今年も世界経済フォーラム(ダボス会議)が行なっている、
ジェンダーギャップ指数(男女平等指数)が発表されました。
この国際比較調査は、「経済」「教育」「健康」「政治」の、
4つの分野に対して、男女間の「相対的な格差」について、
国ごとにスコアを算出して示すというものです。
「The Global Gender Gap Report 2012」
今年は、日本語で書かれたレポートも手に入りました。
「最新の主要研究報告: 世界の経済的男女格差縮小の進展が遅い点を指摘」
日本の大手メディアによる報道は、いくつかありました。
「男女格差、日本は101位 主要国で最低評価続く」
「男女平等度、日本は101位=世界経済フォーラム」
「男女格差 日本は101位に後退」
「男女平等ランク、日本101位に転落 上位4位は北欧」
このジェンダーギャップ指数は、おおかたが予想する通り、
ヨーロッパの国が、おしなべて上位に入っています。
1位は昨年とおなじくアイスランドです。
そして4位までを、北ヨーロッパの国ぐにが占めています。
このあたりは毎年のことで、揺るぎないものを感じます。
北欧諸国の男女平等の浸透ぶりを、見せつけていると思います。
問題の日本ですが、今年2012年の順位は101位です。
昨年2011年は98位だったので、順位が下がったわけです。
2010年のときにいったん上がったのですが、
そのあと下がり続けて、2009年の順位まで戻ったのでした。
日本は2010年を除き、毎年順位が下がっているので、
今年の下落を見ても、わたしは「またか」という感じです。
年 | 順位 | スコア | 順位/調査国数
-----+-----+--------+-------------
2006 | 80 | 0.6447 | 0.696
2007 | 91 | 0.6455 | 0.711
2008 | 98 | 0.6434 | 0.754
2009 | 101 | 0.6447 | 0.754
2010 | 94 | 0.6524 | 0.701
2011 | 98 | 0.6514 | 0.726
2012 | 101 | 0.6530 | 0.748
調査対象国の数が変わっているので、順位を調査国の数で割って、
上から何パーセントのところにいるかを算出すると
0.748となり、ほぼ下から4分の1となります。
そしてこれも、去年の0.726から下がっていることになります。
今年のスコアは0.6530で、2010年からほぼ横ばいを続けています。
他国が男女格差を縮めているにも関わらず、
日本はそれほど格差を縮められず停滞していたので、
その結果順位が下がっている、ということになるのでしょう。
日本がスコアを下げる原因となっている分野も例年どおりです。
「Economic participation and opportunity
(経済分野・雇用の機会均等)」のうち、
「Legislators, senior officials and managers
(管理職・経営者の割合)」と、
「Political empowerment(政治参加)」の全般です。
女性の管理職や経営者がすくないことについては、
前にすこしお話をしたことがあります。
アメリカやヨーロッパの国は、女性管理職の割合は
3-4割程度なのに、日本は10.2%と格段にすくなくなっています。
「女性の賃金は男性の7割」
これは女性は出産や育児で退職を余儀なくされることが多く、
勤続年数が短いこととも関係があると思われます。
短期でやめていくので、上の職階に上がれない女性が多いのでしょう。
そして、女性の管理職がすくないことが、
ひいては男女の賃金格差に現れることになります。
政界においては、女性議員・女性官僚がすくなくなっています。
女性国会議員の数は、列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union)が、
世界各国のデータを公開しています。
「Women in National Paeliament」
日本の下院(衆議院)は、480議席中女性議員は52人で、
比率は10.8%となっていて、順位は109位です。
上院(参議院)は、いくらか女性国会議員が多くなりますが、
それでも242議席中45人で、比率は18.6%です。
日本の女性国会議員の数は、すこしずつながら増えてはいます。
しかしそれでも、女性国会議員の比率の高い国は、
すでに4割以上を占めていて、男女の格差が
さほど深刻でない状況になっています。
日本はまだまだ女性議員がすくない国、ということになるでしょう。
日本の男女格差は、企業の管理職と政治の世界に
女性がすくないことが原因、ということになります。
これは意思決定の場に、女性がすくないことを表わし、
まだまだ男性が意思決定をして、女性はその下で暮らす、
という状況になっている、ということを示します。
このあたりは、ご自分のまわりを見回しても、
じゅうぶん実感できることではないかと思います。
過去のエントリ:
「男女平等指数2011年」
「男女平等指数2010年」
「世界経済フォーラム〜男女平等指数」
御紹介頂いた日本語レポートに、世界経済フォーラムの会長やシニア・ディレクターの発言として、「ジェンダーギャップの是正は、その国の経済発展と国際競争力獲得のための必須条件である。」と言う意見が書かれていますね。
他にも、藻谷浩介氏は著書「デフレの正体〜経済は「人口の波」で動く」にて、「日本のデフレの原因は生産年齢人口の減少にあり、これを克服するためには、女性の就労の促進が不可欠である。」と言われていますし、先日、別エントリのコメントで私が紹介したクローズアップ現代の拡大版でも、IMFの緊急リポートの内容紹介として、全く同じような主張がなされていました。
日本の国際競争力向上に、時として必要以上にこだわりながら、その一方で「男は仕事、女は家庭」などと主張している人がままいらっしゃるようですが、それがもはや完全に常識はずれな主張であることを、そろそろ認識して頂く必要があるでしょうね。
>「ジェンダーギャップの是正は、その国の経済発展と
>国際競争力獲得のための必須条件である。」と言う意見が
一般的に差別を克服したり、差別に陥らなかった国家や社会は、
そうでない国家や社会とくらべて、
経済発展や国際競争力を獲得できる、というのは、
これまでの歴史がしめしているところですよね。
これからの社会は、女性差別をいかにして克服するかが、
大きなポイントになるのだろうと思います。
>「日本のデフレの原因は生産年齢人口の減少にあり、
>これを克服するためには、女性の就労の促進が不可欠である。」と
日本は移民も受け入れないし、将来の労働力の減少は必至で、
これを補うためには、女性の就労の促進が必要だ、
ということも、くりかえし言われていることですね。
>日本の国際競争力向上に、時として必要以上にこだわりながら、
いまだに認識できていない人が、日本には多そうですね。
経済発展や国際競争力と、ジェンダー問題はなんの関係もないと
思っているのではないかと思います。
政界経済フォーラムは、経済関係のシンクタンクですし、
国際社会は財界のお偉いさんでさえ、今後は男女の格差を
なくしていくことが大事だ、という認識なんですけれどね。