内閣府による恒例の世論調査が発表されました。
選択的夫婦別姓を中心に、婚姻年齢や婚外子など
民法改正についての意識を調べる調査です。
「家族の法制に関する世論調査」
調査の全体は内閣府のサイトをご覧いただくことにして、
もっとも注目を惹く、選択的夫婦別姓制度の是非を問う
Q11を見てみたいと思います。
結果は残念ながら、賛成は伸びず、わずかに後退しています。
選択的別姓を認めるよう民法を「改めてもかまわない」が35.5%で、
「改める必要はない」は36.4%となっていて、賛否がほぼ同率です。
前回2007年は、賛成が36.6%で、反対が35.0%でしたから、
6年前とくらべて、ほとんど変化がないことになります。
とはいっても、このところは、夫婦別姓のことは
ぜんぜん話題にならないので、こんなものなのかもしれないです。
2001年のころは、夫婦別姓の議論がさかんでした。
それで理解がわりあい浸透して、賛成がかなり反対を
上回ったのもあるのかもしれないです。
2007年は安倍政権のときで、夫婦別姓の話題が逼塞していたので、
今回とほぼ同様、賛成が伸びない結果になったものと思います。
2010年ごろは、夫婦別姓の議論がかなり盛んでした。
このとき調査をすれば、賛成がもっと多かったかもしれないです。
世代と性別にわけると、ご想像の通りの傾向が出て来ます。
男性より女性のほうが賛成が多く、また若年層ほど賛成が多くなります。
とくに世代別は、50代までは賛成のほうが多いのですが、
60代以上できゅうに逆転して、反対のほうが多くなるという
きわだった特徴をしめしています。
>マスコミの反応
マスコミはどこの新聞社も、この世論調査のことを取り上げています。
記事はたいして長くないので、関心はそれほど強くないのでしょう。
「夫婦別姓、反対派が容認派上回る…内閣府調査」
「夫婦別姓反対派が賛成派を上回る 平成8年以来 内閣府世論調査」
「選択的夫婦別姓 反対わずかに上回る」
「夫婦別姓、賛否が拮抗=容認論は減少傾向−内閣府調査」
「夫婦別姓制の法改正、賛否は二分 世代間の差くっきり」
「選択的夫婦別姓 賛否分かれる」
記事の見出しの付けかたが、「反対が賛成を上回る」と
「賛否は二分」の大きくふたつにわかれていると言えます。
数字だけ見ると、反対のほうが賛成より多いのですが、
前回2007年の調査からの変動はわずかで、誤差程度の違いと言えます。
「賛否は二分」と書いたほうが良心的なように思います。
そこへもってきて「反対派が賛成派を上回る」と
見出しで強調することに、どういう意図があるのかと思います。
読売の記事には「導入の機運が高まっていないことが浮き彫りとなった」
と書いてありますが、この結論を書きたいためではないかと
ちょっと勘ぐりたくなってきます。
記事の記述がいちばん長いのは東京新聞です。
Q8の「家族の一体感」の質問についても言及があり、
「苗字が違っても家族の一体感に影響がない」という回答が、
調査ごとに増えていることに触れています。
さらに、「当事者意見重視を」という小見出しで、
榊原富士子教授のコメントを載せています。
この問題の一番の当事者である二十〜三十代女性の意見を重視すべきだ。
通称容認派も含めると80%以上が夫婦別姓に何らかの必要性を
感じていることを示しており、結婚して子供を産んでも
働きやすい環境を整えることが重要だ。
女性が社会に出て働かなければ、安倍政権が掲げる景気浮揚も見込めない。
世論調査の対象が高齢層に偏っていることも気にかかる。
>わたしの雑感
わたしはじつは、世論調査には醒めたところがあるのです。
かつて世論調査で反対が多いことを理由に、民法改正に反対してきて、
2001年に賛成が多くなるときゅうにだまった過去があります。
世論調査でどんな結果が出ても、どうせ反対するのではないか、
反対が多いときだけ「理由づけ」にするのではないか、
という懐疑があるのがひとつです。
それに女子差別撤廃委員会(CEDAW)からは、世論調査を民法改正しない
言いわけにするなと、勧告を受けています。
民法改正は少数派の権利の尊重という立場で行なうべきで、
こんな「多数決」をすることにどんな意味があるのか、
多数決をしたらかえって少数派の権利は
守られなくなりかねない、という考えもあるからです。
それでも、この世論調査が発表されると、
ツイッターでは多少夫婦別姓のことが話題になりました。
世論調査なんてあまり意味なさげに、わたしには感じられるのですが、
話題作りくらいには、役に立つもののようです。
(世論調査をやらないよりは、やったほうがましだろうし、
賛成が多ければそれにこしたことないのは、たしかですが。)
調査のマジックというか。
あと、共働きの方とかも当然忙しいので回収率が低そうですね。(そのデータはありませんが)
そういったハンディがあっての拮抗なので、そのあたりを強調する必要はありそうです。
賛成側は合理性、反対側は感情論なんで基本的に議論にならない。
導入を希求する人の数が
国民127,817,277人 (2011年)の36.4%が賛成し、そのうち23.5%が実際に別姓を希望している、ということは、実に1000万人を超える人が、別姓を希望している、ということに他なりません。
これは、神奈川県や大阪府よりも多く、東京都の人口1300万人にも肉薄する数字で、導入しない、なんていう選択肢はありえないのだと思います。
>賛成の多い20代、30代の回収率が低いせいで、
若年層ほど回収率が低く、高齢層の意見が多く反映される、
というのは、よく指摘されることですね。
若年層はただでさえ人口がすくないのに、
低い回収率のため、余計人数が減ってしまうのですね。
>というか、議論としては、もう導入する以外ありえない、
賛成派の主張は多くの根拠は事実に支えられているし、
反対派の主張は虚構や思い込み、偏見がほとんどですからね。
議論としては決着は付いていると思います。
>導入を希求する人の数が
あきらかに無視できるような少数ではないですよね。
反対派は努めて眼をそらすと思いますが、
世間一般の認識でも、「めったに見かけないほどの少数」だと
思われているのでしょうかね?
>選択的夫婦別姓制度は議論なしでやってしまう方式を取らないと
わたしも、おなじように思いますよ。
選択別姓の議論なんて20年以上前からやっているし、
いまさら議論することなんてないと思います。
反対論者は「まだ議論がふじゅうぶんだ」といまだに言う人がいるけれど、
単に自分が感情的に受け入れられないのを、
言いわけしているだけとしか思えないのですよね。
反対論者とはいくら議論を重ねても、
「まだ議論がふじゅうぶん」と言い続けると思います。
反対論者は導入を阻止するために、時間稼ぎをしたくて、
「まだ議論がふじゅうぶんだ」と言い続けて
いるのではないかと、思いたくもなってきます。