昨年12月の総選挙では、民主党が壊滅的な大敗をしたのですが、
今後に向けて敗因分析はむろん必要なことでしょう。
その敗因分析として、とてもよい記事を見つけたので、ご紹介したいと思います。
「落選議員が語る【民主党崩壊】」
「Vol.1 選挙が終わると届く請求書の数々」
「Vol.2 民主党に貼られた「ウソつき」というレッテル」
「Vol.3 “印籠”と化していた「マニフェスト」」
「Vol.4 民主党執行部は「大本営作戦家」!?」
この記事は、荻上チキ氏、飯田泰之氏に、総選挙で落選した
池田元久氏、田中美絵子氏、宮崎タケシ氏の5人の座談会となっています。
内情を知っているかたたちの議論なので、
かなり具体的かつ的確な指摘をしていると思います。
2ページ目では、民主党の失敗の原因として、
官僚主導からの脱却の失敗と、2010年の参院選の敗北を挙げています。
わたしが以前、つたない敗因分析をしたことがありますが、
それとも問題意識が重なるのではないかと思います。
自民党政権時代、官僚主導のときは政治家間の意見調整や、
業界間の利害調整といったことも、官僚がやっていました。
政治主導となれば、こうした調整も政治サイドで行なう必要があります。
民主党は官僚と対峙するだけの力量がなかったとはよく言われますが、
より具体的には、このようなネゴシエーションの
技術が足りなかったことになるようです。
2010年の参院選の敗北は、菅首相(当時)による、
消費税の議論が、やはり大きかったことになります。
民主党は「うそつき」というイメージがあると思いますが、
このレッテルも、参院選以降言われることになったのでした。
また衆参のねじれができてからは、党執行部が自民党との
融和路線に走ったのも失敗だったと言えます。
これで自民との合意の障害になるものは、切り捨ててもしかたないと
考えるようになり、小沢氏たちを排除することになったのでした。
3ページ目は、民主党の意思決定の仕組みについて語られています。
わたしはまったく知らなかったのですが、
民主党は多分にトップダウンで、仕組みも不明瞭だそうです。
「脱デフレ」も、党全体の体勢で、かなり話が進んでいたにもかかわらず、
首脳部の数人からかたくなに反対されて、動けなくなったのでした。
はじめのころは、マニフェストがあったので、
「マニフェストの通りにやればいい」で済んでいました。
問題が出たのはマニフェストの実現が難しくなってからで、
マニフェストから逸脱した政策が、党主流派の権限で
決められるようになっていきました。
不透明なトップダウン方式で、マニフェストにないことを決めるから、
それでは従えないと反主流派から反対が出ることになります。
その反主流派の中心が、小沢一郎氏だったのですが、
主流派は小沢氏を排除することで、解決をはかったのでした。
「小沢切り」も不透明なトップダウンの意思決定の産物となりそうです。
(このページは「“印籠”と化していた「マニフェスト」」という
タイトルなので、マニフェストを守ることに問題があるようですが、
そうではなく問題なのは意思決定システムですね。)
4ページ目ですが、とくに菅政権と野田政権は、
全体を見る大局観や、自分や自グループでない
「公」に対する責任感がとぼしいことが指摘されています。
「ゲーム感覚」と評されていますが、
目先の「局地戦」をクリアすることだけ考えて、
大局を見通した行動や決断をしないというわけです。
野田首相の時期をはずした解散・総選挙はまさにそうですね。
それから以前、菅政権のゆゆしき体質として
わたしが批判した、「小沢を切れは支持率が上がる」といった
保身的発想も、目先のことしか見ていないがゆえの
視界の狭隘化と考えることもできるようです。
「民主党の失敗」というと「統治能力の未熟」と言われます。
こうして記事を見てくると、その中身は具体的には
つぎのようだということになるでしょう。
1. 官僚と対峙するだけの力量の不足
2. 自民党との融和政策
3. 不透明なトップダウンの意思決定
4. 大局観や「公」に対する責任感の欠如
わたしが問題だと思っていることのひとつである「小沢切り」も
原因は複合的で、2.、3.、4.が関係していることになります。
小沢氏の排除は、統治能力の未熟の産物であることはたしかでしょう。
4ページ目ではさらに、民主党の理念・基本イデオロギーに
ついても語っています。
大きくふたつあって「双頭の蛇」と表現していますが、
「いわゆる政官財の癒着を断ち切る、予算カットを含め、
それに伴うさまざまな改革を目指すというもの」と
「再配分重視でヨーロッパ流の福祉国家を目指すというもの」です。
ひとつ目は政治改革・政治主導の確立ですね。
ふたつ目は、福祉国家の4K政策に代表されるもので、
「コンクリートから人へ」で象徴されるものです。
そしていずれも、ヨーロッパの民主主義国では
定着をしていて、日本も目指す必要があるはずのものです。
ひとつ目の政治改革・政治主導は民主党以外にも
目指している政党はいくつかありますが。
ところがふたつ目の福祉国家は、民主党以外に目指している政党がない、
という驚異的な状況にあるわけです。
さきの総選挙は、単なる民主党の敗北というだけでなく、
日本の社会福祉の危機であるとも言えるわけです。
日本にも社会福祉、弱者に光を当てて行くことは必要です。
その意味でも、わたしたちは民主党の敗北をていねいに分析して、
将来を考えていく必要があると思います。
個別政策でも皆に良い顔をしようとして迷走したあげく、支持層が特別望んでもいなかった財政再建に説明不足なまま突っ走りましたからね。
>結局のところ「既得権益の切り捨てや排除」が出来なかった事につきますよ。
既得権益と対峙することを目標としていましたからね。
(いまだって標榜している。)
それが挫折してしまっては、信頼を失うでしょうね。
このあたりについて、より技術論的なところに立ち入ると、
エントリでしめした1.や2.が当てはまるのかなと思います。
>個別政策でも皆に良い顔をしようとして迷走したあげく、
「ろばを担いだ親子」になったという印象は、わたしにもあります。