すこし前のニュースですが、政府自民党が、少子化対策のために、
結婚や出産の支援に乗り出すことにした、というニュースがあります。
有識者を集めて、「少子化危機突破タスクフォース(作業部会)」
なるものを発足させることになったのでした。
「結婚・出産、政府が支援…住宅支援やマイ婦人科」
「結婚・出産 若者を応援 少子化打開へ政府新会議」
具体的になにをやるかですが、つぎのようなものが挙っています。
「少子化対策」と聞いて、一般的に考えられることでは、
なぜかぜんぜんなかったりするのですね。
「危機突破」と銘打っていて覇気はいいのですが、
エキセントリックというか、方向性がずれているようですね。
1. 低収入の新婚カップルを対象にした住宅支援や融資制度
2. 自治体の「婚活」事業への補助
3. 女性が若い時期から婦人科のかかりつけ医を持つ「マイ婦人科」制度
4. 出産後の女性の1割が経験するとされる「産後うつ」などを
防ぐための「産後ケア」の充実
5. 働きながら不妊治療を受けられる「不妊治療休暇」制度
民主党政権時代の昨年8月に、保育サービスや幼児教育の充実を
はかるための「子ども・子育て支援3法」が成立しています。
今度のタスクフォースは「結婚や出産、育児など、
残された課題への支援策」という位置付けとなっているようです。
1.ですが、低収入のカップルに住宅の支援をする、というのは、
諸外国を見ても、おそらく例はないのではないかと思います。
手当てが充実していると言われる、フランスやスウェーデンを見ても、
住宅補助に相当する制度はないようです。
低収入の人たちに対する住宅補助というのは、一般的には、
少子化対策ではなく、貧困対策としてなされるように思います。
それでも収入のすくない若夫婦に住宅の補助をするので、
結婚を即すのに、ある程度は役に立つかもしれないです。
2.の婚活の補助というのは、いったいなんだ?と思います。
国が補助をすることなのか?と思います。
きょうびの若い人たちが結婚できないのは、
非正規雇用にしかなれず生活が不安定といったような、
社会に原因があるのですから、それを解決することだと思います。
婚活を補助しても、効果はたかがしれていると思います。
1.と2.のように、少子化対策のために結婚を支援するのは、
結婚してから子どもを産むことが前提になっているからですね。
婚外子の差別をなくすなど、結婚しなくても、
子どもを持って不利にならないように制度を整える、
という考えは、おそらくないのでしょう。
3.-5.については、妊娠・出産に関する費用を補助するのが
むしろ効果的なことだろうと思います。
たとえば、出生率が高くなっているフランスでは、
出産費用は無料ですし、さまざまな検査の費用も全額補償されるし、
産休を取っているあいだの給与も補償されます。
「不妊治療休暇」というのは、なんなのだと思います。
「育児休暇」とおなじ発想で、「じゃあ働きながら
不妊治療が受けられるようにしよう」でしょうか?
休暇を取ったら、不妊治療を受けていることが職場の人たちに知れて、
かえって心理的抵抗が強くなりそうな気もします。
この「少子化対策」には、妊娠・出産後によって、
退職させられたりせず、もとの職場に復帰しやすいようにするとか、
仕事を続けながら育児がしやすいようにするとか、
さまざまな家族形態を容認するとか、授業料を無料にするような、
ヨーロッパの民主主義国ですでに導入され、
実際に効果を上げていることが、出て来ないのですよね。
こういうのは、自民党にいる「家族の価値」とやらを
大切にする人たちに反対されたり、政策が「民主党的」で
彼らに受け付けなかったりするのでしょうか?
自民党の少子化対策に期待するのが、そもそも無理と
言ってしまえば、それまでかもしれないです。
このタスクフォースに集まる「有識者」とは、
学者、医師、自治体首長、経営者などとありますが、
本当に彼らはこんなアイデアを出したのかと思います。
「有識者」と言っても、アメリカの事情をつまみ食いして、
「高校で子どもを産んだらお金を支給」なんて
妙なことを言う、堺屋太一のようなかたもいます。
そういうタイプのかたばかり集まったのかもしれないです。
爆笑モンのズレっぷりじゃないですか、これってwww
せっかくですから、逐一突っ込みさせて頂きます。
1. 低収入の新婚カップルを対象にした住宅支援や融資制度
→「新婚」ってセンスが凄いなぁと。どんなに低収入の夫婦でも、住む家が無いってことは殆ど無いでしょう。ってことは、ただの家ではなく「新婚夫婦が心置きなく子作り行為に励める家」ってことかな?完全防音仕様の寝室に、ピンク色のキングサイズのダブルベッドを置いた公営住宅でも建ててくれるのかな?きゃー!
2. 自治体の「婚活」事業への補助
→地方の自治体では、海外から農家の花嫁を連れてくる、なんて取り組みをしているところもあるようですが、その事かな?
それなら資金援助よりも、怪しげなブローカーの不正を予防したり、慣れない土地での妻業、母業で苦労している外国人妻に対する法的支援を拡充すべきでしょう。
3. 女性が若い時期から婦人科のかかりつけ医を持つ「マイ婦人科」制度
→「私はまだ子供は欲しくない」と言う女性への嫌がらせにもなりますが?
4. 出産後の女性の1割が経験するとされる「産後うつ」などを防ぐための「産後ケア」の充実
→「育児うつ」の方が人数も割合もはるかに多いのでは?産後うつ対策も勿論大事ですが、それ以上に育児うつ対策も確実にお願いします。
5. 働きながら不妊治療を受けられる「不妊治療休暇」制度
→私の会社に居ましたよ、働きながら治療受けてた女性。何で休ませないとならんのかね?
だいたい男に原因がある場合はどうすんの?男も休ませるの?「種無しかもしれんので休暇取って調べさせて下さい。」って、なかなか言えないと思うけどな〜。
だいたい不妊の原因って、色々あるんでしょ。休暇取れれば妊娠出来るってもんでも無かろうに、と思うのですが。
不妊で悩む人達のためには、体外受精や里親制度に対する法整備こそ、重要だと思います。
住宅支援などはまあ多少意味はある、子供欲しいけれど共働きしないと家賃払えないし、というカップルが安い公営に入れれば子育て中は一時専業でいられるかも。
ただ、これは少子化対策というよりは確かに貧困対策ですね。
3,4に関しては少子化を「女の問題」に限定しているところがなんだかなあ、と。
女性の産後ケアが不要とはいいませんが、男性の育児参加についての項目が全く無いのもチョーおかしいです。
5については、ニャオ樹さんの言われるように当然男性にも休暇を与えるべきなんですが、多分、この政策を考えた人の頭には「不妊治療=女性が受ける」しかないでしょうね。
>この「少子化対策」には、妊娠・出産後によって、退職させられたりせず〜
>〜自民党の少子化対策に期待するのが、そもそも無理と言ってしまえば、
>それまでかもしれないです。
に、全て集約されているように感じますね。
このタスクフォースとやらは、『若者(特に女性)の相当の割合が、何故結婚したがらないのか、子供を持ちたがらないのか、その原因を究明しそれを解消する。』と言う、本来あるべき観点が一切無いですよね。
あるのはただ『若い女性に子宮の健全性を自己責任で保たせつつ、さっさと結婚させてさっさと子作りさせて子供産ませろ。』だけ。自民党さんの少子化対策は、何のことはない、全てブリーダー的発想に基くものでした、ってことですな。
結果的にこのアホ共が政府の少子化対策を担っている限り、日本の少子化は確実に進行するでしょう。
>爆笑モンのズレっぷりじゃないですか、
そうですよね。
自民のクオリティもここまで来たか、という感じです。
>2. 自治体の「婚活」事業への補助
>→地方の自治体では、海外から農家の花嫁を連れてくる、
ちまたでやっているふつうの婚活のことでしょう。
あれに国から補助を出すみたいですね。
>産後うつ対策も勿論大事ですが、それ以上に育児うつ対策も確実にお願いします。
彼らの認識では、「女は子どもを喜んで育てるはず」となっていて、
育児うつなんて、母親の責任くらいに思って、
ケアすることだとは思ってないのかもしれないです。
>私の会社に居ましたよ、働きながら治療受けてた女性。何で休ませないとならんのかね?
むしろ必要なのは金銭的な補助ですよね。
>男も休ませるの?「種無しかもしれんので休暇取って調べさせて下さい。」って、
>なかなか言えないと思うけどな〜
わたしも男性が休暇を取ったときのことを考えましたよ。
男性は不妊症であることを、なかなか認めたがらないですからね。
不妊治療を受けていることがみんなに知れるのは、
抵抗があるのでは?と思ったです。
>全て集約されているように感じますね
しょせん他人ごとなので、現状の女性の置かれている立場が
わからないのでしょうね。
それに加えて「家族のカチ」とか言っていて、
それには執着するものだから、余計に因習・反動的になって、
本来必要なことが忌避されることになるのですよね。
>自民党さんの少子化対策は、何のことはない、全てブリーダー的発想に基くものでした
そうそう、まさにそんな感じですね。
しかも有識者を集めて出た意見というのがすごいです。
よくこんなのばっかり集めたと思います。
>改めて著しくずれた政策ですね
そうですよね。
自民のクオリティもここまで来たか、という感じです。
>3,4に関しては少子化を「女の問題」に限定しているところがなんだかなあ、と
3.と4.ははっきり「女性」と書いていますね。
出産は男性もいないとできないのですし、女性だけの問題と考えているうちは、
じゅうぶん解決しない、というのも再三言われることですね。
それから、「女は喜んで子どもを産み育てたがるものだ」という
思い込みもあるのではないかと思います。
それで、女性が子どもを産まなくなったのは、
身体的な理由ではないか?なんて考えるのかもしれないです。
>5については、ニャオ樹さんの言われるように当然男性にも休暇を与えるべきなんですが
5.は性別は明記されていないけれど、女性が受けることしか
念頭にないことは、じゅうぶん考えられますね。
不妊の原因の半分は男性なのだし、男性は自分が不妊症であることを
なかなか受け入れられないみたいなので、そういう意味で
男性にこそケアが必要ではないかとも思うのですけれどね。
http://getnews.jp/archives/309049
この会議で出された「参考資料」に少子化の原因・求められる対策がまとめられていて、妥当な内容だと思います(若年者の非正規雇用の増加、仕事と家庭の両立、女性の就労と家庭、男性の長時間労働、等)。
しかし、出された対策はコレ(エントリの1〜5)なんですね。
「残された課題」と言っても、雇用や労働問題ではなくて、婚活と女性の身体ばかり…。
同サイトに委員の名簿があります。
人選した森少子化担当大臣は、震災後にデマをツイッターで書いたり、民主党政権時に大臣をヤジるのが凄かったそうで、ちょっとエキセントリックな人なのかな、と思います。
安倍首相に大臣に抜擢され、自民党のやりたいこと(結婚奨励・不妊治療・3歳以上の保育料無料)をやれるようにと人を集めた感じです。
武石恵美子教授はワーク・ライフ・バランスや労働問題に取り組んでいますし、真っ当な提言をする方だと思うのですが。初回からこのような方向性を出す会議の中で、どうでしょうかね。
さて、ちょっと寄り道していましたが、kiriko様に御紹介頂いたガジェット通信、見ました。検討会主旨、6人の方から提出された資料、参考資料も一通り目を通しました。
以下の内閣府のWEBサイトにも、同じ内容がアップされているようです。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/taskforce/index.html
参考資料についてはkiriko様の御指摘の通り、いたってまともな内容でした。それ以外の6人の委員の提出された資料についても、堺屋太一的ぶっ飛び論的な物はありません。松田委員の資料がところどころどうかな?と言う感じですが、鈴木委員(三重県知事)の資料なんかは、最後の締めくくりに「くれぐれも産めよ増やせよと言う誤ったメッセージが伝わらないように。」とまで書かれていて、至極真っ当な印象です。
メンバーについても、武石恵美子教授は存じ上げませんでしたが、林文子横浜市長は、横浜市の保育園待機児童をゼロにすべく尽力されていらっしゃる方で、本来であればこの会議にふさわしい方だと思います。
何故、あのような比較的まともな資料で、武石氏や林氏も加わっていながら、あれほどまでにエキセントリックな方向性が打ち出されるのか、とっても疑問です。
疑問と言えばもう一つ。元Jリーガー(北澤氏)、歌手(早見優)、ミスインターナショナル(吉松氏)の御三方がメンバーに選ばれていることですね。この方々は恐らく少子化対策については素人だと思うのですが、どのような意図でメンバーに選ばれたのでしょうか?
例の1.〜5.の提言にせよ、一部の?なメンバーの人選にせよ、この会議の主宰者である森少子化担当相に何やら問題があるのでは?と言う気がしてなりません。
議事録を見れば色々と分かりそうですが、上記の内閣府のwebサイトでは今現在、まだ「準備中」となっていますね。
>「少子化危機突破タスクフォース」(第1回)の資料がこちらのサイトにあります。
>http://getnews.jp/archives/309049
ご紹介まことにありがとうございます。
>(若年者の非正規雇用の増加、仕事と家庭の両立、
>女性の就労と家庭、男性の長時間労働、等)
わたしも拝見しました、いたってまともですね。
「子ども手当て」に言及している資料もありますし。
エントリで「変な有識者ばっかり集めたのではないか?」なんて、
わたしは書いてしまったけれど、そんなことはなかったですね。
この問題に深く関わって、よくわかっている人たちが多いです。
(これは大変失礼いたしました。)
>「残された課題」と言っても、雇用や労働問題ではなくて、婚活と女性の身体ばかり…
なんでそうなったのかと思います。
会議に集まったかたが提出してくださった資料が、
有効に使われなかったことになりそうですね。
やはり自民党の「家族のカチ」イデオロギーに会わないものや、
彼らが「民主党的」と感じるものが排除されたのかとも思います。
>人選した森少子化担当大臣は、
そういう人なのですね、情報ありがとうございます。
この森氏が変なふうにまとめちゃった可能性はありますね。
>武石恵美子教授はワーク・ライフ・バランスや労働問題に取り組んでいますし、
適切な意見を述べたけれど、反映されなかったのかもしれないですね。
自分が参加した会議で、変な決定がなされて、
かなり不本意でいるかもしれないです。
こちらにコメントありがとうございます。
>以下の内閣府のWEBサイトにも、同じ内容がアップされているようです。
>http://www8.cao.go.jp/shoushi/taskforce/index.html
ご紹介ありがとうございます。
こちらが本家のようですね。
>参考資料についてはkiriko様の御指摘の通り、いたってまともな内容でした
そうそう、わたしも「おや?」と思いましたよ。
>松田委員の資料がところどころどうかな?と言う感じですが、
「出会い」とか「婚活」は、ここから拾ったのかなと思います。
https://docs.google.com/file/d/0B1xBQ3bNCL-XZWgxREo3MzJSenM/edit?pli=1
>鈴木委員(三重県知事)の資料なんかは、最後の締めくくりに
>「くれぐれも産めよ増やせよと言う誤ったメッセージが伝わらないように。」
「国や社会のために子どもを産むのではない」ということが
ちゃんと押さえられているのですよね。
https://docs.google.com/file/d/0B1xBQ3bNCL-XNUJRTW9NbGVfRFU/edit?pli=1
「論点は概ね抽出されている。あとはやるかやらないか。
実行が問われている」ともあって、この問題にかなりかかわっている
かたであることが、よくわかりますね。
>元Jリーガー(北澤氏)、歌手(早見優)、
>ミスインターナショナル(吉松氏)の御三方がメンバーに選ばれていることですね
よくわからない人選ですね。
各界からいろんな人を集めたつもり?なのかと思います。
>この会議の主宰者である森少子化担当相に何やら問題があるのでは?
わたしもおなじことを思ったです。
可能性はありそうですね。