2012年09月22日

toujyouka016.jpg 自民に世襲が多い理由

自民党の総裁選に出馬している候補者が、
5人とも「世襲議員」であることが、話題になっています。

「「公募導入」と世襲批判かわす=自民総裁選」
「総裁選の候補が全員世襲って今の自民っぽいよね」

ここで言う「世襲議員」とは、3等親以内の親族が国会議員で、
その支持基盤を引き継いで国会議員となった人を指します。
つまり親の作った「支持基盤」が世襲されるということです。
(親が国会議員であっても、親と違う選挙区から
出馬している議員は、支持基盤を親から引き継がないので、
ここで言う世襲議員とはなりません。)

 
ご存知のように、自民党はもともと世襲議員が多いところです。
2009年8月の総選挙前は、衆議院の世襲議員の割合は、
35.4%でしたが、総選挙後は46.2%とさらに増えて
半分近くをしめるようになっています。

民主党にも世襲議員はいるのですが、総選挙前は衆議院の
世襲議員の割合は14.2%と、自民党よりずっとすくないです。
総選挙後は10.4%とさらに比率が下がっています。
民主党は新人議員が出馬する際、支持基盤の世襲を
認めないので、必然的に世襲議員が増えないことになります。

自民党もかつて世襲議員の制限をかけようとしたことが
あったのですが、結局撤回してしまいました。
あまりに世襲議員が多く、今後も出てきそうなので、
世襲制限は現実的に無理と判断したのでしょう。

「自民党執行部“世襲禁止”事実上撤回へ」


>自民党に世襲議員が多い理由

日本の自民党にとくに世襲議員が多い理由のひとつは、
「政治家城下町」とでも呼べる、独特の支持基盤が
できあがっていることによります。
これは選挙区選出の議員を中心として、その支持者である
企業や個人後援会などを含む、一種の町のコミュニティです。

自民党議員が、公共事業のための予算や補助金を
地元のために取ってくると、その地元の産業界は、
そのお金を求めてその議員のもとに集まって来ます。
こうしてできる公共事業を介した自民党議員と
地元企業との利権構造が、「政治家城下町」の核となります。

中心の自民党議員が引退することになっても、
いったんできあがった支持基盤である「政治家城下町」は
解散させることがきわめて困難です。
そこで、かかる支持基盤を後継の議員に引き継がせる
必要があるのですが、そのとき支持者のだれもが
わかりやすい後継者が、議員の息子や娘というわけです。


自民党に世襲議員が多くなりやすいもうひとつの理由は、
「当選回数主義」と言われる、一種の年功序列制度を
採っていることです。
これは、文字通り当選した回数に応じて、
大臣や党の役員などのポストが割り振られるものです。

自民党で総裁になるくらいの有力者となるには、
若いうちに初当選して、その後も当選を繰り返して、
いくつもの幹部ポストを歴任している必要があります。
そして若い年齢で当選するには、親族から支持基盤を
引き継げる世襲議員が、おのずと有利になるわけです。

自民党の総裁候補が、そろいもそろって世襲議員というのは、
むべなるかなということになりますね。


>世襲議員を増やす万年与党体制

世襲議員を増やす原因である、「政治家城下町」と
「当選回数主義」は、いずれも自民党が万年与党として、
つねに政権の座にあったので、定着するようになったものです。
ようするに、政権交代がないことによって生じた
腐敗だと言えるわけです。

政権交代が、ときどき起きる状況が定着すれば、
「政治家城下町」「当選回数主義」は、
おのずと解消に向かわざるをえなくなります。
よって議員の世襲率も、自然と下がることが期待されるわけです。

自民党が長いあいだ与党であり続け、そのもとで公共事業を
介した利権構造を作り上げたのは、日本だけの特殊事情です。
日本の自民党には、他国の諸政党にくらべて
世襲議員の数が異様に多く、ほぼ自民党に固有の現象と
なっているのは、まさに日本では政権交代が
ほとんどなかったことによります。


付記:
日本で世襲議員が多い理由については、
上久保誠人氏のつぎの記事に、くわしく書かれています。
「政治家城下町」「当選回数主義」のほか「閨閥」があったことも、
世襲議員が多くなった原因としています。

「「世襲」総理を育んだ自民党長期政権」

posted by たんぽぽ at 22:52 | Comment(4) | TrackBack(1) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
このようなことからみても、自民党とは単なる政党を越えて日本の(保守)体制そのもの、体制にガッチリ組み込まれたシステムなのだなと思います。
民主党がたまたま政権を取っていても、こうしたシステムや地方の利権構造はまった掌握できていなかったわけで、民主党は政権党であっても日本というシステムから見ればお客様に過ぎずすぐ排斥される異物であって、実際そうなろうとしています。
民主党でも小沢一郎氏が地元にこうした利権構造を築いていますが小沢氏はむしろ自民党そのものだった人ですしね。
自民党というシステムは戦後の保守合同で自民党が生まれた時にできたのではなく、政党が生まれ議会政治が始まった明治時代から、あるいはそれ以前の封建時代にも遡ると考えれば、この体制を覆すのは不可能なのかもしれませんね。
Posted by 御光堂 at 2012年09月23日 12:38
このエントリにコメントありがとうございます。

>自民党とは単なる政党を越えて日本の(保守)体制そのもの、
>体制にガッチリ組み込まれたシステムなのだなと

自民党は、「政財官の三位一体構造」の一角をなして、
日本の既得権益層とよく結びついた存在、というか
既得権益グループの一部であった、ということだと思います。

>民主党は政権党であっても日本というシステムから見れば
>お客様に過ぎずすぐ排斥される異物であって、
>実際そうなろうとしています

まったくその通りだと思います。
日本では既得権益を切り崩そうとするものは
「異物」と見られ、排除する力が働くわけです。


>民主党でも小沢一郎氏が地元にこうした利権構造を築いていますが

小沢一郎は、とくに90年代以降は、野党でいたことが長いですし、
「政治家城下町」のような利権構造からは埒外ですね。
このような利権構造は、ずっと与党にいないと
機能させることができないのですね。

そして小沢一郎は、あきらかに排除される側ですね。
それも既得権益側にとって、最大の脅威と言っていいくらいです。
だから「西松献金」のような事件を、既得権益層である
検察(官僚)から起こされて、実際排除をされたわけですし。
Posted by たんぽぽ at 2012年09月24日 21:39
世襲率
米上院 49.1%
英下院 77.8%
中全人 61.9%
日衆院 14.1%

日本の世襲率低すぎだろ
Posted by 通り過ぎ at 2012年12月05日 04:24
ハンドルは不特定多数を連想させるものではなく、
ユニークなものをお使いください。
それから、簡単な自己紹介をいただきたいです。
Posted by たんぽぽ at 2012年12月06日 06:43
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