橋下徹大阪市長から飛び出した「慰安婦必要」発言ですが、
自民党政権の議員や閣僚はどう対応したのかというと、
きゅうにものわかりのいいことを言い出して、橋下発言を批判し始めました。
安倍首相も安倍政権の閣僚も、おおよそ慰安婦問題に理解はなく、
橋下と見解が近いはずなのに、手のひらを返したような豹変です。
「慰安婦巡る橋下氏発言、閣僚から批判相次ぐ」
稲田朋美は「女性の人権への侵害だ」と言っているし、
下村博文は「あえて発言する意味があるのか」と言っています。
安倍晋三でさえ「元慰安婦の方々に、首相として心から同情し、
申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と述べ、橋下発言に対して
「私、安倍内閣、自民党の立場とは全く違うと申し上げたい」
とまで言ってしまっています。
ところが前にお話したように、橋下発言は孤立したものではなく、
安倍政権が作り出して来た慰安婦否定の雰囲気から出て来たものです。
橋下発言の直前まで、高市早苗が「村山談話」の
文言を変えることを主張していたくらいです。
アメリカ合衆国のオバマ政権は、安倍の慰安婦否定を警戒していますし、
日本に対して慰安婦非難決議を出す州もありました。
稲田と下村は悪名高い「The Facts」の賛同者として
名前を連ねていますし、安倍も「スターレッジャー」に載せた
慰安婦否定の新聞広告に賛同者として入っています。
稲田は「正論」の記事に、慰安婦否定の主張が載せられたことがあります。
安倍にいたっては、河野談話を否定する橋下を
「戦いの同志」と言って持ち上げたこともあるくらいです。
こういう過去の経緯を見てくれば、安倍や安倍政権の閣僚が
橋下発言の批判をしたところで、しらじらしいだけだと思います。
なにを心にもないことを言っているのかと、言いたくなって来ます。
自民党・安倍政権としては、橋下の「慰安婦必要」発言は
「橋下と維新のローカルなこと」であり、自分たちとは関係ない
「他人ごと」ということにしたいのだろうと思います。
それで安倍も閣僚たちもこぞって橋下発言を批判する
ポーズをしめして、橋下と「線引き」をするのでしょう。
「とかげのしっぽ切り」です。
なぜ「とかげのしっぽ切り」をするのかというと、
アメリカ合衆国の逆燐に触れることだからでしょう。
彼ら自民党の政治家は、「アメリカには逆らってはならない」という
日本の「保守系政治家」の伝統の中にいるので、
自身の慰安婦問題の見解に正直になれないということです。
5月16日に女性議員の有志11人が集まって、
橋下の「慰安婦必要」発言に抗議する記者会見を開いたのでした。
参加しているのは民主党など野党の議員ばかりです。
自民党の議員はいないのであり、安倍政権の橋下批判が
格好だけであって本心でないことが伺えると思います。
5月18-19日に新聞社の世論調査がありました。
橋下氏の「慰安婦必要」発言は、朝日も毎日も7割以上が批判的です。
維新の政党支持率も7%から4%に下がり、「慰安婦必要」発言の
影響が出ていることがわかります。
「橋下氏発言「問題」75% 内閣支持率65% 世論調査」
「毎日新聞調査:橋下氏慰安婦発言「妥当でない」71%」
ところが自民党や安倍政権の支持率はほとんど変わらず、
影響がまったくおよんでいないことがわかります。
橋下発言は安倍政権が作り出した慰安婦否定の雰囲気とは
関係ないと思われているのかもしれないです。
安倍政権の「他人ごと」作戦は、いまのところうまくいっているようです。
それでも自民党・安倍政権としても、いつ自分たちが
批判されるようになるかわからず、戦々恐々としているかもしれないです。
アメリカは前にも増して安倍政権を警戒していると思います。
外国のメディアは安倍政権との関わりを理解していますし、
橋下発言に関して安倍政権まで批判がおよぶことも多いです。
国内メディアも橋下発言と安倍政権の関係を指摘することがあります。
また橋下自身や橋下の支持者が、安倍に対して
「橋下に賛同していたはずのに」と不満を訴えることもあるし、
安倍政権の閣僚が自分からしゃべることもあるでしょう。
いつ安倍政権に火が移るかわからないとは言えます。
橋下氏は安倍首相や安倍政権の閣僚が、慰安婦発言に関して
自分をまったく援護しないのが、とても不満なようです。
これはこれで無理もないと思います。
以前は自分のことを「戦いの同志」とまで言ってくれたのに、
こういう肝心なときにいっしょに戦ってくれず、
「自民党の立場とは全く違う」とまで言われたのですから。
「橋下氏、慰安婦めぐり政権批判 「何も言わない」」
「橋下氏「僕の主張、本当は自民が言うべき」」
橋下は政治家としては「しろうと」であり、
日本の「保守系政治家」の伝統の中にはないだろうと思います。
それで「アメリカには逆らってはいけない」という、
安倍政権のメンタリティが理解できないのだろうと思います。
>日本の「保守系政治家」の伝統
日本の「保守系政治家」はなぜアメリカに逆らわないのかですが、
前にすこしお話したことがありますが、こういうことではないかと思います。
太平洋戦争に勝って日本を占領したアメリカは、
最初は日本の戦争責任の追求に力を入れていましたが、
やがて冷戦に関心が移り、戦争責任の追求には不熱心になっていきました。
戦犯の多くも裁判にかけられず、不問にされていきました。
日本の旧支配層は、アメリカから戦争責任を見逃してもらったと言えます。
日本の「保守系政治家」は、このような戦争責任の追求を
「おまけ」してもらった旧支配層の継承者たちです。
それゆえ自分たちは「アメリカに生かしてもらっている」
という意識があり、「アメリカには逆らわない」という
スタンスを取らざるをえないのだと思います。
日本がいわゆる「真の独立」をしたいのであれば、
ドイツとおなじように自分たちの戦争責任や戦後責任と
徹底的に向き合うことではないかと、わたしは思いますよ。
自分たちの戦争犯罪と向き合い、過去の克服をなしてこそ、
アメリカの「くびき」から脱することができるように思います。
橋下発言に代表されるような、慰安婦否定の歴史修正主義が
まかり通るようでは、「真の独立」はとても無理だと思います。
逆に言えば、日本に歴史修正主義が蔓延する現状では、
アメリカのくびきがなくなるのは、あまりに危険ということです。
付記:
つぎのツイートは稲田朋美の豹変をまとめてあります。
https://twitter.com/OsakaWatch/status/334477598962905089
まずブログのエントリ本文と直接関係のないコメントを書くのは
他の読者の迷惑ですのでやめてください。
またたんぽぽさんに何らかの義務があるというなら
その根拠から先に示しなさい。
5月27日エントリでお話しましたが、ひとつ目のコメントは削除しました。
http://taraxacum.seesaa.net/article/364125785.html
削除したコメントはこちらに残してあります。
見たくないかもしれないけれど、確認が必要というときには、
参照されたいと思います。
http://lacrima09.web.fc2.com/figs/tananoki.html
それにしても「人は、過ちを受け入れてこそ、先に進める」
などと言っているのには、じつに失笑しましたよ。
慰安婦の「否定派」にこそ、とてもよく当てはまることだからね。
全くその通りです。
たぶんどこかで自分が言われて言い返せなかったのではないか…
と私は思います。
そして前回、橋下さんが元従軍慰安婦の方と面会しなかったことを
「過ち」だと認めたのでしょうね。
なので今回、元慰安婦の側から面会を拒絶されたのも
「過ち」だと思った。
どっちもたんぽぽさんには、責任のないことですけれどねえ。
>たぶんどこかで自分が言われて言い返せなかったのではないか…
ああ、そうかもしれないですね。(笑)
その可能性はありそうです。
>前回、橋下さんが元従軍慰安婦の方と面会しなかったことを
>「過ち」だと認めたのでしょうね。
そういうことになるはずですね。
でもああいう人のことだから、前回橋下が逃げたのは「正当」で、
今回元慰安婦のかたが面会をキャンセルしたのは「不当」だと
思っていそうではあるけれど。
>どっちもたんぽぽさんには、責任のないことですけれどねえ
なんでわたしに要求してくるのかが謎だよね。