2011年11月29日

toujyouka016.jpg 男女で脳に違いはない

男女で脳に違いがあるとか、「地図が読めないなんとか」とか
「話を聞かないかんとか」とかいう「とんでも」話に
へきえきしているかたは、多いだろうと思います。

そんな男女脳の違いに、科学的根拠がないことについて、
要領よくまとまった記事があるので、ご紹介したいと思います。

「男性は数学に、女性はマルチ行動に優れているのか?」

 
はじめに、男女の脳は生殖機能において差はあるが、
知的機能や認識においては差がないとしています。
このあたりは、これをご覧のかたには、常識的と思いますが、
それがあらためて確認されることになります。

こう(の)ように生殖機能において、男女の脳には違いがあるが、
いわゆる知的機能や認識、例えば言語能力、記憶力、
理論形成力などでは、男女の脳に全く差がない。
つまり、差はむしろ男女間というより個々人の間にある。

一時期話題になった「脳梁の違い」説についても、言及があります。
1982年に切断されホルマリン漬けされた脳を調査したある学者が、
女性の方が左右の脳を繋ぐ神経の束の部位、
つまり脳梁(のうりょう)が厚いと発表した。
そのために女性の方がマルチ行動ができるという説を立てた。

しかし、彼が調べたサンプルの脳は僅か20個に過ぎなかった。
現在、MRIを使い、100人もの脳梁を調べた結果、
男女でこの部位の厚さに違いは見られなかった。

1982年の『サイエンス』に載った論文がきっかけで、
脳梁の形状に男女で差があり、これが男女の能力の
違いになっていると、考えられたことがあったのでした。
そののちの研究で、1982年の研究は反証され、現在では脳梁の形状は、
男女で差があるかわからない、というのが無難な見解となっています。

「脳の解剖学的な男女差」
「未熟な繁茂から選択による成熟」


わたしがはじめて知って意外に思ったのは、
人間の子どもは2歳半まで自分の性を認識できないことです。
脳が未発達で生物学的に性自認が持てないということです。

2歳半になるまで幼児は、自分が女なのか男なのか認識できない。
なぜなら、それを認識させるニューロンが十分に
コネクションしていないからだ。

ちまたにあるおもちゃや服などは、そのほとんどが
赤ちゃんのうちから男女で区別されていますが、
これはじつはまったく無駄ということがわかります。
赤ちゃんは、自分の性が男女のどちらなのか、
脳が発達してなくて学習ができないからです。

赤ちゃんのおもちゃや服を男女で区別するのは、
じつはまわりにいる大人のためなのかもしれないです。


付記1:

むかし、民主党の男女共同参画推進本部が、
「男女脳の違い」の勉強会を開いたことがありました。

「男女脳の違い」
「男女脳の違い?(2)」
「黒川伊保子」
「民主党共同参画の現状」


付記2:

つくる会系(自由社)の教科書に、「近年では脳科学の研究が進み、
脳の構造やはたらきの一部に男女のちがいがあることが
分かってきた」と書かれている箇所があります。

しかし上述のように、知的機能や認識において、
男女で脳の差はない、というのが現代の脳研究の理解です。
つくる会系教科書はまちがいを書いていることになります。

「つくる会の教科書が「男女脳」」

posted by たんぽぽ at 22:40 | Comment(11) | TrackBack(1) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
男女をはっきり別けられるものではないということは、性分化疾患や性同一性障害などの事例からもわかります。
「男」「女」はグラデーションでつながっているのが実際なのでしょう。

http://d.hatena.ne.jp/Pulin/20100903/1283461772
Posted by pulin at 2011年11月30日 07:27
このエントリにコメントとトラックバックもくださり、
ありがとうございます。
お返事が遅くなってもうしわけないです。

>http://d.hatena.ne.jp/Pulin/20100903/1283461772

記事のご紹介、ありがとうございます。

おっしゃるとおり、性同一性障害や性分化疾患の存在は、
ジェンダーではなくセッ クスの「性」も、きっちり「男」「女」と
わけられるものでないことを、しめしていると言えますね。
Posted by たんぽぽ at 2011年12月02日 22:42
たとえば言語機能での脳の性差は、女性の方が左脳の障害で失語症になるケースが少ないし失語症の回復も早いというデータがあったり、ごく限られた言語実験で男女で脳の反応の活発化する部位が違うという観察結果があったりするようですが、それも絶対的なものではなく、脳の言語機能自体において、活発化している部分の個人差も大きいので、脳機能全体において基本的に個人差も男女差も存在しないし、そもそも脳の違いと言ってもそもそも何のことをいうのかという問題にもなっているようです。
Posted by pulin at 2011年12月12日 08:10
感情面においても、女はすぐヒステリーを起こすからそのように感情的なのは脳の作りによると言われたりしそうですが、怒りっぽい癇癪持ちの男もざらにいるわけで、むしろ社会的要請によって男には怒りっぽく戦闘的であることが求められたりするから、怒りっぽい男はヒステリーと言われないだけじゃないかと思いますよ。
Posted by pulin at 2011年12月12日 08:34
pulinさま、
コメントありがとうございます。

>たとえば言語機能での脳の性差は、

わたしも聞いたことがありますよ。
すこしだけ右脳と左脳で違いがあって、男女差もあるらしいですね。

でも、「男女脳の違い」なんてお題目を掲げるほど
大きな違いではないのですよね。
原則として、男女で脳に違いはないと思ってよいのでしょう。


>感情面においても、女はすぐヒステリーを起こすから

ヒステリーを起こすのも、後天的な要素でしょうね。
でも、かつてはヒステリーは、女性に固有だと思われていましたね。
語源も「子宮」から来ていますし。
Posted by たんぽぽ at 2011年12月13日 23:17
なぜ男性より女性が全体把握力や察知力があると決めつけているのかといつもいらいらしていました。
このちからも個人の能力差で男女差なしだ という研究結果がでることを期待したい。
Posted by っっk at 2012年09月10日 13:42
っっkさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

>なぜ男性より女性が全体把握力や察知力があると
>決めつけているのかといつもいらいらしていました

「男女脳の違い」と言われると、わたしも「またか」という
気分になって、いい加減へきえきしてきます。

「男性より女性が全体把握力や察知力がある」というのも、
根拠がないのは、わかっていることとと思います。
科学的にも決着がついているのではないかと思いますよ。
Posted by たんぽぽ at 2012年09月10日 19:31
よかった!

以前から、男女の脳の違いは後天的な環境による影響のほうが大きいと思ってました。
先天的な違いがそれほどでないにしろ、どの程度の違いがあるのかはそれはそれで興味深いですね。
Posted by トム at 2014年08月16日 08:39
トムさま、いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。

>よかった!
>以前から、男女の脳の違いは後天的な環境による影響のほうが大きいと思ってました。

思った通りの結果でよかったですね。
一般に人は、後天的に変わりうる余地があるほうが、安心できるものですが。

>先天的な違いがそれほどでないにしろ、どの程度の違いがあるのかは
>それはそれで興味深いですね。

あったとしてもごくわずかでしょうね。
日常的にはまったくないとして問題ないだろうという
レベルだと思いますよ。
Posted by たんぽぽ at 2014年08月17日 16:16
こんな研究結果に期待してるようじゃダメだね
Posted by あ at 2017年06月23日 12:24
不特定多数を連想するハンドルではなく、
個性の感じられるユニークなハンドルを使ってほしいですね。
Posted by たんぽぽ at 2017年06月23日 23:33
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