きょうのエントリはとても悲しいお知らせです。
夫婦別姓の国家賠償請求訴訟の判決が、5月29日に出ましたが、
原告の訴えが棄却されてしまいました。
「夫婦別姓認めぬ規定「合憲」 東京地裁」
「夫婦別姓巡り初の判断「憲法で保障されていない」」
「夫婦別姓訴訟で原告敗訴 東京地裁」
「夫婦別姓国賠訴訟:原告敗訴 憲法違反認めず」
「夫婦別姓判決「憲法で保障された権利と言えず」」
「夫婦別姓「憲法の保障ない」=国不作為も認めず−原告側請求を棄却・東京地裁 」
「夫婦別姓「憲法保障の権利といえず」 請求棄却 」
この訴訟は、わたしもひじょうに期待していたのですが、
このような結果になってとても残念です。
いいお話というのは、なかなかないようですね。
判決では「夫婦別姓は憲法で保障されていない」というのですが、
結婚の際どちらかが改姓を要求されるというのは、
改姓したくない人がすくなくない現在においては、
24条で定められた「両性の合意のみ」に反するだろうと思います。
「直ちに国会議員が立法の義務を負うとは言えない」ともありますが、
法制審議会の答申書から、今年で17年経過していますから、
「いい加減遅すぎる」という状況だと思います。
選択別姓を認めろということは、国連の女子差別撤廃委員からも
繰り返し勧告されていて、フォローアップの対象にもなっています。
国連からも「早くしろ」と言われていることになります。
「日本が批准した女性差別撤廃条約も、国民に直接、
夫婦別姓の権利を付与するものではない」にいたっては、
もっとはっきり違うのではないかと思います。
女子差別撤廃条約の16条の1項(g)では、
「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む)」と
なっていて、苗字のことが直接言及されているからです。
いろいろと納得のいかない判決だと、わたしは思います。
原告のかたがたは「斬新なものが見えてこない判決。
高裁に期待したい」とお話をしていて、控訴するとのことです。
今度こそ勝訴を期待します。健闘を祈ります。
原告の弁護人は大変上手な訴状を書いていて感心しました。
「国会は《ただちに》立法義務を負うとは言えない」という判断を判決に書いているのは、実はたいしたことだと思います。
単純に却下してるんじゃないよという意志が判決からにじんでる。
正直提訴の時には
「国会のことは議員に直接言ってね/裁判所は判断しませんよ」で門前払いされることもありえると思っていました。
この判決を書いた裁判長は
「姓の変更で不利益が生じることは容易に推測でき、夫婦別姓を積極的に求める意見が多い社会情勢にある」と
判決の中に書いています。
こちらとしては結果に不満は一杯ですが、これは
判事はけっこう実はがんばって書いてくれているはず。
三権分立に踏み込むことになるので、
何か大きな社会的事件の後押しがないと
国家賠償で違憲判決は出てこないのが現実だと思います。
報道記事は様々ですが、この部分を書くか書かないかで
書いた記者と会社の「温度」がわかると思います。
とはいえ、裁判の鉄則が「疑わしきは罰せず」であることを考えれば、
「国会は《ただちに》立法義務を負うとは言えない」
という表現は、、世間一般的な言葉に翻訳すれば、
「国会は《ただちに》立法して当然ではある。」
に限りなく近いことだ、ということを国会議員は肝に銘じるべきだと思います。
>原告の弁護人は大変上手な訴状を書いていて感心しました。
考え抜いたのでしょうね。
原告団は可能なかぎり最善を尽くしたということなのでしょう。
>「国会は《ただちに》立法義務を負うとは言えない」という判断を
>判決に書いているのは、実はたいしたことだと思います。
>単純に却下してるんじゃないよという意志が判決からにじんでる
なるほど。そういうことなのですね。
判事としては、無理筋なんだけど、それでも原告の考えを
精一杯汲み取ろうとしてはいるのですね。
>「姓の変更で不利益が生じることは容易に推測でき、
>夫婦別姓を積極的に求める意見が多い社会情勢にある」と
>判事はけっこう実はがんばって書いてくれているはず。
これも民法改正の必要があることを、精一杯盛り込んだ
というところなのですね。
1989年6月の訴訟のときは、「夫婦同姓は一体感を高めるのに役立ち、
利害関係を有する第三者に対して夫婦であることを示すのを
容易にするもので、憲法に違反しない」なんて判決が出たのですよね。
それから比べると、民法改正の必要性をまがりなりにも
述べているので、進歩したとは言えるかもしれないですね。
>何か大きな社会的事件の後押しがないと
>国家賠償で違憲判決は出てこないのが現実だと思います。
最初からこの裁判は原告に勝ち目はなかったのですね。
控訴するそうだけれど、たぶんまた棄却されそうですね。
そういうつもりで見ていたほうがよさそうですね。
>残念ですね。難しい判決であることは承知していましたが、
まったく残念だと思います。
やはり無理だったのかなと、ちょっと思っています。
>「国会は《ただちに》立法して当然ではある。」
>に限りなく近いことだ、ということを国会議員は肝に銘じるべきだと思います。
肝に銘じてほしいけれど、彼らは肝に銘じないでしょうね。
「やっぱりいまのまま夫婦別姓なんて認めなくていいんだ」と
文面通りに受け取って、安心(?)してしまいそうです。