ご存知のかたもいらっしゃると思います。
毎年、世界の報道の自由度ランキングを発表しているところです。
1月の末なので、すでにだいぶ経ちますが、
2013年の報道の自由度ランキングが発表されています。
日本の順位は22位から53位へと、大きく下がったことが話題となりました。
国境なき記者団のレポートはこちらをご覧ください。
日本についての記述は4、5、11ページにあります。
「World press freedom index 2013」
こちらに当該箇所を日本語訳したものがあります。
「国境なき記者団による2013年の世界報道の自由報告・日本関連部分」
日本のメディアが、日本の報道の自由度が下がったことについて、
どう取り上げたかですが、NHKが報道をしていました。
「“報道の自由度”日本53位に大幅後退」
このNHKの報道について、国境なき記者団のレポートと比較して、
興味深い検討をしているエントリがあるのでご紹介します。
日本のマスコミの体質がわかりそうですよ。
「日本の報道の自由度が急落したと報じる日本の報道機関の無反省ぶり」
日本の順位が下がった原因について、NHKはつぎのように報道しています。
このうち、日本は、東京電力福島第一原発の事故について、
「透明性に欠け、個別取材に対して政府などから開示される情報が
あまりにも限られている」などとされ、前の年の22位から53位へと
大幅に順位が下がりました。
ところが、国境なき記者団のレポートの4ページと5ページは、
日本の順位が下がったことについて、つぎのように分析しています。
以下、このエントリを孫引きします。
"In Asia, Japan (53rd, -31) has been affected by
a lack of transparency and almost zero respect for access
to information on subjects directly or indirectly related to Fukushima.
This sharp fall should sound an alarm."
訳「アジアでは、日本が前年に比べて31位順位を下げて53位となった。
それは、(報道内容が)透明性に欠けていることと、
直接的あるいは間接的に福島(の原発事故)に関連する問題についての
情報へのアクセスがほとんど保障されていないことによる。
日本はこの急落を警鐘として受け止めるべきである。」
"Japan (53rd, -31) plummeted because of censorship of nuclear industry
coverage and its failure to reform the “kisha club” system.
This is an alarming fall for a country that usually has a good ranking."
訳「日本は前年に比べて31位順位が急落して53位となった。
その理由は、原子力産業の報道・取材範囲の情報統制と、
日本が『記者クラブ』の慣習を改善することができていないせいである。
これは、通常は上位に入っている国にとって警鐘となるべき下落だ。」
ようするに、
1. 国境なき記者団のレポートにあった、記者クラブについての批判が、
NHKの報道では言及されていない。
2. 国境なき記者団のレポートにない、「政府などから開示される」
という記述が、NHKの報道にある。
ということです。
2.については、国境なき記者団のレポートは、福島第一原発や
原子力産業に関する情報へのアクセスと書いているだけです。
それをNHKが「政府から開示される」と解釈したということです。
政府以外からも、原発や原子力に関する情報を得るところは
あるはずですから、NHKの解釈は正確ではないことになります。
これはいわば、「政府が開示してくれないから報道できない」と
言いわけしているようなものだと思います。
政府が情報を出さないのなら、政府以外のところを取材してでも
情報を得ようという姿勢にとぼしい、ということになるでしょう。
(そしてこれは、国境なき記者団の英文のオリジナル
レポートを読んで、はじめて気がつくことです。
たいていのかたは、オリジナルのレポートまで読まないでしょうから、
気がつかないで過ぎてしまうことになります。)
さらにさきのエントリでは、つぎのツイートが紹介されています。
外国人からこのように言われるなんて、びっくりではないかと思います。
↓ 私の国であれだけ政府に都合がいい報道をさせようとしたら、ジャーナリストを拷問することになるでしょう。いったい日本政府は、どんな方法を使っているのですか? ー ジプシー・トーブ(ロシア人ジャーナリスト)(提未果・同書より)
— armchair anthroposop (@longtonelongton) 2013, 1月 19
以下、わたしの憶測。
日本のマスコミは、政府から与えられる情報を、
右から左へと一般市民に伝えることが自分たちの役目だ、
のように考えているのではないかと思います。
そして、政府以外のところをどしどし取材して、
政府がしめさない情報をどんどんつかんで、一般市民に向けて
「真実」を伝える、それがジャーナリズムの役目だ、
という意識がとぼしいのではないかと思います。
それゆえ日本のマスコミは、外国人がびっくりするくらい
政府にとって都合のいい報道をするし、政府が情報を開示しなければ
すぐに報道ができなくなるのだろうと思います。