぐ収益ぶんの交付を増やせないとすると、
企業に規制をかける必要が出て来くるでしょう。
自民党がそんなことをするとは、ちと思えないですね。

じつは、リンクしたエントリによると、
育児休業に関する企業への助成というのは、すでにあるそうです。
多くの中小企業は存在を知らないか、知っていても
手続きが面倒なので利用しないらしいけれど。
http://d.hatena.ne.jp/debyu-bo/20110825/1314201624

企業に10万円あげる制度を作ったとして、
利用してほしいなら、手続きは簡略にする必要があるし、
簡略になれば、不正受給の問題が出て来るでしょう。
(不正受給に関しては、子ども手当てのとき、
自民党はずいぶん騒いでくれたけれど。
それとも不正受給するのが企業であれば、自民党は甘い??)
Posted by たんぽぽ at 2011年09月27日 21:22
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