「非正規雇用」というのは「問題」となっていなかったのでした。
1990年代に入って景気が悪くなって、男性の中にも正社員になれず、
非正規雇用になる人たちが増えて来ました。
それから非正規雇用が「社会問題」として、注目されるようになったのでした。
非正規雇用が女性だけのときは、「他人ごと」として問題にされず、
男性に影響が出て来てはじめて「自分たちのこと」として、
社会問題になり取りざたされるようになったわけです。
しょせん世の中は「男社会」であり、男性中心にものごとが
考えられることをしめしていると言えるでしょう。
非正規雇用が主婦パートだけの時代というのは、
夫が外で働けば専業主婦の妻を養えたので、家計を支えるために、
妻が働く必要がなかった時代でもあったのでした。
女は家庭に入って主婦をしても不都合がなかったので、
補助的な収入しか得られなくても、また雇用が不安定であっても、
だれも問題にしなかったのだと思います。
男性に非正規雇用が多くなって、それが問題視されるように
なった背景には、「男は安定な職についてじゅうぶんな収入を得て、
専業主婦の妻を養わなければならない」という考えがあるのでしょう。
それで、男が安定な職に就けなくて大変なことになったと、
社会が騒ぐようになった、ということなのでしょう。
労働問題に長くかかわっていると、もともと非正規雇用は
主婦パートの問題だったのに、いつのまにか若者の問題に
「すり替えられた」と感じることがあるようです。
本田一成さんの『主婦パート最大の非正規雇用』を読み返しているが、00年代に非正規雇用の問題が最大の主婦パートではなく、若者問題にすり替えられて行ったことへの違和感が語られていて、いろいろと感慨深い。その一翼を間違いなく担ってたのは本田由紀さんだと思うのだが。
— 金子良事 (@ryojikaneko) 2013, 2月 15
これは上述のように、非正規雇用の主体が主婦パートのときは、
だれも問題にしなかったのが、男性に非正規雇用が増えてから、
はじめて社会が問題として認識するようになったからです。
社会が問題視したときは、はじめから「若者の問題」だったわけです。
そういったことが、つぎのエントリで簡単に触れられています。
「非正規労働が「問題」化したのは・・・」
「すり替えられた」という認識の是非はともかく、
非正規雇用が男性にも増えてきたとき、社会問題として
ようやく注目されたと思ったら、同時に女性の問題という視点が
かき消されるというのは、困ったことではあると言えます。
非正規雇用の問題が注目されなくても、注目されても、
女性はいつでも置き去りにされる、ということなのですから。
「なぜ女の労働は見えないんだろう?:ワーキング・ディペンデント?」
貧困と非正規が連呼される昨今、女の労働にはやはり焦点が当たらない。
非正規なんて女の労働問題そのものだったはずなのに、
そこに注目が集まるときには「女」は消されてしまう。
男が参入すると、女は見えなくなってしまう。
「女だけの問題」ではなくなったとき、はじめてそれは社会問題となり、
それと同時に「女の問題」ではなくなる。
ちなみに上記の記事では、「フリーター」の定義に既婚女性が
長らく入っていなかったことを例にあげて、労働問題の扱いが、
男女べつや女性なら未婚・既婚のべつで異なることが、述べられています。
労働問題を語るときは、主たる生計の担い手は「男・夫」であり、
「女・妻」は主たる生計の担い手と見なさない、という意識が、
いまだに根強くあるということだと思います。
男性の非正規雇用が増えたときは重視するけれど、
女性の労働問題はつねに軽視されるというのも、
このような意識が背景にある、ということだと思います。
兵役となれば一度戦争になれば、そのリスクは、女性の出産の比ではないし、それ以外の負担も半端なものではない。従って、社会的にも男性優遇が認められるのは当然のこと。
しかしながら、今日の日本では、男性に兵役がなくなって70年経とうとしている。当然兵役がないのだから、女性の方が出産という負担を強いられる場合が多く、生まれながらに予定されているリスクは女性の方が高くなる。そうなれば当然女性優遇になるべきなのだ。
今の状態は、惰性的に兵役があった昔の状態を引きずっているというのが現状。ことさらに女性を優遇する必要はないのかもしれないが、変えていかないと。
頭脳労働が多い管理職や政治家、官僚他公務員なんかは、過半数が女性でも良いくらい。そっちのほうが、出産や育児を前提とした社会を作れるから少子化対策にもなるしね。
>近代国家において今まで男性が優遇されてきたのは、
>男性が兵役を負っていたからに他なりません
これはむしろ因果が逆ではないかと思います。
つまり男性が優遇されているから、兵役は男性が負ってきたということです。
簡単に言えば、女は力がないから兵役に役立たない、ということです。
http://bit.ly/19Y4FZM
かつてというか、いまでもそういう国はありますが、
兵役につくことは、お国を守るための崇高なことと考えられました。
兵役につくことがひとつの市民権だったわけです。
そしてこの「市民権」から女を締め出してきたということです。
戦前の日本は、兵役は内地人だけに課されていて、
台湾や朝鮮の人は免除されました。
ようは植民地の人を日本政府が信用していないからで、
彼らには「市民権」を与えないということだったのでした。
>女性の方が出産という負担を強いられる場合が多く、
>生まれながらに予定されているリスクは女性の方が高くなる。
残念ながら出産という負担があるので、女は差別されてきたと言えますね。
妊娠・出産をしているときは、自由に活動ができなくなります。
それが「足手まとい」だというので、男社会は女が自由に
活動できないところへ、すっぽり押しやったというわけです。
>頭脳労働が多い管理職や政治家、官僚他公務員なんかは、過半数が女性でも良いくらい
管理職や政治家など、意思決定の場に女性が
とくにすくないのが日本社会の特徴ですね。
まだまだものごとを決めるのは男で、女はその下で働く
という状況が続いているわけです。
妊娠や出産をしたあと、もとの職場や職種に復帰するのが
むずかしい状況が続いているのも、むべなるかなですね。