2012年01月29日

toujyouka016.jpg 岩手に原発がない理由

東日本の太平洋岸は、岩手県だけ原子力発電所がないです。
これは時の首相、鈴木善幸氏の立ち回りがよかったからだ、
という指摘をする記事があります。

「空白岩手 陰に和の政治」

 
石油危機に見舞われ、石油の代替エネルギーが求められた1980年ごろ、
中央政界では原発推進が表明されていたのでした。
ところが、岩手県では原発の必要がとぼしく、
誘致を「先送り」にしているうちに、石油危機を脱して
電力が不要となり、岩手の原発誘致も立ち消たようです。

朝日の記事の主旨は、鈴木善幸首相が、
中央政界で原発推進を唱えながら、地元の三陸では
原発誘致を先送りにして、三陸の世論を二分させなかった、
「和の政治」の功績としています。
そして、橋下やコイズミのように、二項対立を作って
選挙で決着をつける手法と対峙させています。


>小沢一郎が鈴木善幸の「手柄」を横取りした?

ところで、「岩手県に原子力発電所がないのは、
小沢一郎氏ががんばったから」という都市伝説があるのでした。
例によって「小沢信者」たちは、それを信じているらしいです。
それで、小沢ががんばった事実はない、という根拠として、
さきの朝日の記事を紹介しているエントリがあります。

「「なぜ小沢一郎の岩手には原発がないのか」の答えが今明らかに(笑)」
「岩手県に原発がないのは鈴木善幸の立ち回りのおかげだった。
小沢一郎(笑)は原発誘致派だった」

「「『脱原発』はわしが育てた」by 小沢一郎(笑)」


都市伝説であることをしめしたのはいいのですが、
これらの記事で、「小沢一郎が鈴木善幸の手柄を横取った」
と書いているのが、わたしは気になりました。
http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20120121
========
そして当の小沢自身も、誘致しなかったのは自分の手柄、
と言った事を吹聴している様です。

いやはや、鈴木元首相と比較して、岩手に原発が無いのを
自分の手柄の様に語る小沢の浅ましさが良く分かります。
========

「横取りした」という根拠となっているリンクを見たら、
出典が『悪党』(石川知裕著)となっています。
それで「横取り」が本当なのかを確かめるために、
この本を調べてみることにしました。


当該箇所222-223ページで、「どうして岩手に原発がないのか」
という見出しがついたセクションです。
これは著者の石川知裕と小沢一郎の対談で、
岩手に原発がない理由について語られています。

http://lacrima09.blog.shinobi.jp/Entry/215/
http://lacrima09.web.fc2.com/figs/ishikawa-taidan.html

これによると、岩手は原発を誘致しようという
モチベーションが弱かったので、小沢一郎氏をはじめ、
岩手の代議士たちは、「あまり積極的に引っ張ってこようという
気はなかった」から「結果的に」原発がないのであり、
誘致運動を「止めたわけではない」と語っています。

石川氏は、「岩手に原発がないのは小沢先生ががんばったから」という
問題の都市伝説も引き合いに出すのですが、
小沢氏はもちろんこんなのを肯定していません。
そんな事実はないことを、みずから認めているわけです。


小沢一郎氏は、自分が原発の誘致賛成派だったことは
とくに隠していないし(このエントリでは
「小沢は原発推進派」であることを強調しているが)、
はじめにご紹介した朝日の記事と、この対談の内容が
矛盾しないのも、すぐわかることと思います。

そして、「小沢一郎氏は鈴木善幸の手柄を横取った」という
事実がないことも、あきらかだとわかりますね。
本人は「原発の誘致を止めなかった」と言っているのですから。


さっきのリンクはなんだったのかというと、
対談のはじめのほうに出て来る(220ページ)のですが、
小沢一郎氏が、原子力発電についての
一般的な見解を述べているものです。

つまりこの部分は、話題の導入のところであり、
岩手に原子力発電所がない理由として、述べたのではないのでした。
(リンクでは、なぜその部分だけ抜き出して、
「小沢一郎が語った「岩手に原発がない理由」」という
タイトルを付けたのかが気になりますが。)

この原発についての一般的見解ですが、
小沢一郎氏は、他所でもおなじ主旨のことを述べています。
(たとえば、2011年5月27日のWSJのインタビュー記事。)
小沢氏は科学技術政務次官時代に、原子力発電のことを
勉強したとあって、おそらくそのとき以来
この見解はずっと変わっていないのだろうと思います。

posted by たんぽぽ at 15:40 | Comment(4) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん,ご苦労様でした。大変貴重な調査報告です。だって「反小沢」信者の微妙な手口を明らかにされたのですから。
Posted by アルバイシンの丘 at 2012年01月30日 00:23
このエントリにコメント、ありがとうございます。
ああ、いえいえ、かいかぶりですよ。

わたしがこの「根拠」のリンクを見たとき、
http://bit.ly/n2XlpF
小沢一郎はWSJのインタビューのときも
おなじことを言っているのを、すぐに思い出したのですよ。

それでこれは、原子力発電に対する一般的な
見解を述べたもので、岩手に原発がない理由として
述べたのではないだろうと見当をつけたのでした。
そして本を調べたら、本当にその通りだったというわけです。


結局「岩手に原発がないのは、小沢先生ががんばったから」も
「小沢一郎が鈴木善幸の手柄を横取った」も、
どちらもそういう事実はないのでして...
ここでも「小沢信者」と「反小沢信者」は、
「どっちもどっち」になってしまいましたね。
Posted by たんぽぽ at 2012年01月30日 22:29
千葉県にも原発はなかった気がします。
Posted by あいうえお at 2023年08月22日 15:30
千葉にも原子力発電所はないですね。
いちばん近いのは東海第二原子力発電所で、
茨城県にあります。


千葉県に原子力発電所がないのは、
東京という人口密集地域に
近いことがあると思います。

また千葉はそれなりに都市的で
産業もあるので、原子力発電所がなくても
経済が成り立つのもありそうです。
Posted by たんぽぽ at 2023年08月23日 21:45
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