世代別にすると50代までは賛成のほうが多いのですが、
60代以上で急激に反対派が多くなる、ということをお話しました。
そして人口比は、若年層より高齢層が多くなっています。
それで、60代以上の反対意見が反映されやすく、
選択的夫婦別姓が実現しない要因のひとつと考えられるわけです。
さらに言うとこの世論調査は、若年層のほうが回収率が低いため、
余計に高齢層の意見が大きく扱われる、という指摘があります。
つまり、結婚当事者である20-30代の女性の意見が
小さく評価されることになり、世論調査の賛否の数値を
そのまま使うとかえって偏るのではないか、ということです。
以下のエントリは数字を調べて、このあたりを
ていねいに検証しているので、ご紹介したいと思います。
「サンプルの回収率と人口比」

20歳代の男性は2013年の人口推計では13.4%ですが、
世論調査で回収された回答は7.7%と、ずっと小さくなっています。
これに対して、70歳代以上の男性は、人口推計の18.4%に対して、
回収の比率は23.1%と大きくなっていることがわかります。
このような事態になるのは、事前に調査員から
個別の面談の申し込みがあり、顔を合わせて聞き取るという
「個別面接聴取法」だからだと言われています。
20-30代はお仕事で家を開けていることが多いでしょうし、
それゆえ連絡が付きにくくなるのでしょう。
似たような傾向を示すものとして、わたしは選挙を連想しましたよ。
選挙も若年層は人口がすくない上に、投票率が低いので、
ますます投票する人数がすくなくなって、
若年層の声が政治に反映されにくくなるのでした。
かくして、結婚改姓に直面する20-30代の切実な意見が、
当事者性が薄く、おそらく結婚改姓の負担など
理解していないであろう高齢者の反対意見によって、
つぶされるという現実が、浮き彫りになるということです。
高齢者の反対意見というのは、たとえばむかしお話した、
「若い女性たちに告ぐ」などというものが代表でしょう。
こうした意見は残念ながら、「ひまを持て余した
高齢男性のたわごと」などと言ってはいられず、
まじめに対処しなければならない現実があると言えます。
>調査の回収数を人口比で補正
ところで、世論調査の回収数が人口比通りだとしたら、
どうなるだろうかというのが、わたしは気になりました。
2013年1月の人口推計が与えられているので、
これを使って回答者の人数を、人口比とおなじに補正したときの、
賛否の割合を計算してみました。
結果をつぎの表にしめしています。

左から5列目の「スケール」というのが補正比です。
20-29歳の男性の場合、人数が1.867倍に引き延ばされ、
70歳以上の男性は、0.855倍になります。
男女とも、回収率の低い若年層は人数が引き延ばされ、
回収率の高い高齢層は縮むことがしめされています。
右側4列の緑字で示した数値が、補正をかけた場合の人数です。
(誤差を減らすために、小数点以下まで計算しています。)
たとえば、20-29歳の男性のうち「賛成」は
調査結果によると105人中39.0%なので41人ですが、
これにスケールの1.867をかけて「76.4人」と計算されます。
全体の割合をしめしたものが、右下の赤字の数値です。
賛成が36.7%で、反対が34.5%となりました。
世論調査の直接の結果は、賛成が35.5%で反対が36.4%ですが、
回答数を人口比で補正したことで、賛否が逆転したわけです。
それでも、どうにか賛成のほうが多くなったという程度で、
劇的に賛成が多くなるほどの差は付かないのでした。
補正をかけても、高齢層の人数が多いのはいかんともしがたく、
依然として彼らの意見が大きく扱われるということのようです。
確かに、さほどの違いはありませんね。
でも、たんぽぽさんのこの計算は、今回の調査で微妙に反対の方が多いことで鬼の首をとったように、「反対の方が多くなった。もう社会の趨勢は導入しない方向だ」とかなんとか言う人たちに対して、それも違うだろ、と、冷や水を浴びせることは少しできる結果だとは思います。
もっとも50歩100歩の議論ですし、もう世論調査に関係なくさっさと導入するべき段階だ、とはやはり思いますが。
が、そうだとしても安倍政権では、完全無視するでしょうね。
かと言ってリベラル政党が大勝ちして、数の力で民法改正、ってのも現実味が無いし…
このままだと民法改正前に、日本の法律婚制度が形骸化しそうな感じがします。新婚夫婦の半数が事実婚、とか。
それはそれで面白いかもね、と、事実婚の私は思ったりもします。
>大変な計算をどうもありがとうございます!
こちらこそ、ご覧いただきありがとうです。
>確かに、さほどの違いはありませんね
わたしも、賛成がずっと多くなるかと思っていたので、
いささか期待はずれでした。
>今回の調査で微妙に反対の方が多いことで鬼の首をとったように
どうなのでしょうね。
反対が多いときは、わずかな違いでも強調して
勝ち誇ったようになるけれど、賛成が多いときは、
ごちゃごちゃ理由をつけて否定しそうに思うのではありますが。
>もう世論調査に関係なくさっさと導入するべき段階だ、とは
いつまで世論調査ばっかりやっているんだと、わたしも思いますよ。
CEDAWからも世論調査を言いわけにするなと言われているし、
そもそも少数派の権利を「多数決」していては、
いつまでたっても認められないですからね。
(なのでわたしは世論調査には、ちょっと醒めているのですよね。)
このエントリにコメント、ありがとうございます。
>仮にそこで勝訴すれば、世論に対しては多少なりとも影響を与えられるでしょう
多少の影響でしたら与えられそうだと、わたしも思います。
それなりに話題になるのではないかと思います。
原告の勝訴を祈ってやまないです。
>そうだとしても安倍政権では、完全無視するでしょうね
わたしもそう思います。
それでも、控訴するか賠償を払うかを決める必要はありますね。
>かと言ってリベラル政党が大勝ちして、数の力で民法改正、ってのも現実味が無いし
仮に民法改正が話題になったとしても、
選挙の争点にはぜんぜんならないでしょうね。
これまでも、争点になったためしがないですし。
>このままだと民法改正前に、日本の法律婚制度が形骸化しそうな
それはそれでいいと、わたしも思いますよ。
現実に適応するべく変化しないものは、形骸化が定めでしょうからね。