2013年03月02日

toujyouka016.jpg フランスの同性結婚法案

これもすこし前のニュースですが、2月12日にフランスの下院で、
同性結婚を認める法案が可決しました。
オランド大統領が公約に掲げていたものです。
上院の審議は4月からですが、こちらも与党が過半数をしめているので、
法案が成立する可能性は高いことになります。

「仏下院、同性婚解禁法案を可決 根本的な社会変革」
「同性婚法案を可決 死刑廃止以来の社会変革」
「同性婚の権利認める法案、フランス下院を通過」
「仏下院が同性婚法案を可決、上院も通過の見込み」

この同性結婚を認める法案は、1981年の死刑廃止以来の
根本的な社会変革だと言われています。
それほどまでに大事件だということなのでしょう。
(日本の民法改正も、ここまで大事件として扱われるのでしょうか?)

 
同性結婚法案が下院で可決しそうだというので、
フランス国内では反対派の抵抗が激しくなったのでした。
そのせいかどこの新聞も、反対派のことを取り上げています。
同性結婚に反対しているのは、カトリック教会や保守系野党で、
このあたりは予想通りだろうと思います。

同性結婚の反対派は、下院での法案提出にさき立って、
大規模なデモまで行なうという、ものすごい抵抗ぶりでした。
これはつぎのように、日本でも新聞記事になっています。

「パリ、同性婚反対で大規模デモ 「80万人」と主催側」
「同性婚反対で大規模デモ パリ、「80万人」と主催側」
「フランスで同性婚反対デモ、数十万人参加」
「#フランス: 同性婚法案賛成デモ(2013年1月27日)」

彼らが反対する理由として「伝統的な家族に反する」とか
「社会の基盤が揺らぐ」というものがあります。
こういう理由も、おおかたの予想通りだと思います。
どこの国でも、異質なものを排除する理由付けとして
「伝統」「社会の基盤」を持ち出してくる、ということだと思います。

ほかに「子どものあいだの差別を招く」があります。
これはどういうことなのか、わたしにはよくわからないです。
「同性カップルに育てられた子どもには、よくない影響がある」とか
「かわいそう」という発想から来るのでしょうか?


新聞報道を見ていると、フランスの同性結婚法案には、
いかにも反対が多く、賛成がすくないかのような印象を受けますが、
世論調査を見るとかならずしもそうではないです。
つぎのエントリに、フランスの世論調査を(原文はフランス語)
日本語に約したものがあるので、ご覧いただけたらと思います。

「フランスの同性婚合法化についての日本での報道に一言」

同性結婚の是非を問う「質問1」はつぎのようになっています。
賛成が56%、反対が39%で、賛成のほうがじつは多いのでした。
========
質問1: 男女問わず同性愛カップルにフランスで結婚する権利を
付与することにあなた個人は賛成ですか、反対ですか。

完全に賛成 25%
どちらかというと賛成 31%
どちらかというと反対 16%
完全に反対 23%
意見を表明せず 5%
========

それでも、同性カップルが子どもを持つことには、やはり抵抗があるようで、
賛成より反対がすこし多くなってきます。


日本の選択的夫婦別姓であれば、「世論調査で賛否が二分」とか、
「反対が賛成をすこし上回った」という結果であれば
それはすぐさま「世論が反対している」と見なされて、
法改正は必要なしと見なされるのが相場だったりします。

あるいは、反対派が大規模なデモをやれば、
日本の政治家たちは、すぐに「反対派がこんなにも多い」と思って、
それまで推進して来た議員たちも萎縮してしまい、
法案提出を引っ込めかねないのではないか、という気もします。

フランスの同性結婚法案では、そういうことがなく、
つつがなく法案が提出されて可決するということは、
やはりすばらしいことだと思います。


それから、日本の報道で気になるところですが、
フランスでは同性結婚に反対が多いのに、オランド政権は
ごり押しで推進していると、印象づけようとしているようだ、
という指摘が、さきのエントリで触れられています。
日本のメディアは、反対派が大規模デモをしたときだけ報じたりして、
そういうバイアスをかけている様子がなきにしもあらずです。

日本では選択別姓も認められないので、外国は同性結婚も認めて
どんどんさきに進んでいると思われたくないのかとか、
あるいは、世論の反発を理由に選択別姓を認めない
日本こそ正常なのだと暗に言いたいのかとか、
ちょっと勘ぐってしまいたくなりますね。


付記:
フランスの同性結婚法案については、こちらのエントリで、
提出を準備していることに触れました。

「同性結婚を認める世界」

posted by たんぽぽ at 23:38 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
フランスの知人は結構いますが、ほんと今の政権に誇りを持っていますね。(いずれも科学者ですが。)
わかる気がします。世界に胸を張れる話ですものね。

翻って日本。どうしようもないですね。。。

ここまで時機を失すると、たとえ日本がこれから選択的夫婦別姓法案を導入したとしても、当たり前のことをやった、というだけなので、他の国が報道してくれることもないでしょうねー。
Posted by 魚 at 2013年03月03日 01:33
このエントリにコメント、ありがとうございます。

>フランスの知人は結構いますが、ほんと今の政権に誇りを持っていますね
>わかる気がします。世界に胸を張れる話ですものね

政権に誇りが持てるというのは、すばらしいことだと思います。
国民は自分たちにふさわしいレベルの政治家を持つと言いますし、
まさに民度がそのくらいすばらしい、ということなのでしょう。

日本ではとても無理なことではないかと思います。
いまの安倍政権なんて、むしろはずかしいくらいですしね。


>翻って日本。どうしようもないですね

世論調査で賛否が二分しているとか、反対派が大規模デモをやったりしたら、
日本ではすぐに萎縮して、そそくさと法案提出を引っ込めそうですよね。
(でも女子差別撤廃委員からの勧告を無視し続ける「度胸」はある。)
少数派の権利を公約にしてそれを守るというのは、
日本ではなかなかできないことではないかと思います。

>他の国が報道してくれることもないでしょうねー

日本はいまごろになって選択別姓を認めた、という後進性が
かえって話題になって報道されるかもしれないですよ。
Posted by たんぽぽ at 2013年03月05日 22:58
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