以下のサイトが報告書の全文(英語)です。
「Closing the Gender Gap」
日本もOECDに加盟していますから、日本のジェンダー格差についても、
もちろん調査対象になっています。
以下の文書は、日本についての報告のダイジェストです。
「男女間の格差縮小のために今行動が求められている〜日本〜」
アジア女性資料センターが、このOECDの報告について
簡単に記事を書いているので、これもご覧になるとよいでしょう。
「OECD:日本の男女間格差は工業国で最悪」
日本のジェンダー格差ついてのダイジェスト版の報告には、
いくつかのことについて述べていますが、
ここでは男女の給与格差について、取り上げたいと思います。
これに関しては以前わたしは、日本の女性の賃金は、
男性の7割(格差が30%程度)というお話をしたのでした。
OECDの報告書は、さらに世代別にしたデータをしめしています。

これを見ると、日本は40-44歳と55-59歳で、
男女の賃金格差が4割程度もあることがわかります。
25-29歳という若い世代でも、15%程度あります。
どこの国も、若い世代ほど賃金格差が小さく、
中高年層は大きくなるのですが、日本はいずれも他国と比べて
男女の賃金格差が大きい国となっています。
OECDの報告では、日本の男女の賃金格差の原因として
ワークライフバランスの難しさを挙げています。
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育児休暇や子育て支援等の社会政策があるにもかかわらず、
日本女性の多くは出産後に退職することが多く、
たとえ常勤として復帰を望んでも困難なことが多いのが現状です。
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これは本当によく言われることですね。
女性の勤続年数が短いことが、女性管理職のすくなさにも現れて、
賃金格差を生み出すもとになっているわけです。
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その結果、日本の労働市場では、女性が低賃金で非常勤の職に
追いやられてしまうことが多いのです
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妊娠や出産でいったん退職した女性は、多くの場合、
パート、アルバイトといった非常勤職にしかつけなくなります。
これはより直接的に、男女の賃金格差を作り出すことになります。
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日本の税及び福利厚生の制度が被扶養者である妻から
仕事へのモチベーションを削ぎ、所得税免除の範囲内での収入に
とどめようと思わせてしまうことも原因です
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これは配偶者控除と、年金第3号被保険者のことですね。
アジア女性資料センターの記事でも、民主党が配偶者控除の廃止を
見送ったことに言及して、女性の労働市場での困難を
取り除くためには、配偶者控除の廃止が必要であると述べています。
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長時間勤務という日本の文化もあり、
夫が(無給の)家事を分担することは依然希です。
今日、夫が家事に費やす時間は、1日平均で59分です。
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日本の男性はは他国の男性と比べて、家事をやらないほうだ
ということも、そろそろ「常識」にしてもよいかもしれないです。
これは男性の意識の問題だと、わたしは思っていたのですが、
それだけでなく、長時間勤務という企業文化にも原因があるようです。
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このまま、2011年現在の労働市場参加率の男女格差
(女性の63%、男性の84%)が継続されれば、
今後20年で日本の労働人口は10%以上減少すると予測されます。
日本は、教育においても経済活動においても、
一人一人の能力をより効率的に活用することが必要です。
経済成長には男女平等が鍵となります。
労働市場における男女平等が実現すれば、
今後20年で日本のGDPは20%近く増加することが予測されます。
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将来の労働人口の不足を補うには、女性の労働力率を
高める必要があること、男女平等を浸透させることが、
経済発展のためにもなるというのも、よく指摘されることですね。
>子を持つ女性と男性の給与格差
このOECDの報告書は、共同通信とNHKが取り上げました。
子どもを持つ女性と男性との給与格差について注目をしています。
(オリジナルのデータを、OECDの報告書から探そうとしたのですが、
残念ながら見つけられなかったです。
見つけたかたがいましたら、教えていただけたらと思います。)
「日本は働く母親冷遇 OECD報告」
「子育て男女給与差 日本が最大」

これによると、子どもを持つ女性と男性の賃金格差は、
なんと61%もあるという、衝撃的なものとなっています。
日本女性全体の平均格差は30数パーセントですから、
日本社会において、子どもを持つ女性は、いかに賃金の面で
冷遇されているかがあらためて見て取れます。
そして2番目に格差の大きい韓国でも46%ですから、
日本の子を持つ女性の賃金格差が、いかに大きいかがわかります。
ちなみに、OECDの平均の賃金格差は22%ですが、
欧米諸国の女性全体の平均は2割前後なので、
これらの国ぐにでは女性が子どもを持っても、
賃金の面ではそれほどハンディとならないことがわかります。
日本では子どもを持つ女性が、これだけ冷たく扱われるのですから、
子どもを持とうとする女性が減って、少子化が進むのも
ごもっともなことだと、あらためて実感させられます。
付記:
日本を含めたG7諸国について、OECDのジェンダーギャップ
報告書はなにを述べているかを、見ているエントリがあります。
他国はジェンダー平等について、どんな問題があるのかに
興味があるかたは、ご覧になるとよいでしょう。
「G7がジェンダーギャップについてOECDから指摘されてる問題点」