これもすこし前のニュースですが、2月12日にフランスの下院で、
同性結婚を認める法案が可決しました。
オランド大統領が公約に掲げていたものです。
上院の審議は4月からですが、こちらも与党が過半数をしめているので、
法案が成立する可能性は高いことになります。
「仏下院、同性婚解禁法案を可決 根本的な社会変革」
「同性婚法案を可決 死刑廃止以来の社会変革」
「同性婚の権利認める法案、フランス下院を通過」
「仏下院が同性婚法案を可決、上院も通過の見込み」
この同性結婚を認める法案は、1981年の死刑廃止以来の
根本的な社会変革だと言われています。
それほどまでに大事件だということなのでしょう。
(日本の民法改正も、ここまで大事件として扱われるのでしょうか?)
同性結婚法案が下院で可決しそうだというので、
フランス国内では反対派の抵抗が激しくなったのでした。
そのせいかどこの新聞も、反対派のことを取り上げています。
同性結婚に反対しているのは、カトリック教会や保守系野党で、
このあたりは予想通りだろうと思います。
同性結婚の反対派は、下院での法案提出にさき立って、
大規模なデモまで行なうという、ものすごい抵抗ぶりでした。
これはつぎのように、日本でも新聞記事になっています。
「パリ、同性婚反対で大規模デモ 「80万人」と主催側」
「同性婚反対で大規模デモ パリ、「80万人」と主催側」
「フランスで同性婚反対デモ、数十万人参加」
「#フランス: 同性婚法案賛成デモ(2013年1月27日)」
彼らが反対する理由として「伝統的な家族に反する」とか
「社会の基盤が揺らぐ」というものがあります。
こういう理由も、おおかたの予想通りだと思います。
どこの国でも、異質なものを排除する理由付けとして
「伝統」「社会の基盤」を持ち出してくる、ということだと思います。
ほかに「子どものあいだの差別を招く」があります。
これはどういうことなのか、わたしにはよくわからないです。
「同性カップルに育てられた子どもには、よくない影響がある」とか
「かわいそう」という発想から来るのでしょうか?
新聞報道を見ていると、フランスの同性結婚法案には、
いかにも反対が多く、賛成がすくないかのような印象を受けますが、
世論調査を見るとかならずしもそうではないです。
つぎのエントリに、フランスの世論調査を(原文はフランス語)、
日本語に約したものがあるので、ご覧いただけたらと思います。
「フランスの同性婚合法化についての日本での報道に一言」
同性結婚の是非を問う「質問1」はつぎのようになっています。
賛成が56%、反対が39%で、賛成のほうがじつは多いのでした。
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質問1: 男女問わず同性愛カップルにフランスで結婚する権利を
付与することにあなた個人は賛成ですか、反対ですか。
完全に賛成 25%
どちらかというと賛成 31%
どちらかというと反対 16%
完全に反対 23%
意見を表明せず 5%
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それでも、同性カップルが子どもを持つことには、やはり抵抗があるようで、
賛成より反対がすこし多くなってきます。
日本の選択的夫婦別姓であれば、「世論調査で賛否が二分」とか、
「反対が賛成をすこし上回った」という結果であれば
それはすぐさま「世論が反対している」と見なされて、
法改正は必要なしと見なされるのが相場だったりします。
あるいは、反対派が大規模なデモをやれば、
日本の政治家たちは、すぐに「反対派がこんなにも多い」と思って、
それまで推進して来た議員たちも萎縮してしまい、
法案提出を引っ込めかねないのではないか、という気もします。
フランスの同性結婚法案では、そういうことがなく、
つつがなく法案が提出されて可決するということは、
やはりすばらしいことだと思います。
それから、日本の報道で気になるところですが、
フランスでは同性結婚に反対が多いのに、オランド政権は
ごり押しで推進していると、印象づけようとしているようだ、
という指摘が、さきのエントリで触れられています。
日本のメディアは、反対派が大規模デモをしたときだけ報じたりして、
そういうバイアスをかけている様子がなきにしもあらずです。
日本では選択別姓も認められないので、外国は同性結婚も認めて
どんどんさきに進んでいると思われたくないのかとか、
あるいは、世論の反発を理由に選択別姓を認めない
日本こそ正常なのだと暗に言いたいのかとか、
ちょっと勘ぐってしまいたくなりますね。
付記:
フランスの同性結婚法案については、こちらのエントリで、
提出を準備していることに触れました。
「同性結婚を認める世界」
わかる気がします。世界に胸を張れる話ですものね。
翻って日本。どうしようもないですね。。。
ここまで時機を失すると、たとえ日本がこれから選択的夫婦別姓法案を導入したとしても、当たり前のことをやった、というだけなので、他の国が報道してくれることもないでしょうねー。
>フランスの知人は結構いますが、ほんと今の政権に誇りを持っていますね
>わかる気がします。世界に胸を張れる話ですものね
政権に誇りが持てるというのは、すばらしいことだと思います。
国民は自分たちにふさわしいレベルの政治家を持つと言いますし、
まさに民度がそのくらいすばらしい、ということなのでしょう。
日本ではとても無理なことではないかと思います。
いまの安倍政権なんて、むしろはずかしいくらいですしね。
>翻って日本。どうしようもないですね
世論調査で賛否が二分しているとか、反対派が大規模デモをやったりしたら、
日本ではすぐに萎縮して、そそくさと法案提出を引っ込めそうですよね。
(でも女子差別撤廃委員からの勧告を無視し続ける「度胸」はある。)
少数派の権利を公約にしてそれを守るというのは、
日本ではなかなかできないことではないかと思います。
>他の国が報道してくれることもないでしょうねー
日本はいまごろになって選択別姓を認めた、という後進性が
かえって話題になって報道されるかもしれないですよ。