11月2日なので、だいぶ前になりますが、
時間が経ちすぎないうちに、お話したいと思います。
性同一性障害で男性になったかたの子が、家庭裁判所で、
嫡出子として認められなかったというニュースです。
この男性は、第三者の精子提供で妻が妊娠・出産をしています。
「子どもの戸籍訂正認めず 性同一性障害の夫婦に家裁」
「性同一性障害:性別変更、「父」と認めず 夫婦、即時抗告へ−−東京家裁」
「性同一性障害:性別変更「父」と認めず 東京家裁」
「性同一性障害の嫡出子認めず 東京家裁」
(はてなブックマーク)
「会社員は特例法に基づいて男性に性別変更したので、
男性としての生殖能力がないことは戸籍の記載から
客観的に明らかで、嫡出子(実子)とは推定できない」
というのが家庭裁判所の判断です。
ところが、不妊の男性が精子提供によって人工授精で
子どもを設けた場合は、嫡出子として扱われます。
それなら性同一性障害の場合も、おなじ扱いにしてしかるべきでしょう。
不妊の男性の子は嫡出と認められるのに、
性同一性障害の男性は「生殖能力」がないから非嫡出子というのは、
性同一性障害を特別視しているとしか思えないです。
差別的だと言われても無理もないでしょう。
(あるいは、男性の「タネナシ」に対しては、
「男社会」から「同情」されるところがあるのではないかと、
わたしは勘ぐったりもしたくなるのですが。)
付記1:
産婦人科学会は、昨年の2月に、性同一性障害で
男性になったかたの妻に対して、精子提供による
人工授精を認める方針に変更しています。
これも、上述の性同一性障害の男性のかたが、
産婦人科学会に方針を変更するよう要求したものです。
「性同一性障害男性が方針撤回要求 産科学会に」
「性同一性障害夫妻への精子提供容認へ 産科婦人科学会」
それまでは産婦人科学会は、性同一性障害のかたに対しては
精子提供による人工授精を認めていなかったのですが、
その理由は「非嫡出子になるから」ということでした。
付記2:
記事の性同一性障害の男性は、非嫡出子になることに抗議して、
子を戸籍に入れず、ずっと無戸籍になっています。
2010年6月に「無戸籍児家族の会」が千葉景子法務大臣(当時)に
面会をしているのですが、このときこの男性も参加していたようです。
「300日規定暗雲の記事」
「千葉法相、消極的か。5/7面会詳細(性同一性障害の嫡出子)」
ちなみに、千葉法相への面会は、300日規定のために
子どもが無戸籍になっている人たちが、多く参加していました。
付記3:
先日、再婚禁止期間の訴訟で、合憲判決が出たことをお話しました。
そして、性同一性障害の男性の子が非嫡出、という判決です。
この調子では、夫婦別姓の国家賠償請求は
だいじょうぶなのかと、心配になってきます。
付記4:
オランダでは、3人以上の親を法的に認めることが、検討されています。
同性愛者のカップルは、必然的に生物学的な子が作れないので、
精子提供者が必要になりますが、この精子提供者に対して
親権を認めようという議論がなされているのでした。
オランダのかかる状況を見ていると、性同一性障害のかたの子が
非嫡出子にされるという日本とは、隔絶の感があります。
これは非対称的すぎですね。
>不妊の男性の子は嫡出と認められるのに、
>性同一性障害の男性は「生殖能力」がないから
>非嫡出子というのは、
>性同一性障害を特別視しているとしか思えないです。
不妊男性の妻の子を嫡出扱い…?!
医療系の学術雑誌読んで来いって感じですね。やっぱり、現場に立っている医者をこういう話題には必要があると思います…少なくとも私は専門家ではありませんが、これに反論する根拠くらいは引っ張れます。現在の民法はどうも恥ずかしいですね。
これは一般の不妊の男性が人工授精で子どもを持った場合と
おなじように、性同一性障害のかたの場合も、
嫡出子とするのが筋だと思います。
>現場に立っている医者をこういう話題には
産婦人科学会は、最近まで性同一性障害のかたの人工授精を
「非嫡出子になる」という理由で、認めてこなかったのですよね。
この裁判結果も「ほら言わんこっちゃない」くらいに
思っているかもしれないです。
医学業界は多分に因習的・反動的なようですよ。
戸籍って一体なんのために存在するんでしょう。形として「承認」されるように合わせなければ、その人の子は存在しないことになるという丸っきり人権無視の最悪な状態だと思います。何しろ、社会的に抹殺(パスポート取れない、イコール国民として認定しない)するのですから、難民よりひどい扱いです。
この問題は、突き詰めると嫡出・非嫡出の問題であり、
さらには戸籍の問題に突き当たることになりますね。
>戸籍って一体なんのために存在するんでしょう
高度経済成長期の専業主婦世帯を「理想の家族」とする
「幻想」を維持するためだと思います。
http://lacrima09.web.fc2.com/teardrops/against/koseki.html
性同一性障害の子というのは、この「理想の家族」に
含まれないので、戸籍の上で存在が容認されないのでしょう。
こういう人たちは、戸籍を維持することが
一種の「信仰」のようになっているのだと思います。
それで戸籍のために人間がいるという、
本末転倒なことを考えるのだろうと思います。