2013年06月07日

toujyouka016.jpg 右脳左脳の違いは誤認

「左脳は論理」とか「右脳は創造」といった、左右の脳の役割に
違いがあるという言説には、じつは科学的根拠がないことを
簡単にお話した記事があるのでご紹介したいと思います。

「「左脳は論理、右脳は創造」は誤認」
(はてなブックマーク)

「左右の脳の違い」が発展して、論理的な人を「左脳型人間」と言ったり、
自己啓発本のたぐいで「右脳を訓練して創造力を高めよう」
なんてことを言われるのを、聞いたことがあると思います。
じつはこの手の言説には、科学的根拠はないということです。

 
この「右脳と左脳の違い」は言い古された感じはあるし、
反論もそれなりにされていると思うのですが、
まだまだ信じている人は結構いるのではないかと思います。
はてなブックマークもたくさんついていて、このお話はよく聞かされ、
へきえきしているかたも多い、ということなのかもしれないです。

「右脳と左脳の違い」なんて、「骨相学」の焼き直しだと言えます。
左右の脳の能力差は、現在ではきわめて小さいことがわかっていますし、
また脳を使った知的作業も、左右の両方の脳が使われるのであり、
どちらか一方だけが使われるのではないことがわかっています。

記事の最後に
========
「これは赤血球の抗原の種類によって性格が分類できるという、
血液型占いに近い迷信といわざるを得ません。
科学的根拠はありませんのでご注意を」
========
と書いてありますが、「右脳と左脳の違い」の信憑性は、
血液型性格診断とおなじようなものだと思います。


>「右脳左脳の違い」から、「男女脳の違い」へ

「左右の脳の違い」という「にせ科学」は、さらに発展して、
「男女の脳の違い」と結びつけられることもあったりします。
たとえば「女は感じたことをすぐことばにできておしゃべり」とか
「男は感情が現れにくく客観性が高い」とか言われるわけです。
こうなるとジェンダー論の観点としても、見過ごせなくなります。

「男女の脳の違い」は、左右の脳をつなぐ脳梁の形状が、
男性と女性とで異なると思われたことから始まっています。
のちに脳梁の形状には男女で差があるとは言えないことがわかり、
もとになっている「右脳と左脳の違い」も根拠がないので、
「男女の脳の違い」にも根拠がないことになります

男女の思考や感情の違いを、「わかりやすく」説明できるから
だろうと思いますが、「男女の脳の違い」も信じている人は、
いまもってたくさんいるのだろうと思います。
『話を聞かない男、地図が読めない女』というあのとんでも本を、
科学的に裏付けていると考えるかたもいるのでしょう。


「男女の脳の違い」の議論をする人たちが巧妙なのは、
表面的に「多様性の尊重」を装った主張をすることです。
ようするに、「どちらかが優れているとか劣っているとか
言うのではなく、男女の違いをお互いに認め合うことが大事だ」
のようなことを言うということです。

実際には、「女性は感情的」とか「男性は空間認知力が高い」とか、
男女の性質や能力を決めつけていることになります。
そしてこれに沿わない個人に対して、ジェンダーの役割を
押し付けるにもなり、ジェンダーの固定化を進めることになります。
「男女の脳の違い」という「科学」を装っていることが、
この「押し付け」を体よく正当化することになります。


過去のエントリ:
これまでにもおなじようなことを書いています。
ご覧いただけたらと思います。

「男女脳の違い?」
「男女脳の違い?(2)」
「脳の性差研究の最前線」
「脳梁の性差批判の記事」
「男女で脳に違いはない」

posted by たんぽぽ at 23:01 | Comment(2) | TrackBack(0) | 疑似科学(にせ科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
ちょっとこのエントリは、若干、たんぽぽさんと認識が違うようなので、僕の考えを書いておきます。最終的に主張する方向はたぶん一緒なんですけど。

まず、左右の脳の役割が対称ではないことは、色々な研究があって、わかっています。
有名な例には、左脳が損傷した時に高確率で言語障害が出ることがあります。つまり言語を司る機能は左脳にあることが多いとされています。
そういうデータを見た人が「右脳は●●」「左脳は▲▲」説を生み出しているのでしょう。しかしそれは「話題として面白いかもしれないけど役には立たない」。まさに血液型性格診断と似ていると僕も思います。

実際問題として、右脳と左脳のどの部分が何を司っているか、自分で感じることはできないし、右脳だけで考えたり、左脳だけ鍛えたりできません。生きている脳を「分けて」認識はできない以上、そんな分類をしたところで、あまり意味がないですよね。鍛えようがない。

で、男女差の話は、これに似ていますが、ちょっと違うのではないかと私は思います。

男女は分けて扱うことができます。体格や体力の差があることは、はっきりとデータに出てしまいますし、平均値としては、この分野は「男性が優れている」とか「女性が優れている」みたいなことは言えてしまうのです。

「空間認知能力」であるとか、あるいは「数学の成績」のような一見、性差がなさそうな力も、有意の差が出るはずです。
(空間認知が男性優位で、言語能力が女性優位というデータは、割合信頼できそうな奴があったような…)
それを後天的社会的な要因だけに帰すのは僕は無理だと思っています。
そこは認めざるを得ないのではないかと。

ただ、間違っていけないのは、それは「平均値の差」にすぎないし、たぶん多くの男性が考えているよりも、わずかな差しかないということです。

もしそういうデータがあったとしても、決して男子全員が空間認知に優れているわけではなない。

例えば男女の平均身長は10センチも違うわけですが 173センチ(ほぼ平均値)の僕より背が高い女性が、普通に何人も知人にいます。高校のときに僕が好きだった女の子は3年間すべての試験で僕の上位にいましたし、僕より足の早い女性も、力の強い女性も、地図を読むのが上手な女性も、確実に日本に何百万人もいるでしょう。

サッカー経験者男子の99%は沢穂希選手を止めることができないでしょう。

東大生にB型の人がとても多いというデータがあるとしても、僕(B型)が、東大に入れるわけでは全然ありません。試験で高得点を取る人が入る。
そういう話だと思います。

集団を分ければ「能力に平均値の差はある」ことは否定しない方がよいと僕は考えています。そうであっても人間全体の中で君はひとつも有利にならない。という話をしていかないといけない。

自分の力じゃないデータをもって「俺が優れている」とか「男が女より優位」だと思いたい男性がわらわら出てくるのは、愉快なことではありませんが、現実に社会の中で男女の総合力の差がなくなってきた結果であるとも思います。

Posted by 舞浜 at 2013年06月08日 08:56
このエントリにコメントありがとうございます。

>左右の脳の役割が対称ではないことは、色々な研究があって、わかっています。

エントリでリンクした記事には、差があることが書いてありますね。
========
ただ、大脳の左右半球に構造的・機能的な差があること自体は、
様々な研究によって確認されていると
========
差があるというのは、具体的にどういうことなのかなとは思うのですが、
左右の脳は対称ではないと理解したほうが正確そうですね。

>実際問題として、右脳と左脳のどの部分が何を司っているか、
>自分で感じることはできないし

左右の脳は脳梁でつながっているので、両方の脳が使われるのですよね。
リンクした記事にもこう書いてありますね。
========
ある課題や知的作業について、一方の脳“だけ”が使われるという状況は
まず考えられないんです
========

>有名な例には、左脳が損傷した時に高確率で言語障害が出ることがあります。

言語機能で左右の脳に差があるというのは、わたしも聞いています。
左右で差がはっきりしている例ですね。


>男女差の話は、これに似ていますが、ちょっと違うのではないかと私は思います。
>男女は分けて扱うことができます。体格や体力の差があることは、
>はっきりとデータに出てしまいますし、平均値としては、

ああいや、ここでのお話はそうではないです。
「男女の能力差は脳の構造によるものであり、それは右脳と左脳の
機能差からきている、ということに根拠がない」ということです。
「能力の平均値に性差がある」こと自体を否定しているのではないです。

実際に平均を取れば、男女差が出てくるものは多いと思います。
でもそれは、「脳の構造に性差があるから」ではなく、
多くは学習とか環境によるものだろう、ということです。
Posted by たんぽぽ at 2013年06月09日 14:48
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