またまた強烈なものがあるのですよ。
つぎの文章はなんだと思いますか?
これから結婚する娘のことを、婚約者の男性に当てて書いたメールですよ。
わたしはこれを見て、「いや〜〜〜〜」と思いましたよ。
露骨に娘を「物」扱いですよ、思いっ切り引きましたね。
http://instagram.com/p/QSFxqsFESc/
(はてなブックマーク)
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お買い上げありがとう。物は俺の保証付きだ。
なんてったって俺がつくったんだからな。
ただし、返品、お取り替えは厳禁だ。
壊したら治して、最後まで使い切ってくれ。
悔しいが、俺の最高傑作は今日からお前のもんだ。
これは私の結婚式直前に義父から頂いたメールです。
物とは私の家内のこと。
「返品お取り替え厳禁」は「離婚浮気はダメ」
「壊したら治して最後まで使い切れ」とは
「病気になっても面倒を見て二人添い遂げてくれ」という意味。
義父の暖かい気持ちが伝わってきて夫としての自覚が
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メールを受け取った婚約者の男性も「義父の暖かい気持ち」
などと言っていて、人間を物扱いすることへの
無神経さにぜんぜん気が回らなかったりします。
娘は父親が「所有」しているもので、
結婚すると夫が妻の「所有者」になる、ということが、
当然のことのような感覚でいるのかもしれないです。
このように、女性に「所有者」がいて、
結婚が「女性の所有者の変更」と意識されているのを見ると、
女性は結婚前は親に従い、結婚したら夫に従わなければならないという、
「三従の教え」を連想して、わたしはいやになってきます。
ちなみに、上に引用したメールは、dokomoの
「愛のあるメール大賞」なのだそうです。
こんなものが「愛がある」と評価されるのかと思うと、
ますますわたしは引いてしまいますよ。
こないだ取り上げた、「僕の苗字をあげるから
きみの人生をちょうだい」のときのような衝撃です。
こういうものはやはり、しょせんは既成事実のお題目を
説くのが受ける、ということなのかもしれないです。
それから、父親と婚約者とのあいだで、
自分が「物」扱いされるメールがかわされているのを知った、
当の女性はどう思っているのかと思います。
抵抗を感じつつも、「言っても無駄」なものを感じて、
受け流しているのでしょうか?
それとも、このような女性の「物」扱いが内面化していて、
「ほほえましいやりとりだ」なんて思っているのでしょうか?
付記:
10月23日の読売新聞に、「わが子の婚活」という記事があります。
ここでも、「うちの娘もらってよ」とか、
「返品、交換は受け付けません」なんて言い回しが出て来ます。
「わが子の婚活 うちの娘もらってよ」
わたしが想像するに、これを言っている本人たちは、
「気の効いた言い回し」くらいに思っているのかもしれないです。
女性を「物」扱いしてはばからない感覚は、
根が深いものがあると思います。
インドやイスラム教の国を日本人は「遅れた国」扱いしますけど、内部で女性に対しては同じことをやっていることにいつ気がつくんでしょうね。
(11月の初コメントですね。)
>び、病的ですね
すごいですよね。
でも、日本ではこういう言い回しが、結構広く使われている、
ということなのですよね。
>内部で女性に対しては同じことをやっていることにいつ気がつくんでしょうね
外国では、こういう結婚する女性を「物」扱いする
言い回しというのは、ないのかな?
いずれにしても、こういうところでも、日本も「遅れた国」扱い
している国のことを、とやかく言えなくなるのですね。
(そういえば、ジェンダーギャップ指数も、
日本は下から4分の1くらいのところで、
イスラムの国やインドとくらべて、大差ないけれど。)
「a woman 嫁給 him」のように女性から「AアゲルBニ」表現を使います。ただし、日本語のような目的語を主語にした場合の「BモラウAニ」表現が慣用的に(他の場合でも)ありえないので、非対称的になります。日本語とは完全には同じではないですね。
インドの某方言話者は、「あるよ」とだけ教えてくれましたが、ヒンディー語ではないのでマイナーかな?
この男性、次のようなメールだったら義父の愛情を感じるのでしょうか?
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こりゃあお買い得だ!
さすがは俺の娘、良い品物を見つけてきたもんだ。
返品、お取り替えはしないように娘にきつく言っとくよ。
壊したら治して、最後まで使い切れ、とも。
最高傑作は今日から娘のもんだ。
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人身売買臭がしました…でも実際「結納」ってそういう意味合いがある気がします。
そういえば、「人材」「人材市場」という表現も人間を「品物」扱いしている感が満載ですし、世の中が人間を物質として見ているのかもしれませんね。
>北京語に、日本語の「嫁にやる」の表現に近いものがあります
>インドの某方言話者は、「あるよ」とだけ教えてくれましたが、
あることはあるのですね。
(情報ありがとうございます。)
それがどのくらい「ふつうに」使われるか、ですね。
>「a woman 嫁給 him」のように女性から「AアゲルBニ」表現を使います
意味上の目的語が、文章中の主語になるのですね。
>「人材」「人材市場」という表現も
それは人間自身ではなく、人間が提供する「労働力」を
「商品」として見ているんじゃないかと思いますよ。
(人間自身を「商品」のように見ている人も、いるのだろうけれど。)
>企業が優秀作に選んで公表しているのだから、
>当事者が良ければ…というものでもないですね
メールをコンテストに応募したものですから、
その時点で内容についてのカチカンを、世の中に問うていると言えますよね。
そして企業が選んで公表したのですから、なおさらメールの内容や
選考基準については、批判されうるものだと思います。
>ここで物扱いされてる女性は当事者でないし
当の女性がどう思ったかが、わたしは気になっているところです。
「物」扱いに嫌な気持ちになったのだとしたら、
私信に留まっていても問題はあることになるでしょうね。
>この男性、次のようなメールだったら義父の愛情を感じるのでしょうか?
どうなんでしょうね。
やはり猛烈に抵抗を感じるのでしょうかね?
(わたしが、その男性であれば、もちろん嫌だけど。)