2007年01月10日

戸籍未登録の子

すこし前のニュースですが、現行民法の「父権の推定」のせいで、
戸籍に身分登録できない、子どものお話です。
「戸籍:2歳女児が未登録…親の離婚絡み法の壁」

「父権の推定」とは、簡単に言えば、
産まれた子の父親を、だれと判定するかということです。
(母親は自明なので、これは問題にならない。)

いまの日本の民法では、法的に離婚してから、
300日以内に産まれた子は、離婚前の夫が父親(嫡出で)になります。
(生物学的に、実の父がだれであるかは、この際関係ありません。)
ニュースの子どもは、母親が離婚してから、226日目に産まれたので、
いまの夫の子であることは、あきらかにかかわらず、
前夫の子どもという扱いになってしまいます。

 
実の父親は、前夫とはかかわりたくないので、
「親子関係不存在」を、確認する裁判なども起こしたくなく、
子どもは、戸籍登録されないままになっています。
それで、たとえば、健康保険も適用されず、
医療費の全額負担をしているそうです。
(そこまでするなら、いったん前夫の戸籍に入れて、
養子縁組してもよいのでは、という気もしないでもないですが。)

役所は、「法の原則は曲げられない」
「法に基づいた一律的な運用をせざるを得ない」と言って、
出生届けを受理するつもりはないそうです。
それでも、離婚から300日以内であっても、
離婚前から、夫婦としての実態が、失われていた場合、
前夫の子との推定を受けないという、1969年に出た最高裁判例があります。
これを使って、届けを受理してもよいのではと、
二宮周平氏と同様に、わたしも思いますが。

こと家族法にかかわると、当人たちの幸せを犠牲しても、
「法の原則」にこだわって、過剰なまでに厳格に適用する、
日本の体質が現われた一件とも、言えるかもしれないです。


ところで、300日というのは、妊娠期間を10ヶ月として、
結婚しているふたりのあいだでしか、性交渉がないものとしています。
きょうびは、婚前交渉もめずらしくないですし、
離婚直前に、関係を持つことがあるか?ということもあるでしょう。
いろんな意味で、現状に即していない法律だと言えます。

親子鑑定(DNA鑑定、血液型鑑定など)のような、
科学的手段は、じつはとても確実な鑑定ができるのですが、
いまの法律は、これらを父権の推定に使わないので、
この際意味がないのでした。
いまの法律は、非科学的であるとも、言えるかもしれないです。

親子鑑定について興味のあるかたは、こちらをどうぞ。
「関西医科大学法医学講座」
http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/index2.html

「よくある質問の回答」
「法医学鑑定の話題」をご覧になれば、
どのくらいの精度の技術なのかが、わかるでしょう。
(マリー・アントワネットの実子も、鑑定できたりしますよ。)
posted by たんぽぽ at 21:56| Comment(10) | TrackBack(1) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あけおめです(そのうち死語になるんじゃないかと・・・w)

このニュースは気になってました。
家制度があるような時代の法律は、現在に合わなくなってきているんですよね。
DNA鑑定でもOKというような端書きをつけざるをえなくなってきているような。

それに、今は妊婦の負担を減らすために計画出産などで早めに産んでしまうことも。民法上の300日とあるけれど、実際は、7日×4週×10ヶ月が正しいような?(1月は4週で数えると聞いたと思います、赤ちゃんの月齢も)
Posted by みみ。 at 2007年01月11日 14:00
こんにちは。
妊娠期間は1ヶ月=4週間で数えますし
最終月経初日から数えるので、月経周期が28日として受精するのは妊娠14日目です。
また、妊娠10ヶ月目に入るといつ生まれても正常だということになるそうです。
ということは、たとえ離婚直前に関係があったとしても
14日+7日×4週×9ヶ月=266日で生まれるのが普通です。
いくら60年前でも
経験則から300日以前に生まれることを分かっていたはずですけどね。

この事案とは逆の、いわゆるデキ婚の場合ですが
民法を形式的に当てはめれば、夫の子であるとの推定を受けません。
(婚姻中の懐胎ではないですので)
しかし、法律婚の前に内縁関係があれば父性の推定が及ぶとして判例があり
その後、実務的には法律婚に先行する内縁関係の有無を問わず
父性の推定が及ぶものとして扱われているそうです。
Posted by さくら at 2007年01月11日 17:34
みみ。さん、あけましておめでとうです。
コメント、ありがとうございます。

>(そのうち死語になるんじゃないかと・・・w)

一旦消滅したかと思ったけれど、まだまだ使われているみたいだよ。(笑)

>このニュースは気になってました。

そのお父さん、これから、どうするんでしょうね...
(結局、折れて、前夫の戸籍を経由させるとか、するのかな...?)


>家制度があるような時代の法律は、

むかしの親子鑑定は、いまよりずっと不確実でしたから、
ある程度は、やむを得なかったのかもしれないけれど...
(それでも、離婚直前でも、関係を持つことがありえるとか、
当時でも多分に無理は、あったと思うんだけど...)

法務省は、「要望を認めるには、国民の意識が高まり、
法律を見直すなどして対応するしかない」とか言っているけれど、
離婚後300日以内に産まれた子は、前の夫の子となるなんて、
知っている人は、そんなにいないと思います。
「国民の意識が高まり」なんて、あるはずもないと思うけど...
Posted by たんぽぽ at 2007年01月11日 21:06
さくらさん、コメント、どうもありがとうございます。

わたしも、成立当時がどんな事情だったかは、
ぜんぜんわからないんだけど、「300日」の規定は、
60年前ではなく、もっと前(戦前のまま)かもしれないです。

当時の医学でも、1ヶ月=4週間としていたかのか、わからないですよ。
300日より短いとわかっていても、余裕を持たせるために、
あえて長めに取ったことも、あるかもしれないです。
(でも、「正しい家庭」幻想に捕われていたら、
たとえば、早産の可能性とか、度外視されそうだけど...)



あと、親子鑑定だけど、民法の規定だけで
定まらないとき、補完的に使われるようですね。
(たとえば、「親子関係不存在」の裁判を起こしたりすると、
本当の父子か確かめるために、鑑定することがあるようです。)
http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/DNA/parent.html
========
1. 認知請求事件(民法第779〜787条)
結婚外で生まれた子が、擬父 (父と擬せられている男) に認知を請求。
親子鑑定の大部分
2. 嫡出否認請求事件 (民法772, 774〜778条)
妻が婚姻中(結婚後200日〜離婚後300日)に懐胎した子は自動的に夫の子
→夫が妻の不貞を疑い自分の子でないと訴える。
3. 親子関係不存在確認請求事件(戸籍法第113条)
実子でない子を実子とした違法な出生届→後日戸籍の訂正を請求。
4. 父を定める訴え (民法773条)
女は前婚の解消・取消の日から6カ月以上経過しないと再婚できない(民法733条)。
→これに反して再婚して懐胎し、父を定められない時、裁判所が定める。
5. 子の取り違い
6. 嬰児殺:殺害された子の親を定める場合。
7. 強姦事件:胎児の父を捜査。
========
Posted by たんぽぽ at 2007年01月11日 21:08
医学的に認識されていたかはともかく
いわゆる「十月十日」は、やはり28日で勘定されているかと思います。
西洋では、妊娠期間は8ヶ月とか?
そういうタイトルの映画がありました。

早産の場合は「婚姻中に懐胎した子」ということで
クリアできるのではないでしょうか。
妊娠届けなんてものがあるそうですし
(母子手帳をもらうときに出すらしいです)
早産であることは、比較的分かりやすそうです。
Posted by さくら at 2007年01月12日 09:39
ちょっと遅れたけどあけおめなのら

何たる偶然、違うニュースを元に同じテーマで同時にたまごどんがブログに取り上げていたのら
http://tamagodon.livedoor.biz/archives/50831257.html
Posted by NORTON3rd at 2007年01月12日 09:57
>早産の場合は「婚姻中に懐胎した子」ということで
>クリアできるのではないでしょうか。
って、全然クリアできてませんでした。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070112ddm041040150000c.html
婚姻中の懐胎を証明するのに、母子手帳じゃダメなんですね・・・。
Posted by さくら at 2007年01月12日 11:46
NORTON3rdさま
新年あけまして、おめでとうございます。
(おひさしぶりです。)

>何たる偶然、

おお、奇遇ですねえ...
たまごどん氏の見つけたニュースは、これですね。
「無戸籍児:離婚300日以内誕生は前夫の子『法の壁』重く」
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070108k0000m040102000c.html



さくらさま

いろいろ調べてくださって、どうもありがとうです。
「出生届:早産で不受理 『離婚後300日』9日足りず『前夫の子』」
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070112ddm041040150000c.html

実の親子関係にあることを、直接証明してもだめで、
民法の規定で推定できるときは、つねにそれが最優先だと思います。
「父権の推定」は、医学の知識や事実は、無視して定められていて、
科学的でない、くらいに思ったほうが、いいと思います。
Posted by たんぽぽ at 2007年01月12日 22:45
こっちでは久しぶりになるピョン。民法の古臭くて意味のない条文は、なるたけ改正して欲しいピョンなあ。男女平等の実現は、法律改正運動も大事なんだと思うのら。
NORTON3rdピョン、紹介ありがとね〜(^^)

さくらピョン、たまごどんに「氏」は無用だピョンよ〜。

Posted by たまごどん at 2007年01月13日 00:25
たまごどん
新年あけましておめでとうです。
(おひさしぶりですね。)

このところ、毎日新聞は、立て続けてに、家族法の記事を書いていますね。
(だれかに、なにかあったのかな...?)

>たまごどんに「氏」は無用だピョンよ〜。

おおっと、そうでした。(笑)
(「氏」を付けちゃったの、さくらさんじゃなくて、わたしだよ。)
Posted by たんぽぽ at 2007年01月13日 12:43

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Tracked: 2007-01-22 16:06