安倍首相は1月にアメリカを訪問する予定だったのですが、
オバマ大統領のほうから延期を通告した、というニュースがあります。
オバマ大統領が安倍の訪米を延期にした表向きの理由は、
「新政権の準備で日程が取れない」というものです。
「1月訪米実現しない裏にオバマ政権の安倍首相への危惧あるか」
「安倍首相、初外遊は東南アジア 1月中旬、訪米は先送り」
安倍首相は初の外国訪問先をアメリカと決めていました。
安倍は日米同盟の強化を重視しているわけで、
政権を取る前から1月に訪米することを決定し、
日程を組むよう外務省に言ってくるという、熱の入りようです。
総選挙勝利の2日後には、早くもオバマ大統領と電話で会談して、
日米首脳会談の日程について相談していました。
安倍の対アメリカ関係に対する執拗なこだわりは、
「民主党政権で揺らいだ日米同盟の修復」という考えもあるようです。
例によって民主党政権の否定もあるのでしょう。
ところがオバマ大統領のほうから、延期を通告してきたわけです。
安倍はすっかりアメリカへ行くつもりでいたようで、
外務省次官を官邸に呼びつけて、「なんとしても
日程調整をするように厳命した」とあります。
しかし結局断念となり、初外遊は東南アジアとなりました。
オバマ大統領は、代わりの日程をしめしていないというし、
ようするに安倍首相を袖にしたのでしょう。
新政権の準備で忙しいのも、たしかにあるのでしょうが、
より本当の理由は、従軍慰安婦問題ではないかと考えられます。
http://www.news-postseven.com/archives/20130112_165919.html
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安倍氏は先の総裁選で従軍慰安婦問題やその他の戦後処理に
関する日本政府の歴史認識を見直したいと言い続けている。
尖閣問題でも中国に強硬姿勢を取るかもしれない。
米国にすれば、そんな安倍氏が『アメリカは
日本の同盟国だから、当然、応援してくれるだろう』と
日米同盟強化を強調する姿勢を評価していない」
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2007年の第一次安倍政権のとき、アメリカ合衆国の上院の
従軍慰安婦謝罪決議を否決してもらおうとして、
安倍は裏手回しに画策をしたことは、とうぜん覚えているでしょう。
これは第一次安倍政権の外交上の最大の失政となったのでした。
歴史に対する、かかる安倍の姿勢は変わっていないです。
政権を取る前にも、「従軍慰安婦否定」の広告に、
安倍晋三も賛同者として名を連ねています。
また政権を取ってからも、村山談話に変わる
新談話を発表したいと述べたりしています。
「「慰安婦」否定意見広告に名をつらねた人々(俵義文さん発信)」
「村山談話に代わる安倍談話発表へ…菅官房長官」
このような安倍政権に対して、オバマ政権はじきじきに、
歴史認識の見直しに対して牽制をしてもいるのでした。
安倍政権の、従軍慰安婦問題をはじめとする歴史認識に対する、
オバマ政権の警戒は、かなり強いことが考えられます。
「米、日本政府の歴史認識見直しをけん制」
歴史認識というのは、日本ではあまり問題視されないので、
ぴんと来ないかたも多いかもしれないですが、
外国ではかなり重要視されることとなっています。
ヨーロッパの民主主義国の中には、
歴史のねつ造が犯罪になる国もあるくらいです。
アメリカの世論も、従軍慰安婦問題をはじめとする
日本の歴史否定に対して、もちろんきびしい態度を取ります。
上述のオバマ政権だけでなく、ニューヨークタイムズの社説が、
安倍首相を批判したり、ニューヨーク州が日本政府に対して、
従軍慰安婦謝罪決議を提出したりしています。
「歴史否定の「重大な過ち」=安倍首相を批判ー米紙社説」
「米 州議会に慰安婦謝罪求める決議案」
ただ、あまり多くない、安倍政権の慰安婦問題の対応を
扱った日本の報道では、「アメリカは韓国や中国と日本の
関係の悪化を懸念している」という論調で書かれています。
それもたしかにあるのでしょうけれど、
アメリカも日本軍慰安婦の直接の被害国でもあるのであり、
その要素も強いのではないかと思われます。
かくして、安倍首相は、最初の外遊先をアメリカと決めて、
日米同盟の修復・強化をはかろうと意気込んでいたので、
思いがけず出鼻をくじかれたことになります。
そして日米同盟重視の安倍政権と、従軍慰安婦問題を理由に、
日本を遠ざけようとするオバマ政権という
図式ができあがったことになります。
安倍政権は、アメリカに接近したいと思いつつも、
従軍慰安婦問題の立場は、おいそれとは変えないでしょうから、
とんだジレンマに陥ったことになります。
こんなことは安倍晋三が自民党の総裁に選ばれた時点で、
とうぜん予想されるはずのことだとも言えます。
ところが歴史認識を重視しない日本の風潮もあって、
日本側はあまり警戒していなかっただろうと思います。
(警戒しているくらいなら、安倍が総裁に選ばれなかったでしょう。)
このジレンマが、今後の対アメリカ関係の中で、
どのように影響してくるかが、注目するところだろうと思います。
付記:
安倍政権の従軍慰安婦問題をはじめとする、歴史認識に対する
懸念をしめした日本の記事。
「記者の目:安倍政権と歴史問題」
米国がやはり宗教チックな保守党政権であれば、安部氏でもオカルト同志である程度仲良くしていただけた可能性があったかもしれませんが。
オバマ大統領は、安倍が政権を取りそうになってきたときから、
従軍慰安婦問題については、懸念をはじめていたようですね。
2007年の謝罪決議のこともあるので、問題視していたのでしょう。
>米国がやはり宗教チックな保守党政権であれば
保守政権でも、従軍慰安婦問題はやはり批判的ですね。
それでも、表立って問題視せずにいてくれるとは思いますが。
エントリで紹介されているニューヨーク州議会の決議案ですが、数日前に全会一致で可決されたようですね。草案には当初含まれていた、「日本政府に公式な謝罪を求める」という文言は削除されたようですが。
昨年11月のエントリに通りすがった方が居るようですが、その「可決」のニュースを見て通りすがられたのではないかと想像します。
安倍(当然、敬称略)は、2月下旬の訪米を画策して日程調整をさせているようですが、河野談話に関する記者質問に対して「河野談話については、当時河野氏が官房長官だったのだから、菅官房長官が対応する。」とか全く意味不明な回答をしたり、今日の国会審議では、うっかり「尖閣への公務員常駐は選択肢の一つだ。」とか言ってしまったりしており、韓国系・中国系市民の支持が高い民主党オバマ政権が、そんな安倍と会ってくれるのか、推移を見守りたいと思います。
河野談話の件は、昨日の国会審議での、共産党の志井さんからの質問に対する回答でした。
>数日前に全会一致で可決されたようですね
これですね。
上院ですが、おとといのことですね。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130130/k10015158071000.html
http://japanese.joins.com/article/705/167705.html
>「日本政府に公式な謝罪を求める」という文言は削除された
外交問題には触れないという判断からですね。
日本政府は謝罪しなくてよいと考えている、
ということではないのでしょう。
>その「可決」のニュースを見て通りすがられたのではないかと想像します
その可能性はあると思いますよ。
検索でわたしのブログを見つけたのかもしれないですね。
>そんな安倍と会ってくれるのか、推移を見守りたいと思います
安倍政権としては、日米同盟を強化したいが、
慰安婦問題は認めたくないわけで、ジレンマに陥りましたね。
アメリカは安倍が首相になりそうだというときから、
日本を警戒していたのでしょう。
日本は、戦争責任問題に甘い体質もあって、
慰安婦問題をほとんど意識していなかったのだと思います。
オバマ大統領はいずれ会ってくれるとは思うけれど、
会談で慰安婦問題のことを、持ち出す可能性はありますね。
どういうことになるか、わたしも推移を見守りたいと思います。