2012年01月28日

toujyouka016.jpg 世界一高い政党助成金

政党助成金を好ましいと思わないかたの中には、
諸外国と比較して、日本の政党助成金はとりわけ高く、
トップレベルであることを、指摘することがあります。

「日本の政党助成金は、ドイツの倍、フランスの3倍、イギリスの66倍」

外国にも政党助成金があることはふまえているので、
それを無視して「憲法違反だ!」などと主張するよりは、
良心的な態度だと言えると思います。

 
>政党助成金が高いゆえん

日本の政党助成金が、他国とくらべて高くてよいと、
わたしが考える理由として、日本はかつて汚職に対する扱いが
とても甘かったことがあると思います。

リクルート事件のような大汚職が発覚しても、
当該議員は政治生命を失うことなく、議員を続けられたので、
諸外国からふしぎな眼で見られていたのでした。
外国にも汚職はあるのですが、発覚すればその議員は政治生命を失います。

したがって、日本国民は他国よりよけいに税金を投入してでも、
汚職を防ぐ努力をするべきだ、という考えかたには、
一定の妥当性があると、わたしは考えます。


もっと直接的な理由は、おそらく日本は、他国にくらべて
個人献金がすくないことではないかと思います。
これはすなわち、議員の活動資金がすくないことですから、
じゅうぶんな政治活動を行なうのに、支障が出て来ます。

議員がじゅうぶん働けないとなると、
議会制民主主義の運営にも差しつかえるとも言えます。
みんな献金を払いたがらないのなら、議会選民主主義を
維持するためのコストを、税金というかたちで
徴収せざるをえないと、考えることもできるでしょう。


>政党助成金削減で「身を切られる」のはだれか?

政党助成金が削減されても、多額の献金を受けている議員
(「金権的」ということばでイメージするような)は、
たいして影響はなかったりします。
政党助成金がなくなっても困らないくらい、献金を得ているからです。

ダメージが大きいのは、献金をあまり集められない議員です。
こうした議員の献金額は年間100万円程度とされています。
人件費も出せないくらいですから、政党助成金が
削減されたときの痛手は想像にがたくないでしょう。

大企業向けの政策をかかげている議員は、
献金がたくさん集まるのは、容易に想像できるでしょう。
そして献金が集まらない議員というのは、
たいてい「リベラル」な議員だったりします。

政党助成金は、かかげる政策や政治理念によって、
献金の集金力に差がつくのを埋め合わせる働きがあります。
どんな議員であっても、議員活動に支障が出ないようにする、
「公平性の保証をする」ということです。


こういうしだいなので、政党助成金が削減されて、
優先的に「身を切られる」のは、「リベラル」な議員です。
これは最初にご紹介のエントリのかたが望む事態では、
まったくないように思うのですが、いいのでしょうか。


付記:

最初のエントリに挙げられた数字を見ると、
日本の政党助成金は317億円ですが、人口は約1.2億人ですから、
ひとりあたりの負担額は、約264円になります。
ドイツは、政党助成金が182.2億円で、人口が0.8億人ですから、
ひとりあたりの負担額は、約228円になります。

総額を見ると「およそ倍」と言われていますが、
ひとりあたりの負担は、日本とドイツとで、
それほど差がないことになります。


関連エントリ:
「政党助成金」
「19条と政党助成金」

posted by たんぽぽ at 14:30 | Comment(6) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
日本の政党助成金が高すぎるのかどうかは確かに議論の余地がありますね。
一方,憲法違反だと騒ぐ人は,
「貧乏人は個人献金したくてもできない」
というガリレオの最終定理をどのように考えるんでしょうかね?

個人献金に限るとなれば,貧乏人が支持する政党は政治資金が集まらないのに・・

政党助成金ならば,税金をたくさん払っている金持のお金も貧乏人が支持する政党に流れて,貧乏人のためだと思うけどなあ・・・
共産党ももらっちゃえばいいのに・・・・
Posted by アルバイシンの丘 at 2012年01月30日 00:35
このエントリにコメント、ありがとうございます。

>日本の政党助成金が高すぎるのかどうかは確かに議論の余地がありますね

単純に「世界一高いから削ればいい」とは、言えないと思います。

>個人献金に限るとなれば,貧乏人が支持する政党は政治資金が集まらないのに・・

かかげる政策や政治理念によって、献金の集金力に差がつくこと、
政党助成金はそれを埋め合わせる働きがあることは、
ほとんど認識されていないですね。
(mmmさまがコメントの最初で、これを指摘してきたとき、
わたしはちょっと感心した。)

「子ども手当て」のときも、あらを探すように
批判する人が結構いたけれど、「公平性の保証」という発想が
苦手な人が多いのかもしれないです。


>共産党ももらっちゃえばいいのに・・・・

まー、供託金が高いとか文句を言う前に、
政党助成金を受け取るという、自分の努力でできることを
さきにやるべきではないかとは思いますね。
Posted by たんぽぽ at 2012年01月30日 22:27
政党助成金は元は税金なんだから、使い道を1円単位で公表してほしいですよね。

何円自分の私用に使ったとか。
Posted by 茶 at 2012年02月02日 11:52
茶さま、いらっしゃいませ。

あなた、こちらにもおなじ文章の投稿をしていますね。
(マルチポストは感心しないです。)
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120130/1327890214

>政党助成金は元は税金なんだから、使い道を1円単位で公表してほしいですよね

こんなふうに、かな。
http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/naruhodo03.html
Posted by たんぽぽ at 2012年02月03日 23:11
半年ほど前の記事ですが、政党助成金に関する内容を読み、少し苦笑しました。単純に「世界一高いから削ればいい」とは、言えないと思いますーこのコメントどうかしてます。必要性と規模を混同してはいけませんね。これが世界一である必要性はゼロです。記事の中にはこれで汚職を防げるという表現もありました。政党助成金で汚職を防ぐという発想がおかしい。そもそも選挙で落とすしかありません。なぜ米国やイタリアではこれがないのか。なぜ英国ではずっと少ないのか大いに勉強すべきです。日本は他の先進国と違っている点があります。いうまでもなく莫大な借金。消費税増税の前にこうした部分も抑えるのは当然。木を見て森を見ない議論になっているようですね。
Posted by 高山国善 at 2012年07月01日 01:14
高山国善さま、いらっしゃいませ。

日本の政党助成金がなぜ高いのかは、
このエントリで理由もお話してあります。
ひとつは、日本は汚職が他国にも増してひどかったこと、
もうひとつは、個人献金がすくないことです。
これらが、「日本は他の先進国と違っている点」です。

よって他国の政党助成金がもっとすくないのは、
汚職が起きるとその政治家は政治生命を失う土壌があったことと、
個人献金がもっと多い、ということになります。

>なぜ米国やイタリアではこれがないのか

(アメリカはわからないですが)、
イタリアで政党助成金がないのは、
導入はしたけれど、各政党が助成金に頼りすぎて、
自力で献金を集める努力を怠るようになり、
政党の自立が損なわれるようになったからです。
日本はそのような事態にはなっていません。


>政党助成金で汚職を防ぐという発想がおかしい

おかしくありませんよ。
政党助成金は資金源は税金で、獲得議席と得票率によって
機械的に配分されるので、透明性はきわめて高く
不正の入る余地がないです。
したがって、政党助成金からの収入は
汚職が起こりえないことになります。

>そもそも選挙で落とすしかありません。

政党助成金を導入する前の日本は、汚職が発覚しても、
その政治家は政治生命を失わなかったのでした。
選挙で落とすこともそう簡単にはいきません。
汚職くらいでは、落選にいたるほど票は逃げないからです。
Posted by たんぽぽ at 2012年07月02日 22:18
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