2013年05月12日

toujyouka016.jpg 大政翼賛会の母性の保護

つぎの資料は、太平洋戦争中に大政翼賛会が女性のために発行した
「母性の保護」という冊子です。
自民党の「少子化危機突破タスクフォース」が配布を予定している
「女性手帳」と発想が似ているというので、話題になったものです。

「母性の保護」

 
太平洋戦争中、日本は労働力と兵力の確保のために
富国強兵策を進める「戦時人口政策」を行ないました。
それは具体的には、1941年に約7000万人だった内地の人口を、
1960年までに1億にするというものです。
そのために、国民の平均婚姻年齢を3年早めて、
1夫婦あたり平均4人だった子どもの数を、5人にしようとしたのでした。

そこで当時の日本の為政者たちが考えたのが、女性のマインドコントロールです。
「女のしあわせは結婚をして子どもを産むことだ」という考えを
全国の(内地の)女性に吹き込むことにしたのでした。
「結婚をいまより3年早くして、子どもを5人産みなさい」
という内容の閣議決定まで、ごていねいにしているのです。

『<非婚>のすすめ』という本の16-17ページの孫引きになりますが、
つぎに『戦時人口政策』という本の引用をしたいと思います。
昭和15年8月2日近衛首相は、その基本国策のなかにおいて
国民の資質、体力の向上、人口の増加に関する恒久的対策を樹立する旨を声明し、
昭和16年1月22日の閣議で『人口対策要綱』を決定すると同時に、
その具体化をはかっているが、その主旨とするところは、
来る昭和35年に現在の内地人7000余万の人口を
1億に達せしめ、ここに高度防衛国家としての兵力量と労力を確保し、
その適切なる配置によって大東亜共栄圏諸民族の指導的勢力を確保するというにある。

さてこれら対策としては、まず今後10年間に結婚年齢を
現在の実情より3年早めて、1夫婦は平均5児を有することにしている。
大正7年8年のわが国の人口増加が、最高度に達していた頃は
1夫婦は平均5児を生んでいたし、医学的にも日本人は普通年齢に
結婚して完全なる結婚生活を営めば、まず平均4児を産み得ることになっている


「母性の保護」という冊子は、このような「戦時人口政策」を
実行する目的で、女性たちに配布したものだったのでした。
その中で、妊娠や出産、性についての知識を啓発したり、
いつまでに結婚して子どもは5人産むべしといった
「家族のありかた」について「指導」したりもしていました。

当時はファシズムの時代で「お国のため」ということばで
絡めとられやすかったからなのか、「女性の権利」というものが
ほとんど顧みられなかったからなのか、
このマインドコントロールはかなりうまくいきました。
敗戦直後のベビーブームは、この「戦時人口政策」の副産物だったりします。


一般にファシズムの国家は、労働力や兵力が必要になるので、
富国強兵策に走り、人口増加政策を行なうようになります。
それによって「母性のコントロール」を行なうようになり、
かならず女性の生きかたに介入をするようになります。

富国強兵政策のために、女性の生きかたをコントロールしたのは、
ヒトラー・ナチスや、ムッソリーニ・ファシストもそうでした。
じつは日本の「戦時人口政策」も、ナチス・ドイツや
ファシスト・イタリアから、学んだところが多かったりします。

逆に言えば、人口政策のために女性の生きかたを
国家が管理するのは、ファシズムの発想だと言うことができます。
少子化危機突破タスクフォース「女性手帳」は、
妊娠や出産・性の知識についての啓発や、家族計画への言及など、
大政翼賛会の「母性の保護」とやっていることが似ていますし、
タスクフォース自体が、ファシズムの人口政策に近いと言えるでしょう。

posted by たんぽぽ at 23:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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